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レポート2018/11/14

「スプリング・アンド・フォール」公開リハーサルレポート

 昨日(11/13[火])、東京バレエ団のスタジオにてマスコミ向けの公開リハーサルを行いました。今回は11/30(金)~12/2(日)に上演される〈20世紀の傑作バレエⅡ〉の上演作品の中から、ノイマイヤー振付「スプリング・アンド・フォール」のリハーサルを公開。リハーサル後には芸術監督の斎藤友佳理、主役を踊る川島麻実子、柄本弾が出席し、記者懇親会が行われました。その様子を高橋森彦氏(舞踊評論家)のレポートでご紹介します。ぜひご一読ください。

>>>レポートはこちらから!!

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海外ツアーレポート2018/10/26

第33次海外公演(オマーン)ダンサーレポートその2〜二瓶加奈子

『ラ・バヤデール』オマーン公演のレポート第二弾は、この公演でガムザッティ役デビューを飾った二瓶加奈子の登場です!

初めてガムザッティを踊りました
海外公演から無事に戻ってまいりました、二瓶加奈子です。
そうなんです、今回オマーン公演の『ラ・バヤデール』では、初めてガムザッティを演じました。

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ロイヤル・オペラハウス・マスカットにて。
もう一人のガムザッティ、伝田陽美さんと。

こうした大役に初めて臨む場合、普通、結構前からわかっていたりして、それなりに心の準備をして、リハーサルをしっかりやって、というものじゃないかと思っていたのですが──、今回はちょっと違いました(笑)。
世界バレエフェスティバル開催期間中、『ラ・バヤデール』振付指導のオリガ・エヴレイノフ先生がいらして指導していただいたのですが、その頃に、私、ガムザッティやるのかな、やるみたいだな......、という流れでリハーサルに入り、でもその後、めぐろバレエ祭り〈夏祭りガラ〉の『パキータ』の主役などにキャスティングされていて──これもまた私にとっては緊張する大役でしたから、結局、ガムザッティのリハーサルに本格的に取り組めたのは本番前の3週間くらいだったのでした。
先生方や(奈良)春夏さんにいろいろとご指導いただきながら、取り組んできましたが、これまでいろんな役を踊ってきたなかで、実は、本格的に演技する役柄を演じるのは初めて!! 舞台の上で喜怒哀楽を出す、ということに、最初はとても戸惑いを感じていました。


オリガ先生からは、「もっと出して!もっと!」とアドバイスをいただいていたのですが、踊りを見せるだけではなく、国王のお嬢さまとしての「風格」を感じさせなければいけない。
さらに、考えすぎて顔の表情だけで演技してしまうようではダメで、しっかり「目」と「身体」で表現し、お客さまに伝わるよう演技することが求められます。
これがとても難しいのだけれど、次第に掴めるようになってきてからは、その楽しさを実感できるようになりました。

→この続き、レポート全文はクラブ・アッサンブレ会員限定サイトでご覧ください

レポート2018/10/23

第33次海外公演(オマーン公演) ~現地の公演評~

 東京バレエ団はこの10月11日~13日の3日間、33回目の海外公演として、アラビア半島の東端にある国オマーンで日本のバレエ団として初めての公演を行いました。

現カブース国王により1971年に独立以来、近代化を遂げ発展したオマーン。その首都で「アラビアの宝石」とも呼ばれる美しい街マスカットに、音楽好きの国王の肝いりでロイヤルオペラハウスが開場したのは2011年。この湾岸諸国随一といえる白亜の美しい歌劇場は、イタリア人の総裁のもと、多くの外国人技術スタッフを含む人々によって運営されており、世界屈指のオペラ、バレエ団やアーティストが客演しています。

 現地の有力紙「オマーン・オブザーバー」(Oman Observer)には、10月14日付の公演評で「"神殿の踊り子"の輝かしい演技」として次のような記事を掲載しました。その公演評の一部をここにご紹介いたします。 

     

