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レポート2017/08/31

【ロング・インタビュー】 エルケ・シェパース(東京バレエ団初演「小さな死」振付指導) 

(取材・文:加藤智子)


 9月8日に初日を迎える〈20世紀の傑作バレエ〉公演で、東京バレエ団はイリ・キリアン振付「小さな死」バレエ団初演にのぞむ。8月中旬に始まったリハーサルで振付指導をするエルケ・シェパース氏に、作品について、またリハーサルの様子について話を聞いた。シェパース氏はネザーランド・ダンス・シアターのダンサーとして活躍、キリアンのミューズとして数々の作品を踊り、本作の初演ダンサーでもある。


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──1991年の初演の時のエピソードを教えてください。
 この作品には6組12 人のダンサーが出演しますが、私は4番目のペアでした。作品の後半では、3組のペアの踊りが展開されますが、その最初に登場するパ・ド・ドゥを踊っています。
 キリアンは、モーツァルトの音楽にインスピレーションを得てこの作品を創りました。彼は目の前にいるダンサーにいろいろ試させながら、ダンサーとの相互作用で創作を進めますが、ダンサーにとってそれは本当に素晴らしい体験です。
 とはいっても、辛かったことも覚えています。ちょうどその頃、私はプライベートで大変な時期だったもので、自信喪失気味になっていました。けれど、結果的に私が踊ったパ・ド・ドゥは素晴らしい出来になりました。苦悩から素晴らしいものが生まれるということは、実に興味深いことだと思います。

──そのパ・ド・ドゥはガラ公演などで抜粋上演される機会も多く、印象的ですが、グループで踊る場面もとても独創的ですね。
 冒頭、男性たちはフェンシングに使われるような剣を手に登場します。剣は男性らしさのシンボル、また男性器の延長のようでもあります。その後、女性たちが大きな布を使った踊りで出てくるのですが、彼女たちには、黒のドレスを着せたトルソーと踊る"スカートの踊り"というユニークな場面があります。これにはキャスターがついていて、ちょっとユーモラスな踊りもあるんですよ。
「小さな死」のタイトルにはエロティックな意味合いもありますが、この作品自体、官能的ではあるけれど、実に純粋です。ひと言で表すなら、"解放"、といえるかもしれません。いろんなことを解放することによって、自分自身からも解放されるということを、この作品は表現していると思います。

──数々のキリアン作品のなかで、「小さな死」はどのような位置づけにあるのでしょうか。
 1990年代前半のキリアンの作風は、余計なものがどんどん取り除かれていき、よりシンプルになっていきます。"ブラック・アンド・ホワイト"の時代と呼ばれていますが、「小さな死」の振付などはシンプルというより、かなり複雑ですよね。むしろ、ひたすらエッセンスを追求していった時代といえるでしょう。

──東京バレエ団のダンサーたちの取り組みはいかがですか。
 とてもいい舞台になるでしょう。ここで何かしら"発見"を得て、それを将来に役立ててもらいたいと思って指導しています。
 指導者としていつも思うのですが、中には、昔の私のように大変な時期を過ごしているダンサーもいるかもしれません。彼らを励まし、前へと進めさせてあげるような心理的サポートをすることも、私の務めだと思っています。


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>>>「小さな死」出演者はコチラ

>>>東京バレエ団〈20世紀の傑作バレエ〉公演詳細はコチラ

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