レポート2022/07/11
開幕直前! ――〈ベジャール・ガラ〉リハ―サル・レポート
〈ベジャール・ガラ〉公演開幕まであと10日余りとなりました。東京バレエ団のスタジオでは4作品のリハーサルが展開中。うだるような暑さの中で佳境を迎えた稽古の様子を、臨場感たっぷりの写真とともにお届けします。
元モーリス・ベジャール・バレエ団の小林十市氏を指導者として招き、9年ぶりの上演に取り組む『火の鳥』。パルチザンを率いるリーダー・火の鳥の闘争、その不屈の精神を力強く描くバレエですが、タイトルロールのソロのリハーサルは、まさに"熱血指導"の様相。この役に初挑戦する池本祥真、大塚卓は、次々と要求される高度な課題に取り組んでいます。
小林十市氏の指導を受ける池本祥真(左)、大塚卓(右)
小林氏にとって『火の鳥』は、モーリス・ベジャール・バレエ団時代の代表的レパートリーの一つ。そんな彼も「すごく緊張した」という最初のソロは、激しい動きが隙間なく連なり、テクニック的にも体力的にもずば抜けてハードだそう。本公演の初日、2日目を踊る池本も、3日目を踊る大塚も、一度通すだけで立ち上がれなくなるほどに体力を消耗。その後、続きの踊りへと促す小林氏の合図に、池本が大きな息をついて気合いを入れる場面も!
池本祥真
しばしば立ち上がり、身体の使い方や呼吸の仕方について事細かに実演する小林氏。池本、大塚ならではの火の鳥を引き出すべく、熱いリハーサルが続きます。

フェニックスを演じる柄本弾
いっぽう、インドの伝統音楽で踊られる『バクチ』は、ベジャールが1968年に創作した3つのパートからなる作品。そのうち、東京バレエ団が2000年にレパートリー化した『バクチIII』は、破壊と再生の神シヴァとその妻シャクティの踊りで、バレエ団初演時の主役ダンサーに、芸術監督の斎藤友佳理とバレエ・スタッフの木村和夫も名を連ねていました。今回の上演に向けてのリハーサルはこの二人が中心になって進められていますが、1968 年の初演を踊り、2000年には東京バレエ団のリハーサルを指導したメイナ・ギールグッド氏がオンラインで指導、さらに小林十市氏からも助言を受けるという万全の体制がとられています。
斎藤友佳理から指導を受ける伝田陽美
東京バレエ団が『バクチIII』に取り組むのは、2015年のニューヨークでのユース・アメリカ・グランプリのガラ以来7年ぶりのこと。今回は上野水香と柄本弾、伝田陽美と宮川新大の2組が主役を踊りますが、ベジャール自身の指導を受けた経験を持つ上野以外は皆、今回が初役。クラシックの作品にはまず登場しない、インドの神々の像が現れたかのような独特のポーズが次々と繰り出されるだけに、リハーサルは試行錯誤の連続。とくに、お互いの手脚を複雑に絡み合わせてのリフトは未知の世界への挑戦! ベジャールによるインドの神々のイメージを追求する旅は、さらに続きます。
宮川新大
『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥは、昨年、東京バレエ団での38年ぶりの復活上演が実現した作品。1966年に創られたベジャールの傑作からの抜粋で、ベルリオーズの音楽にのせて、敵対する二つの家の若者たちが愛のデュエットを展開します。数あるベジャール作品の中でも、クラシックにより近い美しい動きと、活き活きとした感情表現が大きな魅力に。初日と2日目を踊るのは、昨年に引き続いて配役された秋山瑛と大塚卓、3日目は、やはり昨年本作を経験している足立が、初挑戦の樋口と組んで登場します。
足立真里亜、大塚卓
指導にあたるのはバレエ・ミストレスの佐野志織。このパ・ド・ドゥでは、憎み合い、戦う男たちがコール・ド・バレエとして登場しますが、佐野はその指導でも大活躍、彼らの登場により、ベジャールがこの作品にこめた平和への強い思いが浮き彫りになっていきます。
別のスタジオでは、昨年の全国ツアーでも上演した『ギリシャの踊り』のリハーサルも進行中。この作品は、昨年の〈HOPE JAPAN 2021〉に引き続き、小林十市氏が指導を担当。毎日、ダンサーたちの前に立ち、熱い指導を重ねています。
きょうもまた、東京バレエ団のスタジオはフル稼働。ダンサーたちは、それぞれの作品の世界をさらに深めるべく、稽古を重ねています。色とりどりのベジャールの傑作を集めた〈ベジャール・ガラ〉は、7月22日(金)開幕です。どうぞお楽しみに!
Photos Shoko Matsuhashi
東京バレエ団〈ベジャール・ガラ〉
会場:東京文化会館