東京バレエ団は2016年2月、ウラジーミル・ブルメイステル版『白鳥の湖』バレエ団初演にのぞむ。その準備が進むなか、10月中旬、モスクワから指導者のアルカージー・ニコラエフ氏を迎え、9日間にわたる濃密なリハーサルが展開された。モスクワ音楽劇場でソリストとして活躍、ブルメイステルのもとでこの作品を踊っていたというニコラエフ氏に、リハーサルの様子やこの版の魅力を聞いた。 まず、稽古場での東京バレエ団の印象を尋ねると、「技術面に長けたダンサーもいれば、表現力に優れたダンサーもいる。個性は皆それぞれですが、演技というものはとても難しいものですね」。きれいな日本語で、「難しいね」、と繰り返す。 「ブルメイステルはパリ・オペラ座に初めて招聘されたロシアの振付家ですが、彼の『白鳥の湖』は本当に素晴らしい。何よりもまず、知識がある人もそうでない人も、前もってあらすじを読まずに舞台を観て、物語を理解できる。すべてが演技によって支えられている作品なのです」 最も特徴的なのは第3幕だという。 「スペイン、ハンガリーなどの各国の踊りは、単なるディヴェルティスマンではなく、すべて悪魔ロットバルトとその手下たちが創り出す世界。彼らはジークフリート王子がオデットを裏切るように導けと、ロットバルトに命令されているのです。どうもその企てがうまくいかないということになると、オディール自身も呼んできて、ジークフリートを惑わす。彼はもうわけがわからなくなり、大事に持っていたオデットの羽根をオディールに手渡す。その瞬間、オデットを裏切ってしまったことが明らかになるのです」 自身もジークフリート王子をはじめ、ロットバルト、パ・ド・カトルと様々な役柄を踊ってきた。 「でも、私にとって最も価値があるのは、1953年の初演の時に小姓役で出演したことなんですよ! 私は11歳でした。初めての舞台でしたから、すごく緊張していましたね(笑)。もう62年も経ちました」 ドラマティックな出来事を巧みに演出することに長けていたというブルメイステルから、多くを学んだとも。 「彼はこう言いました。『そんなにたくさん回るピルエットなんて見たくない! ジークフリートがオディールに対して踊っているヴァリエーションなのだから、回転数は二の次だ!』と。彼にとって最も重要なのは、その踊りは何について語っているのか、ということなのです」 稽古場では、子どもの頃からこの作品に親しんできたという斎藤友佳理から、「昔のモスクワ音楽劇場は、こんなふうにやっていたのでは?」と意見を求められる場面も。 「舞台というものは時間とともに変化してしまうところがあります。ダンサーがそれぞれに即興でやったことが、そのまま定着してしまうことも。友佳理が私に望んでいるのは『最初はどのように演じられていたのか、見せてほしい』ということでした。時間は限られていますが、その中で、できるだけ多くのことを伝えたかったのです」 ニコラエフ氏からたくさんのものを受け取ったダンサーたち。2月の初演に向けて、ひたすらに稽古を積み重ねていく。 取材・文:加藤智子
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