レポート2022/09/16
第10回 めぐろバレエ祭り 現地レポート
今年もバレエの夏は熱かった! 2022年8月15日(月)〜21日(日)、第10回目となる〈めぐろバレエ祭り〉が開催されました。コロナ禍のため、各種イベントに定員や座席指定を設けるなど徹底した感染対策を行いつつも、会場のめぐろパーシモンホールは連日大にぎわい。うきうきした足取りの家族連れやバレエファンなど、子どもから大人まで延べ8500人以上が来場しました。
オープニングを飾ったのは、東京バレエ団附属東京バレエ学校のスクールパフォーマンスです。生徒たちにとっては、日頃のがんばりの成果を披露する晴れ舞台。15日から17日にかけての3日間、未来のダンサーたちが連日の猛暑も吹き飛ばすエネルギッシュなステージを繰り広げました。
18日からの4日間は、東京バレエ団のダンサーたちがフル回転の大活躍! レッスン指導に、トークに、そしてもちろん舞台にと、様々なイベントに登場して来場者を楽しませました。
まずはバレエを「習っている人」向けのイベントから。今回の〈めぐろバレエ祭り〉では、東京バレエ団の現役ダンサーをはじめ豪華講師陣が指導にあたる、4つのスペシャル・レッスンが行われました。
ひとつ目は18日に開催された「秋元康臣のスーパー・バレエ・レッスン」。日本を代表するダンスール・ノーブルである秋元康臣が10歳〜18歳の男子にバー&センター・レッスンを指導するというドリーム企画に、年齢もレベルもさまざまなボーイズが集まりました。秋元は自らお手本を見せながら、シンプルなエクササイズを通してバレエの基礎を細やかに指導。とくにバー・レッスンでは参加者一人ひとりを見て歩き、脚からつま先の伸ばし方や腕の意識の仕方など、身体の正しい使い方を丁寧にアドバイスしていきました。トップダンサーの動きを真剣な眼差しで見つめ、そのニュアンスを少しでも取り入れていこうとする上級レベルの生徒たち。いっぽうバレエ歴の浅い男の子たちも、少々難しいステップにもひるまず食らいついていく素晴らしいガッツを見せました。レッスン後にはボーイズからの質問に秋元が答えるQ&Aタイムも。「食事で気をつけていることは?」「筋肉をきれいにつけるには?」「毎日できるトレーニングを教えてください」など、次々と質問が飛び出しました。
秋元康臣のスーパー・バレエ・レッスン
18日にはもうひとつ、〈めぐろバレエ祭り〉の名物イベント「群舞を踊ろう!」も行われました。こちらはいわゆる"大人バレエ"のみなさんが、古典作品の群舞に挑むという大人気企画です。このたび挑戦したのは『バヤデルカ』より"影の王国"......そう、クラシック・バレエの群舞の極みとも言える、あの名場面です! ただし、一人ずつ坂を降りてくるところは、今回は割愛。その後から始まる、静謐で幻想的な、まさにコール・ド・バレエの一体感が問われる場面を練習しました。メイン講師は東京バレエ学校教師の矢島まい、アシスタントは同じく教師の片岡千尋と東京バレエ団ダンサーの中沢恵理子が担当。練習時間はウォーミングアップを含めてジャスト2時間......はたしてあの難しい群舞が仕上がるのか? ところが参加者のみなさんは、そんな心配もどこ吹く風。見事な集中力と団結力で振りを覚えて踊りきり、講師陣やギャラリーのみなさんから拍手が沸き起こりました。
群舞を踊ろう!
20日には、プリンシパルの上野水香が登場。自身が「人生でいちばん多く踊ってきた」と語る『白鳥の湖』のオデット&オディールのエッセンスを、16歳以上の女性のみなさんに伝授するスペシャルなワークショップが行われました。題して「上野水香の『白鳥』レッスン!」。まずはオデットのヴァリエーションの前半と最後のディアゴナルを抜粋して練習。みなさんでひとしきり汗を流した後は、オデットとオディールの演技の違いにフォーカスした表現力のレッスンに移りました。白鳥と黒鳥で、目線やアームスの使い方はどう違うのか。「私はいつもこうしています」と、自身の経験をもとに語られる上野のアドバイスは極めて具体的で、ハッとするほどの説得力。プリマが直伝する表現の極意に、参加者のみなさんは真摯な表情で耳を傾けていました。
上野水香の『白鳥』レッスン!
