第13回〈めぐろバレエ祭り〉 現地レポート
今夏も〈めぐろバレエ祭り〉の時期が到来! この日も30℃後半の猛暑デーでしたが、楽しむ気持ちを胸いっぱい詰め込んだバレエファンが今年もめぐろパーシモンホールに集結しました。
※筆者が参加したのは8月23日(土)の午後と、24日(日)の終日です。
〈公開レッスン(8月24日)〉
最終日の朝9時半から開催されたのは、東京バレエ団のダンサーによる公開レッスンです。この日の講師は元東京バレエ団プリンシパルの高岸直樹氏で、振りはシンプルながら筋肉をじっくりと温め、踊るための体を作る内容のクラスに。ダンサーはコンディションに合わせ、バランスを長めにしたり、軸足をルルヴェにしたりと適宜アレンジしていました。
センターに移動すると、ダイナミックな踊りが増えていきます。ピルエット(回転)のコンビネーションでは、高岸氏が見本として見事な回転を披露し、客席のみならず、ダンサーたちからも大きな拍手が沸き上がりました。午前の部でジークフリート王子を踊る池本祥真が王子の振付の一部を確認していたり、午後の部でオディールを踊る伝田陽美がセンターからトウシューズを履いていたりと、本番に向けて調整している様子がうかがえます。また、男性ダンサー同士で回転のアドバイスをしている姿も。
わずか1時間のクラスながら、ダンサーの体がみるみる引きあがっていき、確認のためのレッスンから”魅せる”踊りへと変わっていくのが印象的でした!

〈はじめてバレエ『白鳥の湖 母のなみだ』(8月24日/午前の部)〉
今回、新制作された『白鳥の湖 母のなみだ』は、初めてバレエを観る子どもたちにもわかりやすいように、作品の見どころをぎゅっと詰め込んでコンパクトにしたもの。さらに道化役のダンサー(後藤健太朗、山仁尚。本公演では後藤)が語り役となって物語のポイントを解説します。
母と一緒にいたオデットが悪魔ロットバルトにさらわれるシーンを挿入することで、最後に母と再会できるハッピーエンドの展開が際立ち、涙がにじみます。休憩を含めて95分間でしたが、道化の踊りや王子の友人によるパ・ド・トロワ、各国の踊り(スペイン、ナポリ)などの見せ場は押さえられており、見応え十分! 筆者の周囲の席にいた子どもたちは皆、真剣な顔で舞台に見入っていました。
〈「白鳥の湖」の群舞を踊ろう!(8月23日)〉
大人のバレエ雑誌「クロワゼ」プレゼンツの講習会が今年も開催! 今回は『白鳥の湖』第2幕の白鳥たちの群舞にチャレンジする内容で、わずか3時間でアップ(レッスン)から振り移し、リハーサル、本番(撮影あり)までをまとめ上げます。
参加資格はバレエ歴2年以上の方で、バレエ歴も年齢もさまざまな35名の参加者が全国各地から集まりました。講師は矢島まい(元東京バレエ団)で、アシスタントに中島理子(元東京バレエ団)と中川美雪が入り、パートごとに振付を伝え、練習を繰り返します。群舞はお互いの距離感をしっかり守り、隊列を崩さないように踊る必要があるので自然と周囲の人たちと協力し合い、あっという間に和気あいあい。ユーモアあふれる指導により、笑いも起こって終始なごやかな雰囲気です。
1時間半みっちりリハーサルをしたら、オデットの三雲友里加と王子の大塚卓が登場し、撮影ありの本番へ! わずか3時間の練習とは思えないほど見事にそろった群舞を披露してくれました。

〈スーパーバレエMIX BON踊り(8月24日/2回目の回)〉
大人気のこの企画も13回目。今年も小ホール中央に設置されたやぐらのまわりで、小林十市(モーリス・ベジャール・バレエ団バレエ・マスター)が振付けたオリジナルの盆踊りを踊りまくります!
今年の指導者は東京バレエ団プリンシパルの沖香菜子、さらにスペシャル・ゲストとしてファーストソリストの大塚卓が登場! 沖が「涼むつもりで来たかもしれませんが、大汗をかいて帰りましょう!」と言うと笑い声が上がります。踊り慣れた参加者も多く、彼らにつられる形で初めて(と思しき)参加者たちも積極的に踊ってくれました。子どもはもちろん、保護者の方々、ひとりで参加の方々も笑顔でトライ。ミラーボールの回るなか、150人を超える参加者が大いに踊り、本当に大汗をかいた1時間となりました。

