東京バレエ団が10月に初演する勅使川原三郎振付『雲のなごり』(新作世界初演)。世界が注目する意欲作に向けて、東京バレエ団のスタジオでは着々と準備がすすんでいます。本日はある日のリハーサルの様子を加藤智子さん(フリーライター)のレポートでご紹介します。ぜひご一読ください。
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東京バレエ団による勅使川原三郎振付作品世界初演にむけて、勅使川原氏のリハーサルが進んでいる。稽古がスタートして間もない7月下旬、本作に出演するダンサーたちが取り組んでいたのは、彼のダンス・メソッドのワークショップ。その模様をレポートする。
冒頭、「では、昨日までやってきたエレメント、要素をやってください。一日一日、少しずつ積み重ねていきましょう。まずは、身体を空にして、反応するプロセスを大切にして──」と、穏やかにダンサーたちを導く勅使川原氏。ダンサーたちは、この新作のために選ばれた武満徹の音楽に耳を傾け、身体を委ねるようにして、静かに、緩やかに動き始める。
リハーサルを指導する勅使川原三郎氏(中央)
「創作における、これは初期段階ですが、僕にとってはとても大事なことで、創作の、全体の50%くらいを占める。それくらいの価値をもっていることです」と後日のインタビューで明かした勅使川原氏。「クラシック・バレエの振付は動きの組み合わせですが、私が考えている振付というのはそうではなく、動きがどのように現れてくるか、ということが大事。このとき、身体がどういう質感、状態になるか、ということがとても重要で、それによって動きの現れ方が変わってくる。音楽によっても身体の状態は変わってくるのです」。
共演のKARAS・佐東利穂子氏。動きをもって、皆を勅使川原氏の世界へといざなうかのよう。
繰り返し流される武満の音楽は、「地平線のドーリア」(1966)、「ノスタルジア」(1987)──。「音楽を聴くことによって、学ぶことができる。どうしたい、ではなく、自然に"させられる"。音楽と調和すること。音の質感を捉えて」「動きを創る、のではなく、時を待つ、風が吹いてくるのを待つようにして」──
1時間、2時間と、休憩なしに続けられるリハーサルの間、ずっと、勅使川原氏は彼らに言葉をかけ続ける。
「自然は、直線だけで出来ているわけではないでしょう。すべてには"ねじれ"がある。螺旋がある。大小さまざまなカーブがある。それが自然なんです」
秋元康臣(左)、勅使川原三郎氏(右)
ひたすら動き続ける中で、無意識の中で、ふと、何かを掴んだり、気づいたりする。そんな瞬間が、少しずつ、また確実に、重ねられているようだ。
取材・文:加藤智子(フリーライター)
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