──前回同様、アリとランケデムの2役を演じます。
池本祥真 そうですね。性格の異なる2つの役をうまく演じ分けたいと考えて取り組んでいました。
アリは、どちらかというとストイックなイメージ。奴隷として主人に仕え、あまり感情を表に出さない、キリっと端正な。それに対して奴隷商人のランケデムは、がらりとイメージを変えて、より軽薄な感じに捉えていました。人によって演じ方は異なると思いますが、軽薄で、ちょっとだらしなくて、ちゃらんぽらんで、お金に対する執着が強くて──。演劇的ではあるけれど、特別に深みのある人物というわけではないけれど、そこに僕なりに深みを持たせられたらという気持ちがありました。主役のコンラッドに対するヒール役というのも楽しく演じることができました。
「海賊」2019年の舞台より。中央の赤いパンツが池本演じるランケデム
──アリ役は東京バレエ団入団以前にも経験しています。
池本 自分なりの表現を追求したいですね。アリといえば、第2幕のパ・ド・トロワが最大の、というか唯一の見せ場です。歴史を遡ると、このアリの踊りはチャブキアーニが男性ダンサーとしての見せ場を作るために加えた、と聞ききます。それだけに、演技というよりもとにかく踊りが大事。なので、これまでやってきた踊りの精度を上げていったり、できなかったことへのチャレンジを盛り込んでいったりしたいと思っています。その点では、前回とはまた違うアリをお見せできたら。
他の場面でのアリは決して出しゃばる存在ではないけれど、でも登場するたびに、コンラッドの奴隷としての存在、その関係性を明確に表すことができたらと思うんです。パ・ド・トロワのアダージオにも絡んでいきますが、そこでもコンラッドとの関係性がわかるように作っていけたらと思います。
2019年、初演時のリハーサルより。
──コンラッド役は前回同様、秋元康臣さんです。
池本 そうなんです、おみさん(秋元康臣)にはよく仕えています(笑)。実は、僕の東京バレエ団デビューは2018年4月の『真夏の夜の夢』のパックでしたが、この時のご主人=オベロンがおみさんでした。
──万全の主従関係が展開されますね(笑)。
池本 そうかと思えば、ランケデム役で出演する日は、メドーラが秋山瑛ちゃん、コンラッドが宮川新大くん、アリが生方隆之介くん、一緒にパ・ド・ドゥを踊るギュルナーラが中川美雪さんと、僕以外全員初役なんです。ビルバントの井福俊太郎くんは2回目ですが、再演ながらかなりフレッシュな組になります。各組とも、演技についてはかなり自由にやらせてもらっているので、それぞれ個性ある舞台になるはずです。もちろん、リハーサルの中で「そこは違う」と修正されるところもあるけれど、基本的には、音を聞いて、気持ちのいいところを出して、他の人と絡んで、というように組み立てています。
──そんな東京バレエ団の『海賊』の魅力は?
池本 東京バレエ団というよりも、キャストごとの個性が光る舞台になることかなって思います。しかもレベルの高いダンサーが揃っている! あ、自分は置いといてですけど(笑)。いま、すごくいいと思うんです。
あとはこのヴァージョンの面白さですね。皆、口を揃えて言っているのではないかと思いますが、小さい頃からABTの舞台映像を見て憧れてきた作品です。それを日本の僕らが上演できるというのは、バレエの歴史の中の一部になれているような気がしますよね。もちろん、オリジナルを踊ることも素晴らしいことだけれど、マラーホフさんが踊った役を僕もできるんだとか、世界中で上演されている名ヴァージョンをここで上演することができるんだと考えると、ダンサー冥利に尽きます。必ず、楽しい舞台になると思います。
2019年、初演時のリハーサルより
ボリショイ劇場の前で。柄本弾、秋山瑛、宮川新大審査委員を務...
今週金曜日から後半の公演が始まる「ロミオとジュリエット」は、...
新緑がまぶしい連休明け、東京バレエ団では5月24日から開演す...
あと1週間ほどで、創立60周年記念シリーズの第二弾、新制作『...
2023年10月20日(金)〜22日(日)、ついに世界初演を...
全幕世界初演までいよいよ2週間を切った「かぐや姫」。10月...
バレエ好きにとっての夏の風物詩。今年も8月21日(月)〜27...
見どころが凝縮され、子どもたちが楽しめるバレエ作品として人気...
7月9日、ハンブルク・バレエ団による、第48回〈ニジンスキー...
7月22日最終公演のカーテンコール オ...