また同日には「水谷実喜に教わる『オーロラ』レッスン」も開催。英国バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパルに昇格したばかりの水谷実喜さんが、18歳以下のガールズにオーロラ姫のヴァリエーションのポイントを指導しました。
レッスン系のイベントでは、バレエにはじめてチャレンジするキッズ向けのワークショップ「はじめてのバレエ」「親子でバレエ・ストレッチ」や、バレエ経験のある小学1〜3年生のためのクラス「もっと上手に」も例年通り開催。今回もすぐに満席となる人気ぶりで、たくさんの子どもたちがバレエに挑戦しました。また、振付家・ダンサーの田畑真希さんによる「からだであそぼう だれでもダンス★」は、〈めぐろバレエ祭り〉では今回がはじめての実施。3歳〜7歳のちびっこたちが身体と想像力をめいっぱい使って、遊びながら自分だけのダンスが生まれていく体験を楽しみました。
はじめてのバレエ
そして〈めぐろバレエ祭り〉の華といえば、やっぱり東京バレエ団による生の舞台! 今回は「子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』」を、20日・21日の2日間で全4回上演しました。全幕の見どころをギュギュッと凝縮した、はじめてのバレエ鑑賞にもぴったりのバージョンながら、バレエファンにとっても見ごたえ充分な人気演目です。主役のキトリ&バジルを演じたのは、中川美雪&宮川新大、涌田美紀&池本祥真、秋山瑛&生方隆之介、伝田陽美&柄本弾の4組。ベテランたちの圧倒的な輝きと、新星たちの清々しい煌めきが弾け合うステージとなり、各回とも熱い拍手に包まれました。
子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』
また21日の朝には、東京バレエ団が舞台上で行うクラス・レッスンを見学できる「公開レッスン」も行われました。こちらも感染対策のため、今年は入場無料ながら全席指定で開催。今回も例年通りの大人気で、近所にお住まいの目黒区民の方や、東京バレエ団のファンクラブ会員のみなさんなど、約600名のお客様が会場を埋めました。
公開レッスン
楽しかったお祭りも、ついに最終日。連日、「ティアラをつくろう!」「ミニトゥシューズにデコレーションしよう!」「ぬり絵であそぼう!」といった手作り系イベントのスペースとして賑わってきた小ホールロビーが、最終日の21日には夏祭り感あふれる「バレエ縁日」に。「キトリのちょうちん作り♪」「キラキラ☆デコ風鈴作り」コーナーはハンドメイド好きな子どもたちで常に満席。大人でも難しいと評判の(?)「海賊の花輪投げ」にも、たくさんのキッズが果敢にチャレンジしました!
恒例の「ダンサーズ・トークinめぐろ」も最終日に開催され、今年は東京バレエ団プリンシパルの上野水香と宮川新大が登場しました。小ホールの中央に設えられたやぐらの上に現れた上野と宮川は、なんとも艶やかな浴衣姿。そんなふたりの共通点といえば「理想的な脚〜つま先のライン」ということで、話題は「美脚の秘訣」からスタートしました。「脚のラインを美しく保てるように稽古するのはもちろんですが、一番大事なのは、足をただ出すだけの動きにもどれだけ心を込められるかだと思う」(上野)、「ジョン・クランコ・スクール留学時代に、恩師の先生に徹底的に鍛えていただけたおかげです」(宮川)。そのほか、愛用のトウシューズ/バレエシューズのことや、休日のリラックス方法、そして10月の『ラ・バヤデール』公演についてなど、テンポ良くトークを繰り広げました。
ダンサーズ・トークinめぐろ 上野水香、宮川新大
そして祭りのフィナーレはやっぱりこちら!〈めぐろバレエ祭り〉のトレードマーク、「スーパーバレエMIX BON踊り」です。感染対策のため、1回30分ずつ×2回の実施、各回90名の定員制という条件付きながら、どちらの回もあっという間に満員御礼。しかも今年の振付指導は宮川新大。さらに上野水香をはじめダンサーたちもサプライズで登場して、会場を沸かせました。ピチピチ跳ねる"目黒のさんま"を抱えたり、ご先祖様に「こんにちは!」と挨拶したりする楽しい動き、そしてさりげなく織り込まれた『ボレロ』風(!)のポーズ&ステップ。バレエファンも歓喜するこのBON踊りを振付けたのは、ご存じ小林十市さんです。東京バレエ団のダンサーたちも加わって、誰もがマスク越しにもわかる笑顔で踊りに踊った30分......最高潮の盛り上がりのなか、今年の〈めぐろバレエ祭り〉は幕を閉じました。
左から 榊 優美枝、上野 水香、宮川 新大、中川 美雪
(阿部さや子)
Photo:NBS/Mizuho Hasegawa/Hidemi Seto