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ロングインタビュー2016/04/06

【ダンサー・ロングインタビュー】 第7回-宮川新大

12歳から海外を中心に活動し、2015年8月から東京バレエ団に加わった宮川新大。4月29日にラコット版『ラ・シルフィード』主演を控える注目の新人に話を聞いた。   16-04.06_01.jpg*バレエをはじめたきっかけを教えてください。  ピアノやお習字と同じように、習い事のひとつでした。中学へ上がるとき、入賞しなかったらこれで最後にしようと思ってユース・アメリカ・グランプリの日本予選に出場したんです。そうしたら、まさかの1位。奨学金をもらえるなんて思っていなかったので驚きました。 *フル・スカラシップでジョン・クランコ・スクールへ留学されたのですね。  行って2日くらいで40度近い熱を出して、始まりはばたばたでした。もちろん英語もドイツ語もしゃべれないし。留学でいちばん印象に残っているのは、16歳から卒業までの2年間教わったピョートル・ペーストフ先生のクラスです。自分のクラスに出られなかった時、たまたまそのクラスを見て「なんだこれ!」って。みんな兵隊のようにびしっと揃った動きをしてる。マラーホフやツィスカリーゼを教えた名教師ですが、当時はペーストフ先生に習いたくてクランコ・スクールに来ている男子がたくさんいたんです。12歳のぼくにはすごい衝撃でした。 *ペーストフのクラスで学んだものは?  音の取り方とか、着地。猫のように音をさせない跳び方。軽いけれども強い足先、脚さばき。ぼくにとっては受けるだけでうまくなる魔法のクラスでした。マラーホフもエヴァン・マッキーも、教え子たちはきっと口を揃えて同じことを言うと思いますよ。競争も激しくて、同じクラスでペーストフのクラスに行けたのはぼくとダニエル・カマルゴの2人だけ。厳しく教えられて泣きそうになったけど、幸運だったと思います。 *カマルゴはシュツットガルト・バレエ団公演で大活躍していました。 16-04.06_02.jpg ダニエルはぼくにとって生涯の大親友。2人の"やんちゃ"を話し出したら明日になっちゃう(笑)。何かあっても相談できるし、ダニエルもぼくに話してくれるし。もちろん負けたくないっていうのもあります。いつか一緒に舞台に立ちたいです。 *卒業後、モスクワ音楽劇場バレエに入団されますね。  ぼくは飛び級で卒業したので、ジョン・クランコ・スクールを終えた時、みんなよりひとつ若い17歳だったんです。17だとドイツの法律で仕事に就けない。オーディションを受けようかと思ったんですが、アジア系は西洋人にはなかなか勝てない。それならコンクールで自分のいいところを見てもらおうと、もう一度ユース・アメリカ・グランプリに挑戦しました。モスクワ音楽劇場の芸術監督だったセルゲイ・フィーリンがぼくに満点を付けてくれて、迷わずロシアへ。ロシア語がまだペラペラというわけではなかったし、劇場のシステムもドイツとは違い、なじむまでは時間がかかったけど、ドイツとも日本とも違う、バレエとの深い繋がりを感じました。ダンチェンコはとてもきれいな劇場で、『ドン・キホーテ』『バヤデルカ』『白鳥の湖』など、いろいろな演目を観るのも感動でした。 *2013年にイーサン・スティーフェル率いるロイヤル・ニュージーランド・バレエに入団。  イーサンは小さい頃からぼくがこうなりたいと思う理想のダンサーの1人だったんです。まるでファンが写真やサインをもらいにいくみたいな気持ちでオーディションを受けました。幸いイーサンも気に入ってくれ、その場で契約をくれて。バレエ団の中では芸術監督とダンサーですが、一歩外に出たら親友みたいな存在。ツアーでアメリカに行った時、ニューヨークのお宅に一週間くらい泊めてもらったこともあります。よく一緒に飲みに行きましたし、奥さんのジリアン・マーフィー(ABT)にもよくしていただきました。 *宮川さんの性格が人を惹き付けるんですね。  飲みに来いっていわれたらどこでも行きますよ(笑)。ABTで「ミスター・バランシン」と呼ばれていたイーサンからバランシン作品をいろいろ教えてもらえて嬉しかったです。ニュージーランドはぼくが今まで行った中でもダントツに住みやすい国なんですが、バレエに関しては後進国。たくさんの舞台に出していただき、いい経験になったけど、イーサンが辞めたのを機に退団しました。 *そしていよいよ東京バレエ団へ。  斎藤友佳理さんがラコット版『ラ・シルフィード』の指導でダンチェンコに来られたとき、ぐうぜんお会いしたのが始まりです。