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ロングインタビュー2021/09/21

東京バレエ団「海賊」 ー池本祥真インタビュー
シリーズでお贈りしている東京バレエ団「海賊」、メインキャストへのインタビュー。最終回は初演に続きアリ役、ランケデム役の2役に挑戦する池本祥真の登場です。自身の考えるキャラクター像、そして作品の魅力についてたっぷりと語っています。ぜひご一読ください!

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8月の〈横浜ベイサイドバレエ〉でも喝采をあびたアリ役を今度は全幕で披露

──前回同様、アリとランケデムの2役を演じます。

池本祥真 そうですね。性格の異なる2つの役をうまく演じ分けたいと考えて取り組んでいました。
アリは、どちらかというとストイックなイメージ。奴隷として主人に仕え、あまり感情を表に出さない、キリっと端正な。それに対して奴隷商人のランケデムは、がらりとイメージを変えて、より軽薄な感じに捉えていました。人によって演じ方は異なると思いますが、軽薄で、ちょっとだらしなくて、ちゃらんぽらんで、お金に対する執着が強くて──。演劇的ではあるけれど、特別に深みのある人物というわけではないけれど、そこに僕なりに深みを持たせられたらという気持ちがありました。主役のコンラッドに対するヒール役というのも楽しく演じることができました。

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「海賊」2019年の舞台より。中央の赤いパンツが池本演じるランケデム

──アリ役は東京バレエ団入団以前にも経験しています。

池本 自分なりの表現を追求したいですね。アリといえば、第2幕のパ・ド・トロワが最大の、というか唯一の見せ場です。歴史を遡ると、このアリの踊りはチャブキアーニが男性ダンサーとしての見せ場を作るために加えた、と聞ききます。それだけに、演技というよりもとにかく踊りが大事。なので、これまでやってきた踊りの精度を上げていったり、できなかったことへのチャレンジを盛り込んでいったりしたいと思っています。その点では、前回とはまた違うアリをお見せできたら。

他の場面でのアリは決して出しゃばる存在ではないけれど、でも登場するたびに、コンラッドの奴隷としての存在、その関係性を明確に表すことができたらと思うんです。パ・ド・トロワのアダージオにも絡んでいきますが、そこでもコンラッドとの関係性がわかるように作っていけたらと思います。

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2019年、初演時のリハーサルより。

──コンラッド役は前回同様、秋元康臣さんです。

池本 そうなんです、おみさん(秋元康臣)にはよく仕えています(笑)。実は、僕の東京バレエ団デビューは20184月の『真夏の夜の夢』のパックでしたが、この時のご主人=オベロンがおみさんでした。


──万全の主従関係が展開されますね(笑)。

池本 そうかと思えば、ランケデム役で出演する日は、メドーラが秋山瑛ちゃん、コンラッドが宮川新大くん、アリが生方隆之介くん、一緒にパ・ド・ドゥを踊るギュルナーラが中川美雪さんと、僕以外全員初役なんです。ビルバントの井福俊太郎くんは2回目ですが、再演ながらかなりフレッシュな組になります。各組とも、演技についてはかなり自由にやらせてもらっているので、それぞれ個性ある舞台になるはずです。もちろん、リハーサルの中で「そこは違う」と修正されるところもあるけれど、基本的には、音を聞いて、気持ちのいいところを出して、他の人と絡んで、というように組み立てています。


──そんな東京バレエ団の『海賊』の魅力は?

池本 東京バレエ団というよりも、キャストごとの個性が光る舞台になることかなって思います。しかもレベルの高いダンサーが揃っている! あ、自分は置いといてですけど(笑)。いま、すごくいいと思うんです。

あとはこのヴァージョンの面白さですね。皆、口を揃えて言っているのではないかと思いますが、小さい頃からABTの舞台映像を見て憧れてきた作品です。それを日本の僕らが上演できるというのは、バレエの歴史の中の一部になれているような気がしますよね。もちろん、オリジナルを踊ることも素晴らしいことだけれど、マラーホフさんが踊った役を僕もできるんだとか、世界中で上演されている名ヴァージョンをここで上演することができるんだと考えると、ダンサー冥利に尽きます。必ず、楽しい舞台になると思います。

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2019年、初演時のリハーサルより

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