あいちトリエンナーレの2016プロデュースオペラとして上演される、勅使川原三郎演出によるオペラ『魔笛』に、東京バレエ団のダンサーたちが出演、4月から断続的にワークショップ、稽古が行われている。本番を約半月後に控えたバレエ団のスタジオで、リハーサル中の勅使川原氏に話を聞いた。 ダンサー、振付家、また演出家として様々な作品を手がけてきた勅使川原氏だが、オペラ演出については、「オペラを、"すでにあるもの"として考えず、いまなぜこのオペラを演出、再創作するのかということをきちっと捉えながらやろうと思っています」と話す。そこで重要な役割を果たすのが、東京バレエ団のダンサーたちだという。 「大事にしたいことは、これは"動くオペラ"であるということ。身体が動くのはもちろんですが、実はオブジェも、動きます。舞台には直径8メートルから80センチの大中小のメタリックなリング=円が配され、いろんな動きをする。その中で、ダンサーたちの動きが、とても重要なものとなるのです」 自ら主宰するカンパニー、KARASをはじめ、世界各地のダンサーたちと創作を続けてきた勅使川原氏だが、東京バレエ団のメンバーとは、今回が初顔合わせだ。 「彼らには可能性を感じています。これから、潜んでいるものがもっと出てくるだろうとも感じました。大事なことは、この限られた稽古期間に何ができるかということ。最終的に舞台に出たときに、とても活き活きしたものが生まれる、そういう出会いであると思っています」 稽古中は、「男性の周りを、沿うように歩いて」「ここから、溶ける」と、独特の指示がとぶ。演出助手でダンサーの佐東利穂子氏が、フォーメーションの調整のためにせわしく動きまわるなか、きっかけを見極めようと、音楽に集中するダンサーたち。カウントをとり、振りを確認したくなるような場面も、より正確な動きを引き出すべく、勅使川原氏は様々な要求を出し続ける。 「ダンス、身体というものは、もともとズレるもの。カウントを一番に信用しないで、身体の動きとして重心がどうであるべきか、身体の機能がどうであるか、ということを正確に知覚することのほうが、大事なのです」 装置にリング=円を多用するという舞台、いったいどのような世界が立ち現れるのだろう。 「円はある種、絶対的なものであり、宇宙的なもの、絶対を想定した造形といえるでしょう。『魔笛』というオペラは、絶対的な太陽神を信じる思想と、暗闇、人間の影の部分を強調するものたちの対立が示されます。しかし人間は、絶対を信じたとしても、絶対的なものにはなり得ない。ダンサーが僕にとって必要だと思った理由は、まさにそこです。音楽の中にも、動きの中にも収まりきらない何かがある。人間はどうしようもなく不完全なものである、ということが基にあるのです。この作品は、これから、より面白いものになっていくと思います」 勅使川原三郎演出による『魔笛』は、9月17日(土)、19日(月・祝)、愛知県芸術劇場大ホールにて上演される。 取材・文 加藤智子(ライター) photo:Arnold Groeschel
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