6月下旬からスタートした東京バレエ団の〈第34次海外公演〉は、このたびポーランド、イタリア、オーストリアの3か国5都市11公演に及ぶ約一か月の旅程を無事、終了しました。各地で盛況を続けた公演の中でも、「日本オーストリア友好150周年」の一環として、30年ぶり3度目の出演となったウィーン国立歌劇場公演は、地元のテレビ局や新聞が多く取り上げ、3日間がソールド・アウトとなる大盛況でした。その公演の批評を地元の有力4紙から抜粋してお届けします。
photo:Alexey Semenov
●プレッセ紙 Die Presse テレーゼ・シュタイニンガー著 2019年7月4日
ベジャールの「カブキ」 かつての日本そしてヨーッロッパの美学
ウィーン国立歌劇場。東京バレエ団が今でも素晴らしい1986年のクリエイションを上演。
「女性ダンサーがトウシューズでアラベスクをするとき、手は強く曲がり、頭は斜めに傾いている。また着物を着たシーンでは動きの自由が制約されるが、二つの美学が互いに融合しあっている。黛敏郎の音楽は、尺八と琴の音が主流で、その響きは耳に麻酔をかけられたようになる。ストーリーはヨーロッパ人には混乱するように思えるが、クラシックバレエとの結びつきにより全く違う美学が身近に感じられたことが、この公演の素晴らしさでもあった。
ソリストの上野水香と柄本弾のテクニックは素晴らしいが、その他のダンサーの動きも、バレエのしなやかな動きに見慣れている目には、非情に強いアクセントと力強い踊り、特に最後のシーンで47人のダンサーが厳格なフォーメーションで戦いの動きや儀式的自害を思わせる踊りは圧巻である。」
●スタンダード紙 Der Standard ヘルムート・プレープスト著 2019年7月4日
侍の復讐
「日本の豪華な衣装で、日本の文化のアイデンティティが西洋の美学と踊りの中に見出される。特に最後のシーンでは、日本の国旗の日の丸が大きく舞台に映し出される。
東京バレエ団はベジャールの思いを継承し、素晴らしい舞台を展開している。音楽は黛敏郎で、かなりの編成のオーケストラはテープであるが、大変に印象深い。ダンサーは柄本弾や説得力のあるバレリーナの上野水香が光っていた。」
●クローネン・ツァイトゥング紙(クローネン新聞)Kronen Zeitung
カールハインツ・ローシッツ著 2019年7月4日
ウィーン国立歌劇場:
東京バレエ団がモーリス・ベジャールの「ザ・カブキ」で客演
日本の歴史の絵巻
「ウィーン国立歌劇場はリング通りに開場して今年で150周年を祝う。そしてオーストリアと日本の友好が1869年に始まり同じく150周年という記念の年に、東京バレエ団がモーリス・ベジャールの「ザ・カブキ」でウィーンに客演している。(最後の公演は今日7月4日) 見る価値あり!
歓声とブラボーの嵐であった。東京バレエ団は1986年に著名な振付家モーリス・ベジャールの「ザ・カブキ」を東京で初演し、その半年後にはウィーンでも最初の上演が行われた。
今回は再演ということになるが、日本の18世紀以来の劇場の様式が多く取り入れられ、それがベジャールの(絵巻の)ファンタジーとなり、君主を失った47人の浪人の物語が展開される。政治的やり取りから、復讐の殺害、そして自害へと進む。黛敏郎の音楽は情景をよく描写しベジャールの緻密さをも表現している。
素晴らしく、緊張感のある"生きた絵巻"である。大変に印象深いキャストで21の役の全てが素晴らしいが、特に主役の由良之助を演じた柄本弾、秋元康臣、そして宮川新大、上野水香が挙げられる。コール・ド・バレエは素晴らしい群舞であった。」
●ヴィ―ナー・ツァイトゥング紙(ウィーン新聞) Wiener Zeitung
リッタ・ルードゥレ著 2019年7月4日
東京バレエ団がウィーン国立歌劇場で
モーリス・ベジャールの伝統豊かな振付「ザ・カブキ」で客演
エキゾチックな冒険
「柄本はこの二つの役を、もう何年も前から踊っているが、様式的にも、ベジャールと日本の伝統的動きを結び合わせていて、ヨーロッパと日本の連結役を果たしている。ほとんど舞台に出ずっぱりであるが、最後に熱狂的な賞賛を浴びたのは当然であった。ベジャールは、日本のダンサーのソロやパ・ド・ドゥの振付に何の困難もなく見事に成し遂げている。女性ダンサーたちの、時にトウシューズで爪先立った動きは、愛らしく舞台を飾り、伝統的な化粧が彼女たちの華奢な顔を陶器の人形のように見せていた。9つのシーンで語られる歴史は複雑で、日本の音楽は耳になじみがなく、歌もジェスチャーもその意味が分かりにくいが、しかしながら、「ザ・カブキ」を体験することは、色彩豊かでエキゾチックな冒険である。
最後のカーテンコールは、満席の観客の感動を伝えていた。」
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