クラシック・バレエの父、マリウス・プティパの生誕200年を記念して、東京バレエ団は〈夏祭りガラ〉、〈プティパ・ガラ〉を上演する。プティパが手がけた数多くの作品のなかからより抜かれたパ・ド・ドゥ、ディヴェルティスマンで構成され、プティパが目指したクラシック・バレエの美しさ、楽しさがたっぷりと詰まった舞台となる。
その他の公演の合い間を縫って断続的に行われてきたリハーサルは、夏本番に入っていよいよ本格化。なかでも『時の踊り』(オペラ『ジョコンダ』より)は、コール・ド・バレエの女性たち、ともにフレッシュな顔ぶれが配されているだけに、稽古場はひときわ賑やかだ。
『時の踊り』は、イタリアのポンキエッリによるオペラ『ジョコンダ』のなかのバレエ・シーン。オペラの少々重々しいストーリーとはまったく関係のない、劇中劇として上演される楽しい場面で、朝、昼、夜、夜中と移りゆく時の流れが、踊りによって次々と表現されてゆく。めまぐるしく変化するフォーメーションが美しい、クラシック・バレエならではの魅力にあふれた作品だ。
この日のリハーサルは、その後半、4つの時のダンサーたちが揃ったところに夜の女王と風の精が登場、一気にクライマックスへと盛り上がっていく場面。ダンサーたちが手に持った色違いのヴェールが、あちこちでひらひらとたなびいているのが印象的だ。
夜の女王を踊る柿崎佑奈は、「朝、昼、夜、夜中と踊りが展開していき、私が登場する場面はちょっと静かに始まるんです。三日月のついた王笏で皆を一人ずつ眠らせたところに風の精がやってきて、そのままアダージオが続きます。踊りはだんだん温かみを増していって、最後のコーダになるとパッと明るく──指導していただいているフョードロフ先生いわく、『いままでのことは全部ジョーク、と思ってしまうくらい、がらりと明るく』なるんです。そこからは、とても華やかなクライマックス。ここの表情の違いを出すのが難しいところです」。
風の精を踊るブラウリオ・アルバレスも、「パッと突然明くなる、その変化が面白い。みんながよく知っている音楽も出てくるので、何も難しいことを考えずに楽しんでいただけると思います」。ただし、「スタイルが難しい。軽い風の表現を、しっかりと動きで見せないといけません。身体のつかい方、表現、手の動きなど、まさにクラシックのなかのクラシック。テクニックがあっても、このスタイルが身体に入っていないと表現できない、という難しさを感じます」と教えてくれた。なるほど、そこがまさにクラシック・バレエの難しさで、大きな魅力なのだろう。
二人のパートナーシップにも注目だ。「綺麗で楽しいバレエですから、二人で創り上げる雰囲気をぜひ楽しんでください」とアルバレス。柿崎は、「ブラウリオにはすごく助けてもらっています。私は今回が初めての主役なので、実は最初はプレッシャーに負けてしまいそうだったのですが、最近になってようやく、アダージオを楽しみながら踊れるようになりました。課題はいくつもありますが、そのうちの一つがクライマックスのフェッテ。でもここで克服すれば、大きなプラスになる。頑張ります!」と意欲に燃える。
二人の華やかな踊りと、「これこそクラシック・バレエ!」ともいえる息のあった美しいアンサンブルを、心ゆくまで楽しみたい。
取材・文 加藤智子(フリーライター)
ボリショイ劇場の前で。柄本弾、秋山瑛、宮川新大審査委員を務...
今週金曜日から後半の公演が始まる「ロミオとジュリエット」は、...
新緑がまぶしい連休明け、東京バレエ団では5月24日から開演す...
あと1週間ほどで、創立60周年記念シリーズの第二弾、新制作『...
2023年10月20日(金)〜22日(日)、ついに世界初演を...
全幕世界初演までいよいよ2週間を切った「かぐや姫」。10月...
バレエ好きにとっての夏の風物詩。今年も8月21日(月)〜27...
見どころが凝縮され、子どもたちが楽しめるバレエ作品として人気...
7月9日、ハンブルク・バレエ団による、第48回〈ニジンスキー...
7月22日最終公演のカーテンコール オ...