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HOPE JAPAN 20212021/06/30

斎藤友佳理(東京バレエ団芸術監督)インタビュー ーHOPE JAPAN 2021 プログラムについて語るー
7/3(土)に開幕する〈HOPE JAPAN 2021〉全国ツアー。今回の公演ではベジャール作品を中心とした多彩な作品をお贈りします。ツアーの開幕に先駆け、今回のプログラム構成について、芸術監督の斎藤友佳理がその想いを語りました。ぜひご一読ください。


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──〈HOPE JAPAN 2021〉の東京公演では、4つの作品で構成されるオール・ベジャール・プログラムとなりますが、どのような思いでこのような公演を企画されたか、お聞かせください。

斎藤友佳理 芸術監督に就任してもうすぐ6年になりますが、この間、たとえば、ジェローム・ロビンズ、ローラン・プティの作品、また、イリ・キリアンの『小さな死』など、これまで東京バレエ団のレパートリーになかった新しい作品に意識的に取り組んできました。同時に、東京バレエ団の既存の素晴らしいレパートリーを継続して上演していくことも重要な務めだと、強く感じていました。その一つが、東京バレエ団の宝ともいうべき、数々のベジャール作品です。そうした強い思いがあって、オリジナル作品の『サ・カブキ』、『M』、また『中国の不思議な役人』、『春の祭典』に取り組んできたのです。いずれ必ず、ベジャール作品を中心としたプログラムを組みたいと考えていたので、このタイミングで実現できて嬉しく思います。

──どのようにして作品を選ばれたのですか。

斎藤 いまの東京バレエ団のダンサーたちの美点、その持ち味をもっともよく出せるものは何か、ということをいつも重視しています。コロナ禍の中、全国の皆さんを励ましたいと、『ボレロ』を上演することにしていましたが、その他の作品で最初に思い浮かんだのは『ギリシャの踊り』です。ギリシャの青い海と空、白い砂浜のイメージが鮮烈な、美しさと清々しさにあふれた傑作です。海外公演でもよく取り上げていたのですが、しばらく上演の機会がなく、また数あるベジャール作品の中でもとりわけ明るくて朗らかなバレエですから、いまこの時期に上演するのにもっとも相応しい作品といえるのではないでしょうか。

──『舞楽』についてはいかがですか。

斎藤 私が最初にベジャールさんの作品を踊ったのは『ザ・カブキ』の顔世御前でしたが、この『舞楽』では、ベジャールさんから創作のゼロの段階から教えていただく機会を得ました。1988年に、モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)との合同公演〈パリー東京〉での初演に向けて、私と高岸直樹さんがローザンヌに出向き、BBLのダンサーたちとリハーサルをしました。真ん中の男性(火の精)はセルジュ・コンパルドン、もう一組のカップルにカタリジナ・グタニエク、ルーベン・バック、そして私と高岸さんの5人による、十数分の短い作品です。ベジャールさんの振付の過程を実際に体験できたことは、私にとってとても大切な宝になりました。更衣室でBBLのダンサーたちから、「あなたはなんて幸せなの!」「私たち、どんなに羨ましいか」と声をかけられたことを覚えています。ローザンヌでも注目されていたんだなと感じたものです。

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「舞楽」ー2007年の公演よりー

──近年、海外公演などでよく上演している『舞楽』は、〈パリー東京〉で上演された作品とはヴァージョンが異なるのですか?

斎藤 初演版のままでもとても完成度の高い作品だったのですが、ミックス・プログラムの一作品として成立させるためにはもう少し長さが必要とされ、翌年にベジャールさんが踊りを付け加えてくださいました。この時にアメフトの防具を付けた男性たちと巫女の姿の女性たちによる踊りが足され、振付も少し変えられた部分があります。この新しいヴァージョンの『舞楽』を携えて、1989年には海外ツアー、また1990年にはジョルジュ・ドンさんが主演する『ボレロ』を中心としたプログラムで全国ツアーを実施しています。私もその新しい『舞楽』を踊っていましたが、踊りながら、私は〈パリー東京〉で上演した、よりシンプルな、コアの部分のみの『舞楽』のほうが、ベジャールさんの振付の魅力、その本質がダイレクトに伝わるのではないかと感じてもいたのです。

──今回、その1988年の初演版が復活するというわけですね。

斎藤 難しいだろうなと思いつつ、ローザンヌのジル・ロマンさん(モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督、モーリス・ベジャール財団理事長)に初演版の復活上演を申し出たところ、ご快諾くださったのです! 「やるなら今!」という思いもありました。主役(火の精)の指導については、この役をずっと踊ってこられた(東京バレエ団団長)飯田宗孝先生にお願いし、また初演からずっとペアを組んでいた高岸さんにも協力してもらいました。短い作品ではありますが、初演当時の趣を、できるだけ保ったままお伝えできたらと思っています。

──『ロミオとジュリエット』については、どんな思いで上演を決められたのですか。

斎藤 もう一つ、何かそこにロマンティックなものが必要だと考えました。実は私、ロシアでカーチャ(エカテリーナ・マクシーモワ=故人。ボリショイ・バレエの大スターであり、ロシアでの斎藤の教師の一人)とワロージャ(同じくボリショイ・バレエの大スター。マクシーモアの夫で、東京バレエ団では『ドン・キホーテ』を振付けている)が、この『ロミオとジュリエット』を踊っているのを何度も観ているんです! その頃からずっとこの作品に惹かれていたので、この機会にぜひ挑戦したいと思いました。

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ベジャール振付「ロミオとジュリエット」リハーサルより。足立真里亜と秋元康臣

──リハーサルを指導されているのは──。

斎藤 バレエ・ミストレスの佐野志織先生にお願いしていますが、1983年のバレエ団初演を踊った栗橋桂子さん、長瀬信夫さんにアドバイスをいただきながらリハーサルを進めています。戦争や分断といった難しい状況の中で愛し合う若いカップルのパ・ド・ドゥですから、これもいまこそ上演すべき作品の一つではないかと思います。

──東京以外の都市では、『ギリシャの踊り』『ボレロ』に『パキータ』を加えたトリプル・ビルを予定されています。

斎藤 2つのベジャール作品の間にクラシックの作品を入れることで、全国の皆さんに東京バレエ団ならではの持ち味を楽しんでいただけるのではないかと考えました。華やかかつ、親しみやすい古典の傑作ですので、ぜひ多くのお客さまに喜んでいただきたいと思い、稽古を重ねています。

不安の多いこの時期での全国ツアーとなりますが、さまざまな感染防止対策を講じての実施となります。劇場でのひと時を、存分にお楽しみいただけたら嬉しく思います。


取材・文:加藤智子(フリーライター)

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