ブログ

ブログ Blog一覧に戻る

レポート2019/08/28

勅使川原三郎振付「雲のなごり」(新作世界初演) リハーサルレポート

東京バレエ団が10月に初演する勅使川原三郎振付『雲のなごり』(新作世界初演)。世界が注目する意欲作に向けて、東京バレエ団のスタジオでは着々と準備がすすんでいます。本日はある日のリハーサルの様子を加藤智子さん(フリーライター)のレポートでご紹介します。ぜひご一読ください。

________________________________________


東京バレエ団による勅使川原三郎振付作品世界初演にむけて、勅使川原氏のリハーサルが進んでいる。稽古がスタートして間もない7月下旬、本作に出演するダンサーたちが取り組んでいたのは、彼のダンス・メソッドのワークショップ。その模様をレポートする。

冒頭、「では、昨日までやってきたエレメント、要素をやってください。一日一日、少しずつ積み重ねていきましょう。まずは、身体を空にして、反応するプロセスを大切にして──」と、穏やかにダンサーたちを導く勅使川原氏。ダンサーたちは、この新作のために選ばれた武満徹の音楽に耳を傾け、身体を委ねるようにして、静かに、緩やかに動き始める。


MAT0729_3110_photo_Shoko Matsuhashi.jpg

リハーサルを指導する勅使川原三郎氏(中央)


「創作における、これは初期段階ですが、僕にとってはとても大事なことで、創作の、全体の50%くらいを占める。それくらいの価値をもっていることです」と後日のインタビューで明かした勅使川原氏。「クラシック・バレエの振付は動きの組み合わせですが、私が考えている振付というのはそうではなく、動きがどのように現れてくるか、ということが大事。このとき、身体がどういう質感、状態になるか、ということがとても重要で、それによって動きの現れ方が変わってくる。音楽によっても身体の状態は変わってくるのです」。


MAT0729_3057_photo_Shoko Matsuhashi.jpg

共演のKARAS・佐東利穂子氏。動きをもって、皆を勅使川原氏の世界へといざなうかのよう。


繰り返し流される武満の音楽は、「地平線のドーリア」(1966)、「ノスタルジア」(1987)──。「音楽を聴くことによって、学ぶことができる。どうしたい、ではなく、自然に"させられる"。音楽と調和すること。音の質感を捉えて」「動きを創る、のではなく、時を待つ、風が吹いてくるのを待つようにして」──


dancers.jpg


1時間、2時間と、休憩なしに続けられるリハーサルの間、ずっと、勅使川原氏は彼らに言葉をかけ続ける。
「自然は、直線だけで出来ているわけではないでしょう。すべてには"ねじれ"がある。螺旋がある。大小さまざまなカーブがある。それが自然なんです」


MAT0729_3098_photo_Shoko Matsuhashi.jpg

秋元康臣(左)、勅使川原三郎氏(右)


ひたすら動き続ける中で、無意識の中で、ふと、何かを掴んだり、気づいたりする。そんな瞬間が、少しずつ、また確実に、重ねられているようだ。


取材・文:加藤智子(フリーライター)


>>>公演のホームページはこちら

カテゴリー

最近の記事

新制作「眠れる森の美女」公開リハーサル&囲み取材レポート

あと1週間ほどで、創立60周年記念シリーズの第二弾、新制作『...

クラブ・アッサンブレ会員限定イベント 「かぐや姫」スペシャル・ダンサーズトーク

2023年10月20日(金)〜22日(日)、ついに世界初演を...

「かぐや姫」第3幕 公開リハーサル レポート

 全幕世界初演までいよいよ2週間を切った「かぐや姫」。10月...

第11回めぐろバレエ祭り 現地レポート

バレエ好きにとっての夏の風物詩。今年も8月21日(月)〜27...

子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」3年目を迎えて -涌田美紀×池本祥真

見どころが凝縮され、子どもたちが楽しめるバレエ作品として人気...

ハンブルク・バレエ団 第48回〈ニジンスキー・ガラ〉に出演して ―伝田陽美&柄本弾

7月9日、ハンブルク・バレエ団による、第48回〈ニジンスキー...

東京バレエ団第35次海外公演(オーストラリア、メルボルン)「ジゼル」公演評

7月22日最終公演のカーテンコール オ...

速報!「ジゼル」開幕。各メディアで絶賛! 東京バレエ団〈第35次海外公演 ─ オーストラリア メルボルン〉

東京バレエ団はオーストラリア・バレエ団の招聘、文化庁文化芸術...

追悼ピエール・ラコット

 ロマンティック・バレエの名作「...

〈Choreographic Project 2023〉上演レポート

東京バレエ団が、コロナ禍で中断していた〈Choreograp...