東京バレエ団は『ラ・バヤデール』の開幕を控えて、稽古も最終段階に突入。さる6月4日、公開リハーサル、および指導者のオルガ・エヴレイノフ、主演の上野水香、柄本弾を囲んでの記者懇親会が開催されました。
1988年からマカロワ版『ラ・バヤデール』の指導を手がけているエヴレイノフは、東京バレエ団では2009年のバレエ団初演、2011年、2012年の再演、また、昨年8月の〈祝祭ガラ〉での"影の王国"抜粋上演時にも来日し、指導にあたってきました。懇親会の冒頭、マカロワ版の魅力について「魔法のクオリティをもっている。フレージング、ムーヴメントがとても優雅なのです」。この日の稽古場では、第2幕冒頭から作中屈指の名場面、"影の王国"をブラッシュアップ。「ドント・ストップ! 止まらないで!」と、ダンサー一人ひとりの動きに目を光らせる彼女の、張りのある、伸びやかな声が印象的でした。
指導においてもっとも重要なことは、「ただステップを教えるのではなく、スタイルを発見していくこと、動きを理解していくこと、きちんとストーリーを理解し、踊りのなかでそれを演じきること、そのすべてを融合させ、一つのクオリティを生み出すことだと思っている」といいます。「たとえば"影の王国"で重要なのは、"ステップを踏む"のではなく、"ステップで踊る"ということです」
2009年の東京バレエ団との出会いを、「素晴らしい経験」とも。「でも、2度目のこと──2011年の春のことを考えると、こみ上げてくるものがあります。東日本大震災の直後、それぞれの事情で来日できなくなったゲスト・ダンサーやスタッフがいました。当時、英国ロイヤル・バレエ団で仕事をしていた私は、悩んだ末に、芸術監督のモニカ・メイソンに相談したのです。彼女は"日本に行くべきだ"と言いました。"芸術、ダンスは皆の励みになるのだから"と」と、目を潤ませる場面も。
ニキヤ役の上野、また今回全幕では初のソロル役となる柄本については、「以前よりずっと成長している」と期待を寄せます。
3度目のニキヤ役となる上野は、「ニキヤはとても強い女性で、内に秘めた情熱を持っている。回を重ねるごとに、もっと細かな心の動きが、少しずつ理解できるようになりました」。すると即座にエヴレイノフが「そのとおりよ! ピュアであることが、ニキヤを強くしているのです」。いっぽう柄本は「オルガ先生が指導されることを、できるだけ忠実に表現できるよう、日々練習しています」と謙虚にコメント。すると、「もっと上を狙って!」とエヴレイノフからすかさず激励がとび、スタジオでの日々の熱血稽古ぶりがうかがえました。
東京バレエ団の『ラ・バヤデール』を「パーフェクト!」と賞賛するエヴレイノフ。「最近上演される多くの『ラ・バヤデール』は、マカロワ版がベースとなっているといえます。マカロワ版の力強さを物語っていますね」と、作品の素晴らしさを力説しました。
その魅力を余すところなく伝える、充実の舞台にご期待ください。
photo:Shinji Hosono
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