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新着情報2018/02/20

公演レポート~THE TOKYO BALLET Studio Performance(スタジオ・パフォーマンス)

 去る2月13日、目黒の東京バレエ団スタジオにてTHE TOKYO BALLET Studio Performance(スタジオ・パフォーマンス)を開催し、ダンサーたちの創作計8作品を初披露。熱気あふれるパフォーマンスの様子をライターの加藤智子さんにレポートしていただきました。ぜひご一読ください!

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 昨年春に産声をあげた東京バレエ団のChoreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)が再び始動、2月13日、その幕開けとなるスタジオ・パフォーマンスが開催された。
 
 この日のスタジオ・パフォーマンスは、昨年のChoreographic Project I、IIの好評を受け、「団員たちが創作にチャレンジする姿を観たい!」と多くの友の会(クラブ・アッサンブレ)会員が来場。大盛況となった。公演の合間の時間を利用して創作に取り組んできたダンサーたちは、1月下旬に行われた試演会を経て、着々と作品の完成度を高めてきた。さらに、当日の午後に行われたゲネプロには、日本公演で東京に滞在していたハンブルク・バレエ団芸術監督、ジョン・ノイマイヤー氏が訪れ、団員たちを激励。振付を手がけたダンサーたちも出演ダンサーたちも大いに刺激を受け、本番にのぞんだ。上演されたのは8作品。上演順は、振付者たちが話し合って決めたという。

 トップバッターは岡本壮太。昨年は、創作したデュエット作品が認められ、8月の〈めぐろバレエ祭り〉の舞台での上演が実現した。今回の『E1NS. 2WEI. DR3I』でも、昨年に引き続き、岡本と同期入団で息もぴったりの秋山瑛、樋口祐輝らが出演、そこに岡崎隼也が加わり、ソロ、2人、3人の踊りが次々と展開する、小気味よい作品に仕上げた。

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 2番目の登場となった岡崎隼也も、昨年〈めぐろバレエ祭り〉で作品を発表。勅使川原三郎作品への出演をはじめとするさまざまな現場での経験も強みに。今回の『Warm Up』では、ダンサーたちを「もっと、もっと!」と煽り立てたところに見えてくる、独特の清々しさが魅力に。

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 竹本悠一郎の作品タイトル『Vinyl』とは、アナログ・レコードを意味する語。足立真里亜と3人の男性ダンサーたちが織りなすさまざまな色合いの場面が、ちょうど1枚のアルバムに収められたかのような趣で連なっていく、10分超えの力作。

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 ハンブルク・バレエ団時代から振付に意欲的なブラウリオ・アルバレス『ドアが閉まります』は、混み合う電車の中でよく見かける、個性際立つ人たちにフォーカス。プリンシパル・秋元康臣が泥酔の男役を演じて客席をざわつかせ、老人(永田雄大)、オタク風(山田眞央)、女子高生(岡﨑司)、また彼らに翻弄される青年(宮川新大)が体当たりのコメディを放ち、会場は大きな笑いに包まれた。

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 岡崎隼也2つ目のエントリーは、『理由』。沖香菜子、伝田陽美、政本絵美、加藤くるみら4人の女性ダンサーに振付けた作品だ。ストーリーはないが、スツールを効果的に用いながら、それぞれの個性、魅力を引き出したドラマティックな踊りに。

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 井福俊太郎・高橋慈生らが自演した『Gleam』は、男性ダンサーならではの躍動感たっぷりのデュエット。自由に踊れる解放感、喜び、若さゆえの不安といった思いをぎゅっと凝縮、パンチのきいた踊りにこめて強い印象を残す。

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 3月末でプリンシパルをしりぞく木村和夫は、自作『The Piano』を奈良春夏とともに踊った。映画「ピアノ・レッスン」に想を得た小品だが、奈良との安定感あるデュエットには、短時間の中で物語を伝える力強さが。大人のダンサーだからこそ表現できる深みある演技で魅了した。

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 最後を締めくくったのはブラウリオ・アルバレスの2作目、『アダージェット』。多くの振付家、アーティストを魅了してきたマーラーの名曲に果敢に挑戦、男女5組もの大がかりな作品にまとめあげた。

