勅使川原三郎氏の新作『雲のなごり』(世界初演)のリハーサルの佳境を迎えた東京バレエ団。10月11日、記者や評論家を招いての公開リハーサルと記者懇親会を実施しました。その様子をレポートします。
左から秋元康臣、柄本弾、佐東利穂子氏(KARAS)、三雲友里加
10月上旬に海外から帰国、8月以来中断していた稽古を再開した勅使川原氏。世界初演の幕が開くまで2週間あまり、「いまは作品の土台となるところをつくっていますが、そこがとても大事であり、いちばん面白いところでもあります」と語り、稽古に入ります。
リハーサルを見守る勅使川原氏
出演は、沖香菜子、三雲友里加、柄本弾、秋元康臣、池本祥真の5人と、演出助手も務める佐東利穂子氏(KARAS)の6人。この作品のために勅使川原氏が選んだ音楽、武満徹の『地平線のドーリア』(1966)と『ノスタルジア-アンドレイ・タルコフスキーの追憶に-』(1987)の響きに満たされたスタジオで、ダンサーたちはひたすら、作品の「要素」となる動きを身体に染み込ませるべく、身体を研ぎ澄ませます。
沖香菜子
池本祥真
三雲を指導する勅使川原氏
公開リハーサルに続けて行われた記者懇親会冒頭、創立55周年記念委嘱作品として、初めて日本人振付家による新作の上演が実現することに触れた芸術監督・斎藤友佳理の言葉を受け、「こういった機会をいただき、とても嬉しい。よく海外のアーティストから、『なぜ日本のカンパニーに振付けないのか』と言われていました」と思いを明かした勅使川原氏。
「創作をするとき、まるで身体のために音楽があるように感じます。きちんと向き合い、あるいは深くその音楽を愛さなければ、また身体的に交わらなければ、その音楽を使うことはならないという気持ちがありますが、いつか、武満さんの『地平線のドーリア』で作品を創りたいと思っていました」とも。藤原定家の歌「夕暮れはいずれの雲のなごりとてはなたちばなに風の吹くらむ」に想を得たことにも触れ、「夕日が暮れるときの、時間を超えたその最後に残る花の香り──。それは匂いという現象を受け取った知覚ではなく、なごりという感覚が残るということ、と感じたのです」。
左から柄本弾、秋元康臣、沖香菜子、佐東利穂子氏(KARAS)
スタジオでは、「星の運行のように」「光の反射のような」と、はっとさせられるような言葉を投げかけ、ダンサーたちを指導する勅使川原氏。音に対する反応の仕方、強度、また緩めることの重要性など、繰り返し説いていく姿は実に印象的。
「彼らとのやりとりの中で、"問い"こそが答えになることがあり、その"問い"をきちんとしなければならないということを学んでいます。彼らの身体が徐々に変化していくことが、面白い。分厚い本の、一頁一頁を読み進んでいくような日々です」
皆をリードしていた佐東氏も、「(勅使川原氏演出の)オペラ『魔笛』で一緒だった人もいるけれど、毎回、関わる人たちによって、また音楽によって、作品がどうなるかはまったく未知と感じています。公演まで残された時間はあまりないけれど、一日一日、得ることは多いと思っています」と笑顔に。
佐東利穂子氏(KARAS)、勅使川原三郎氏、斎藤友佳理(東京バレエ団芸術監督)
ダンサーたちも、「新しい世界にどれだけ入っていけるか、これは挑戦だと思っています」(沖)などと意欲的。本番ではきっと、それぞれが、これまでと全く異なる新たな一面を見せるはず。世界初演の舞台、どうぞご期待ください。
左から秋元康臣、佐東利穂子氏(KARAS)、勅使川原三郎氏、斎藤友佳理、柄本弾、沖香菜子
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