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海外ツアーレポート2024/12/10

第36次海外公演 イタリアツアー便り4 ─ボローニャ、リミニ
東京バレエ団のイタリアツアーに通訳、コーディネーターとして同行したオペラ演出家の田口道子さんのツアーレポート第4弾。最終回です。


ツアー最終のボローニャとリミニはいずれも完売。ボローニャは若い観客で熱気があふれ、"リミニの宝石"ガッリ劇場での公演も大歓声のうちに終演。

 バーリのペトゥルツェッリ歌劇場で、連日チケット完売で大成功のうちに4公演を終えた東京バレエ団は11月25日に次の公演地ボローニャへと出発した。約600kmの距離をバスで移動である。90名近いバレエ団一行のそれぞれが20kgのスーツケースを持っての移動となると、大型バスが最良の方法だろう。一行は出発してから8時間後にボローニャのホテルに到着した。

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リミニ、アミントーレ・ガッリ劇場でのカーテンコール。 photo: Ayano Tomozawa


 ボローニャ市立歌劇場は1768年に建てられた伝統的な美しい劇場だが、目下修復中のため旧市街から離れた見本市会場の近くに建てられた仮設の劇場でシーズンが行われている。1年前に工事が始まり来年3月には完了の予定だが、工事が遅れていて、オープニングは多分来年10月になるだろうとのことだ。仮設劇場の舞台は制限が多くて『ラ・バヤデール』の舞台装置は組めないし、『春の祭典』の黒幕の振り落としも断念しなければならなかった。

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ボローニャ歌劇場(仮設の新劇場) photo: Andrea Ranzi by kind permission of Teatro Comunale di Bologna


 27日、ボローニャでの公演は1回だけだったこともありチケットは大分前から完売していた。国営放送RAIのローカルニュースで紹介されるとのことで、クルーが打ち合わせに来た。翌日7時半のトークショーの冒頭と14時のニュースで放送されるとのことだった。
 開場すると1500の客席は老若男女でアッという間に埋まった。若い観客が多いと思ったところ、30歳以下のチケット代は半額(一般70ユーロ、30歳以下35ユーロ)とのことだった。
ボローニャのプログラムは『ラ・バヤデール』(影の王国)、『ロミオとジュリエット』、『春の祭典』で、翌日移動するリミニと同じだ。若い年齢層の観客が多かったせいか、拍手と共に歓声があがり劇場中が熱気にあふれた。カメラを回していたRAIのクルーが「素晴らしい! これは14時のニュースだけでなく、19時30分のニュースでも流すべきです。」と興奮気味に言った。

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ボローニャ公演のカーテンコール photo: Andrea Ranzi by kind permission of Teatro Comunale di Bologna


 28日、いよいよ最後の公演地リミニに移動した。ボローニャからはアドリア海に向かって110km南下したリミニは遠浅の砂浜があるリゾート地だ。しかし、この町の歴史は古く紀元前268年にローマ帝国の植民地として建設された。後に東ローマ帝国の統治下におかれたが、中世にマラテスタ家によって自治権が獲得された。旧市街は城壁で囲まれ、所々に遺跡が残っている。東京バレエ団が公演したガッリ劇場は1857年に建立されたが、1943年第二次世界大戦で爆撃を受けて損壊した。そのまま40年以上経過した1975年に劇場再建が決まったが、実際に工事が始まったのは2010年だった。5年後の2015年に完成して、2018年に再オープンした800席の劇場は「リミニの宝石」となった。
 14時のニュースでは「創立60年を迎えた世界でも著名な東京バレエ団」と紹介され、2分近く映像が流された。

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開演前のリミニのアミントーレ・ガッリ劇場、客席。 photo: Ayano Tomozawa


 21時いよいよイタリアツアー最後の公演が始まった。長かったツアー最後の公演とあってか、ダンサーたちの気迫が伝わって最高に素晴らしい舞台になった。観客は惜しみなく拍手を送り、口々に素晴らしい、観に来てよかったと言いながら笑顔で劇場を後にした。

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(左)「ラ・バヤデール」上演前に。(右)「春の祭典」より。 photos: Ayano Tomozawa


 無事に全公演が終わった後もスタッフたちは舞台の道具をばらしてコンテナに積み込む作業が残っている。スエズ運河が閉鎖されているために、コンテナが喜望峰を回って横浜の港に到着するのは来年2月半ばだそうだ。スタッフたちが作業を終えてコンテナの鍵を閉めた時は午前1時を回っていた。
 30日、一行は午前6時半にホテルを出発して、ボローニャ空港からローマ空港で乗り換えて帰国の途につく。22日間の長いツアーは移動日以外連日のクラスとリハーサルで強行軍だったけれど、観客の拍手と歓声に励まされたことだろう。久しぶりに実現したヨーロッパでの公演は大成功で幕を閉じた。みなさん、お疲れさまでした!
                            田口道子(オペラ演出家)



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東京バレエ団〈第36次海外公演─イタリア〉は、「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流))|独立行政法人日本芸術文化振興会」の助成を受け、株式会社木下グループの支援のもと、イタリアの4都市を約1か月の旅程で巡り、合計13回の公演を実施。このツアーが終わった時点で、東京バレエ団は海外公演33か国158都市、通算799回を達成しました。





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