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レポート2023/11/02

新制作「眠れる森の美女」公開リハーサル&囲み取材レポート
あと1週間ほどで、創立60周年記念シリーズの第二弾、新制作『眠れる森の美女』の幕が開きます。初日目前の10月31日に開催した、記者や評論家を対象とした公開リハーサルおよび囲み取材の様子をレポートします!

公開リハーサルは第1幕、成人したオーロラ姫を囲んだ祝宴の場面。オーロラ姫は沖香菜子、悪の精カラボスは柄本弾、リラの精は政本絵美と、ファースト・キャストがそろいました。

冒頭の花のワルツは、大勢のダンサーたちが花カゴや花輪を手に目まぐるしくフォーメーションを変え、万華鏡のよう!
ローズ・アダージオとヴァリエーションの振付は変わらず、可憐なオーロラ姫に求婚する4人の王子(ブラウリオ・アルバレス、鳥海創、安村圭太、後藤健太朗)は互いにけん制し合いながら姫にアピールし、その関係性も楽しめます。

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カラボスの登場で華やかな祝宴から一転、眠りについたオーロラ姫の運命は? 続きが気になる、見ごたえたっぷりのリハーサルとなりました。

*****

囲み取材には芸術監督の斎藤友佳理が登場。「古典バレエとして守るべき部分と新しくする部分、どのようなバランスで考えていますか?」という記者からの質問に対し、斎藤は「そのバランスほど今回難しいものはなく、今もなお苦しんでいる部分です」と打ち明けました。

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芸術監督 斎藤友佳理

「『眠れる森の美女(以降『眠り』)』には、いつの時代に踊っても決して色あせない、触れてはいけない部分が私の中で明確にあります。いっぽうで、テクニック面やダンサーの体形など、時代とともに変わってきた部分もある。どこまで手を加えればよいか、ずっと悩みながら進めてきました」

斎藤の考えによると「『眠り』はバランスで成り立つもの」。オーロラ姫とデジレ王子のバランス、主役とコール・ド・バレエのバランス、装置と衣裳と踊りのバランス、そして作品全体のバランス......すべてのバランスに気を配りながら、つくり上げていったと言います。

「私のなかで絶対に変えてはいけない部分は、まずストーリーの根本の部分。それから古典バレエとしての薫りを残すこと。そして、プロローグのリラの精のヴァリエーションと、第1幕のオーロラ姫の登場にローズ・アダージョからヴァリエーション、第3幕の青い鳥とフロリナ王女などのディヴェルティスマンとグラン・パ・ド・ドゥ。それらは手を加えてはいけない確固たる部分でしたが、あとは今の時代にあわせて振付を変更しています」

今回、斎藤が大きく変更を加えたのは、リラの精の役割と第2幕です。

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リラの精 政本絵美

「新制作版では、リラの精はオーロラ姫とデジレ王子、ふたりの洗礼の母という役割で、主役と同等のポジションです。リラの精は長い間、眠りについたオーロラ姫にふさわしい相手を探し続けていました。そしてたまたま100年後、彼女にぴったりの相手を見つけ出したのだと思います。ですから、リラの導きによってふたりが出会う場面は、普通に踊らせたくなかった。オーロラ姫は夢の中で王子と出会い、王子は幻影の彼女に出会う――ふたりは異なる次元にいるわけですから、絶対に触れ合わない振付にしたかったのです」

異次元のふたりが出会うには、デジレ王子が水を渡る必要があると考えた斎藤は、パノラマと呼ばれる第2幕の場面で約44メートルにもおよぶ動く背景画を制作。これはプティパによる初演時の技法でしたが、故障などのトラブルのおそれがあるため、現在はボリショイ劇場でさえ使用していないそうです。しかし、斎藤はリスクを承知でその仕掛けを施しています。

さらに今回、カラボスに男女ふたりのダンサーを配した理由についても質問があがりました。

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悪の精カラボス 柄本 弾

「私はいつも、ダンサーにはカメレオンのようであってほしいと思っています。『どれが本当のあなた?』と思われるような役者にならなくてはいけないと。柄本弾は内面が成長し、今の彼には無限大の可能性を感じています。これまで、同じ公演で王子とカラボスの両方を踊ったダンサーは見たことがありませんが、彼ならできるし、やればさらに成長していくと考えました。それはダブルキャストの伝田陽美も同様です。中身の濃いダンサーであるふたりに、悪役も王子も妖精も踊ってほしいと考えました」

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オーロラ姫 沖 香菜子

3人のオーロラ姫についても「それぞれのプラスの面が前に出るよう、補いながら長所を伸ばすのが私の仕事」と、愛情のこもった眼差しで語った斎藤。バレエ団員約70名のほか、子役やエキストラもあわせて総勢100名ものキャストが登場する新制作版の『眠り』の開幕まで、さらにブラッシュアップを重ねていくことでしょう。本番まであと少し! 楽しみにお待ちください。


取材・文 富永明子(サーズデイ)

Photos:Shoko Matsuhashi

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