ブルメイステル版「白鳥の湖」。今回は6月16日(土)の鎌倉公演を皮切りに、東京、山口、益田、倉吉と全国4都市にて計7公演を行います。公演に先駆け、初演時の舞台映像をもとにプロモーション映像を作成しました! ぜひご覧ください!
公演まであと3週間。ブルメイステル版『白鳥の湖』の今回の再演は、第1幕、第3幕の衣裳をすべて、東京バレエ団のオリジナルとして新製作したことに注目が。靴、頭飾りを含めて約200点にもおよぶ新作衣裳の大部分がこのほど完成、東京バレエ団のスタジオで衣裳合わせが行われました。出来たての衣裳に身を包んだダンサーたちが勢揃い、色とりどりの美しい衣裳がずらりと並ぶ景色はまさに圧巻でした。
2016年2月のバレエ団初演の際は、ブルメイステル版の当初の演出意図に沿ったものを、という斎藤友佳理芸術監督の強い希望により、モスクワ音楽劇場の古い衣裳をレンタルして上演しましたが、ブルメイステル版『白鳥の湖』を東京バレエ団のレパートリーとして長く上演していくために、と衣裳の新製作を決断した斎藤。2016年の秋頃から、2年近くをかけて準備を進めてきました。
限られた時間と予算のなかでの最善の策を、と模索した結果、モスクワの舞台衣裳デザイナー・アレクサンドル・シェシュノフ氏にデザインを発注、ボリショイ劇場のスタッフ部門出身者によって設立された工房・ティモール社に製作を依頼しました。彼らのなかには、このプロジェクトのために引き抜かれた職人もいるそうで、その腕は確かなもの。試着したダンサーたちからは、「着心地がいい」「とても動きやすい」と声があがっていました。
ここでは、その衣裳の一部をご紹介します!
■写真2、写真3:第1幕の貴族たちの衣裳は、カラフルなのに上品に
■写真4:侍従長は長い上着がカッコイイ!
■写真5:ロットバルトの黒い衣裳は、胸の飾りがゴージャス!
■写真6、7 :ジークフリート王子も新調! 細やかな装飾の仕事が目をひきます。
まもなく初日をむかえる東京バレエ団「真夏の夜の夢」のリハーサルのためにアンソニー・ダウエルが来日。かつて英国ロイヤル・バレエ団を代表する名ダンサーで、同団の芸術監督も務めた彼に、舞踊評論家の長野由紀さんがインタビューを行いました。ぜひご一読ください。
____________________________________
ゴールデン・ウィークに東京バレエ団が再演する『真夏の夜の夢』は、1964年、シェイクスピア生誕400周年を記念して英国ロイヤル・バレエ団によって初演された。このとき、主役の妖精の王オベロンを踊ったのが、20歳を過ぎたばかりの新進のスターだったアンソニー・ダウエルである。振付家フレデリック・アシュトン亡き後は、世界各国のバレエ団で上演指導にあたってきた。
Q:オベロンは、美しく堂々としてノーブル、ちょっと冷たくもあります。アシュトンは、ダンサーに合わせて役柄を作り上げる人だったといいますが、オベロンにはあなたの個性が反映されているのでしょうか?
