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海外ツアーレポート2024/11/26

第36次海外公演 イタリアツアー便り3 ──バーリ
東京バレエ団のイタリアツアーに通訳、コーディネーターとして同行している、オペラ演出家の田口道子さんのツアーレポート第3弾をお届けします。


麗しきバーリのペトゥルッツェッリ劇場4公演はソールドアウト。「夢のような舞台」と、訪日経験のある観客。

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開演前。赤と金の内観が豪奢なペトゥルッツェッリ劇場 photo: Clarissa Lapolla


 11月18日、まだ日の出前の午前6時30分にカリアリのホテルから空港に向かったバスの1号車に、2号車から連絡が入ったのは出発して間もなくだった。急な故障で空港まで走れそうもないというのだ。早朝ということもあって急遽新しいバスを手配することはできず、結局1号車が空港で我々を降ろしてからホテルへ戻ることになった。輸送トラックの件でさんざん心配させられた挙句、バスまでが故障するとは! ホテルから空港までは約10㎞、20分足らずの距離であることは幸いだった。フライトの出発時間にはなんとか間に合って、午前11時、東京バレエ団一行は無事に次の公演地バーリに到着した。

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アドリア海を背景に記念撮影 photo: NBS


 アドリア海に面したプーリア地方の中心地バーリにあるペトゥルッツェッリ歌劇場はイタリアの歌劇場の中で4番目の大きさを誇る由緒ある劇場だ。1898年にバーリの商人ペトゥルッツェッリが私財を投入して建立し、1903年に完成した伝統的な馬蹄形の客席を持つ劇場は6階まであり、建立当時は2192席を有していた。絢爛豪華なフレスコ画と純金で飾られたフォワイエは重要文化財として、第二次世界大戦時の爆撃を免れた。1991年に火災で舞台から客席まで火が回ったが、客席上の丸天井が落ちたために奇跡的に火が消え、フォワイエは救われたそうだ。倉庫から出た日は放火であると判明したため、検証や調査に多大な時間がかかり改築、修復された劇場が再オープンしたのは18年後の2009年だった。

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ペトゥルッツェッリ劇場のフォワイエ photo: NBS


 バーリの演目は〈ドリーム・タイム〉〈ロミオとジュリエット〉〈春の祭典〉だ。最初の2作品はカリアリのプログラムにはなかったので、幸いなことに舞台装置は東京から直接バーリに送られてきていたため一部の仕込みは始めることはできたものの、カリアリからのトラックを待たなければ仕上がらない。早ければ午後3時から5時の間にトラックが到着すると言われていたのだが、450㎞の距離を走り12mの大型トラックが到着したのは午後8時近かった。屈強な荷下ろし業者に日本人スタッフも加わって搬入が行われ、午後10時の終業時間ぎりぎりに作業が完了した。

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公演を知らせるポスターサイネージに「TUTTO ESAURITO」(完売)の文字が。


 輸送の問題はすべて解決し、翌朝から本格的な仕込みが始まった。ダンサーたちは稽古場から劇場に移動して舞台上でクラスとリハーサルをして翌日の初日に向けて準備を再開した。イタリアの伝統的な劇場の舞台は3%から5%の傾斜があるため、フラットの舞台に慣れているダンサーにとっては微妙な調整が必要なのだろう(ちなみにこの劇場は3%)。

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舞台上でのクラス photo: NBS


 翌21日、いよいよバーリでの初日が開いた。プラテア(1階の平土間席)はいかにもセレブ風のご夫妻が多かったが、パルコ席(ボックス席)は若い観客も多数入っていた。最近は日本を旅行で訪れるイタリア人が多いが、ここでもこの夏日本に行ったという人が話しかけてきた。「〈ドリーム・タイム〉は本当に夢のような美しさでした。武満徹の音楽に日本を感じて懐かしさがこみ上げてきました」と喜んでいた。終演後、劇場近くのレストランでも「素晴らしい公演でした」と声をかけられた。24日までの4公演はすでにチケットはすべて売り切れている。この先、ボローニャもリミニもチケットの入手は難しい状況だ。

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「ドリーム・タイム」より photo: NBS


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カーテンコール photo: Clarissa Lapolla




田口道子(オペラ演出家)


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東京バレエ団〈第36次海外公演─イタリア〉は、「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流))|独立行政法人日本芸術文化振興会」の助成を受け、株式会社木下グループの支援のもと、イタリアの4都市を約1か月の旅程で巡り、合計13回の公演を行います。このツアー全体が終わった時点で、東京バレエ団の海外公演は33か国158都市、通算799回の公演を達成することになります。




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