Oman Observer 2018年10月14日
「神殿の踊り子」の輝かしい演技 The glorious execution of the'Temple Dancer'

(木曜のソワレの)見事な演技は究極の完璧さで、目撃した観客すべてから喝采を浴びた。東京バレエ団のテクニック、振付、衣裳、舞台美術、オーケストラ、音楽のすべてが素晴らしく、全3幕の2時間のドラマはまるで一瞬のようだった。

 物語は聖なる森の神殿で始まる。神殿の外で、虎狩りの後、六人の苦行僧たちが聖なる火の前で力強い土着の踊りを踊っている。苦行僧の長、マグダヴェーヤは、井福俊太郎がその精力的な運動能力と技術により、鮮やかに踊り、這いつくばった。柄本弾の踊るソロルは息を飲む正確さと力強さで、そしてニキヤの詩的な感情は、上野水香の驚くべきしなやかさをもって演じられた。東京バレエ団ですでに10年ソリストとして活躍している長野生まれの伝田陽美は、ガムザッティ役を気品高く美しく踊った。

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 さまざまな祝宴の場面で、東京バレエ団が十八番とするコール・ド・バレエのぴたりと揃ったアンサンブルが披露された。たとえば第一場の神殿の踊り子たちや、"宮殿内の一室"での婚約したカップルのための余興を踊る、ハーレムの衣裳をまとったコール・ド・バレエはひときわ素晴らしかった。第一幕の最後の場面──壮大な月明かりの山々の景色のもとで演じられる"宮殿の中庭"の場面のバレエ(パ・ダクシオン)は、この最たるものだった。一団から繰り出されるデュエットやトリオによって、完璧さをめざす精巧なクラシック・バレエの見せ場が続いた。ソロルの柄本の離れ業のような数々のソロシーンには、客席が熱狂した。

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(第2幕で)コール・ド・バレエの催眠的な単純な動きが40回(*実際は39回)繰り返されるのは、冥界の永遠の時を暗示しているのだが、その完璧に揃った動きは、コール・ド・バレエがまるで一つの塊として動いているかのようだった。

 東京バレエ団は1964年に設立され、現在のレパートリーは70作品を数える。設立からわずか2年後に実施されたロシアツアーでは、ソ連から「チャイコフスキー記念東京バレエ団」の名称を贈られた。この週末の見事な公演は、私たちオマーンも同様の栄誉を贈るに値するだろう。

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レポート2018/10/23

第33 次海外公演(オマーン)ダンサーレポートその1~樋口祐輝

朝夕めっきり涼しくなってまいりました。
東京バレエ団は10 月11 日から3日間、第33 次海外公演としてオマーンのロイヤル・オペラハウス・マスカットで『ラ・バヤデール』を上演し、先週帰国したばかり! ツアー期間中からtwitter やInstagram でその模様をお伝えしてきましたが、ここでは今日から2回にわたって、団員からのオマーン公演報告をお届けします。1 回目の今回は、樋口祐輝の登場です。

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こんにちは! ファーストアーティストの樋口祐輝です。
今回の海外公演はオマーン。僕にとって初の中東。ドキドキです。
劇場はココ、ロイヤル・オペラハウス・マスカット。とても美しい劇場です。

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劇場の前で撮った写真がこちら。

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研究生のオスカー・ラーニャです。
この民族衣裳は現地で購入、だいたい600 円~700 円くらいでした。オスカー、似合っています。
今回、残念ながら劇場内での撮影が規制されていて、劇場内部の見事さをお伝えできる写真を撮ることができなかったのですが、衣裳付きのこの集合写真を見ていただくと、その豪華さがおわかりいただけるのでは。

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僕もいます!

