去る1月14日に行われた東京バレエ団〈スタジオ・パフォーマンス〉をフリーライターの加藤智子さんに取材していただきました。公演にお越しいただけなかった方、ぜひレポートからパフォーマンスの様子を感じていただければ幸いです。
東京バレエ団のThe Tokyo Ballet Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)は4月の〈上野の森バレエホリデイ2019〉、第7回〈めぐろバレエ祭り〉へと続きます。進化を続ける東京バレエ団にどうぞご期待ください!
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団員が振付に挑戦、発表する場を──、と東京バレエ団が取り組んでいるプロジェクトが3年目を迎え、今年最初の公演が、1月14日、〈Choreographic Project 2019〉スタジオ・パフォーマンスとして行われた。これは、4月の〈上野の森バレエホリデイ〉、8月の〈めぐろバレエ祭り〉での上演に向けて、最初のステップともなる公演。日常のレッスン、リハーサルが行われているバレエ団のスタジオでの上演はこれが2回目となるが、今回は作品を発表する団員たちも会場の設営に携わるという、通常の公演ではなかなかできない体験も得られたという。
年末の公演数の多い時期と準備期間が重なり、斎藤友佳理芸術監督は「実現するのは難しいと思っていた」と慎重だったそうだが、木村和夫、岡崎隼也、杉山優一、ブラウリオ・アルバレスらが、空き時間を上手に使いながらリハーサルを重ね、作品を発表。観客の投票で選ばれる「観客賞」の対象となるこれらの作品のほか、後半には2つの特別上演作品が披露されるという充実の公演に。その上演作品は、ソロから10人規模の大作までとさまざまだ。
ブラウリオ・アルバレスの『Bird』は、金子仁美、オスカー・ラーニャ、南江祐生、後藤健太朗らがカワセミ、アホウドリ、シラサギ、フクロウとなって舞う、軽やかで朗らかな作品。2番目は岡崎隼也振付の『ひとり』。岡崎作品の常連ダンサー、沖香菜子、伝田陽美に秋山瑛が加わり、互いに響き合いながら、キレのある動きで内面にじわじわと迫る表現に。アルバレスのもう一つの出品作『夜叉』は、鬼婆伝説をもとに創作した作品。中川美雪、池本祥真を中心に、メキシコの音楽"ダンソン"と、和のテイストを見事に融合させ、ドラマをつくり上げる。バレエスタッフの木村和夫は女性ソロ作品『Salut d'Amour』での参加。「悩みや不安を抱きながら、それでも夢や希望に向かう若者」の姿を、秋山瑛が清々しい踊りで描き出した。前半最後に登場したのは杉山優一。自身がずっとバレエと向き合ってきたこのスタジオへの思いを、力強く、自作のソロ『Hommage』に込めて踊った。
特別上演作品として披露されたのは、まず、アルバレスの作品『MIZUKA』。上野水香のために振付けたソロで、彼女の可愛らしさ、個性が存分に活かされたチャーミングな作品に。最後は岡崎が昨年この場で発表した『理由』(出演は沖香菜子、伝田陽美、政本絵美、加藤くるみ)。シルヴィ・ギエムから高く評価され、彼女からアドバイスを受けて少し手直しをしたうえでのパフォーマンスだったが、上演を重ねてきたことでダンサーたちの演技も、より確固としたものになった印象に。
作品の誕生とともに作品が育っていく様子を見ることができるのは、こうしたプロジェクトの魅力の一つ。いつもとは全く違う横顔を見せるダンサーの姿に触れることができるのも独特で、次回はどうなるだろうかと期待が高まる。
終演後に団員と観客との歓談会が設けられたのも、新たな試み。振付者に感想を伝えたり、秘められた思いを探ってみたり、さらには次回作への期待を伝えたりと、創り手、受け手の双方にとって貴重な機会となったようだ。
取材・文:加藤智子[フリーライター]
写真:長谷川清徳
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