ダウエル: 若かった頃の私は、じつは内気で神経質な性格だったんだ。そのせいで、「氷の箱で周りを囲って、人を寄せ付けない」と言われたこともあったのだけど、そうしたところの一部はもちろんオベロンにも取り入れられたし、これはとても私にフィットする役だったと思うよ。そしてダンサーにとって、作られた役があってその肌の下に入り込めるのは、100%素のままでいなくてはならないより、ありがたいことでもあるんだ。
Q:オベロンの妻で妖精の女王であるタイターニアは、アントワネット・シブリーさんが初演しました。
ダウエル:アントワネットはとてもセンシュアルで、感情を隠さず強い表現をするダンサーだった。だからアシュトンはタイターニアを、気位が高くセクシーで、ちょっとクレイジーでもある役にしたんだ。シェイクスピアの原作でもそうだから、すべてを彼女に合わせたとは思わないけれどね。ただ、そうした性質をやりすぎにならないよう表現するのはとても難しいことで、やはり彼女は特別だった。多くのダンサーがこの役を可憐な妖精、たとえばクリスマス・ツリーのてっぺんに飾る人形のように演じるけれど、じつはそれは間違っている。
アンソニー・ダウエル
私とアントワネットは、音楽を全く同じように聴くことができたんだ
Q:このとき初共演したお二人は、やがて「美しい双子のような」と賞賛されるパートナーシップを築いていかれます。そのシブリー&ダウエルが正反対の個性の持ち主だというのは、意外でもあります。
ダウエル:アシュトンが私たちに目を留めたのは、まず、身体的に釣り合いがよかったから。そして何より私たちは、音楽を全く同じように聴くことができたんだ。だからたとえば、リハーサルの写真でも舞台の写真でも、同じタイミングで写せば寸分たがわず同じことをやっている。そういう相手と組んでいると、新作を作っていても、次に相手がどう動くか無意識に分かるようになる。他のダンサーたちと比べても、これは私たちの大きな強みだったね。
Q:パートナーシップの何よりのポイントは、音楽性?
ダウエル:そして、ユーモアのセンス! 私自身はいつも仕事の相手に恵まれてきたけれど、悲惨な例も見てきている(笑)。バレエではだいたい、女性が「ノー」「もっとこうして」と要求を出す。それが時々男性の逆鱗に触れるんだけど、お互いがエゴをむき出しにすると、スタジオの雰囲気が険悪になってしまうんだ。
アシュトンが何より心がけていたのは「ストーリーを伝えること」
Q:ダウエルさんご自身、指導の折々に、その場を和ませるような一言、二言をはさまれますよね。ところで、東京バレエ団のダンサーたちはいかがですか?
ダウエル:3人のタイターニアが、それぞれ自分のやり方を見つけかけている。作品の伝承にはまず振付のテキストを尊重しなくてはならないけれど、ダンサーの個性はさまざま。だから、自分なりの踊り方を探り、私のような指導者がそれを見ながら「ここは気に入らない」「これは新鮮だ、これでいこう」という風に、調整していくんだ。ステップを凍結してしまわず、今のダンサーに合わせてこそ、作品は生き続けていくんだからね。3人のパックにもそれぞれ持ち味があるし、クリストファー(・カー氏、上演指導者)も、妖精たちのコール・ド・バレエの正確さを絶賛しているよ。
Q:ゲストのフリーデマン・フォーゲルについては?
ダウエル:今年に入ってフロリダ(サラソタ・バレエ)にこの作品を指導に行った時に、ゲストとして招かれていたのが彼だった。じつはそれまで彼のことは知らなかったんだけど、長身で貴族的な雰囲気もあり、とても魅力的だね。
Q:ファンのみなさんに、メッセージをお願いします
ダウエル:アシュトンがこのバレエを作る時に何より心がけていたのは、「ストーリーを伝えること」。リハーサルにもよく人を呼んで、「何が起こっているかわかる?」と確認していました。細部まで作り込まれた多面体の作品の中に、原作のエッセンス、つまり人間とその脆さ、愛、そしてミステリアスな超自然の力が描かれた、素晴らしい作品です。
オベロン役を引退する際には、まだ存命中だったアシュトンから「場当たりするだけのつもりでいいから、出続けてくれ!」と懇願されたというダウエル氏。指導を続けながら改めて作品に向き合うことも多く、衣装についてもいくつかのアイディアを温めているのだという。誰よりもこの作品を知る彼が仕上げる舞台が、ほんとうに楽しみである。
(取材・文 / 長野由紀 舞踊評論家)
去る2月13日、目黒の東京バレエ団スタジオにてTHE TOKYO BALLET Studio Performance(スタジオ・パフォーマンス)を開催し、ダンサーたちの創作計8作品を初披露。熱気あふれるパフォーマンスの様子をライターの加藤智子さんにレポートしていただきました。ぜひご一読ください!