皆の衣裳が、いつもとはちょっと違って、オマーン仕様になっています。とくに女性。『ラ・バヤデール』はお腹の部分が露出する衣裳が多いのですが、現地の舞台では肌を出すことができないので、お腹を覆った衣裳になっています。肩から二の腕にかけても同様です。

これ、実は男性も、なのです。

僕の出番はパ・ダクシオンとワルツでしたが、とくにワルツの衣裳はお腹が出るタイプなので、全身タイツを着用してから衣裳を着ました。女性のレオタードのようなぴったりしたもの。初めてなのでこれは戸惑いました(笑)。

ブロンズ像も、いつもは素肌に塗料を塗っていますが、今回は1枚着ています。舞台で見ても全く違和感なく、着用している本人も快適に踊れたようです。

→この続き、レポート全文はクラブ・アッサンブレ会員限定サイトでご覧ください

レポート2018/09/07

第6回めぐろバレエ祭り ダンサー交流会レポート

 8月下旬、めぐろパーシモンホールにて開催された第6回めぐろバレエ祭りの最終日、その最後を締めくくるのイベントとして「東京バレエ団ダンサー交流会」が行われました。普段はあまり生の声を聞く機会のないダンサーたちが繰り広げる、気どりのない、楽しいトークに、会場は大盛り上がり。少しだけ、その模様をお伝えします。
 交流会のMCを任されたのは、岸本夏未と森川茉央。終始軽妙な語り口で場の雰囲気を和ませます。
 前半は、ダンサーたちのトークショー、まずは伝田陽美、柄本弾、宮川新大、ブラウリオアルバレスが登場し、昨年9月の〈20世紀の傑作バレエ〉公演や12月のベジャール版『くるみ割り人形』、 今年2月に行われた〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト) Ⅲ〉のスタジオ・パフォーマンスまでを振り返ります。

IMG_1869.JPG(左より)岸本夏未、ブラウリオ・アルバレス、柄本弾

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(左より)伝田陽美、宮川新大、森川茉央

 東京バレエ団初演となったローラン・プティ振付『アルルの女』のフレデリの舞台写真を見せてくれた柄本は、「姿の見えない女性を追い続ける、表現の難しい役柄でしたが、またぜひ踊ってみたい」とコメント。

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柄本弾「アルルの女」より

 ベジャールの『くるみ割り人形』は、MC岸本が踊る中国の場面も。「バレエよりバトンの練習ばかりしていた」と岸本。華麗なバトン捌きが思い出されます。

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ベジャールの「くるみ割り人形」より、岸本夏未


 次のグループは若手団員チーム。秋山瑛、柿崎佑奈、海田一成、樋口祐輝が、4月の〈上野の森バレエホリデイ〉でのアシュトン振付『真夏の夜の夢』、バランシン振付『セレナーデ』、さらに〈NHKバレエの饗宴〉で上演した『ラ・バヤデール』 "影の王国"について、思い出話に花を咲かせました。

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NHKバレエの饗宴で上演した"影の王国"。オルガ・エヴレイノフ氏を囲んで

 『真夏の夜の夢』はMC森川にとっても思い入れのある舞台だそう。怪我で9カ月間舞台を離れた後の復帰作で、「カーテンコールに拍手をいただいて、ああ、これを聞くために僕はバレエをやろうと思ったのだと再確認した」と感慨深げでした。


 最後のグループは沖香菜子、川島麻実子、吉川留衣、秋元康臣、池本祥真が登場。今年7月のブルメイステル版『白鳥の湖』公演の時の写真が紹介されました。

 「オデット/オディール役は、(斎藤)友佳理さんが芸術監督になって初めていただいた大役。二度目の挑戦で、思入れ深い大切な作品に」(川島)、「演劇性の強い作品なので、最初はとても難しく感じたけれど、踊るたびに新しい発見だったり、感情が激しくなるのを自分でも感じて、演じることが楽しくなった」(秋元)などと舞台の手応えを語りました。

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(左より)川島麻実子、沖香菜子、吉川留衣、森川茉央


 交流会後半は、「プリンシパルへの質問コーナー」。「ジャンプを高くとぶコツを教えてください」、「パートナーと踊るときはどんな気持ち?」、「腕を柔らかく使うにはどうしたらよいですか」などの質問が次々と飛び出し、プリンシパルたちも一つずつ真摯に、丁寧に回答していました。
 最後はダンサーたちが出口に整列して皆さんをお見送り。ほんの少しの時間でしたが、ダンサーたちと直接挨拶を交わす楽しいひとときが実現しました。