その時ぼくは第一幕のパ・ド・ドゥの第一キャストに選ばれたのですが、ビザの問題で踊れないまま帰国してしまいました。ロイヤル・ニュージーランド・バレエを辞めて帰国し、将来について考えていた時、何度か見学させていただき、(佐野)志織さんや友佳理さんともお話をして入団を決めました。バレエ団の規模や歴史も大事だけれど、ぼくにとっては"人"が大切。友佳理さんがぼくを育てようとしてくれていることはすぐわかったし、この人なら信じられる、ついていきたいと思って。日本で働くのは初めてなのですが、みんなとてもあったかいし、優しくしてくれる。東京に住むことのほうがまだ慣れないかもしれないですね。ニュージーランドに比べると、まず人が多い!(笑) 今、海外ツアーの作品を4つくらい同時進行でやっていて、もう頭がパンクしそうです。 *去年の12月、オーストラリア・コンセルバトワールで踊った『コッペリア』が初めての全幕主演でした。 16-04.06_03.jpg 日本人のゲストとして海外で主役を踊れたのは嬉しかったです。推薦してくれたメイナ・ギールグッド先生や、コンセルバトワールの人たちも喜んでくれました。第2幕のフランツはほとんど寝てるので、スワニルダ役の河谷まりあさんのほうが百倍大変だったと思いますけど(笑)。マイムはまだ経験が少ないので、まりあさんと毎日相談しながらやりました。現地に行ってからメイナ先生に振付の指導を受け、もとからあった作品を踊るというより、一から作品を作り上げたような感じがありました。踊りだけじゃなくマイムや間の大切さも学びましたね。 *渡辺理恵さんとの『ラ・シルフィード』は2回目の全幕主役ですね。  『コッペリア』とは比べ物にならないほど大変だと思いますけど、今はまだ海外ツアーのほうの振りを覚えるので精一杯で。これから『ラ・シルフィード』も本格的にはじめる予定です。 *これから踊りたい作品や振付家は?  自分はやはりクラシック・ダンサーだと思うので、そこは伸ばしていきたい。『ラ・シルフィード』のジェームスは前からやりたかった役ですし、『ジゼル』のアルブレヒトも踊りたいですね。ワシーリエフ版『ドン・キホーテ』もすごく楽しそうだし。『ラ・バヤデール』など、与えられるならいくらでも挑戦したいです。他にも『オネーギン』のレンスキー、『エチュード』、バランシン作品もやってみたい。シルヴィ・ギエムの公演で踊ったフォーサイスの『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』もとても勉強になりました。自分でそう思わなくても自分に合う作品があると思うので、これからは作品に気付かされたり、育てられたりしていきたいです。  *バレエ以外で興味のあることは?  ギターが大好きで、楽器屋さんへ行くと2時間くらい出てこない。ニュージーランドにいた時は、バーのセッションに飛び入り参加したり、曲を作ったりしてました。70年代のブリティッシュ・ロックが好きで、エリック・クラプトンや吉田拓郎も聞きますよ。チャーの大ファンで、トークライブに行ったらまわりのお客さんがみんな年上で。  映画も見るし、友だちとご飯に行ったり、公園でぶらぶらしたり、あまりこもらず外に出ます。日本ではまだ余裕がないけど、落ち着いたらいろいろ観に行きたい。美術館へもよく行きます。ドイツでは教会のステンドグラスを見て回ったこともあります。 *日、英、独、露の4カ国語が話せるのは強みですね。  12歳から合計10年、ほとんど海外で過ごしましたから。小さい頃から海外へ出たのが、ぼくにとってはよかったのかもしれません。日本はきっちりしていて、いろいろ海外とは違うところもあり、悩むこともありますが、下手に自分を作るより自然な自分でいられたらいいなと思っています。  インタビューした1時間、明るい笑顔と言葉があふれるようだった。踊りへの情熱やオープンな人柄が幸運を呼び寄せるのだろう。24歳にしてピョートル・ペーストフ、セルゲイ・フィーリン、イーサン・スティーフェルら、バレエの第一人者たちとしっかり縁を結んだ若者は、これから始まる東京バレエ団での仕事にワクワクしているようだ。記憶に新しいのは、ブルメイステル版『白鳥の湖』で踊ったパ・ド・カトル。正確な基本姿勢から繰り出されるポーズや跳躍の伸びやかさ、内からはじけるような力強さが、くっきりと気持ちのいい印象を残した。日本での全幕初主演となる『ラ・シルフィード』はもちろん、現代作品やドラマティックな役での活躍にも期待したい。

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