『海賊』コンラッド役ダンサー座談会【公演プログラム番外編】
いよいよ開幕する『海賊』。2021年以来の上演となる今回、新たなキャストを迎えお届けいたします。劇場で販売するプログラムでは主要キャストの座談会を掲載していますが、先んじて、紙面には載せきれなかった内容をお届けいたします。続いてコンラッドを務める柄本弾、宮川新大、生方隆之介の座談会から。

――『海賊』(アンナ=マリー・ホームズ版)で主役のコンラッドを演じる皆さん。柄本弾さんは初演から3回目、宮川新大さんは2021年の再演に続いて2回目。生方隆之介さんは今回が初役です。コンラッドは踊りのシーンが多く、常に注目を集める華やかな役ですが、リハーサルにも力が入りますか?
宮川新大「前回の再演(2021年)はコロナ禍でのリハーサルでした。僕はコンラッドが初役だったのですが、あまり時間が取れなかったので少し悔いが残っているところがあります。今回はもう少し時間をかけられると思います。体力的にも気力的にもしんどい役ですが、男性ダンサーが主要な役を踊れるグランド・バレエは数が多くないですからね」
柄本弾「コンラッドだけでなく、男性ダンサー全員が難易度の高い踊りを見せていく作品なので、真ん中だけでなく、踊れるソリストがたくさんいないと見ごたえがなくなってしまう。僕は初演から(コンラッドを)踊っていますが、回を重ねるごとに自分の中で発見がありますし、今回はパートナーも変わるので、今までとは違う『海賊』を目指していきたいです。宮川新大受賞記念なので、それに恥じないような上演にしたいですね」

――生方さんはコンラッドとアリの二役を別公演で演じます。
生方隆之介「コンラッドは踊るところが多いという印象と、キャラクター的に仲間を引き連れていく強い役。今までそういう役をやってこなかったのが大きな課題ですね。内向的な役はやってきたのですが、コンラッドは船長で、みんなを引っ張っていく役ですからね。統率する人間としての貫禄を持ちたいし、演技する場面もたくさんあるので、先輩方に教わって習得したいと思っています」
――柄本さんの相手役メドーラは伝田陽美さん。
柄本「伝田さんは同期でお互いとても話し合いがしやすいんです。パートナーシップ的にもそれが強味になりますね。彼女はとてもパワフルで、強いものを持っている分、こちらも求められるものが大きいですが、彼女が波に乗ってるときは舞台上ですごく光るものが出てくるので、それをしっかり出せるようにしたいです」
――パートナーによって踊りは変わりますか?
柄本「もちろん。まったく変わります。バレリーナの個性はそれぞれ違っていて、比較するものではなく、それぞれの良さがありますよね」
――宮川さんの相手役は秋山瑛さん。
宮川「数多くの初演を一緒に組んでやってきましたし、同期で戦友という感じです。僕も彼女も練習を重ねて話し合いながら作っていくタイプなので、本番でもとても信頼しています」
――生方さんは中島映理子さんとペアになります。二人とも初役です。
生方「これまで何度も組んできて、パートナーリングもしやすくて、ペアになれて良かったと思いました。もちろんプレッシャーもありますし、本番になると練習で出来ていたことが、それ以上に出来ちゃうときとか。逆に緊張して色々考えて出来ないこともあるので、いかに練習の段階できちんと出来ているかというのが大事だと思っています」

――なるほど。柄本さんは現在、東京バレエ団のバレエマスター補でもあるわけですが、公演全体を座長的に見ていたりするのでしょうか?
柄本「僕がスタッフに入ったのは2023年なので、指導者として初めてこの『海賊』に臨みます。2026年版では、各自の個性が光るように見せていきたいです。それが東京バレエ団で(斎藤)友佳理さんが大切にされているところなので。コンラッド以外でも主要な役で初めてのメンバーもいるので、そこも新しくなった要素を楽しんでもらえるよう、指導者として固めていきたいなという思いもあります」
――ホームズ版の『海賊』は美術もゴージャスで見ごたえがあります。あの中で踊っているとどのような気分になりますか?
柄本「一番気分が上がるのは船の上のシーンですかね。あの船は何分割かにして船便で送られてきて、舞台スタッフさんが夜な夜な組み立ててくれて…」
宮川「最初見たときは感動でした。『おお船だ!』と。わりと揺れるので、しがみついていないと大変なんです」

――ミラノ・スカラ座から貸し出される衣裳も豪華で素敵です。
生方「あ、でもコンラッドは意外と地味かなって思いました。主役らしからぬ服装というか。アリのブルーの衣裳が目立っちゃうなと」
宮川「アリの衣裳は豪華なんですよ。ただの青いズボンじゃなくて、シルク製で近くで見ると繊細な装飾が入っているんです」
――音楽に関してはどうですか? 色々な作曲家の曲を集めたバレエですが、『海賊』の稽古がはじまると、イヤホンで一日中聴いたりしますか?
柄本「僕はないですね。リハーサルでたくさん聴くので、プライベートでは聴こうとは思わないかな」
宮川「初演で初めてオーケストラで聴いた瞬間はやっぱり感動というか、迫力がありました。指揮者によっても音の出し方が変わります。初演と二回目では指揮者が違ったのですが、音の感じも違って感じました。そういう意味で、本番の音楽は特別。ふだんは聴かない音を舞台で聴く昂揚感を楽しみにしています」
――では、改めて2026年版『海賊』の抱負をお願いします。
柄本「自分自身の演技も勿論ですが、三者三様で得意とするところも違うので、そういった長所や色を各々大切にしながら、それぞれの回を自分のものとして本番を創り上げていきたいです。バレエマスター補として、そうしたことも手伝えればと思います」
宮川「前回は二週間しか準備期間がなく、アリもやっていたので急ピッチのリハーサルで、自分は満足できる出来ではなかったんです。受賞記念として踊らせていただけるのは嬉しいですし、いい舞台を普段通り見せたいです」
生方「僕は今回コンラッドとアリをやらせていただきます。アリを演じているときは主人に従っている身なので、いかに自分を抑えておくかをすごく考えていたのですが、コンラッドは色んな人間と関わっていく人物なので、自分で運命を切り開いていくリーダーシップやカリスマ性を出していきたい。踊りの技術とともに、そうした面も勉強できたらと思っています」
ライター:小田島久恵
