取材/文:新藤弘子(舞踊評論家) ---バレエとはどうやって出会いましたか? 子どもの頃、実家の向かいがバレエ教室で、姿勢やお行儀もよくなるだろうと母が連れて行ってくれました。もともと動くのが大好きで、家でも歌ったり踊ったりするような子だったので、楽しかったですね。大学進学のために上京してから東京バレエ学校に入学しました。入団は20歳の時です。 ---バレエと大学の両立はたいへんだったのでは? 両親から「大学に行かなければバレエを続けてはだめ」と言われていたこともあって、頑張りました。もう一度やれと言われたら辛いけれど、2つのことがあったからこそ必死になれたし、自信にもつながりました。いまは両親に感謝しています。 ---入団して苦労したことは? 東京バレエ団といえばきれいなコール・ド・バレエ! 列の揃え方、首の角度など、バレエ団の形を細かく身体に入れるのが大変で、最初は苦戦しました。バレエは楽しく踊るものだったのに、仕事になったとたん、大好きなものを取り上げられたように感じてしまって。リハーサルと大学を往復しながら、なんでこんなに辛くなってしまったんだろうと思ったときもありますが、舞台に立つと、やっぱり好きだからやめられない。私は同期の人たちに恵まれていて、いまでも退団した方を含めて月に1回くらい集まってバレエの話をしていますし、先輩方もいろんなアドバイスをくださるので、人間関係の面では恵まれていますね。 ---印象に残る出会いはありますか? マラーホフさん、ルグリさん、ギエムさんなど、小さい頃から東京バレエ団の公演で観ていた人たちと同じ舞台に立てるのは、とても光栄です。初めて観た東京バレエ団の全幕が吉岡美佳さんとマラーホフさんの『眠れる森の美女』でしたし、初めてソロを踊ったのもマラーホフ版『眠れる森の美女』の妖精だったので、全幕初主演もこの作品で迎えられるのが嬉しいです。デジレ役の(岸本)秀雄くんは後輩で、緊張しているのか「すみません!」が口ぐせで。最近は1回百円罰金ね、と言ってるんですけど(笑)。私はつい恥ずかしがったり考え過ぎたりしてしまうんですが、秀雄くんはとても素直。感情豊かで基礎も大切にしていて、マラーホフさんのお手本をそのままやってみようとする。ダンサーとしても人としても魅力的で、見習いたいなあと思います。 ---難しかった役や作品は? 以前はオディールやカラボスのような強い役が多かったので、『ドン・キホーテ』のドリアードの女王は自分に足りない部分を求められる踊りだと思いました。「コミカルではっきりした踊りができるのはわかっているから、曲に合わせてゆっくり伸びやかに踊ることを意識しなさい」といわれて。『エチュード』ではギエムさんがフェッテのしかたや踊りのめりはりのつけ方を教えてくださったり、(吉岡)美佳さんが「自分が信じられないなら私を信じて」と言ってくださったりして、勇気がわきました。今回のオーロラは、マラーホフさんや美佳さんが実際に筋肉に触れ、手のポーズひとつから直してくださるので、とてもわかりやすい。あと3週間、少しでも吸収して役に近づきたいです。 ---どんなダンサーになりたいですか? いまは次々に新しい役があって息つく暇もなく、1年後にどうなっているか想像もつかないのですが、このオーロラ姫を踊りきることで、ひとつステップを上がりたいと思っています。私はベジャールさんには指導していただく機会がなかったのですが、いまマラーホフさんにご自身の振付を教えていただけるのがとても嬉しくて、キリアンさん、エックさん、ノイマイヤーさんの作品も、ご本人の指導でぜひ踊ってみたいんです。そういうチャンスがあれば飛びつきたいです(笑)。 きりっとした顔立ちと美しいラインで、新しい役に挑むたびに鮮やかな印象を刻んできた川島麻実子。創立50周年祝祭ガラの『ペトルーシュカ』バレリーナでも、その愛らしさは際立っていた。リハーサルではマラーホフの指示に敏感に反応しながら、いきいきと踊る。バレエについて真摯に語る表情が魅力的だが、話が友人や家族のことに触れると、花が咲いたように明るい笑顔がはじけた。大好きな人たちとお茶をしたり、お菓子を作ったりするのは貴重な時間。本や海外ドラマも大好き。レッスン着の色も役柄に合わせるという繊細な感受性が、オーロラ役で大きく開花するのが待ち遠しい。 撮影:細野晋司
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