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 どの作品も振付者の個性、ダンサーたちの魅力がさまざまな形で現れるユニークなものばかり。これら8作品はそれぞれ、4月の〈上野の森バレエホリデイ〉、または8月の〈めぐろバレエ祭り〉の舞台での上演を目指す。

 団員が振付に取り組み、作品を発表する場をもうけることで、彼らのステップアップを期待したい、という斎藤友佳理芸術監督の思いからスタートしたこのプロジェクトは、2017年4月の〈上野の森バレエホリデイ〉のキャノピー(野外ステージ)で初お目見え、東京バレエ団ダンサーの振付・出演による新作全6作品が上演された。その後Choreographic Project IIとして、まずはスタジオ・パフォーマンスを実施し、その上演作品の中から選ばれた2作品を第5回〈めぐろバレエ祭り〉の舞台で披露、満席の劇場を大いに沸かせた。新たな取り組みへの手応えを得て、2018年、東京バレエ団はChoreographic Project IIIを展開、このスタジオ・パフォーマンスを皮切りに、ダンサーたちによる創作活動をさらに後押しする構えだ。

 2018年、The Tokyo Ballet Choreographic Project IIIは、着実に成果を重ね、ますますの盛り上がりをみせるだろう。

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【取材・文 : 加藤智子】

THE TOKYO BALLET Studio Performance(スタジオ・パフォーマンス)上演作品一覧

No.1  "E1NS. 2WEI. DR3I"
振付: 岡本壮太
出演: 岡崎隼也、秋山瑛、樋口祐輝

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No.2  "Warm Up"  
振付: 岡崎隼也
出演: 安西くるみ、中沢恵理子、井福俊太郎、鳥海創

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No.3 "Vinyl"  
振付: 竹本悠一郎
出演: 足立真里亜、宮崎大樹、海田一成、後藤健太朗

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No.4  "ドアが閉まります"  
振付: ブラウリオ・アルバレス
出演: 秋元康臣、宮川新大、永田雄大、山田眞央、岡﨑司

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No.5  "理由"
振付: 岡崎隼也
出演: 伝田陽美  政本絵美  沖香菜子  加藤くるみ

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No.6  "Gleam"
振付: 井福俊太郎、高橋慈生
出演: 高橋慈生、井福俊太郎

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No.7  "The Piano"
振付: 木村和夫
出演: 木村和夫、奈良春夏

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No.8  "Adagietto"
振付: ブラウリオ・アルバレス
出演: 渡辺理恵-樋口祐輝、金子仁美-海田一成、瓜生遥花-岡﨑司、
    川島麻実子-岸本秀雄、上田実歩-山田眞央

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新着情報2018/01/01

東京バレエ団ダンサーからの年賀状2018

 新年明けましておめでとうございます!!

 昨年、東京バレエ団は元日に日本を出発し、ブリュッセルでの第31次海外公演(「第九交響曲」)を終えたあとに「イン・ザ・ナイト」のバレエ団初演、そして第32次海外公演としてシュツットガルト州立歌劇場にて「ラ・バヤデール」全幕上演、〈上野の森バレエホリデイ〉への出演、「ラ・バヤデール」凱旋公演、子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」全国公演、第5回〈めぐろバレエ祭り〉への出演、「アルルの女」、「小さな死」のバレエ団初演、モーリス・ベジャール・バレエ団との合同公演〈ベジャール・セレブレーション〉、そしてベジャール版「くるみ割り人形」の5年ぶりの再演と、合計40回もの公演を無事に終えることができましたのも、劇場へ足を運んでくださった全ての方々のお力添えのおかげと感謝いたしております。ダンサー、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。

 また、今年からはじまった「THE TOKYO BALLET Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)」も早くも「ProjectⅢ」に突入します。さらにブラッシュアップしてお贈りする、新しいダンスの世界にどうぞご期待ください。

 2018年の年明けに、恒例となりましたダンサーからの新年のご挨拶を申し上げます。「クラブ・アッサンブレ」の会員様には、直筆サイン入りの年賀状をお送りしております。下記にて全ダンサーのサインを一挙公開いたしますので、どのダンサーからの年賀状か、楽しみにご覧ください。

 今年も「セレナーデ」他、多数のバレエ団初演作品を含め、多彩なラインアップで皆様のご来場をお待ちいたしております。2018年も東京バレエ団に変わらぬご声援を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。

