取材/文:新藤弘子(舞踊評論家) ---バレエとの出会いについて教えてください。 姉のバレエ教室についていって、まねをしてたらしいんです。母がそれを見て、やらせてみようと。まわりは女の子だらけだったけど、まだ5歳だったので気にせず暴れてました(笑)。ちょっと肩身が狭くなってきたのが小学校4年生くらい。5年生のとき東京バレエ学校に入学して、男の子が僕だけじゃない! と思ったのを覚えています。 ---バレエ学校時代、印象に残っているのは? スクール・パフォーマンスで少年科の踊りを観て、かっこいいなと思いました。入団2年前のスクール・パフォーマンスでデジレ王子を踊った時は、パ・ド・ドゥのアダージオで、どうしようもないくらい頭がこんがらがってしまいましたが、先生方に教えていただけて、すごく助かりました。 ---東京バレエ団に入ろうと決めた理由は? 入団して苦労したことはありますか? 団員のかたの後ろ姿にずっと憧れていたので、卒業したらここに入ろうと決めていました。入団後はリハーサルの量が格段に増えましたね。特に海外ツアーで『春の祭典』や『タムタム』を踊った去年の夏! 頭も体も追いつくのに必死でした。踊りでは、アダージオと演技。僕は『スプリング・アンド・フォール』のようなさわやか系の踊り、『タムタム』の力強い動きとかは得意なんですが、『春の祭典』の生贄では「弱者というものをどう演じるか」で悩みました。今度のデジレもまだ課題が残っているので、マラーホフさんの王子像をしっかり理解して自分のものにしたいと思います。 ---心に残る出会いや憧れのダンサーについて教えてください。 憧れる人はたくさんいますが、一番はルグリさん! 足さばきや回転のきれいさ、ラインの美しさや身体のしなやかさ、自分が求めるものをすべて持っていると感じます。同期では松野くん。バレエ学校で一緒にレッスンしてきましたが、改めて話してみると頑張り屋で、リハーサルにも集中して取り組む。努力の結晶という感じで、応援したいと思える存在です。(柄本)弾さんは、僕とそんなに年齢も変わらないのに技術のレベルが高い。『バレエ・インペリアル』をリハーサルで踊られているのを見た時、この色気やオーラはどうやって発してるんだろうと思いました(笑)。 ---ターニング・ポイントはありましたか? 2013年に『カルメン』と『ロミオとジュリエット』のトライアウトがあり、頑張って目立とうとレッスンしたんです。そのとき先輩に「秀雄はいつもあのくらい動けばいいのに」と言われ、あっ、そういうことか、と。自分に足りないものをひとつ見つけたと思いました。それからバレエに対する姿勢も身体も変わりました。筋肉が増えてケガもしにくくなった。この1年くらいは怒濤のようにあっという間! ノイマイヤーさんやルグリさんの指導も受けられて充実しています。 ---今後どんなダンサーになりたいですか? 踊ってみたい作品や好きな作品は? 幼い頃から、何でも踊れるダンサーになりたいと思っていました。王子も悪役もキャラクター的な役も踊りたいし、物語のない作品もドラマティックな作品も。振付家ではベジャールさんが好きです。憧れは『ザ・カブキ』の由良之助や、『ボレロ』『ギリシャの踊り』『火の鳥』...。コジョカルさんの公演で観たクルグの『レディオとジュリエット』も踊ってみたいです。 ---バレエ以外で好きなことを教えてください。 音楽はクラシック、特にバッハが好きでよく聞いていました。あとは食べること!(笑) 卵料理が好きで、よく自分でも作りますよ。ゴーヤチャンプルーとかオムライスとか。 入団して4年目だが、正確なポジション、はつらつとした動きの美しさは、すでに多くの人の知るところ。ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』では若き僧ロレンスをみずみずしく演じ、新たなファンを獲得した。リハーサルでは跳躍などをのびのびとこなす一方、マラーホフの演技指導にけんめいに応える。デジレ役は、選ばれた特別な存在であることを、何気ないしぐさを通して観客に示さねばならない。妖精の声を聞くように耳元に手をやる動きはまだ初々しいが、若く魅力的な王子の誕生を予感させる。 「突き詰めるタイプで、よく頭が迷宮入りするんです」と笑い、「考えに考えて一番自分がやりやすい方法を見つける」と語る。ていねいな言葉の端から、自信がきらっとこぼれ出るようで頼もしい。デジレ役でもきっと、大きな成長を見せてくれるに違いない。 撮影:細野晋司
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