海外ツアーレポート2024/11/15
東京バレエ団〈第36次海外公演 ─ イタリア〉 初日公演がカリアリで開幕!
「名門バレエ団が8年ぶりにカリアリに戻る」「60周年を迎えた東京バレエ団の3演目に喝采」
今月初旬に〈第36次海外公演─イタリア〉に出発した東京バレエ団は、11月12日、ツアー初日の幕を最初の公演地サルデーニャ島のカリアリ歌劇場において、マカロワ版「ラ・バヤデール」"影の王国"、キリアン振付「小さな死」、ベジャール振付「春の祭典」の3演目で開けました。
東京バレエ団のカリアリ歌劇場への出演は、1986年と2016年の2度のツアーで併せて9公演の実績があり、公演前には現地のプレスが「名門バレエ団が8年ぶりにカリアリに戻ってくる」(Rai News)、「カリアリ歌劇場シーズンの待望第2弾は、現代振付の上演について最も優れた伝統を持つ東京バレエ団による、偉大なコンテンポラリー・ダンスの再来」(Caligari post)などと紹介。また11月14日にAnsa通信に掲載された初日評では「60周年を迎えた東京バレエ団の3演目に拍手喝采」「ポール・マーフィー指揮のオーケストラの音色にのせて、日本の有名なバレエ団が偉大な巨匠たちの作品とともに感動に満ちた一夜を演出した」と称賛されました。
カリアリ公演で特筆すべきは、マゼール、クライバー、ムーティ、ロストロポーヴィチ等、錚々たる指揮者や歌手たちと共演を重ねた歴史を持つ、歌劇場専属オーケストラによる生演奏であること。今回指揮をしたポール・マーフィーは、東京バレエ団とは2019年のミラノ・スカラ座公演(第34次海外公演)以来の共演です。東京バレエ団は「春の祭典」を有名オーケストラと共演した経験がたびたびありますが、「小さな死」をオーケストラ演奏で踊ったのはこのたびが初めてです。
「ラ・バヤデール」"影の王国"のバレエ曲だけでなく、ストラヴィンスキーの変拍子と不協和音が荒れ狂う「春の祭典」の迫力や、「小さな死」で使われるモーツァルトのピアノ協奏曲第23番と第21番の緩徐楽章の美しさが舞踊と一体化した舞台に、客席は大いに沸きました。
初日に先駆けて元モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督のジル・ロマンが「春の祭典」の総仕上げのため、10月東京でのリハーサルにつづいてカリアリで合流。
また、このカリアリ公演中に、「ラ・バヤデール」のソロル役として生方隆之介が、2日目のニキヤ役として金子仁美が、そして「春の祭典」の生贄役で榊優美枝と大塚卓がデビュー。その他、多くのダンサーたちが初めての役を務める機会となりました。
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東京バレエ団イタリア・ツアー便り ──カリアリ初日編
田口道子(オペラ演出家)
2019年以来5年ぶりになる東京バレエ団のイタリア・ツアーが始まった。
11月9日に最初の公演地サルデーニャ島のカリアリに無事到着したバレエ団は8年ぶりとなるカリアリの歌劇場での公演に向けて到着翌日から準備を始めた。8年前の公演を覚えている観客も多く、12日の初日から17日の最終公演までの6日間に7公演が行われる。
地中海に浮かぶサルデーニャ島は温暖な気候だ。青空に太陽が輝き気温も22度を超えていて心地良い。10日は稽古場でのリハーサル、11日からは舞台上でのリハーサルが始まった。
12日は本番初日の前に公開ゲネプロが行われ、現地の高校生とバレエ学校の生徒が劇場から招待されて見学した。ゲネプロとはいえ、本番と同じ緊張感みなぎる舞台を見た生徒たちは最初の演目『影の王国』の始まりの場面の美しさに魅了され、その後も場面ごとに盛大な拍手を送っていた。
カリアリ歌劇場のニコラ・コラビアンキ総裁は「この劇場に戻って来てもらって本当に良かったです。東京バレエ団をお招きできたことを誇りに思います。今夜の本番も必ず見に来ます。」と大喜びだった。
バレエ学校の校長先生は「〈素晴らしい〉の一言です。古典も現代も高いレベルで感心しました。若いダンサーが多いように見えましたが、全員があまりにも完璧に揃っていて目を見張りました」と興奮を抑えきれずに話してくれた。
初日は20時30分開演だったが、ここイタリアでも最近は夜の公演よりも午後の公演の方が観客の数が多いとのことだ。特にオペラの観客は高齢化しているとのことで、この問題は日本もイタリアも共通していると思った。
カリアリ公演で特筆すべきことはポール・マーフィー指揮のオーケストラが生演奏していることだ。カリアリ歌劇場専属のオーケストラはコンサートのシーズンを持っていて、オペラばかりでなく交響曲でのコンサートも高い評価を得ている。佐野志織芸術監督は「始まるまではオーケストラと息が合うか心配でした。特に『小さな死』は録音で踊ることに慣れているので不安でしたが、指揮者もピアニストもバレエのことをよく理解していて、素晴らしい演奏でした」と満足げだった。
今回のイタリア・ツアーをオーガナイズしたレトロパルコ社のパオロ・マンデッリ社長もミラノから公演を観に来て「東京バレエ団のレベルの高さに感服しました。ダンサー一人一人の技量の素晴らしさ、全員で一つの作品を作り上げる団結の精神に魅了されました」と惜しみなく賞賛していた。
初日の公演は観客の暖かい拍手で大成功を収めた。余談だが、公演後に行ったレストランに観客の数人がいて「何と素晴らしい公演だったことか。神がかりの舞台でした。」とお褒めの言葉をいただいた。
翌日の新聞には〈世界的に著名な東京バレエ団の公演は素晴らしかった〉との批評が掲載され、好評のうちにツアー公演初日がスタートした。
※田口道子氏は通訳・コーディネーターとしてツアーに同行しています。
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東京バレエ団〈第36次海外公演─イタリア〉は、「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流))|独立行政法人日本芸術文化振興会」の助成を受け、株式会社木下グループの支援のもと、イタリアの4都市を約1か月の旅程で巡り、合計13回の公演を行います。このツアー全体が終わった時点で、東京バレエ団の海外公演は33か国158都市、通算799回の公演を達成することになります。
公益財団法人日本舞台芸術振興会/東京バレエ団