レポート2021/03/09
東京バレエ団×金森穣 新作世界初演「かぐや姫」 記者会見レポート
東京バレエ団は、振付家で新潟市民芸術文化会館舞踊部門芸術監督、 Noism Company Niigata芸術監督の金森穣氏に新作の振付を委嘱、11月6日、7日にこの世界初演作品を含むミックスプログラムを上演します。新作のリハーサル初日となった3月8日、金森氏と東京バレエ団芸術監督・斎藤友佳理による記者会見を実施しました。
金森穣(左)と斎藤友佳理(右)
題材は「かぐや姫」、音楽はドビュッシー
この委嘱について、「金森さんと長く温めてきた話。夢が叶って今日、リハーサルの1日目を終えたばかりです」と斎藤。「東京バレエ団はベジャール、ノイマイヤー、キリアンと世界の巨匠にオリジナル作品を創作してもらっていましたが、日本人が世界中で活躍する今、才能豊かな日本人の振付家の方にと考え、新作をお願いして最初に上演したのは勅使川原三郎さんでした(2019年10月に『雲のなごり』を世界初演)。いっぽう金森さんのことはずっと頭の中にありました。題材は『かぐや姫』。音楽はドビュッシーです」。
斎藤友佳理(東京バレエ団芸術監督)
東京バレエ団は距離の近い舞踊団
実は、東京バレエ団は以前にもロシアの振付家アレクセイ・ワルラーモフによる『かぐや姫』を上演(1978年初演)。さらに、金森氏の師の一人であるイリ・キリアンも『輝夜姫』を振付けているとあって、不思議な繋がりを感じます。
ベジャールのスクール、ルードラで学んだ金森氏は、「東京バレエ団は日本におけるベジャールの舞踊団として、僕にとってとても距離の近い舞踊団だった。が、実際に振付の委嘱があるとは想定していなかった。今日は夢見心地でした。Noismを立ち上げて17年、外部の舞踊団にはいっさい振付をしていませんでした。それが、初めて振付ける舞踊団が東京バレエ団というのも、縁を感じます」と笑顔。新作の構想については、「Noismでいうところの"劇的舞踊"的な全幕もののストーリーバレエに。当然、東京バレエ団に振付けるわけですから、女性のポワント、男性のダイナミックな群舞を活かしたいと思っています」。
金森穣(振付家、舞踊家、Noism Company Niigata芸術監督)
届けられるメッセージは普遍的なものに
この日金森氏は、アシスタントを務める井関佐和子氏(Noism副芸術監督)とともにキャスティングのためのオーディションを行いました。「もちろん構想はありましたが、具体的な準備はないまま、その場で振付を始めました。少しだけですが、意外といいものになりました。舞踊家にとって、振付が生まれる瞬間に立ち合って覚えていくということはとても大切。出来上がったものを覚えるだけでは面白くないし、その瞬間のクリエイティビティを肌身で感じられない」。
海外で上演できる日本発信の作品をと望む斎藤に対し、「ビジュアルはじめ、世界観としてある程度"和"を取り入れるとしても、そこで語られるもの、届けられるメッセージは、普遍的なものにしたい」と金森氏も意欲的です。
11月上演するのは1幕の作品の予定ですが、「金森さんの頭の中では最後まで出来上がっている。それがどうも全3幕のようなのです(笑)。しかも1幕は、早く2幕が観たくてしょうがなくなるという状態で終わるのだそうです!」と斎藤。プロジェクトのスケールの大きさに、会場の記者たちからも一瞬どよめきが──。
この記者会見のInstagramでの生中継は、直前のお知らせにもかかわらず1800人近くの皆さまに視聴いただき、注目度の高さをスタッフたちも実感。今後の展開にどうぞご期待ください。