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ロングインタビュー2021/09/17

東京バレエ団「海賊」 ー上野水香インタビュー
シリーズでお送りしている東京バレエ団「海賊」メインにキャストへのインタビュー。続いては上野水香のインタビューをお贈りします。2019年の初演時にも大輪の花のようなメドーラを演じ、高評を博した上野。あれから2年たち、様々な役を経験した今、改めて本作に挑戦する意気込みを語りました。ぜひご一読ください。

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「海賊」初演の舞台より。アリ役の宮川新大と

──2回目のメドーラ役となりますね。

上野水香 実はとてもハードな役柄なんです。舞台に出ているか着替えているかのどちらかで、おまけにバレエダンサーにとって一番難しいテクニックが集結しているような役。いろんな意味できついのですが、なのにすごく楽しかったという記憶が強くあります。こうした作品はどうしても力が入ってしまいがち。ジャンプが多くて大変な踊りだから頑張ろう!と気合いばかりが先走ってしまうものなのですが、今回は、気合いは残しつつもナチュラルに、ちょっとどこか、いい意味で抜けた感じが加わると、もっと伝わりやすくなって、説得力も増すのではないかな、と思っています。

 

──メドーラという役柄についてはどのような印象を抱いていましたか。

上野 彼女の運命ってすごく厳しいものだけれど、奴隷として生きていく中でも輝いていられる、有り余るほどの魅力と強さがある。時には仲間を守ろうとする姉御肌の面がありますが、でも、それでいっぱいいっぱいになって自分勝手になって、恋人とその友人との関係にヒビを入れてしまっていることには気付いていない(笑)。そういう真っ直ぐなところに共鳴する部分はありますね。ABTの舞台映像に残されているジュリー・ケントさんの表現がとても素敵で、何があってもひたすら笑顔で乗り切る、芯の強い女性を表現したいですね。

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「海賊」第2幕より。コンラッド役の柄本弾と

──前回のアンナ=マリー・ホームズさんのリハーサルで印象に残ったことは?

上野 この作品は隅から隅まで楽しさにあふれているので、皆が楽しんでくれたらそれが成功につながるんだと言ってくださったことですね。実際、あれだけきつい踊りでも演じていて本当に楽しかったし、だからこそお客さまが喜んでくださったのかなと思いました。テクニック的な点では、私の回転の弱点を指摘してくださって、改善することができた。その時のことは今も身体に残っているので、とてもいい経験になりました。

 

──ご自身の出番の中で一番の見どころは?

上野 そうですね......。そう、全部です(笑)。作品としての見せ場はやはり、あのパ・ド・トロワから寝室のパ・ド・ドゥへと続いていく第2幕だと思います。そこに山場をもっていくための第1幕、というのもしっかり演じたいし、個人的には第3幕の花園が大好き。女の子なら誰もが憧れる世界ですよね。こういった場面が似合うとよく言われるので、そこはとくに、皆さんに喜んでいただけたらと思っています。

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「海賊」第3幕、"花園"の場面。中央は上野水香


──『カルメン』の再演で大きな手応えを感じられたり、〈HOPE JAPAN〉ツアーでは各地で『ボレロ』を踊ったりと、今年も様々な経験を重ねています。

上野 いろいろと経験を重ねたからこそ、いい意味で力が抜けて、無駄が削がれていくように思います。舞台の上で気張りすぎてしまったら、ご覧になっているお客さまも一緒に力が入ってしまったり緊張してしまったりで、心地よく観ることができませんよね。そうではなく、素直にその世界を楽しんでいただけるような舞台をお届けしたい。もちろん、テクニックもしっかり追求したうえで。それはクラシックの作品を踊っていくうえでの今後の課題と思いますし、そう感じることこそキャリアを重ねたということなのかなって思います。そういう意味では、きっと前回よりいい舞台になると思いますし、とにかく楽しくて素敵!という空気感が出すことができればいいですね。

東京バレエ団のダンサーは粒揃いですし、皆、舞台が大好きでバレエが大好きで、すごくひたむきに取り組んでいます。そのひたむきさが作品の魅力をより浮き立たせると思いますし、皆それぞれ技術的にも充実しているので、『海賊』という作品は今の東京バレエ団にぴったりだと思います。

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※9/26[日]の上野主演日には、長野由紀氏(舞踊評論家)によるプレトーク、さらに終演後には舞台監督の解説のもと、舞台の機構や装置のヒミツをご覧いただける特別企画も!詳しくは>>>


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