【プリンシパル】

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【ファーストソリスト】

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【ソリスト】

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【セカンドソリスト】

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【ファーストアーティスト&アーティスト】

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※川島麻実子、柄本弾からは1枚だけ「漢字ヴァージョン」のサイン入り年賀状をお贈りいたしました。

※例年ソリスト以上のダンサーからのみ年賀状にサインをさせていただいておりましたが、今年はファーストアーティスト、アーティストの中から、昨年舞台で活躍した4名も参加させていただきました。

★東京バレエ団2018年度のラインナップはコチラ>>>

★クラブ・アッサンブレへのご入会はコチラ>>>

レポート2017/12/28

イベントレポート~クリスマス・パーティー2018~

去る12月17日(日)、2017年最後の公演となったベジャールの「くるみ割り人形」の終演後、東京バレエ団友の会クラブ・アッサンブレの会員様と、東京バレエ団全ダンサーたちが参加したクリスマス会が行われました。その様子をご紹介します。

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 クラブ・アッサンブレ恒例のクリスマス会。会場にはクリスマスらしい華やかな装いの方が200名強ご参加され、公演後の興奮冷めやらぬ中、パーティーがはじまりました。

 まずは斎藤友佳理(芸術監督)から皆様にご挨拶。そして当日がプリンシパルの引退公演となった木村和夫から会員の皆様にこれまでのご支援に感謝の言葉を述べさせていただきました。

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 斎藤、木村の挨拶のあとは飯田宗孝(団長)の発声で乾杯! 乾杯のあとはみなさまお待ちかねの歓談タイム。ダンサーたちとお客様が和やかな雰囲気の中たっぷりとお話させていただきました。

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 そして恒例のクリスマス・プレゼント抽選会。永田雄大、金子仁美が司会をつとめ、笑いあふれる抽選会が賑やかにスタート! 気になる今年のプレゼントは・・・?

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 ダンサーたちが順番にクジをひき、当選された方にプレゼントをお渡ししていきます。

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 続いて、飯田、斎藤、佐野からもプレゼントをお渡ししました。

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 今年はサプライズ企画として、小林十市さんからもプレゼントをいただきました! なんと小林さん直筆のイラスト。お客様よりもダンサーから「欲しい!」という声があがっていました。

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 抽選会のあとは、バレエ団を代表し、上野水香、川島麻実子、柄本弾、秋元康臣のプリンシパル4名からご挨拶させていただきました。また、3月で退団する渡辺理恵からも会員の皆様に御礼の言葉を述べさせていただきました。

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 そして、2月に行うTHE TOKYO BALLET Studio Performanceで作品を発表するダンサーを代表し、岡﨑隼也、ブラウリオ・アルバレスから一言ずつお話いたしました。東京バレエ団の新しい挑戦にぜひご期待ください!

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 最後にダンサーたち全員で改めてご挨拶。今年も一年、たくさんのご声援をいただきありがとうございました。また次回の公演&イベントでお会いしましょう! 
来年も東京バレエ団をどうぞよろしくお願いいたします!どうぞ良いお年をお迎えください。

ロングインタビュー2017/12/14

ベジャールの「くるみ割り人形」上演に寄せて~小林十市さんからのメッセージ~

ベジャールの「くるみ割り人形」の初日まであと2日とせまってまいりました。
今回の上演では、リハーサル指導に小林十市さん(元モーリス・ベジャール・バレエ団)をお招きし、9月から密度の濃いリハーサルを行ってきました。
小林さんはこれまでにも「中国の不思議な役人」、「M」での共演をはじめ、数々のベジャール作品の指導のために来団し、東京バレエ団の舞台を成功に導いてくださいました。
そんな小林さんから、今回の上演に向けてのメッセージをよせていただきました。ぜひご一読ください。


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今回は9月末から約4週間におよぶリハーサルを指導しました。

特に気を付けて指導した点が、音の取り方、動きのニュアンス、演劇性・・・例えば母と息子の関係とか、他者を想ったときにどういう動きになるのか?など。

それから音楽の高さ、長さ、音色と動き(振り)をシンクロさせられるか?という点にも気を付けて、振りよりもそれぞれのダンサーが自由に表現できる方向にすすむよう、皆でこの作品を創り上げてきました。もちろんベジャールさんの振りは変えたりせずそのままですよ(笑)

帰国する前、佐々木さんのお墓参りをして今回の稽古報告をしてきました。ベジャールさんが「ジュウイチ」って呼ぶ声、「十市」って呼ばれた佐々木さんの声は今でも覚えています。2人のおかげで東京バレエ団と僕の関係があります。

また12月に日本に戻りますが、東京バレエ団のダンサーたちみんながこの作品を楽しんで踊り演じてくれることを願います!!