_________________________________________
昨年春に産声をあげた東京バレエ団のChoreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)が再び始動、2月13日、その幕開けとなるスタジオ・パフォーマンスが開催された。
この日のスタジオ・パフォーマンスは、昨年のChoreographic Project I、IIの好評を受け、「団員たちが創作にチャレンジする姿を観たい!」と多くの友の会(クラブ・アッサンブレ)会員が来場。大盛況となった。公演の合間の時間を利用して創作に取り組んできたダンサーたちは、1月下旬に行われた試演会を経て、着々と作品の完成度を高めてきた。さらに、当日の午後に行われたゲネプロには、日本公演で東京に滞在していたハンブルク・バレエ団芸術監督、ジョン・ノイマイヤー氏が訪れ、団員たちを激励。振付を手がけたダンサーたちも出演ダンサーたちも大いに刺激を受け、本番にのぞんだ。上演されたのは8作品。上演順は、振付者たちが話し合って決めたという。
トップバッターは岡本壮太。昨年は、創作したデュエット作品が認められ、8月の〈めぐろバレエ祭り〉の舞台での上演が実現した。今回の『E1NS. 2WEI. DR3I』でも、昨年に引き続き、岡本と同期入団で息もぴったりの秋山瑛、樋口祐輝らが出演、そこに岡崎隼也が加わり、ソロ、2人、3人の踊りが次々と展開する、小気味よい作品に仕上げた。
2番目の登場となった岡崎隼也も、昨年〈めぐろバレエ祭り〉で作品を発表。勅使川原三郎作品への出演をはじめとするさまざまな現場での経験も強みに。今回の『Warm Up』では、ダンサーたちを「もっと、もっと!」と煽り立てたところに見えてくる、独特の清々しさが魅力に。
竹本悠一郎の作品タイトル『Vinyl』とは、アナログ・レコードを意味する語。足立真里亜と3人の男性ダンサーたちが織りなすさまざまな色合いの場面が、ちょうど1枚のアルバムに収められたかのような趣で連なっていく、10分超えの力作。
ハンブルク・バレエ団時代から振付に意欲的なブラウリオ・アルバレスの『ドアが閉まります』は、混み合う電車の中でよく見かける、個性際立つ人たちにフォーカス。プリンシパル・秋元康臣が泥酔の男役を演じて客席をざわつかせ、老人(永田雄大)、オタク風(山田眞央)、女子高生(岡﨑司)、また彼らに翻弄される青年(宮川新大)が体当たりのコメディを放ち、会場は大きな笑いに包まれた。
岡崎隼也2つ目のエントリーは、『理由』。沖香菜子、伝田陽美、政本絵美、加藤くるみら4人の女性ダンサーに振付けた作品だ。ストーリーはないが、スツールを効果的に用いながら、それぞれの個性、魅力を引き出したドラマティックな踊りに。
井福俊太郎・高橋慈生らが自演した『Gleam』は、男性ダンサーならではの躍動感たっぷりのデュエット。自由に踊れる解放感、喜び、若さゆえの不安といった思いをぎゅっと凝縮、パンチのきいた踊りにこめて強い印象を残す。
3月末でプリンシパルをしりぞく木村和夫は、自作『The Piano』を奈良春夏とともに踊った。映画「ピアノ・レッスン」に想を得た小品だが、奈良との安定感あるデュエットには、短時間の中で物語を伝える力強さが。大人のダンサーだからこそ表現できる深みある演技で魅了した。
最後を締めくくったのはブラウリオ・アルバレスの2作目、『アダージェット』。多くの振付家、アーティストを魅了してきたマーラーの名曲に果敢に挑戦、男女5組もの大がかりな作品にまとめあげた。
どの作品も振付者の個性、ダンサーたちの魅力がさまざまな形で現れるユニークなものばかり。これら8作品はそれぞれ、4月の〈上野の森バレエホリデイ〉、または8月の〈めぐろバレエ祭り〉の舞台での上演を目指す。