IMG_2119.JPG(左より)吉川留衣、伝田陽美、海田一成、柿崎佑奈、池本祥真、秋山瑛、樋口祐輝、森川茉央

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(左より)宮川新大、柄本弾、川島麻実子、秋元康臣、ブラウリオ・アルバレス


 これからも東京バレエ団団員と皆さまとの交流の場を、いろいろな形で実現していく予定ですので、どうぞお楽しみに。

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レポート2018/08/23

開幕直前レポート! 〈夏祭りガラ〉〈プティパ・ガラ〉のリハーサルより

現在開催中のめぐろバレエ祭りで上演される〈夏祭りガラ〉は、いよいよ明日24日が初日。さらに翌週には〈プティパ・ガラ〉が神奈川、掛川で上演されます。年明けから他の公演の合間に少しずつ稽古を重ねてきたダンサーたちは、いよいよ最後の総仕上げに突入、バレエ団のスタジオは、各上演作品のリハーサルが次々と展開され、まさにフル稼動でした。

マリウス・プティパ生誕200年記念にあわせて企画されたこのガラは、冒頭のオペラ『ジョコンダ』の壮麗なバレエ・シーン『時の踊り』(主演は柿崎佑奈、ブラウリオ・アルバレス)をはじめ、プティパが手がけた傑作が次々と登場します。

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『ジョコンダ』のリハーサルより。ヴェールを持ったコール・ド・バレエの女性たちの、フォーメーションの美しさに注目です。

こちらは7月に『白鳥の湖』の主役デビューを果たしたばかり、勢いたっぷりの沖香菜子と宮川新大が踊る『タリスマン』のパ・ド・ドゥのリハーサルより。

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舞台はインド。タリスマン(お守り)とともに地上に降りてきた、天界の女王の娘エッラと、貴族の青年ヌレディンの恋の物語です。

初々しさのなかにも、エレガントな雰囲気たっぷりの沖のエッラ。宮川演じるヌレディンは、ダイナミックな技がふんだんに散りばめられた雄々しい踊り。恋する二人の、みずみずしい魅力にあふれたパ・ド・ドゥです。

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3組のペアが配されている『アルレキナーダ』は、〈夏祭りガラ〉出演のフレッシュなカップル、足立真里亜と海田一成のリハーサルより。

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稽古を重ねて息もぴったり。恋人同士の可愛らしいやりとりは、目が離せません。

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『アルレキナーダ』といえば、この、口の前で人差し指を立てるポーズ!

『騎兵隊の休息』は、〈プティパ・ガラ〉神奈川公演で上演。キュートな笑顔を絶やさない秋山瑛と、エネルギッシュな演技で魅せる井福俊太郎。初めての衣裳付きリハーサルで、雰囲気もぐんとチャーミングに!

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こちらは〈プティパ・ガラ〉神奈川・掛川公演で上演する『ライモンダ』コール・ド・バレエのリハーサルより。手を頭に当てるポーズや細かなステップなど、独特の風情が魅力的です。

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〈プティパ・ガラ〉神奈川公演では『ラ・バヤデール』より"影の王国"も上演。川島麻実子、秋元康臣の二人が主役を踊ります。

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10月にはオマーンでの上演も控えているだけに、気合いたっぷり、世界バレエフェスティバルにゲスト教師として来日したオルガ・エヴレイノフ氏のリハーサルの1シーンです。

「パ・ド・ドゥに取り組むと、ぐんと力がつくもの」と話すのは、斎藤友佳理芸術監督。どのリハーサルでも、皆、不安が残るテクニックや表現にじっくり向き合い、リハーサルを重ねるごとにどんどん変化、進化をとげています。

めぐろバレエ祭りの〈夏祭りガラ〉は824日(金)、25日(土)、神奈川県民ホールでの〈プティパ・ガラ〉は91日(土)、掛川生涯学習センター公演が92日(日)の予定です。どうぞお楽しみに!

