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2024/08/25

斎藤友佳理が語る、〈ダイヤモンド・セレブレーション〉上演によせて
東京バレエ団創立60周年記念公演〈ダイヤモンド・セレブレーション〉まであと1週間となりました。この週末も〈めぐろバレエ祭り〉の公演・イベントと並行し、スタジオでは連日熱いリハーサルが行われています。公演を目前に、斎藤友佳理(東京バレエ団芸術監督)が公演にかける想いを語ったスペシャル・インタビューをお贈りします。ぜひご一読ください。

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斎藤友佳理

東京バレエ団 60周年祝祭ガラ〈ダイヤモンド・セレブレーション〉で上演される7作品は、世界的なバレエ団の輝かしい軌跡が詰まった豪華ラインアップであると同時に、芸術監督・斎藤友佳理のバレエ人生における「コアな部分」を併せ持つ作品群である。

斎藤は2015年、芸術監督に就くとレパートリーの幅を広げ、公演数も増加させるなど東京バレエ団をより一層発展させている。そうした中でも「できる限り海外ゲストを呼ばず、東京バレエ団のダンサーだけで公演が成り立つようにするのが一番の目標でした。それがあったからコロナ禍を乗り越えられました」と自負する。そして、そこを踏まえ「私にとっての(ダイヤモンド・セレブレーション〉は、創立50周年からの約10年間をともにしてきたダンサーたちで成り立たせたいという思いが強かった」と明かす。

3部構成の第1部は、ハラルド・ランダー振付『エチュード』(東京バレエ団初演:1977年)で、バレエのレッスンを主題に華麗な見せ場が続く。前回2016年の上演を含め近年は海外からのゲストを招いていただけに「東京バレエ団のダンサーだけでレベルの高いものを」という願いが実現する。「今だと思えたのは、秋山瑛、宮川新大、池本祥真、秋元康臣たちがいるから。それから個性豊かなソリスト、コール・ド・バレエも力強い」と手ごたえを感じている。

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3部はモーリス・ベジャール振付『ボレロ』(東京バレエ団初演:1982年)。主演のメロディは紫綬褒章を受章するなど円熟の境地にある上野水香(ゲスト・プリンシパル)だ。「上野の10年前と今の『ボレロ』では質が違うのを感じます。ここで彼女が『ボレロ』を踊るのは自然な流れ。上野の『ボレロ』で締めたい」と全幅の信頼を置く。

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『エチュード』と『ボレロ』の間の第2部では、小品や全幕作品からの抜粋を披露する。ベジャール振付『バクチ』(東京バレエ団初演:2000年)※9/1()上演は、インドのシヴァ神とその妻シャクティが神秘的に舞う。自身がカンパニー初演時に世界初演者メイナ・ギールグッドの指導を受けた。今回は伝田陽美の存在ありきで選んだと明言する。「私の身体能力では表現しきれなかった、自分がここまで行きたかったという理想をやってくれる。伝田の良さを一番魅せられる作品。柄本と一緒にハンブルク・バレエ団の〈ニジンスキー・ガラ〉に出るという誇らしい経験をへて、自信もついたと思います。旬の輝きをぜひ観ていただきたい」と飛躍を喜ぶ。

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イリ・キリアン振付『ドリームタイム』(東京バレエ団初演:2000年)は、武満徹の音楽にのせて繰り広げられる夢幻的な美の宇宙。斎藤が初めて踊ったキリアン作品ということもあり、思い入れひとしおだ。「装置と照明と空間が大好き。まさにダイヤモンドのような作品なのに、長い間上演されなくなっていました。芸術監督になってまず最初に取り組んだキリアン作品で、イタリア公演でも一番評判になりました」とうれしそうにほほ笑む。

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ジョン・ノイマイヤー振付『スプリング・アンド・フォール』よりパ・ド・ドゥ(東京バレエ団初演:2000年)※9/1()上演は、詩情豊かな名品で、斎藤がカンパニー初演を果たした。芸術監督就任前のラコット版『ラ・シルフィード』の振付指導以来の師弟関係で「なくてはならない存在」である沖香菜子と、今春退団したが「一緒に汗水を流して苦楽をともにしてきた仲間」である秋元(ゲスト)が踊る。「沖と秋元が最初に踊ったのがこの作品なので、今回二人に踊ってもらいたいという気持ちが強くありました」と語る。

18-1201matinee_Spring and Fall_Kanako Oki_Yasuomi Akimoto_2C8A2133_photo_Kiyonori Hasegawa.jpg金森穣の『かぐや姫』よりパ・ド・ドゥ(東京バレエ団初演:2023年)※8/31(土)上演も注目される。全3幕の大作の創作を「大きなチャレンジでした。日本人の振付家で作品を創ることも目標でした」と振り返る。今回は秋山と柄本が本年6月、モスクワにおけるブノワ舞踊賞2024 ガラ・コンサートの際、ボリショイ劇場で踊った版を披露。「一つの完成させたパ・ド・ドゥとして残すことも考えていたので穣さんに相談し、60周年祝祭ガラや秋にイタリアで上演することも理解してくださいました。全幕とは違うコンサート用のパ・ド・ドゥです」と紹介した。

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怪我による出演者・演目変更に伴い、ジョン・クランコ振付『ロミオとジュリエット』よりパ・ド・ドゥ(東京バレエ団初演:2022年)8/31(土)上演が加わった。斎藤が主演したクランコの『オネーギン』は歴史に残る名舞台だったのは記憶に新しい。「ダンサーたちにはドラマのある作品を踊り、役者になってほしい。私にとってのコアな部分であるクランコを入れることにしました。足立真里亜と池本は全幕の舞台が評価され、すぐにクランコ財団から上演の許可がおりました」と期待を寄せる。

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時点での「一つの集大成」と位置付ける。「常日頃からダンサーたちの成長を願っています。無限大の可能性を持つことを忘れないでほしい。〈ダイヤモンド・セレブレーション〉を経て、さらにどう大きくなっていくのかが一番大切。今までやってきたことを存分に発揮して、将来につなげてほしい」と願う。終始ダンサーたちを慈しむ姿が印象的だった。


写真:長谷川清徳、松橋晶子

取材・文:高橋森彦(舞台評論家)





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