団員が振付に取り組み、作品を発表する場をもうけることで、彼らのステップアップを期待したい、という斎藤友佳理芸術監督の思いからスタートしたこのプロジェクトは、2017年4月の〈上野の森バレエホリデイ〉のキャノピー(野外ステージ)で初お目見え、東京バレエ団ダンサーの振付・出演による新作全6作品が上演された。その後Choreographic Project IIとして、まずはスタジオ・パフォーマンスを実施し、その上演作品の中から選ばれた2作品を第5回〈めぐろバレエ祭り〉の舞台で披露、満席の劇場を大いに沸かせた。新たな取り組みへの手応えを得て、2018年、東京バレエ団はChoreographic Project IIIを展開、このスタジオ・パフォーマンスを皮切りに、ダンサーたちによる創作活動をさらに後押しする構えだ。
2018年、The Tokyo Ballet Choreographic Project IIIは、着実に成果を重ね、ますますの盛り上がりをみせるだろう。
【取材・文 : 加藤智子】
THE TOKYO BALLET Studio Performance(スタジオ・パフォーマンス)上演作品一覧
No.1 "E1NS. 2WEI. DR3I"
振付: 岡本壮太
出演: 岡崎隼也、秋山瑛、樋口祐輝
No.2 "Warm Up"
振付: 岡崎隼也
出演: 安西くるみ、中沢恵理子、井福俊太郎、鳥海創
No.3 "Vinyl"
振付: 竹本悠一郎
出演: 足立真里亜、宮崎大樹、海田一成、後藤健太朗
No.4 "ドアが閉まります"
振付: ブラウリオ・アルバレス
出演: 秋元康臣、宮川新大、永田雄大、山田眞央、岡﨑司
No.5 "理由"
振付: 岡崎隼也
出演: 伝田陽美 政本絵美 沖香菜子 加藤くるみ
No.6 "Gleam"
振付: 井福俊太郎、高橋慈生
出演: 高橋慈生、井福俊太郎
No.7 "The Piano"
振付: 木村和夫
出演: 木村和夫、奈良春夏
No.8 "Adagietto"
振付: ブラウリオ・アルバレス
出演: 渡辺理恵-樋口祐輝、金子仁美-海田一成、瓜生遥花-岡﨑司、
川島麻実子-岸本秀雄、上田実歩-山田眞央
新年明けましておめでとうございます!!
昨年、東京バレエ団は元日に日本を出発し、ブリュッセルでの第31次海外公演(「第九交響曲」)を終えたあとに「イン・ザ・ナイト」のバレエ団初演、そして第32次海外公演としてシュツットガルト州立歌劇場にて「ラ・バヤデール」全幕上演、〈上野の森バレエホリデイ〉への出演、「ラ・バヤデール」凱旋公演、子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」全国公演、第5回〈めぐろバレエ祭り〉への出演、「アルルの女」、「小さな死」のバレエ団初演、モーリス・ベジャール・バレエ団との合同公演〈ベジャール・セレブレーション〉、そしてベジャール版「くるみ割り人形」の5年ぶりの再演と、合計40回もの公演を無事に終えることができましたのも、劇場へ足を運んでくださった全ての方々のお力添えのおかげと感謝いたしております。ダンサー、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。
また、今年からはじまった「THE TOKYO BALLET Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)」も早くも「ProjectⅢ」に突入します。さらにブラッシュアップしてお贈りする、新しいダンスの世界にどうぞご期待ください。
2018年の年明けに、恒例となりましたダンサーからの新年のご挨拶を申し上げます。「クラブ・アッサンブレ」の会員様には、直筆サイン入りの年賀状をお送りしております。下記にて全ダンサーのサインを一挙公開いたしますので、どのダンサーからの年賀状か、楽しみにご覧ください。
今年も「セレナーデ」他、多数のバレエ団初演作品を含め、多彩なラインアップで皆様のご来場をお待ちいたしております。2018年も東京バレエ団に変わらぬご声援を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。
【プリンシパル】
【ファーストソリスト】
【ソリスト】
【セカンドソリスト】
【ファーストアーティスト&アーティスト】
※川島麻実子、柄本弾からは1枚だけ「漢字ヴァージョン」のサイン入り年賀状をお贈りいたしました。
