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2013/06/12

斎藤友佳理による「ラ・シルフィード」勉強会レポート

いよいよ『ラ・シルフィード』の本番まで残すところ1週間をきりました。スタジオでは連日熱の入ったリハーサルが続いていますが、先日、団員の作品への理解をより深めるため、リハーサルの合間を縫って『ラ・シルフィード』についての講義を行いました。

講師は、バレエ団プリンシパルであり芸術スタッフの斎藤友佳理。斎藤はロシア国立舞踊大学院バレエマスターおよび教師科で伝承学を学び、2011年よりピエール・ラコット氏のアシスタントとして国立モスクワ音楽劇場バレエにて『ラ・シルフィード』の振付指導に携わっており、本公演でも振付指導を務めています。
講義はロマンティック・バレエを生んだ歴史的背景について、どのようにしてフィリッポ・タリオーニ振付『ラ・シルフィード』という傑作が生み出されたのか、そしてその傑作の誕生がバレエ史上いかに重要な出来事であったのかといった説明に始まり、登場人物や物語ついて、ブルノンヴィル版との違いに至るまで広範囲に及びました。
とりわけ、物語の説明においては、斎藤自身が長年当たり役として踊り込んできたシルフィードはもちろんのこと、ジェイムズ、エフィー、マッジ、ガーンなど、それぞれのキャラクターについて、時に自ら動いてみせながら熱く語り、団員たちはみな真剣な面持ちで耳を傾けていました。

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フィリッポ・タリオーニが娘マリーに振付けた『ラ・シルフィード』は1832年にパリで初演されたのちに、ヨーロッパ中に一大ブームを巻き起こしたもののやがて失われてしまいました。1972年、その失われたタリオーニ版の復刻に情熱を注ぎ、それを成し遂げたのがラコット氏。現在、『ラ・シルフィード』と言えば、タリオーニ版に触発されてオーギュスト・ブルノンヴィルが振付けたブルノンヴィル版(1836年初演)とラコット版の2つのヴァージョンが知られています。
両ヴァージョンの特筆すべき大きな違いとして斎藤は、ラコット版で繰り広げられる第1幕の"オンブル"と呼ばれるパ・ド・トロワと第2幕のコール・ド・バレエのフォーメーションの複雑さを挙げ、中でも第2幕のコール・ド・バレエの美しさは、作品の成功の鍵を握るとも語り、シルフィード、ジェイムズ、コール・ド・バレエの一人ひとりが主役として踊る意識を持つことの大切さを改めて語りました。

約1時間半かけて行われた講義でしたが、最後に斎藤は「ラコット版『ラ・シルフィード』を日本でレパートリーとしているのは東京バレエ団だけ。ロマンティック・バレエの真髄であるこの大切なレパートリーを踊れることに誇りを持って、本番に臨んでほしい」と温かい檄を飛ばしていました。

いよいよ初日まであと3日。来年の創立50周年に向けて東京バレエ団が総力を挙げて臨む『ラ・シルフィード』の舞台に、ぜひご期待ください!

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リハーサル写真撮影:引地信彦