〈からだであそぼう だれでもダンス☆(8月24日/2回目の回)〉
振付家・ダンサーの田畑真希さんとアシスタントの澁谷智志さんによる、子どものための人気企画です。ふたりは開始前から子どもたちに明るく話しかけ、心がほぐれた子どもたちは会場内を走り回って、すっかり仲よしに。もちろん、シャイな子やひとりでいたい子に無理をさせることはありません。
田畑さんの「うるさく走る」「一本足で止まる」「5本足で歩く」「かっこいいポーズで止まる」などの掛け声を子どもたちは自由に解釈し、思い思いの方法で表現します。「もっとでたらめに動かして!」と言う田畑さんの声にあわせ、個性全開で動きまわる子どもたち。
最後は中央にあるやぐらにひとりずつ乗り、田畑さんと澁谷さんに導かれながら踊りを披露。最初はもじもじしていた子も、ふたりにつられて次第に笑顔に。最後に「まきまっちょは楽しかったけど、みんなはどうだった?」という田畑さんからの問いかけに、「楽しかった~!」と声がそろいました。

〈ダンサーズ・トーク in めぐろ(8月24日/2回目の回)〉
終わりを飾ったのは、東京バレエ団ダンサーが司会を務めるトークイベント。金子仁美が司会となり、池本祥真、生方隆之介、大塚卓、長谷川琴音が出演しました。以下、項目ごとに語られた内容の一部をご紹介します。
◆はじめてバレエ『白鳥の湖 母のなみだ』を踊って
長谷川「直前まで振付が変わって大変で、(緊張のあまり)楽屋ではずっと胃が痛いと先輩たちに叫んでいました。でも、本番になって舞台に出たら楽しめた」
池本「王子役は気品ある立ち居振る舞いを大切にしないといけないけれど、それだけだと心の動きが見えてこないのでバランスが難しい。柄本弾さんに見てもらったら、王子の喜びを見せたほうがいいとアドバイスをもらった」
金子「当初、3幕ではオディールと王子のヴァリエーションは踊らない予定だったのが、8月に入ってから入れることが決まり、急きょ練習することに。オディールたちで隙間時間にずっと練習していた」
生方「本番ではすごく気持ちが乗って、自分のなかの王子像を深められた。作品に寄り添った形で踊りたいという気持ちが踊りに乗って、相乗効果で(よいものを)皆さんにお届けできた」
◆夏休みの予定
大塚「北海道のガラ公演後そのまま滞在して、大塚家の大家族旅行を計画しています」
池本「最近観た香港映画が面白かったので、香港に行ってその展示会を観たいです。でもパスポートの期限が切れていて……(笑)」
生方「休みに徹することがなかなかできないので、徹底的に休みたい。情報ツールから刺激を受けることなく、何も考えずにぼーっとしたい」(という生方に対し、金子が「隆ちゃん、気づいたら絶対バーレッスンやってると思いますよ」とツッコミあり)
◆もしダンサーになっていなかったら?
長谷川「入団前、歯科衛生士になろうと専門学校に合格していた。でも諦められず『これでダメならもうバレエを辞めよう』という気持ちで入団試験を受けた」
大塚「塾の先生に東大に行けと言われたけれど断った。野球やサッカー、水泳もやっていたけれど、バレエだけが続いた」
池本「(出身地である広島県の)島では一番足が速かったから、短距離走の選手とかいいな。小学校のとき、ハードルの県大会で4位でした」
生方「極めていく仕事がよくて、寿司職人になりたいという夢がある。実は『ザ・カブキ』のオープニングシーンで、寿司を握っていました(笑)」

今年も暑いなか、最後まで盛り上がっためぐろバレエ祭り。来年もきっと、さらに熱いプログラムが待っているはずです。BON踊りを復習しながら、来年の開催を待とうと思います!
取材・文=富永明子(編集者・ライター)
photos: Shoko Matsuhashi
