去る8月に上演された〈横浜ベイサイドバレエ〉の野外ステージでは「ギリシャの踊り」のソロを、9月の〈舞踊の情熱〉公演では「M」のソロを踊り、ベジャール作品で高い評価を確立してきた池本祥真(東京バレエ団ファースト・ソリスト)。11/7(日)に上演する「中国の不思議な役人」では、第二の無頼漢―娘、という異色の役柄に挑戦します。本番を前にした池本が作品への想いを語りました。ぜひご一読ください!
リハーサルより。第二の無頼漢ー娘を演じる池本祥真
「娘」という役をどう演じるかが最大の課題
Q 今回初めて挑戦する作品ですが、配役を聞いたときの心境はいかがでしたか。
池本祥真 バレエ団の同僚たちと「また踊りたい作品」を話すときによく名前があがっていたんですが、僕が入団してからは(2018年入団)上演していなかったので、配役を聞いたときは「娘??」という感じでした。まわりからは「池本くんなら似合うよ」とは言われましたが(笑)。
Q リハーサルも佳境に入ってきましたが、どのような作品だと感じていますか。
池本 第一印象は、「これまでやってきたベジャール作品とテイストが違う!」。「ギリシャの踊り」「舞楽」「M」そしてまだ踊っていませんが「火の鳥」などは明確な物語がなく、動きによってストーリーが連なっていく、どちらかというとテクニックが重要な作品で衣裳もシンプルです。対して「中国の不思議な役人」は物語があって、衣裳も役のキャラクターを反映させたもの。役をどう演じるかが最大の課題だと感じています。
振付としてはクラシック・バレエにはない形ですが、踊っていてとても気持ちが入りやすいんです。これはベジャールさんの作品ならではだな、と感じます。
2017年の上演より
役の内面をきちんと理解し、動きを台詞のように
Q リハーサル中に指摘されたことで、印象に残っていることはありますか。
池本 リハーサルの進め方でいうと、「M」の場合はベジャールさんの型をしっかりやることが第一でした。そのため「指は揃えて」「首の角度は」という動きのニュアンスを注意していただくことが多かったです。今回、十市さんは「この時娘はこういうことを考えているから、次のこの動きにつながっていく」というように、1つ1つの動きに込められた意味を非常に丁寧に教えてくださっています。役の内面をきちんと理解し、動きを台詞のように、自分の中にしっかりと入れたうえで踊りとして表現していかないと意味をなさない作品です。
Q 女性を演じる男性、を演じるわけですが、どのようなことを感じていますか。
池本 ヒール靴に大苦戦してます。まだ全てとおして踊っていないですけど、捻挫しそうです(苦笑)ただ、ヒールを履くことで足元が不安定になるので、そこをうまく利用して女性的なラインを表現できたらと思っています。
本質的にこの役は男です。なのであまり美しく演じてもいけない。お客様には美しさを期待される方もいらっしゃると思うので、難しいところですね。
まだ完全につかめてはいないですけど、彼は自分の中に葛藤をかかえていて、女を演じる振りの中に時折、自分に嫌気がさしているような部分があるんです。彼の内面が振りのはしばしににじみ出ることで作品に深み、面白さが出る。目指すところは結構明確になってきました。
リハーサルを指導する小林十市
振付どおりにやると音にピッタリとはまっていく
Q バルトークの音楽についてはどうですか。
池本 確かに音をとるのが難しい作品なんですけど、ベジャールさんの振付ってそのとおりにやると、音にピッタリはまっていくんですよ! 曲が盛り上がるところは振りも激しく、穏やかな曲調では振りも静かになる。セリフが音にのっているような感覚で、役の気持ちもものすごくのせやすい。音楽に助けられていると感じます。
Q 最後に、お客様にこの公演の見どころを改めてご紹介ください
池本 「かぐや姫」は世界初演だし、僕もすごく楽しみです。こんなすごいプログラム、東京バレエ団でしか上演できないですね。
「中国の不思議な役人」はこれまで全く接点のなかった作品だけど、ダークな雰囲気のあるとてもかっこいい作品です。僕の役はだいぶ変わってますけど(笑)ただ、改めて思うと、バレエで男性が女装して踊る役って基本はコミカルな役じゃないですか? 女装するシリアスな役は他に思いつかないです。その意味でも独特の世界観のある作品ですから、お客様にしっかりとその雰囲気を感じていただけるように、そして僕の新しい一面をみていただけるように頑張りたいと思います!
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