レポート2018/08/14

〈夏祭りガラ〉~『ジョコンダ』主演 柿崎佑奈&ブラウリオ・アルバレス インタビュー

 クラシック・バレエの父、マリウス・プティパの生誕200年を記念して、東京バレエ団は〈夏祭りガラ〉、〈プティパ・ガラ〉を上演する。プティパが手がけた数多くの作品のなかからより抜かれたパ・ド・ドゥ、ディヴェルティスマンで構成され、プティパが目指したクラシック・バレエの美しさ、楽しさがたっぷりと詰まった舞台となる。

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 その他の公演の合い間を縫って断続的に行われてきたリハーサルは、夏本番に入っていよいよ本格化。なかでも『時の踊り』(オペラ『ジョコンダ』より)は、コール・ド・バレエの女性たち、ともにフレッシュな顔ぶれが配されているだけに、稽古場はひときわ賑やかだ。

『時の踊り』は、イタリアのポンキエッリによるオペラ『ジョコンダ』のなかのバレエ・シーン。オペラの少々重々しいストーリーとはまったく関係のない、劇中劇として上演される楽しい場面で、朝、昼、夜、夜中と移りゆく時の流れが、踊りによって次々と表現されてゆく。めまぐるしく変化するフォーメーションが美しい、クラシック・バレエならではの魅力にあふれた作品だ。

 この日のリハーサルは、その後半、4つの時のダンサーたちが揃ったところに夜の女王と風の精が登場、一気にクライマックスへと盛り上がっていく場面。ダンサーたちが手に持った色違いのヴェールが、あちこちでひらひらとたなびいているのが印象的だ。

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 夜の女王を踊る柿崎佑奈は、「朝、昼、夜、夜中と踊りが展開していき、私が登場する場面はちょっと静かに始まるんです。三日月のついた王笏で皆を一人ずつ眠らせたところに風の精がやってきて、そのままアダージオが続きます。踊りはだんだん温かみを増していって、最後のコーダになるとパッと明るく──指導していただいているフョードロフ先生いわく、『いままでのことは全部ジョーク、と思ってしまうくらい、がらりと明るく』なるんです。そこからは、とても華やかなクライマックス。ここの表情の違いを出すのが難しいところです」。

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 風の精を踊るブラウリオ・アルバレスも、「パッと突然明くなる、その変化が面白い。みんながよく知っている音楽も出てくるので、何も難しいことを考えずに楽しんでいただけると思います」。ただし、「スタイルが難しい。軽い風の表現を、しっかりと動きで見せないといけません。身体のつかい方、表現、手の動きなど、まさにクラシックのなかのクラシック。テクニックがあっても、このスタイルが身体に入っていないと表現できない、という難しさを感じます」と教えてくれた。なるほど、そこがまさにクラシック・バレエの難しさで、大きな魅力なのだろう。

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 二人のパートナーシップにも注目だ。「綺麗で楽しいバレエですから、二人で創り上げる雰囲気をぜひ楽しんでください」とアルバレス。柿崎は、「ブラウリオにはすごく助けてもらっています。私は今回が初めての主役なので、実は最初はプレッシャーに負けてしまいそうだったのですが、最近になってようやく、アダージオを楽しみながら踊れるようになりました。課題はいくつもありますが、そのうちの一つがクライマックスのフェッテ。でもここで克服すれば、大きなプラスになる。頑張ります!」と意欲に燃える。

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 二人の華やかな踊りと、「これこそクラシック・バレエ!」ともいえる息のあった美しいアンサンブルを、心ゆくまで楽しみたい。

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取材・文 加藤智子(フリーライター)

公演情報2018/05/29

ブルメイステル版「白鳥の湖」プロモーション映像完成!

 ブルメイステル版「白鳥の湖」。今回は6月16日(土)の鎌倉公演を皮切りに、東京、山口、益田、倉吉と全国4都市にて計7公演を行います。公演に先駆け、初演時の舞台映像をもとにプロモーション映像を作成しました! ぜひご覧ください!



