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レポート2020/01/20

〈スタジオ・パフォーマンス〉試演会レポート

まもなく本番を迎える東京バレエ団〈スタジオ・パフォーマンス〉。去る1月14日に、本番を意識した試演会を行いました。その様子を加藤智子さん(フリーライター)のレポートでお贈りします。ぜひご一読ください!


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今年で4年目となる東京バレエ団の〈Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)〉が動き始め、1月25日、26日にスタジオ・パフォーマンスが開催される。本番の約2週間前、バレエ団のスタジオでは、指導陣やスタッフたちが見守る中、全作品の試演会が行われた。

〈Choreographic Project〉は、団員たち自らが創作した作品を発表する場を設け、彼らの創造力、表現力を高めていきたいという斎藤友佳理芸術監督の発案により2017年にスタート。東京バレエ団でのスタジオ・パフォーマンスを行い、東京バレエ団友の会アッサンブレ会員をはじめとする一般の観客にも公開している。ここで誕生したいくつかの作品が、〈上野の森バレエホリデイ〉や〈めぐろバレエ祭り〉のステージで上演されてきたが、より多くの観客に向けて上演を行うことで、ダンサーたちは作品をブラッシュアップさせながら、創作活動におけるより確かな経験を重ねている。
成果は、いろいろな場面であらわれている。たとえば、2019年12月に新制作された『くるみ割り人形』では、岡崎隼也とブラウリオ・アルバレスが振付の一部を担当。また二人は、昨年末の〈東急ジルベスターコンサート〉で、東京バレエ団のダンサーたちが踊る作品の振付も手がけた。
彼らの振付家としての活躍は、より若い世代のモチベーションにもつながるだろう。今回は、〈Choreographic Project〉始まって以来初めて女性団員がエントリーし、入団1年目、2年目の若手も創作にチャレンジ。これまで以上に、個性あふれる多彩な作品が並ぶスタジオ・パフォーマンスとなりそうだ。


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金子仁美の振付作品より

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安井悠馬の振付作品より


試演会のトップバッターを務めたのは、振付家としては紅一点の金子仁美。ダンサーとしての喜びや苦しみ、心の奥に秘めた葛藤を、長谷川琴音演じるバレリーナに託し、一つの作品にまとめ上げた。
自作のソロを踊った安井悠馬は入団1年目。十代の頃からたびたび振付に取り組んできたという彼は、赤く塗られた木刀というシンボリックな小道具を用いて、エネルギッシュなダンスを見せた。
ブラウリオ・アルバレスは2作品を出品。男性5人による作品は、外国人の目に映る日本の銭湯でのひとコマをコミカルにデフォルメして表現、皆を笑顔に。もう1作品は、未来を思わせる社会に暮らす人々のコミュニケーションを描いた力作。言葉を介さず、手を触れることで意思疎通をする登場人物たちの姿は独創的だ。


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いずれもブラウリオ・アルバレスの振付作品より


研究生からアーティストとなって1年目の山下湧吾は、若手の男女2組で元気いっぱいの楽しいダンスを展開。
岡崎隼也が今回取り組んだのは、「カルメン」。『運命』というタイトルのもと、11人ものダンサーを効果的に配し、ドラマを組み立てる。


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山下湧吾の振付作品より

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岡崎隼也の振付作品より


振付を手がけた団員たちは皆、「まだまだ手を加えなければ」と意欲的。不安や緊張の入り混じった表情で、舞台スタッフに相談を持ちかける者も。本番までの2週間で、振付・構成の精査、小道具や衣裳の調整、タイトルの再考と、追い込みをかける。出品・出演のないダンサーたちにも「全員、積極的に参加してほしい」と話す斎藤芸術監督。彼らが一丸となって「手作り」の公演を行うことで、一つでも多くのことを学んでもらいたい、と願っているようだ。


取材・文:加藤智子(フリーライター)

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