小林十市

※上記のメッセージは2017年11月末にメールにて寄せていただきました。

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11san.jpgリハーサル指導中の小林十市さん

>>> 公演の詳細はコチラ

ロングインタビュー2017/12/13

ベジャールの「くるみ割り人形」~ビム役&M...役へのプチ・インタビュー

ベジャールの「くるみ割り人形」、前回に続きビム役をつとめる岡崎隼也、M...役とグラン・パ・ド・ドゥを日替わりで演じる秋元康臣のプチ・インタビューをお届けします。ぜひご一読ください!


岡崎隼也

小林十市さんとのリハーサルが嬉しくてたまらない!

okazaki junya.JPG 一番好きな場面は...やはり母とのパ・ド・ドゥです。ただ、この「くるみ」に出てくる母は僕の知ってる母とは違うので、踊っているときに自分の母のことは思いださないですね(笑)。根本的にはビムの母に対する想いと同じものはあるけれど、日本人は母親にハグしたりしないので、舞台でおこっていることへの感情を大切にしています。
 あと、変に若作りはしないようにしています(笑)。自分が子どもだったときのことを感じつつ、子どもならではのニュアンスはハズさないように......と。
 今回は初演、2001年、2012年の公演映像を見比べて、それぞれの映像の中で良い部分を集めてリハーサルをしています。(小林)十市さんに指導していただいているのですが、きっかけの音のとり方とかが少し変わりました。僕は十市さんのことを尊敬しすぎているので(笑)、今回もご一緒させていただけるのが嬉しくてたまらないですね。


秋元康臣 

ジルさんに見てもらって物凄く緊張! 表情を変えて演じたい

akimoto.jpg 今回が初挑戦、古典の「くるみ」しか知らなかったので、映像で観たのですが、神秘的なセットやマリア像がとても印象的で、「いいなぁ~」と思っていました。
 他のベジャール作品と比べて"全幕"というのが大きな特色でもあると感じます。もちろん「ザ・カブキ」もありますけど、「カブキ」はやはり特別な作品なので、全幕とおしてベジャール作品を踊るという数少ない機会だと思います。
 (小林)十市さんにリハーサルを指導していただき、先日はジル(・ロマン)さんにも見ていただきました。ものすごく緊張して、力がはいりすぎてしまい...本番よりも緊張しました(笑)。
特に気を付けているのは、表情を変える、ということ。M...は第1幕の最初ではバレエ・マスター、それからメフィストの顔になり、第2幕では各国の踊り。ジルさんの踊っている映像をみると表情のメリハリ、使い分けがすごいんです。僕もしっかり取り組みたいと思います。
 グラン・パ・ド・ドゥも踊りますが、古典版を踊っているので、振付は身体に入ってきやすいみたいです。英国ロイヤル・バレエ団のヴァージョンに近い、でもヴァリエーションは全然違う(笑)。M...が終わって翌日すぐ、なのでいい意味で力が抜けてできるかなと思っています。


>>>ベジャールの「くるみ割り人形」公演の詳細はコチラ

ロングインタビュー2017/12/12

ベジャールの「くるみ割り人形」~母役へのプチ・インタビュー~

今週末に上演するベジャールの「くるみ割り人形」。今回の舞台で2回目の母に挑戦する渡辺理恵、初役となる政本絵美、2人の"母"にプチ・インタビューを行いました。ぜひご一読ください!

