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2016/06/06

第30次海外公演〈イタリア、カリアリ〉公演評

 すでにtwitterやFacebookなどでお伝えしている通り、東京バレエ団は5月25日から5月29日にかけて、イタリアのサルディーニャ島にあるカリアリ歌劇場で、ジョン・ノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』、イリ・キリアンの『ドリーム・タイム』、モーリス・ベジャールの『春の祭典』を上演いたしました。公演は5日間7公演がほぼ完売。三つのマスターピースに現地の観客が酔いしれ、拍手喝采。大きな盛り上がりの中に公演を無事終えることが出来ました。そのカリアリ公演の模様を伝えた公演評(ANSA通信、Sardinia post紙、L'UNIONE SARDA紙)が届きましたので、記事をご紹介いたします。 <ANSA通信> ノイマイヤー、キリアン、ベジャールの振付で、魔法のひととき 2016年5月26日 昨夜、カリアリ歌劇場のステージを満たしたのは、魔法のひととき、東洋の香り、そして拍手の嵐。20世紀を代表する3人の偉大な振付師に捧げられた、すばらしいバレエの一夜の主役となったのは、東京バレエ団である。30年ぶりにカリアリに戻ってきた日本の名門バレエ団は、3つのこの上ない振付による、世界的な傑作バレエを披露した。最初に上演されたのは、イタリア初演となる2作品。ドヴォルザークの『弦楽セレナーデ』の調べに乗せて踊られる、ジョン・ノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』と、武満徹の音楽を用いたイリ・キリアンの『ドリーム・タイム』である。   そして、この一夜の舞台は、イーゴリ・ストラヴィンスキーが1910年に作曲したクラシックバレエ作品『春の祭典』で締めくくられた。モーリス・ベジャールが1959年に創作したみごとな振付。東京バレエ団はその特権的な表現者として知られている。 これら一連の20世紀作品のために、ベテラン指揮者であり、バレエ公演のエキスパートでもあるニコラ・ブロショが率いるカリアリ歌劇場管弦楽楽団がすばらしい演奏を行った。歌劇場のクラウディオ・オラーツィ総裁は次のように述べている。「文句なしの傑作である3作品を、管弦楽団があざやかな演奏で支えたことで、我々の歌劇場の実力がイタリアでも最高のレベルにあることを実証した」   大きな感動をもたらしたステージは、季節のテーマに結びついた『スプリング・アンド・フォール』に始まり、日本のテイストに彩られ、洗練された宝石のような『ドリーム・タイム』へと続く。それは夢の物語。音楽、しぐさ、動き、舞台美術の間の完璧な調和のなかで踊られる一編の詩のように思われた。 最後は、ベジャールの振付によって舞台に甦ったストラヴィンスキーの"スキャンダラスで革命的な"音楽。ベジャールは、まるで最初から自分のために造られた音楽であるかのように、『祭典』の中に神秘的な痕跡を刻み付ける。そこでは、自然の再生のサイクルが、官能的な出会いの中で昇華される。カリアリ歌劇場オペラ/バレエシーズンの3番目の本演目の上演日程は、5月29日(日)まで。全7公演のチケットはほぼ完売である。 <Sardinia post紙> 東京バレエ団の野性的な官能美、歌劇場の観客を魅了 2016年5月28日 土曜日と日曜日(21:00)、カリアリ歌劇場において東京バレエ団による5つ星クラスの振付3作品が上演された。その肉体と動きの中に息づくのは、東洋のエレガンス、ミニマリズム、美のパワー。約40人(※)の若手ダンサーによって構成される世界屈指のバレエ・カンパニー、東京バレエ団(昨年、バレエ界のプリマ、シルヴィ・ギエムは、そのファイナルツアー『ライフ・イン・プログレス』に、このカンパニーを選んだ)がステージに勢揃いすると、すべてが奥深い震動そのものとなる。カリアリの舞台に上る3つ目の(そして最後の)振付作品、ベジャールの『春の祭典』の野性的な官能を前に、観客が感じたものは、まさにそれであった。(他の2演目は、ジョン・ノイマイヤーの『スプリング・アンド・フォール』と、エルケ・シェパースが振付指導を行ったイタリア初演の『ドリーム・タイム』)。 そのダイナミックな儀式表現に観客が息を呑んだ『春の祭典』は、パンフレットの序文においてシルヴィア・ポレッティが的確に解説しているように、もはや「ストラヴィンスキーとレーリヒが1913年に思い描いたような、自然の再生に感謝するための生け贄の儀式ではなく、人類の永続をもたらす、永遠かつ普遍的な生殖本能への讃美なのである」。 ベジャールの舞台と、日本のバレエ団----観客席からはたちまち大きな賞賛が寄せられた----との間の芸術的な出会い。それは、完璧かつ精緻な錬金術に根ざしている。場面が変わるたびに、まるで魔法のように、知と記憶へと変貌を遂げるパフォーマンスである。 ドナテッラ・ペルチヴァーレ  (※)実際の出演者は58人。 <L'UNIONE SARDA紙> 東京バレエ団 プリミティブな本能のエクスタシー カリアリ歌劇場で、偉大なバレエの勝利 ノイマイヤー、キリアン、ベジャールら、巨匠たちの振付がドヴォルザーク、武満、ストラヴィンスキーらの音楽と融合するとき、そして舞台の上に東京バレエ団という歴史的バレエ・カンパニーが登場するとき、その公演の成功はすでに約束されている。現在、この日本の有名なバレエ団を迎え、カリアリ歌劇場オペラ/バレエ・シーズンの3つ目のプログラムが上演されている。初日は水曜日だった。 ニコラ・ブロショの指揮による一夜は、『スプリング・アンド・フォール』によって幕を開けた(イタリア初演)。白を基調にした振付でノイマイヤーが表現したのは、若さの爆発と成熟の迷いとのコントラスト。ドヴォルザークの『弦楽セレナーデ』が、魂をやさしく抱き寄せる。もう一つ、イタリア初演となった作品が、キリアンの『ドリーム・タイム』。無意識の領域をめぐる暗い色調の旅。武満徹のハーモニーによって引かれた境界線は、目には見えない。バレリーナたちは相手をすり抜け、惑わし、捨て去るが、希望はばらばらに砕け散る。一夜を締めくくるのは、1959年にベジャールが振付を行った『春の祭典』。その踊りは衝撃的であり、1913年にストラヴィンスキーが作曲した音楽に乗せて、エロスが凱歌を奏でる。色調はグリーンとアースブラウン。焦点が当てられるのは、官能性から奔放な野性へと変化するダンスの中で、震え、からみあう肉体である。 ファビオ・マルチェッロ