海外ツアーレポート2024/12/18
東京バレエ団〈第36次海外公演 ─ イタリア〉 全日程が大盛況のうちに終了!
東京バレエ団と上演作品への深い理解と期待、熱い反応に包まれたツアー。
東京バレエ団〈第36次海外公演─イタリア〉は、プティパの古典とモーリス・ベジャール、イリ・キリアンそれぞれの傑作を携えて2024年11月12日にカリアリで開幕。11月29日にリミニにおける最終公演を終え、カリアリ、バーリ、ボローニャ、リミニと続いた4都市13公演をすべて終了しました。カリアリ7公演こそ尻上がりの観客動員となったものの(最終日は満席)、続くバーリ4公演、ボローニャとリミニ公演は早々にチケットが売切れとなり、いずれの公演でも最後は熱狂的な拍手と歓声に包まれました。
(左)カリアリ歌劇場 カーテンコール photo: Marco Ciampelli
(右)バーリ、ペトゥルツェッリ劇場 カーテンコール photo: Clarissa Lapolla
(左)ボローニャ歌劇場(新劇場) カーテンコール photo: Andrea-Ranzi by kind concession Teatro Comunale di Bologn
(右)リミニ、アミントーレ・ガッリ劇場 カーテンコール photo: Ayano Tomozawa
最初の公演地、サルデーニャ島のカリアリでは、「春の祭典」の総仕上げのために、初日に先駆けて元モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督のジル・ロマンに合流してもらいリハーサルを実施。万全を期してステージに臨みました。本ツアー中、カリアリ公演のみ、ポール・マーフィー指揮、カリアリ歌劇場管弦楽団による生演奏で上演(他公演は録音音源を使用)。「春の祭典」はこれまでも有名オーケストラと度々共演してきましたが、「小さな死」(モーツァルト ピアノ協奏曲第23番と第21番の緩徐楽章)をオーケストラ演奏で上演したのは初めてのことでした。また、本ツアーを通して何人ものダンサーが初主演を経験。「ラ・バヤデール」より"影の王国"のニキヤ役で金子仁美、ソロル役で生方隆之介が、「春の祭典」の生贄役で大塚卓-榊優美枝/南江祐生-長谷川琴音が主演を果たし、「小さな死」では秋山瑛、南江祐生がデビューを飾りました。
東京バレエ団は海外ツアーで、ミラノ・スカラ座やローマ、フィレンツェを始めとするイタリア各地を何度も訪れており、現地の劇場関係者、評論家、バレエ/ダンス愛好者の間で一定の認知を得ています。そうした土壌もあり、今回いずれの公演地でも、事前に現地プレスによってバレエ団やプログラムについての詳細な、期待に満ちた紹介がされました。
●カリアリ
「名門バレエ団が8年ぶりにカリアリに戻ってくる」(Rai News)
「カリアリ歌劇場シーズンの待望第2弾は、現代振付の上演について最も優れた伝統を持つ東京バレエ団による、偉大なコンテンポラリー・ダンスの再来」(Cagliari post)
●バーリ
「 創立60周年を迎えた東京バレエ団が、ボローニャでデビューを飾る。日出ずる国で最も有名なこのバレエ団は、日本人の西洋バレエに対する熱烈な愛の象徴として、60年にわたり世界の主要な劇場に招かれてきた。東京バレエ団のレパートリーは、ロマン派・後期ロマン派バレエの古典から、20世紀を代表する振付家の傑作、現代バレエの巨匠たちによる東洋的な趣向を凝らした作品まで、膨大で質の高いものばかりだ」(Il Resto del Carlino)
●ボローニャ、リミニ
「創立60周年を迎えた歴史あるカンパニーが、明日、コムナーレ・ヌーヴォーで3つのヒット作を上演する」(Il Resto del Carlino)
「ダンサーの技術的水準だけでなく、振付の芸術的な深みでも高い評価を得ている東京バレエ団をイタリアの観客が目の当たりにできる貴重な機会だ。 舞台芸術が近年の困難から立ち直ろうとしている今、東京バレエ団の登場は、イタリアの文化シーンに新鮮な空気と活力を吹き込むものだ。バレエ史上、最も美しく重要な振付の数々を舞台で鑑賞できるこのまたとない機会を、舞踊ファンや文化愛好家は見逃すわけにはいかない」(Normanna news)
各紙の公演評に目を通すと、携えていった5つのレパーリー──「ラ・バヤデール」"影の王国"、キリアン振付「ドリーム・タイム」「小さな死」、ベジャール振付「春の祭典」「ロミオとジュリエット」への深い理解のもとにパフォーマンスへの優れた考察がされており、何より観客がこれら現代作品中心のプログラムを熱狂的に受け入れていたのが印象的でした。
以下に主だった現地の公演評を抜粋で紹介します。
●アンサ(共同通信社)
創立60年となる東京バレエ団の三部によるプログラムに盛大な拍手
東京バレエ団は創立60周年を祝し、イタリアツアーを行っている。その第一歩がカリアリから始まった。著名な日本のバレエ団はサルデーニャの首都カリアリの次はバーリのペトゥルツェッリ劇場で、その後ボローニャ市立歌劇場とリミニのガッリ劇場で公演する。
カリアリオペラ劇場の舞台初日は1800年代と1900年代のバレエ作品の傑作が三作品上演され、観客からの温かい拍手と歓声に包まれた。