渡辺理恵

"演じない"で演じる難しさ! その動きにつながる「動機」を探し中。

rie.jpg "母"役を踊るのは2回目です。初役のときはポジションや動きをかたちにする、土台作りに時間がかかりました。前回とはスタートラインが違いますが、リハーサルでは壁にぶつかることばかり。前回踏み込めなかった部分について考えさせられ、新しい発見があります。

 印象的なのは第1幕のパ・ド・ドゥ。(小林)十市さんが「演劇性を重視」とおっしゃっていたのですが、私自身の見方、とらえ方を含め、色々な角度から考えることができて、踊っていてもその場その場で発見がある、全編をとおして踊ると、本当に重みのある作品です。
 昨年、古典の「くるみ」を全幕踊っているんですが、だからこそベジャール版の独自性、面白さも感じます。こんなにも違うものなのか・・・と改めて思いました(笑)。
 (吉岡)美佳さんには、「自然に、演技になりすぎず」と言われました。歩く、振り向く、見る、すべて日常生活にある動きですが、"演じない"でやることに難しさを感じ、試行錯誤しています。
普段の生活で行われている動作には当然意味があるわけですから、舞台上で同じことをするうえで"母"がその振り、動きをすることにつながる「動機」を、今、探しています。


政本絵美

これまで気づかなかった大事なシーン。ビムとの永遠の別れを実感します。

masamoto emi.JPG 2012年の上演の時にはアンダーキャストだったので舞台には出られず、今回初めての挑戦となります。本当は「花のワルツ」でタキシードを着る女性の役にずっと憧れていたんですけど(笑)、思いがけず母を演じることになりました。
 実は母役は踊るところが少ないんです。なので「振り」にならないように、自然に見えるようにと気を付けています。普段の生活でも子どもに手を伸ばしたりして、それをどれだけ自然に見せることができるか、と考えながら演じています。
 リハーサルをしてみて、プロローグとエピローグの演じ分けにも難しさを感じています。(吉岡)美佳さんに指導していただいているのですが、エピローグでは「笑わないで」と注意を受けました。ただ、悲壮感が漂ってしまってもいけませんが。そう、演じてみて初めてわかったんですが、母は最後鏡の前で手を振るんです。これまでも観ていたのに全く気がつきませんでした。お客さまもこの場面はビムをみているので気がついてない方が多いと思います。確かに、最後はビムと母の永遠の別れなんですよね・・・。
 一番好きなのはビムとのパ・ド・ドゥです。音楽もすごく素敵ですし、あの曲にこの振付ができたベジャールさんって、本当に天才だと改めて思いました。

>>>ベジャールの「くるみ割り人形」公演概要はコチラ

新着情報2017/09/06

東京バレエ団「春の祭典」ダンサーインタビュー Vol.5 奈良春夏

東京バレエ団「春の祭典」ダンサーインタビュー、最終回は奈良春夏をおとどけします。

「春の祭典」のあの独特な振付にも、ひとつひとつ意味がある。奈良は今、それをきちんと理解して心から表現していくことの重要さを実感していると言います。ぜひご一読ください。


*2011年に初めて生贄の女を演じたときのお話を聞かせてください。

 このときにご指導いただいたのは、吉岡美佳さんです。吉岡さんは私が振付を身体に入れる段階から、ただ形を追うのではなくて「どのような気持ちがその形をつくっているのか」、振付けの意味とそれを十分に理解する必要があることを教えてくださいました。
 本番ではとにかく緊張しましたし、もちろん足りない部分もたくさんありましたが、いただいた指導に忠実に、自分のなかで消化しながら踊っていけたので、リハーサル終盤から本番にかけては徐々に役に入り込めている感覚がありました。


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*振付と気持ちの繋がりが重要なのですね。踊っていて、特にそのことを実感した場面はありますか?

 例えば、生贄の女のヴァリエーション。役柄もあり、踊っているとひとり孤独に思えてしまうのですが、群舞全員のまっすぐな視線が自分ひとりに向けられているとき、私はみんなからパワーをもらっています。生贄の女の振付は男性並みに激しいので、踊りの終盤では身体も思うように動かせなくなり、呼吸をするのもやっとなくらい。そんなとき、周りのみんなが視線にのせて注いでくれるパワーが、ダメになりそうな自分を奮い立たせてくれるんです。実際に、コール・ド・バレエとして踊っていたときは、私自身も生贄に向かってパワーを送っていたのを覚えていますが、生贄役を演じたことで改めて、ひとり一人が振付に気持ちをのせて踊れば、それはダンサー個人を超えてすべてのダンサーに繋がっていくのだと感じることができました。この場面を踊っているときは特に、吉岡さんのおっしゃっていたことを実感しますね。


*奈良さんが考える生贄の女とは、どのような女性像でしょうか?

