──ついにホームズ版『海賊』の再演です。初演の時の手応えはいかがでしたか。
柄本 弾 終始盛り上がる作品ですよね。派手なテクニックが注目されがちですが、他の作品でも常にパ・ド・ドゥを自分の見せ場にもっていくことが多い僕としては、第2幕の「寝室のパ・ド・ドゥ」が自身のいちばんの見せ場ではないかなと思っています。リフトの多い、しっとりとした場面です。
「海賊」第2幕、寝室のパ・ド・ドゥより。メドーラ役は上野水香
──前回は主役のコンラッド役、今回はそれに加えてランケデムも演じます。
柄本 ランケデムは、初演の時からぜひ挑戦したいと思っていた役柄。どの作品においてもより個性の強い役を演じたいという思いが強く、例えば、『くるみ割り人形』のドロッセルマイヤー、『白鳥の湖』のロットバルト、『ジゼル』のヒラリオンなどは、主役ではないけれど、本当に演じがいのある役だと思います。『海賊』の中では、僕はとくにランケデムに憧れていたので、今回はすごく楽しみですね。
──奴隷商人ランケデムはどんなキャラクターと捉えていますか。
柄本 わかりやすい悪者、です。コンラッドの手下として登場するビルバントのほうは、ストーリーが展開する中で「実は悪者だった!?」と判明するわけですが、ランケデムはもっとわかりやすく、最初からコンラッドの敵として登場します。でも、海賊たちが襲ってきたらすぐに負けちゃうという、どこか憎めない要素もある。第2幕以降はほとんど出番がないにもかかわらず、重要なポイントで出てくるキャラクターだけに、ストーリー性を深める重要な役割を担っています。やりがいがありますね。
僕の演技は基本的に「素」です。あまり作り込まず、その場の雰囲気で出していくほうだし、もともと僕は三枚目的なポジションなので、悪者だったり、おちゃらけに片足を突っ込んでいたりするほうが、より「素」で演じることができる。その点でも、ランケデムはナチュラルに入っていけそうです。
──ランケデムの一番の見せ場をあげるとすると?
柄本 奴隷商人として、オダリスクたち、ギュルナーラ、それからメドーラをパシャに売りつける場面です。ここでのランケデムのマイムは、いかにコンラッドをむかつかせるかがポイントになる(笑)。マイムなのでやることは決まっているけれど、より自然に、より説得力のある場面にすることで、全体のドラマがより生き生きとしてくるはずなんです。
「海賊」第1幕より。メドーラを初めてみたパシャはそのあまりの美しさに驚き、腰をぬかしてしまいます。写真はコンラッド(柄本弾)、アリ(宮川新大)、ランケデム(池本祥真)、メドーラ(上野水香)、そしてパシャ(木村和夫)
──コンラッド役では、東京バレエ団のリーダー的存在の柄本さんの姿が重なります。
柄本 海賊たちのリーダーですから、現実の僕のポジションと近いところはあるとは思うけれど、少し、違います。コンラッドは男気がありすぎて(笑)、皆にその背中を見せて突っ走っていくタイプ。僕がそれをやっても、皆との距離はどんどん離れてしまうだけですし、むしろ僕は一緒に進んだり、後ろから押したり、たまには一緒にくだらない話ができる関係でいたいと思っているんです。
──それでは、今回の『海賊』公演の見どころを教えてください。
柄本 僕が出演する2組の日程は、どちらも初演を経験したダンサーが中心ですが、秋山瑛と宮川新大の日だけは主要メンバーがすべて初役というフレッシュなキャストです。きっとフレッシュならではの舞台が期待できると思いますが、僕ら2度目のキャストの日も、前回の舞台で経験したことを活かした、充実の舞台をお届けできるはず。『海賊』はとくに、ダンサーたちが個性を爆発させる作品だと思うので、キャストごとに全く違った舞台が繰り広げられると思います。僕の個性もきっと爆発しますので(笑)、ぜひ、何度も足を運んでいただけたらと思っています。
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