※例年ソリスト以上のダンサーからのみ年賀状にサインをさせていただいておりましたが、今年はファーストアーティスト、アーティストの中から、昨年舞台で活躍した4名も参加させていただきました。
去る12月17日(日)、2017年最後の公演となったベジャールの「くるみ割り人形」の終演後、東京バレエ団友の会クラブ・アッサンブレの会員様と、東京バレエ団全ダンサーたちが参加したクリスマス会が行われました。その様子をご紹介します。
______________________________________
クラブ・アッサンブレ恒例のクリスマス会。会場にはクリスマスらしい華やかな装いの方が200名強ご参加され、公演後の興奮冷めやらぬ中、パーティーがはじまりました。
まずは斎藤友佳理(芸術監督)から皆様にご挨拶。そして当日がプリンシパルの引退公演となった木村和夫から会員の皆様にこれまでのご支援に感謝の言葉を述べさせていただきました。
斎藤、木村の挨拶のあとは飯田宗孝(団長)の発声で乾杯! 乾杯のあとはみなさまお待ちかねの歓談タイム。ダンサーたちとお客様が和やかな雰囲気の中たっぷりとお話させていただきました。
そして恒例のクリスマス・プレゼント抽選会。永田雄大、金子仁美が司会をつとめ、笑いあふれる抽選会が賑やかにスタート! 気になる今年のプレゼントは・・・?
ダンサーたちが順番にクジをひき、当選された方にプレゼントをお渡ししていきます。
続いて、飯田、斎藤、佐野からもプレゼントをお渡ししました。
今年はサプライズ企画として、小林十市さんからもプレゼントをいただきました! なんと小林さん直筆のイラスト。お客様よりもダンサーから「欲しい!」という声があがっていました。
抽選会のあとは、バレエ団を代表し、上野水香、川島麻実子、柄本弾、秋元康臣のプリンシパル4名からご挨拶させていただきました。また、3月で退団する渡辺理恵からも会員の皆様に御礼の言葉を述べさせていただきました。
そして、2月に行うTHE TOKYO BALLET Studio Performanceで作品を発表するダンサーを代表し、岡﨑隼也、ブラウリオ・アルバレスから一言ずつお話いたしました。東京バレエ団の新しい挑戦にぜひご期待ください!
最後にダンサーたち全員で改めてご挨拶。今年も一年、たくさんのご声援をいただきありがとうございました。また次回の公演&イベントでお会いしましょう!
来年も東京バレエ団をどうぞよろしくお願いいたします!どうぞ良いお年をお迎えください。
ベジャールの「くるみ割り人形」の初日まであと2日とせまってまいりました。
今回の上演では、リハーサル指導に小林十市さん(元モーリス・ベジャール・バレエ団)をお招きし、9月から密度の濃いリハーサルを行ってきました。
小林さんはこれまでにも「中国の不思議な役人」、「M」での共演をはじめ、数々のベジャール作品の指導のために来団し、東京バレエ団の舞台を成功に導いてくださいました。
そんな小林さんから、今回の上演に向けてのメッセージをよせていただきました。ぜひご一読ください。
________________________________
今回は9月末から約4週間におよぶリハーサルを指導しました。
特に気を付けて指導した点が、音の取り方、動きのニュアンス、演劇性・・・例えば母と息子の関係とか、他者を想ったときにどういう動きになるのか?など。
それから音楽の高さ、長さ、音色と動き(振り)をシンクロさせられるか?という点にも気を付けて、振りよりもそれぞれのダンサーが自由に表現できる方向にすすむよう、皆でこの作品を創り上げてきました。もちろんベジャールさんの振りは変えたりせずそのままですよ(笑)
帰国する前、佐々木さんのお墓参りをして今回の稽古報告をしてきました。ベジャールさんが「ジュウイチ」って呼ぶ声、「十市」って呼ばれた佐々木さんの声は今でも覚えています。2人のおかげで東京バレエ団と僕の関係があります。
また12月に日本に戻りますが、東京バレエ団のダンサーたちみんながこの作品を楽しんで踊り演じてくれることを願います!!
