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インタビュー

フリオ・ボッカ(「ラ・バヤデール」振付指導)特別インタビュー

現在、10月の「ラ・バヤデール」公演に向けてリハーサル中の東京バレエ団。その指導を手がけているのは、フリオ・ボッカ──1987 年から2006年までアメリカン・バレエ・シアター(ABT)のプリンシパルとして華々しく活躍したスターダンサーだ。現在、フリーランスで世界各地のカンパニーで指導を手掛ける彼に話を聞いた。

── 日本に来られるのは久しぶりですか。

フリオ・ボッカ 2005年、ABTの日本公演で主演した、私の”最後の『ドン・キホーテ』”以来です。あの公演はとても感動的でした。

── 今回指導されているマカロワ版『ラ・バヤデール』のソロルは、ボッカさんの代表的レパートリーの一つです。初めて踊られたのはいつのことでしたか。

ボッカ 私がABTに入った1987/88年のシーズンでした。最初に踊ったのはブロンズ・アイドル(ブロンズ像)だったのですが、その舞台を観たマカロワが翌日、私の役をソロルに変更するようにと言ったのです。その後、英国ロイヤル・バレエ団、ミラノ・スカラ座などでもソロルを踊っています。マリインスキー劇場のヴァージョンも踊ったことがありますが、マカロワ版はストーリーがより明快ですし、第3幕で描かれる神殿の場面、そこにブロンズ・アイドルが登場するなど独特です。ヒロインのニキヤはとても自由な役柄であるいっぽうで、技術的にはとてもピュア、これぞまさにクラシックというべきものです。最高傑作の一つといえます。

──世界各地で様々なパートナーと踊ってこられました。

ボッカ パートナーはたくさんいます! アレッサンドラ・フェリ、シンシア・ハーヴェイ、ジュリー・ケント、ニーナ・アナニアシヴィリ、ヴィヴィアナ・デュランテ、ダーシー・バッセル……。アルティナイ(・アスィルムラートワ)とも踊っています。
この役を踊ることが好きでした。私はとにかく、謙虚に踊ろうとしました。ソロルは貴族だけれど、悪人ではない。強いし、教養もある。第1幕のパ・ド・ドゥは心のこもった感動的な踊りですし、2幕では自分の行いを悔いるとともに、雲の中を歩くような夢心地でもある。その落差を表現することはなかなか難しいものです。

──マカロワさんはどんなリハーサルをされていたのですか。

ボッカ そんな昔のことはもう忘れてしまいました(笑)! でも、こんなことがあったのを覚えています──ある日のリハーサルで、私は場当たりができればと、ごく軽く、適当に流して踊っていたんです。そこへやって来たマカロワが、「あなた、何をしているの?」と聞くので、「もう何度も踊っていてわかっている役なので、場当たりを……」ともじもじしていると、彼女は「それはいけません」と静かに言い、私の頭の上からコップの水をかけたのです! 私は濡れたまま、静かにその場を出て行きました──。でも本当は、マカロワは優しい人なんですよね。いい思い出です。それ以来、私はどんなリハーサルでも、力を尽くして踊るようにしてきました。

──今回の指導について、マカロワさんからは何か指示がありましたか。

ボッカ ナターシャ(ナタリアの愛称)とはよく一緒に仕事をしていたので、何を望んでいるのかはよくわかっていますが、今回の東京バレエ団の指導にあたっては、2019年収録の英国ロイヤル・バレエ団による舞台映像を見ておくようにと言われました。映像を確認すると、細かい点ですが、第1幕の幕切れ、ニキヤの死の場面に少し変更があります。こうした変更はダンサーにとっても新鮮ですし、私はいいなと思っているんです。

──東京バレエ団のダンサーたちのスタジオでの反応はいかがですか。

ボッカ 皆若くて、才能あるダンサーたちです。私のことを誰だか知らない人もたくさんいるけれど(笑)、彼らが知らない誰かの話を聞いてくれるのはとても嬉しいこと。大事なのは、それぞれの役で、どうすれば「自然」になれるかということです。私たちは、スタジオやバレエ団にいるとつい、「ダンサーになろう」としてしまう。「人間である」ことを忘れて。でも私たちは、「ダンサーとして、役を演じる人間」なのです。
とにかく、ダンサーたちには「自然に踊るように」と言います。「自分らしくありなさい(be yourself)」と。つまり、ダンサーごとに違うニキヤやソロルを見たいのです。そのためには、ダンサーたちがそれぞれの内面を外に向かって表現しなくてはならないと思っています。

私がすべきことはもう一つ、それぞれのダンサーが自分の個性を見つけるための手助けです。ですが、ダンサー自身が望まない限り、個性を見つけ出すことは絶対にできません。それは、ダンサー自身の独自の仕事でもあるのです。今回、東京バレエ団のダンサーたちにもそのような手助けができると思っています。

Photos:Shoko Matsuhashi


取材・文:加藤智子(フリーライター)

東京バレエ団「ラ・バヤデール」
10月12日(水)~16日(日)

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