昨日(2月7日)、来月に東京バレエ団初演となる「海賊」のマスコミ向け公開リハーサル&記者懇親会を行いました。大作の初演とあってか、スタジオには大勢の記者の方がつめかけ、ダンサーたちの熱演も相まって、時折歓声も起こるほどの盛り上がりをみせました。そんな熱気あふれる公開リハーサル&記者懇親会を高橋森彦氏(舞踊評論家)のレポートでご紹介します。ぜひご一読ください!
幕開きの場面より
バレエ「海賊」はオスマン帝国全盛期の地中海で海賊たちが繰り広げる壮麗な一大ロマンだ。東京バレエ団初演に際し選んだのはアンナ=マリー・ホームズ版。"古典バレエの父"マリウス・プティパによる改訂を踏まえたコンスタンチン・セルゲイエフ版に基づく振付で、スピーディーかつ物語性豊かに展開する。
今回はマリー・ホームズが計5週間程リハーサルに立ち会う力の入りようで、この日は全3幕(プロローグ付)から第1幕と第2幕の途中までを公開した。
第1幕では海賊の首領コンラッドが奴隷商人ランケデムに競売された少女メドーラに恋し、彼女を買い取ったパシャ(オスマンの高官)の下から救う。
柄本弾(コンラッド)、上野水香(メドーラ)
川島麻実子(ギュルナーラ)、池本祥真(ランケデム)
メドーラの上野水香はチャーミングかつ魅惑的な踊り。コンラッドの柄本弾は堂々たる首領ぶりだ。ランケデムの池本祥真は高々とした跳躍に加え吸い付くような着地も鮮やか。ランケデムと踊るメドーラの友人ギュルナーラの川島麻実子は優美な体使いが映える。
通常は第3幕で踊られる3人のオダリスクの踊りを第1幕に配したのがマリー・ホームズ版の特徴の一つで、涌田美紀、二瓶加奈子、吉江絵璃奈が活きのよい踊りをみせた。
(左から)涌田美紀、二瓶加奈子、吉江絵璃奈
第2幕はキャストを変えて披露。メドーラの沖香菜子とコンラッドの秋元康臣、コンラッドの従順な奴隷アリの池本祥真が踊るパ・ド・トロワは大きな見せ場だ。沖の柔らかくしなやかな踊り、秋元の端正で渋い身のこなし、第1幕のランケデムに続く登場となった池本の滞空時間の長い跳躍に魅せられた。
コンラッドの仲間ビルバントの金指承太郎はロシア仕込みの新戦力で、恋人役アメイ(マリー・ホームズが東京バレエ団版のために命名)の奈良春夏と息もぴったり。そしてパシャの木村和夫の芝居の一つひとつがコミカルで楽しい。パシャのユーモラスな性格造形もマリー・ホームズ版の特色である。
沖香菜子(メドーラ)、秋元康臣(コンラッド)、池本祥真(アリ)
[写真中央] 奈良春夏(アメイ)、金指承太郎(ビルバント)
記者懇親会にはマリー・ホームズ、芸術監督の斎藤友佳理、上野、川島、柄本、宮川新大が出席した。
マリー・ホームズはキーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)で初めて踊った北米出身者で、師事したセルゲイエフ夫人のナタリア・ドゥジンスカヤから「海賊」の権利を得て改訂し世界中で振付指導を行う。「ダンサーだった頃に楽しんで踊りましたがステージングも楽しい」とにこやかに語る。
斎藤は「海賊」を取り上げるのは「ダンサーの個性を活かせる全幕物」であること、プティパ生誕200年のシーズンを締めくくる意味合いがあることを説明し、マリー・ホームズ版を「シンプルで分かりやすく、ちょうどよい長さで、私にとって大切な「海賊」のキャラクターの踊りも残されている」と評する。
上野は「女性のいろいろな面を表現する余地があるので自分なりのメドーラ像を創りあげたい」と抱負を述べ、川島は「和気あいあいとしてリハーサルや本番に臨めるのは今の東京バレエ団ならでは」と団の充実を伝えた。柄本は「男性ダンサーにとって「海賊」は憧れ!」と意気込み、アリとランケデムを日替わりで踊る宮川はリハーサル中に「自分がアリなのかランケデムなのか分からなくなる」と笑いを誘う。
配役に際してはトライアウトを行いマリー・ホームズと協議を重ねて決めた。この日のリハーサルに接した限りでも適材適所だと納得させる。
[左より] 宮川新大(アリ、ランケデム)、上野水香(メドーラ)、アンナ=マリー・ホームズ(振付家)、斎藤友佳理(芸術監督)、川島麻実子(ギュルナーラ)、柄本弾(コンラッド)
「"プティパ・イヤー"の最後を飾る、愛と冒険のグランド・バレエ!」という惹句に偽りはあるまい。創立55周年を迎えた東京バレエ団の新たな船出を飾る華やかな公演になりそうだ。
取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)
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