 もちろん、女性の生贄は強くて、男性の生贄は弱いというイメージはあります。ただ、振付やこれまでに習ってきたことを見つめ直したとき、私はそれだけではないと思いました。はじめから凛としてはいるけれども、それほど強くはない、繊細なイメージの女性です。男性とは違って「弱いからお前が生贄だ」ということではないので、あの約30分間の短い作品のなかで徐々に周りの女性たちを引っ張る存在になっていくんです。強さが最高潮に達するのは、女性たちが生贄の女の周りを円になって囲み、男性たちがさらにその周りに集まってくるところ。両手を広げて「男性を受け入れない」という姿勢をとるのですが、そこでやっと生贄になるんです。私のなかではそれまでは生贄にはなりきっていなくて、周囲の女性たちと同じように男性に怯えています。始めから自分が生贄になることを自覚しているわけではないのだろうなと演じていて感じます。


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「春の祭典」2014年6月ローマ・カラカラ野外劇場

 
*今年の7月末には、モーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督ジル・ロマンさんによるリハーサル指導がありましたね。

 ジルさんのリハーサルは、凄まじい熱気と緊張感に包まれていました。男性のリハーサルは特に、見ているだけでもパワーが伝わってきます。もちろん技術面の指導もありましたが、印象に残っているのはリハーサルの持っていき方です。ダンサーの精神面をどうつくっていくのか、そういう点に重きを置いているように感じました。
 例えば、それこそ本当に役のなかでの話ですが「あの相手に勝たなければ、自分が死ぬんだぞ」という緊迫した空気を本当につくりだしてしまう。だから、男性のあの力強いシーンから女性のシーンに変わったときの静けさが際立ち、それがまた女性らしさをつくりだす。そのおかげで私たち女性も入りやすいですし、後半のヴァリエーションになったとき、それまでに踊っていた男性のパワーをもらうことができる。やはりすべて繋がっているんですよね。ジルさんはそういう作品に流れる空気感を指導している印象でした。

 
*最後に公演を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします!

 「彼は、彼女は、どうなっていくんだろう......」という緊迫した空気とともに、男性と女性がそれぞれ生贄になっていく様を、群舞との関係性も含めて感じてもらえたら嬉しいです!

レポート2017/09/04

東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ〉公開リハーサル&記者懇親会レポート

東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ〉(9月8日~10日 東京文化会館)の開幕を1週間後に控えた9月1日金曜日、東京バレエ団スタジオでロベルト・ボッレ&上野水香による『アルルの女』およびイリ・キリアン振付『小さな死』の公開リハーサルと記者懇親会を行いました。その模様と公演への期待を舞踊評論家の高橋森彦さんに寄せていただきました。

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東京バレエ団がローラン・プティ振付『アルルの女』(1974年初演)、モーリス・ベジャール振付『春の祭典』(1959年初演)、イリ・キリアン振付『小さな死』(1991年初演)を上演する〈20世紀の傑作バレエ〉。なかでもバレエ団初演『アルルの女』にイタリアの貴公子ロベルト・ボッレが客演し上野水香と組むのが大きな話題だ(9月8日と10日に主演)。

舞台は南仏プロヴァンス地方。青年フレデリにはヴィヴェットという愛し合う婚約者がいながら闘牛場で出会ったアルルの女の幻影に魂を奪われてしまう――。ドーデの戯曲とビゼーが作曲した組曲に基づく『アルルの女』の抜粋をボッレ&上野はロシア、イタリアのガラ公演で踊っており、このたび満を持して全編での共演を果たす。この日のリハーサルは、プティの右腕だったルイジ・ボニーノと共にプティ作品のステージングにあたるジリアン・ウィッティンガムの指導のもとで行われた。

精悍な青年そのもののボッレと愛らしく純情な雰囲気を醸す上野。見つめあい、身を寄せ合うふたりは"絵"になる。そして幻影に惑わされ狂気じみていくフレデリと、愛する人の心が離れていくのを感じながらも思い続けるヴィヴェドの屈折した心理が伝わってくる。その痛切で甘美な愛の果てに迎えるものとは......。クライマックスとなるボッレのファランドールのソロはお預けだったが、想像すればするほど期待はいや増すばかりである。