小林十市
※上記のメッセージは2017年11月末にメールにて寄せていただきました。
__________________________________
ベジャールの「くるみ割り人形」、前回に続きビム役をつとめる岡崎隼也、M...役とグラン・パ・ド・ドゥを日替わりで演じる秋元康臣のプチ・インタビューをお届けします。ぜひご一読ください!
岡崎隼也
小林十市さんとのリハーサルが嬉しくてたまらない!
一番好きな場面は...やはり母とのパ・ド・ドゥです。ただ、この「くるみ」に出てくる母は僕の知ってる母とは違うので、踊っているときに自分の母のことは思いださないですね(笑)。根本的にはビムの母に対する想いと同じものはあるけれど、日本人は母親にハグしたりしないので、舞台でおこっていることへの感情を大切にしています。
あと、変に若作りはしないようにしています(笑)。自分が子どもだったときのことを感じつつ、子どもならではのニュアンスはハズさないように......と。
今回は初演、2001年、2012年の公演映像を見比べて、それぞれの映像の中で良い部分を集めてリハーサルをしています。(小林)十市さんに指導していただいているのですが、きっかけの音のとり方とかが少し変わりました。僕は十市さんのことを尊敬しすぎているので(笑)、今回もご一緒させていただけるのが嬉しくてたまらないですね。
秋元康臣
ジルさんに見てもらって物凄く緊張! 表情を変えて演じたい
今回が初挑戦、古典の「くるみ」しか知らなかったので、映像で観たのですが、神秘的なセットやマリア像がとても印象的で、「いいなぁ~」と思っていました。
他のベジャール作品と比べて"全幕"というのが大きな特色でもあると感じます。もちろん「ザ・カブキ」もありますけど、「カブキ」はやはり特別な作品なので、全幕とおしてベジャール作品を踊るという数少ない機会だと思います。
(小林)十市さんにリハーサルを指導していただき、先日はジル(・ロマン)さんにも見ていただきました。ものすごく緊張して、力がはいりすぎてしまい...本番よりも緊張しました(笑)。
特に気を付けているのは、表情を変える、ということ。M...は第1幕の最初ではバレエ・マスター、それからメフィストの顔になり、第2幕では各国の踊り。ジルさんの踊っている映像をみると表情のメリハリ、使い分けがすごいんです。僕もしっかり取り組みたいと思います。
グラン・パ・ド・ドゥも踊りますが、古典版を踊っているので、振付は身体に入ってきやすいみたいです。英国ロイヤル・バレエ団のヴァージョンに近い、でもヴァリエーションは全然違う(笑)。M...が終わって翌日すぐ、なのでいい意味で力が抜けてできるかなと思っています。
今週末に上演するベジャールの「くるみ割り人形」。今回の舞台で2回目の母に挑戦する渡辺理恵、初役となる政本絵美、2人の"母"にプチ・インタビューを行いました。ぜひご一読ください!