>>> チケットのご購入はコチラ

レポート2018/05/28

ブルメイステル版『白鳥の湖』再演、 東京バレエ団オリジナルの新衣裳がついに完成へ!

 公演まであと3週間。ブルメイステル版『白鳥の湖』の今回の再演は、第1幕、第3幕の衣裳をすべて、東京バレエ団のオリジナルとして新製作したことに注目が。靴、頭飾りを含めて約200点にもおよぶ新作衣裳の大部分がこのほど完成、東京バレエ団のスタジオで衣裳合わせが行われました。出来たての衣裳に身を包んだダンサーたちが勢揃い、色とりどりの美しい衣裳がずらりと並ぶ景色はまさに圧巻でした。

 
 2016年2月のバレエ団初演の際は、ブルメイステル版の当初の演出意図に沿ったものを、という斎藤友佳理芸術監督の強い希望により、モスクワ音楽劇場の古い衣裳をレンタルして上演しましたが、ブルメイステル版『白鳥の湖』を東京バレエ団のレパートリーとして長く上演していくために、と衣裳の新製作を決断した斎藤。2016年の秋頃から、2年近くをかけて準備を進めてきました。

 限られた時間と予算のなかでの最善の策を、と模索した結果、モスクワの舞台衣裳デザイナー・アレクサンドル・シェシュノフ氏にデザインを発注、ボリショイ劇場のスタッフ部門出身者によって設立された工房・ティモール社に製作を依頼しました。彼らのなかには、このプロジェクトのために引き抜かれた職人もいるそうで、その腕は確かなもの。試着したダンサーたちからは、「着心地がいい」「とても動きやすい」と声があがっていました。

ここでは、その衣裳の一部をご紹介します!

s1.jpg■写真1:第1幕、パ・ド・カトルの4人

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■写真2、写真3:第1幕の貴族たちの衣裳は、カラフルなのに上品に

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■写真4:侍従長は長い上着がカッコイイ!

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■写真5:ロットバルトの黒い衣裳は、胸の飾りがゴージャス!

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■写真6、7 :ジークフリート王子も新調! 細やかな装飾の仕事が目をひきます。

ロングインタビュー2018/04/23

アンソニー・ダウエル(「真夏の夜の夢」振付指導) 特別インタビュー 

 まもなく初日をむかえる東京バレエ団「真夏の夜の夢」のリハーサルのためにアンソニー・ダウエルが来日。かつて英国ロイヤル・バレエ団を代表する名ダンサーで、同団の芸術監督も務めた彼に、舞踊評論家の長野由紀さんがインタビューを行いました。ぜひご一読ください。


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 ゴールデン・ウィークに東京バレエ団が再演する『真夏の夜の夢』は、1964年、シェイクスピア生誕400周年を記念して英国ロイヤル・バレエ団によって初演された。このとき、主役の妖精の王オベロンを踊ったのが、20歳を過ぎたばかりの新進のスターだったアンソニー・ダウエルである。振付家フレデリック・アシュトン亡き後は、世界各国のバレエ団で上演指導にあたってきた。


Q:オベロンは、美しく堂々としてノーブル、ちょっと冷たくもあります。アシュトンは、ダンサーに合わせて役柄を作り上げる人だったといいますが、オベロンにはあなたの個性が反映されているのでしょうか?