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 ボッレ&上野は共に10代の若き日にプティから才能を見出された。記者懇親会の席上、ボッレはプティを「恩師」と述べ、「リハーサルでは挑発し自分の表現や表情を引き出してくれた」と感謝し、その作品について「パトスを持っていて、感動を生むことに抜きん出ていた」などと分析した。上野も「動きのなかに感情を表現し、意味を込めることによってお客様に伝わることを教えていただいた」とプティへの感謝を口にした。

ボッレが『アルルの女』の全編を踊るのは初役時(2008年)以来となり「この10年で自分は人生からいろいろと学び、辛い経験もして変わり、人間として深みを増したと思います。そういった自分が踊る『アルルの女』をぜひお楽しみに」と話し、上野はヴィヴェットを演じるに際し「本当に悲しい役。可哀そうな役を演じるのは難しいですし、その中に美しさを常に持っています。悲しみも人生の中で美しい――そういった表現を目指したい」と語った。


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 同じくバレエ団初演となる『小さな死』のリハーサルも公開された。モーツァルトのピアノ協奏曲第23番と第21番を用いて愛と官能を絶美に描いた傑作を指導するのは初演者のひとりエルケ・シェパース。全体を通した後、川島麻実子&柄本弾ら男女6組のダンサー(9月8日と10日に出演)に対して一組ずつ丁寧に指導していた。キリアンならではの詩的で叙情豊かな名作を輝かせ、現代バレエの精華を示す上演となることを期待したい。

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高橋森彦(舞踊評論家)

写真:長谷川清徳

>>> 公演の詳細はコチラ

新着情報2017/09/01

東京バレエ団「春の祭典」ダンサーインタビュー Vol.3 伝田陽美

東京バレエ団「春の祭典」ダンサーインタビュー、第三弾は伝田陽美をおとどけします。

2016年のカリアリ公演で生贄役デビューを果たした伝田は、初役時のエピソードや役作りへのこだわりをたっぷりと語ってくれました。ぜひご一読ください。


*伝田さんの考える生贄の女とはどのような役ですか?

 生贄の女は、男とは対照的で集団のなかの強い存在。男性から周りの女性たちを守るために生贄として自分の身を投げうるのですが、ポイントは、強い中にも"女らしさ"があるという点だと思っています。
 最近の公演で言うと「ラ・バヤデール」のガムザッティを演じたときがそうだったのですが、私が演じるとその役のキャラクターがきつい感じに見られてしまうことが多くて、その点を難しく感じています。だから私の場合、まずは女らしさを。強さを大事にするのはその次です。ただ、生贄の女として踊っているときの私の感情は、言葉として口に出してみると「みんなには手を出すな!」とか「私ひとりで十分だろう!」とか、どれも逞しさが勝るようなものばかりで......。これでは「一に女らしさ、二に強さ」という私の理想とは完全に逆ですよね(笑)。冒頭は音楽も静かなのでまだ演じやすいのですが、後半の激しい場面になってくると、どうしても強い自分が出てきます。


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*初めて「春の祭典」を踊ったとき、あの独特な振付には苦労しませんでしたか?

 身体がついていかなくて筋肉痛になることはあっても、それほど苦労は感じていなかったと思います。「春の祭典」はずっと憧れていた作品ですし、何より東京バレエ団に入団してからは、コンテンポラリーがどんどん好きになっていったので。ただ、ベジャール作品は体力的にしんどい振付が多いので、その点は少し不安です。疲れてくると入りたいポジションに入れなくなってくるので、何度やっても正確にできるよう、練習ではひたすら回数をこなしていくんです。
 ちょうど今「小さな死」のリハーサルにも取り組んでいますが、これもすごく難しい。二人組んで踊るので難易度はぐっと上がりますし、かなりきつい体勢で動くことが多い振付なんです。


*生贄の女役デビューは、昨年5月のイタリア・カリアリ公演でしたね。

 このときは公演数が多かったので、回を重ねるにつれて慣れていく感覚がありました。
 現地のお客様がとてもあたたかかったです。何公演目かの終演後にはわざわざ楽屋まで足を運んで、「本当に素晴らしかった」と直接感想を伝えてに来てくださった方もいて。あれは嬉しかったですね。


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「春の祭典」2016年5月 イタリア・カリアリ歌劇場


*今年7月末には、モーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督ジル・ロマンさんによるリハーサル指導がありましたね。何か具体的な指示や要望はありましたか?

