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海外ツアーレポート2024/11/22

第36次海外公演 イタリアツアー便り2 ──カリアリからバーリへ

東京バレエ団のイタリアツアーに通訳、コーディネーターとして同行している、オペラ演出家の田口道子さんのツアーレポート第2弾をお届けします。


カリアリ最終公演は満員御礼! いっぽうイタリア本土の天気大荒れにつき、緊急事態が...。

 11月17日東京バレエ団はサルデーニャ島カリアリで無事に7回の公演を終えた。
初日はオペラの通しチケットの観客ということで幾分空席があったものの日を追うごとに観客が増して、日曜日の最終公演は完売の盛況となった。休憩中に客席を回って観客の反応を試してみると、いきなり「ブラーヴォ、ブラーヴォ」と私まで握手を求められて、誇り高い気持ちで楽屋に戻った。

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photo: Marco Ciampelli

 舞台は順調に終えたものの裏では大きな問題が起こっていた。サルデーニャから次の公演地バーリまで舞台道具や衣裳などすべては12mの大型トラックに載せてフェリーでイタリア本土ローマ近港チヴィタヴェッキアに輸送される。港は地中海側なのでアドリア海側のバーリまでイタリア半島の南を横断しなければならないのだ。最終公演日17日の午後には本土から迎えのトラックが到着し、公演後すぐに装置や衣裳などを積み込むことになっていた。ところが、トラックがフェリーに乗る予定の16日夜、本土リヴォルノ港の海は強風で大荒れになり、船が出港できなくなっていた。輸送会社の責任者は急遽ナポリから飛行機でカリアリに説明にきたものの、天候の問題では我々はどうすることもできない。しかもスタッフ全員翌朝の飛行機でバーリに向かわなければならないのでトラックへの積み込みは劇場のスタッフに任せることにせざるをえなくなった。何枚も道具やケースの写真を撮り、間違いのないようにスタッフが写真を共有して全員カリアリを出発することにした。

 カリアリは真っ青な秋空と気温22度、毎日晴天に恵まれていたが、シチリア島では大雨の被害があったり、北イタリアは数年ぶりに濃霧が発生したり、海が大荒れだったりとカリアリでは想像できない天候が続いていたことを思うと、本当に幸運な10日間だった。

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 斎藤友佳理団長は「8年前にカリアリに来たときは、〈スプリング・アンド・フォール〉〈ドリーム・タイム〉〈春の祭典〉という演目でしたけれど、私は芸術監督になったばかりの時で緊張していたこともあって、あまり観客の興奮が伝わってこなかった印象を持ちました。でも今回は劇場のスタッフの皆さん、オーケストラの皆さん、観客の皆さんとダンサーたちが一つに結び付いた公演になったことが強く感じられました。日本のスタッフの皆さんとこちらの劇場の皆さんが心を繋げてより良い公演にしようとしている様子を見て、(バレエ団創設者の)佐々木忠次さんが素晴らしい宝物を残してくださったのだと改めて思いました。そして佐々木さんの意思を次の世代に伝えていかなければと思いました。団員が世代交代して新しくなっても東京バレエ団は受け継がれながら成長していかなければなりません。」と新たな決意を語った。

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photo: Marco Ciampelli

 翌朝は午前6時半にホテルを出て空港へと向かう予定だった。バスの1号車は時間通りに出発したのだが、2号車はホテル前に止まったまま動かないという緊急事態が発生した。 (続く)

田口道子(オペラ演出家)
                                  

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 東京バレエ団〈第36次海外公演─イタリア〉は、「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流))|独立行政法人日本芸術文化振興会」の助成を受け、株式会社木下グループの支援のもと、イタリアの4都市を約1か月の旅程で巡り、合計13回の公演を行います。このツアー全体が終わった時点で、東京バレエ団の海外公演は33か国158都市、通算799回の公演を達成することになります。


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