ダウエル: 若かった頃の私は、じつは内気で神経質な性格だったんだ。そのせいで、「氷の箱で周りを囲って、人を寄せ付けない」と言われたこともあったのだけど、そうしたところの一部はもちろんオベロンにも取り入れられたし、これはとても私にフィットする役だったと思うよ。そしてダンサーにとって、作られた役があってその肌の下に入り込めるのは、100%素のままでいなくてはならないより、ありがたいことでもあるんだ。


Q:オベロンの妻で妖精の女王であるタイターニアは、アントワネット・シブリーさんが初演しました。


ダウエル:アントワネットはとてもセンシュアルで、感情を隠さず強い表現をするダンサーだった。だからアシュトンはタイターニアを、気位が高くセクシーで、ちょっとクレイジーでもある役にしたんだ。シェイクスピアの原作でもそうだから、すべてを彼女に合わせたとは思わないけれどね。ただ、そうした性質をやりすぎにならないよう表現するのはとても難しいことで、やはり彼女は特別だった。多くのダンサーがこの役を可憐な妖精、たとえばクリスマス・ツリーのてっぺんに飾る人形のように演じるけれど、じつはそれは間違っている。


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アンソニー・ダウエル


私とアントワネットは、音楽を全く同じように聴くことができたんだ


Q:このとき初共演したお二人は、やがて「美しい双子のような」と賞賛されるパートナーシップを築いていかれます。そのシブリー&ダウエルが正反対の個性の持ち主だというのは、意外でもあります。


ダウエル:アシュトンが私たちに目を留めたのは、まず、身体的に釣り合いがよかったから。そして何より私たちは、音楽を全く同じように聴くことができたんだ。だからたとえば、リハーサルの写真でも舞台の写真でも、同じタイミングで写せば寸分たがわず同じことをやっている。そういう相手と組んでいると、新作を作っていても、次に相手がどう動くか無意識に分かるようになる。他のダンサーたちと比べても、これは私たちの大きな強みだったね。


Q:パートナーシップの何よりのポイントは、音楽性?


ダウエル:そして、ユーモアのセンス! 私自身はいつも仕事の相手に恵まれてきたけれど、悲惨な例も見てきている(笑)。バレエではだいたい、女性が「ノー」「もっとこうして」と要求を出す。それが時々男性の逆鱗に触れるんだけど、お互いがエゴをむき出しにすると、スタジオの雰囲気が険悪になってしまうんだ。


アシュトンが何より心がけていたのは「ストーリーを伝えること」


Q:ダウエルさんご自身、指導の折々に、その場を和ませるような一言、二言をはさまれますよね。ところで、東京バレエ団のダンサーたちはいかがですか?


ダウエル:3人のタイターニアが、それぞれ自分のやり方を見つけかけている。作品の伝承にはまず振付のテキストを尊重しなくてはならないけれど、ダンサーの個性はさまざま。だから、自分なりの踊り方を探り、私のような指導者がそれを見ながら「ここは気に入らない」「これは新鮮だ、これでいこう」という風に、調整していくんだ。ステップを凍結してしまわず、今のダンサーに合わせてこそ、作品は生き続けていくんだからね。3人のパックにもそれぞれ持ち味があるし、クリストファー(・カー氏、上演指導者)も、妖精たちのコール・ド・バレエの正確さを絶賛しているよ。


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Q:ゲストのフリーデマン・フォーゲルについては?


ダウエル:今年に入ってフロリダ(サラソタ・バレエ)にこの作品を指導に行った時に、ゲストとして招かれていたのが彼だった。じつはそれまで彼のことは知らなかったんだけど、長身で貴族的な雰囲気もあり、とても魅力的だね。


Q:ファンのみなさんに、メッセージをお願いします


ダウエル:アシュトンがこのバレエを作る時に何より心がけていたのは、「ストーリーを伝えること」。リハーサルにもよく人を呼んで、「何が起こっているかわかる?」と確認していました。細部まで作り込まれた多面体の作品の中に、原作のエッセンス、つまり人間とその脆さ、愛、そしてミステリアスな超自然の力が描かれた、素晴らしい作品です。



オベロン役を引退する際には、まだ存命中だったアシュトンから「場当たりするだけのつもりでいいから、出続けてくれ!」と懇願されたというダウエル氏。指導を続けながら改めて作品に向き合うことも多く、衣装についてもいくつかのアイディアを温めているのだという。誰よりもこの作品を知る彼が仕上げる舞台が、ほんとうに楽しみである。

(取材・文 / 長野由紀 舞踊評論家)

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