 カリアリ公演を迎えるにあたっては飯田宗孝先生、佐野志織先生、奈良春夏さんに教えていただいたのですが、ジルさんがリハーサル指導にいらしたことで、ニュアンスなどに多少の変化がありました。身体にしみ込んでいた解釈を新しく塗り替えていかなければならないのは大変ですが、前回とはまた違った舞台ができそうです。
 ジルさんからの要望で印象に残っているのは、「もう少し女らしく」と言われたことですね。手の甲を顔の横に置いて、恐る恐る覗くような振付があるのですが、そのときの目力が強すぎるからもう少し抑えて良いと言われました。
 ジルさんが帰られたあと、今は吉岡美佳さんが一から細かく教えてくださっています。


*最後に、公演を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします!

 今回の〈20世紀の傑作バレエ〉で上演する3作品は、明確なストーリーが展開していくクラシック・バレエ作品に比べると、どうしても難しいイメージを持たれる傾向にあると思いますが、あまり身構えずに、まずはストリートダンスを観るような感覚で、気軽に足を運んでもらえたら嬉しいです。きっと楽しめると思います!

レポート2017/08/31

【ロング・インタビュー】 エルケ・シェパース(東京バレエ団初演「小さな死」振付指導) 

(取材・文:加藤智子)


 9月8日に初日を迎える〈20世紀の傑作バレエ〉公演で、東京バレエ団はイリ・キリアン振付「小さな死」バレエ団初演にのぞむ。8月中旬に始まったリハーサルで振付指導をするエルケ・シェパース氏に、作品について、またリハーサルの様子について話を聞いた。シェパース氏はネザーランド・ダンス・シアターのダンサーとして活躍、キリアンのミューズとして数々の作品を踊り、本作の初演ダンサーでもある。


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──1991年の初演の時のエピソードを教えてください。
 この作品には6組12 人のダンサーが出演しますが、私は4番目のペアでした。作品の後半では、3組のペアの踊りが展開されますが、その最初に登場するパ・ド・ドゥを踊っています。
 キリアンは、モーツァルトの音楽にインスピレーションを得てこの作品を創りました。彼は目の前にいるダンサーにいろいろ試させながら、ダンサーとの相互作用で創作を進めますが、ダンサーにとってそれは本当に素晴らしい体験です。
 とはいっても、辛かったことも覚えています。ちょうどその頃、私はプライベートで大変な時期だったもので、自信喪失気味になっていました。けれど、結果的に私が踊ったパ・ド・ドゥは素晴らしい出来になりました。苦悩から素晴らしいものが生まれるということは、実に興味深いことだと思います。

──そのパ・ド・ドゥはガラ公演などで抜粋上演される機会も多く、印象的ですが、グループで踊る場面もとても独創的ですね。
 冒頭、男性たちはフェンシングに使われるような剣を手に登場します。剣は男性らしさのシンボル、また男性器の延長のようでもあります。その後、女性たちが大きな布を使った踊りで出てくるのですが、彼女たちには、黒のドレスを着せたトルソーと踊る"スカートの踊り"というユニークな場面があります。これにはキャスターがついていて、ちょっとユーモラスな踊りもあるんですよ。
「小さな死」のタイトルにはエロティックな意味合いもありますが、この作品自体、官能的ではあるけれど、実に純粋です。ひと言で表すなら、"解放"、といえるかもしれません。いろんなことを解放することによって、自分自身からも解放されるということを、この作品は表現していると思います。

──数々のキリアン作品のなかで、「小さな死」はどのような位置づけにあるのでしょうか。
 1990年代前半のキリアンの作風は、余計なものがどんどん取り除かれていき、よりシンプルになっていきます。"ブラック・アンド・ホワイト"の時代と呼ばれていますが、「小さな死」の振付などはシンプルというより、かなり複雑ですよね。むしろ、ひたすらエッセンスを追求していった時代といえるでしょう。

──東京バレエ団のダンサーたちの取り組みはいかがですか。
 とてもいい舞台になるでしょう。ここで何かしら"発見"を得て、それを将来に役立ててもらいたいと思って指導しています。
 指導者としていつも思うのですが、中には、昔の私のように大変な時期を過ごしているダンサーもいるかもしれません。彼らを励まし、前へと進めさせてあげるような心理的サポートをすることも、私の務めだと思っています。


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