東京バレエ団「春の祭典」ダンサーインタビュー、第三弾は伝田陽美をおとどけします。
2016年のカリアリ公演で生贄役デビューを果たした伝田は、初役時のエピソードや役作りへのこだわりをたっぷりと語ってくれました。ぜひご一読ください。
*伝田さんの考える生贄の女とはどのような役ですか?
生贄の女は、男とは対照的で集団のなかの強い存在。男性から周りの女性たちを守るために生贄として自分の身を投げうるのですが、ポイントは、強い中にも"女らしさ"があるという点だと思っています。
最近の公演で言うと「ラ・バヤデール」のガムザッティを演じたときがそうだったのですが、私が演じるとその役のキャラクターがきつい感じに見られてしまうことが多くて、その点を難しく感じています。だから私の場合、まずは女らしさを。強さを大事にするのはその次です。ただ、生贄の女として踊っているときの私の感情は、言葉として口に出してみると「みんなには手を出すな!」とか「私ひとりで十分だろう!」とか、どれも逞しさが勝るようなものばかりで......。これでは「一に女らしさ、二に強さ」という私の理想とは完全に逆ですよね(笑)。冒頭は音楽も静かなのでまだ演じやすいのですが、後半の激しい場面になってくると、どうしても強い自分が出てきます。
*初めて「春の祭典」を踊ったとき、あの独特な振付には苦労しませんでしたか?
身体がついていかなくて筋肉痛になることはあっても、それほど苦労は感じていなかったと思います。「春の祭典」はずっと憧れていた作品ですし、何より東京バレエ団に入団してからは、コンテンポラリーがどんどん好きになっていったので。ただ、ベジャール作品は体力的にしんどい振付が多いので、その点は少し不安です。疲れてくると入りたいポジションに入れなくなってくるので、何度やっても正確にできるよう、練習ではひたすら回数をこなしていくんです。
ちょうど今「小さな死」のリハーサルにも取り組んでいますが、これもすごく難しい。二人組んで踊るので難易度はぐっと上がりますし、かなりきつい体勢で動くことが多い振付なんです。
*生贄の女役デビューは、昨年5月のイタリア・カリアリ公演でしたね。
このときは公演数が多かったので、回を重ねるにつれて慣れていく感覚がありました。
現地のお客様がとてもあたたかかったです。何公演目かの終演後にはわざわざ楽屋まで足を運んで、「本当に素晴らしかった」と直接感想を伝えてに来てくださった方もいて。あれは嬉しかったですね。
「春の祭典」2016年5月 イタリア・カリアリ歌劇場
*今年7月末には、モーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督ジル・ロマンさんによるリハーサル指導がありましたね。何か具体的な指示や要望はありましたか?
カリアリ公演を迎えるにあたっては飯田宗孝先生、佐野志織先生、奈良春夏さんに教えていただいたのですが、ジルさんがリハーサル指導にいらしたことで、ニュアンスなどに多少の変化がありました。身体にしみ込んでいた解釈を新しく塗り替えていかなければならないのは大変ですが、前回とはまた違った舞台ができそうです。
ジルさんからの要望で印象に残っているのは、「もう少し女らしく」と言われたことですね。手の甲を顔の横に置いて、恐る恐る覗くような振付があるのですが、そのときの目力が強すぎるからもう少し抑えて良いと言われました。
ジルさんが帰られたあと、今は吉岡美佳さんが一から細かく教えてくださっています。
*最後に、公演を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします!
今回の〈20世紀の傑作バレエ〉で上演する3作品は、明確なストーリーが展開していくクラシック・バレエ作品に比べると、どうしても難しいイメージを持たれる傾向にあると思いますが、あまり身構えずに、まずはストリートダンスを観るような感覚で、気軽に足を運んでもらえたら嬉しいです。きっと楽しめると思います!
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