ポール・マーフィー指揮の歌劇場オーケストラの演奏で、著名なる日本のバレエ団は偉大な巨匠によって振付けられた作品を演じ、観客に濃厚な感動の一夜を与えてくれた。
●バーリセーラ ニュース Bari Sera news
ペトゥルツェッリ劇場で陶酔:東京バレエ団の芸術が観客を魅惑する
ジョヴァンニ・レッキア
ペトゥルツェッリ劇場の観客は東京バレエ団の巧妙さと優雅さに文字通り魔法にかけられたようだった。どの動きも、どの仕草も、どの音符もすべてが忘れられない経験を創造することに貢献し、バレエという芸術が人間の魂の最も深い部分に触れる感動を呼び起こすことを実証したのである。バレエ団はこの公演を心底評価した観客からの拍手喝采とスタンディング・オベーションを受けた。この公演は、観ることが出来た幸運な人々の記憶に長い間残ることだろう。
●南イタリア新聞 La Gazzetta del Mezzogiorno
ぺトゥルツェッリ劇場における東京バレエ団による感動のダンス
斎藤友佳理団長率いるバレエ団の公演を堪能した観客が拍手喝采
パスクワーレ・ベッリーニ
日本のダンサーたちのテクニックのレベルの高さは非の打ち所がない。この数日ペトゥルツェッリ劇場で公演中の東京バレエ団の、魅了する明確な振付への忠実さは、どこか形式を尊重する日本製の版画のごとく卓越している。(略)
エロスの「扱い」が全く違うのが、熱望と性を描いた『春の祭典』だ。この類まれな素晴らしい作品が東京バレエ団公演の最後を飾った。ストラヴィンスキーの音楽に振付けられたベジャールの創作は肉体の欲望と官能の極限がダンサーの動きで爆発的に表現され、目が眩むほどのダンサー全員の完璧な融合性と驚くべき体力と魔的な激しさに圧倒された。(略)
東京バレエ団のダンサーたちのテクニックと一致性は非の打ち所がない。肉体のマグマ(混合した感情や情熱)、繊維状にも見える裸体、何世代にも渡る生来の体型であろうか、50人もの体が絶え間なく動くのだが、それはまるで渦を巻く物体のように幾何学的形状や大きさを構成したり解体したりするのだ。初日からペトゥルツェッリ劇場の多くの客席を埋めた観客は日本のバレエ団の公演に盛大なる拍手を送った。
●シラノポスト Cirano post
イリ・キリアンとモーリス・ベジャールという天才的な振付家の作品が東京バレエ団の完璧な美しさで表現することによって再現され、ペトゥルツェッリ劇場の観客の胸の鼓動を高ぶらせた。
パスクワーレ・アットリコ
東京バレエ団は伝統的な振付の創作者の中でも、常に世界で最も高名な振付家の作品に注目してきた。その姿勢は1964年の創立時から変わらず、幅広いレパートリーはクラシック・バレエ、ネオ・クラシック、現代作品と少しの隔てもなく広がっている。西洋の振付家や東洋の振付家の作品もレパートリーに含まれている。それはむしろ、この日本のバレエ団の大きな強みになっていると言える。クラシックとモダンの不思議な混交を成立させているがゆえに、現実的にはこれほどまでに遠く、対照的である二つの世界が完全に融合し、我々が共通の人間であることを確信させ、舞台上で何が起こっているのかを完全に理解させてくれる。肉体が空中で描くシンボルや隠されたメッセージ──実際には我々が良く知っていることであるのだが──が何を意味するのかを知らせてくれる。そこにはある種の言語やある種の文明が、そして多分、乏しい我々のとは異なる人間性が存在しているのである。(略)
完璧なまでの日本のバレエ団によって巨匠による振付という芸術が益々意味深長な作品となった。彼(編注:ベジャール)が好んで語っていた言葉、つまり「最小限の解説、最小限の秘話と最大限の気持ち」が素晴らしく表され、強力な感動と抑えられない感情と忘れがたい感動の源となったのである。(略)
東京バレエ団は再び世界に、そして特に、真に心から熱烈な歓迎を拍手で表したペトゥルツェッリ劇場の観客に、人を惹きつける力を存分に表した。すべての芸術の母と考慮される訳を明らかにしたのである。
(左)「ラ・バヤデール」"影の王国" photo: Andrea-Ranziby kind permission of Teatro Comunale di Bologna
(右)「ロミオとジュリエット」よりパ・ド・ドゥ photo: Clarissa Lapolla
(左)「ドリーム・タイム」 (右)「春の祭典」 photos: Clarissa Lapolla
「春の祭典」 photos: Clarissa Lapolla
東京バレエ団 第36次海外公演概要
実施期間:11月8日(金)バレエ団出発~12月1日(日)帰国
公演回数:4都市 全13公演
開催都市:カリアリ、バーリ、ボローニャ、リミニ
参加人数:約90名(ダンサー、スタッフ含む)
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東京バレエ団〈第36次海外公演─イタリア〉は、「文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術等総合支援事業(国際芸術交流))|独立行政法人日本芸術文化振興会」の助成を受け、イタリアの4都市を約1か月の旅程で巡り、合計13回の公演を実施。このツアー全体が終わった時点で、東京バレエ団の海外公演は33か国158都市、通算799回の公演を達成しました。