渡辺理恵
"演じない"で演じる難しさ! その動きにつながる「動機」を探し中。
"母"役を踊るのは2回目です。初役のときはポジションや動きをかたちにする、土台作りに時間がかかりました。前回とはスタートラインが違いますが、リハーサルでは壁にぶつかることばかり。前回踏み込めなかった部分について考えさせられ、新しい発見があります。
印象的なのは第1幕のパ・ド・ドゥ。(小林)十市さんが「演劇性を重視」とおっしゃっていたのですが、私自身の見方、とらえ方を含め、色々な角度から考えることができて、踊っていてもその場その場で発見がある、全編をとおして踊ると、本当に重みのある作品です。
昨年、古典の「くるみ」を全幕踊っているんですが、だからこそベジャール版の独自性、面白さも感じます。こんなにも違うものなのか・・・と改めて思いました(笑)。
(吉岡)美佳さんには、「自然に、演技になりすぎず」と言われました。歩く、振り向く、見る、すべて日常生活にある動きですが、"演じない"でやることに難しさを感じ、試行錯誤しています。
普段の生活で行われている動作には当然意味があるわけですから、舞台上で同じことをするうえで"母"がその振り、動きをすることにつながる「動機」を、今、探しています。
政本絵美
これまで気づかなかった大事なシーン。ビムとの永遠の別れを実感します。
2012年の上演の時にはアンダーキャストだったので舞台には出られず、今回初めての挑戦となります。本当は「花のワルツ」でタキシードを着る女性の役にずっと憧れていたんですけど(笑)、思いがけず母を演じることになりました。
実は母役は踊るところが少ないんです。なので「振り」にならないように、自然に見えるようにと気を付けています。普段の生活でも子どもに手を伸ばしたりして、それをどれだけ自然に見せることができるか、と考えながら演じています。
リハーサルをしてみて、プロローグとエピローグの演じ分けにも難しさを感じています。(吉岡)美佳さんに指導していただいているのですが、エピローグでは「笑わないで」と注意を受けました。ただ、悲壮感が漂ってしまってもいけませんが。そう、演じてみて初めてわかったんですが、母は最後鏡の前で手を振るんです。これまでも観ていたのに全く気がつきませんでした。お客さまもこの場面はビムをみているので気がついてない方が多いと思います。確かに、最後はビムと母の永遠の別れなんですよね・・・。
一番好きなのはビムとのパ・ド・ドゥです。音楽もすごく素敵ですし、あの曲にこの振付ができたベジャールさんって、本当に天才だと改めて思いました。
東京バレエ団「春の祭典」ダンサーインタビュー、最終回は奈良春夏をおとどけします。
「春の祭典」のあの独特な振付にも、ひとつひとつ意味がある。奈良は今、それをきちんと理解して心から表現していくことの重要さを実感していると言います。ぜひご一読ください。
*2011年に初めて生贄の女を演じたときのお話を聞かせてください。
このときにご指導いただいたのは、吉岡美佳さんです。吉岡さんは私が振付を身体に入れる段階から、ただ形を追うのではなくて「どのような気持ちがその形をつくっているのか」、振付けの意味とそれを十分に理解する必要があることを教えてくださいました。
本番ではとにかく緊張しましたし、もちろん足りない部分もたくさんありましたが、いただいた指導に忠実に、自分のなかで消化しながら踊っていけたので、リハーサル終盤から本番にかけては徐々に役に入り込めている感覚がありました。
*振付と気持ちの繋がりが重要なのですね。踊っていて、特にそのことを実感した場面はありますか?
例えば、生贄の女のヴァリエーション。役柄もあり、踊っているとひとり孤独に思えてしまうのですが、群舞全員のまっすぐな視線が自分ひとりに向けられているとき、私はみんなからパワーをもらっています。生贄の女の振付は男性並みに激しいので、踊りの終盤では身体も思うように動かせなくなり、呼吸をするのもやっとなくらい。そんなとき、周りのみんなが視線にのせて注いでくれるパワーが、ダメになりそうな自分を奮い立たせてくれるんです。実際に、コール・ド・バレエとして踊っていたときは、私自身も生贄に向かってパワーを送っていたのを覚えていますが、生贄役を演じたことで改めて、ひとり一人が振付に気持ちをのせて踊れば、それはダンサー個人を超えてすべてのダンサーに繋がっていくのだと感じることができました。この場面を踊っているときは特に、吉岡さんのおっしゃっていたことを実感しますね。
*奈良さんが考える生贄の女とは、どのような女性像でしょうか?
もちろん、女性の生贄は強くて、男性の生贄は弱いというイメージはあります。ただ、振付やこれまでに習ってきたことを見つめ直したとき、私はそれだけではないと思いました。はじめから凛としてはいるけれども、それほど強くはない、繊細なイメージの女性です。男性とは違って「弱いからお前が生贄だ」ということではないので、あの約30分間の短い作品のなかで徐々に周りの女性たちを引っ張る存在になっていくんです。強さが最高潮に達するのは、女性たちが生贄の女の周りを円になって囲み、男性たちがさらにその周りに集まってくるところ。両手を広げて「男性を受け入れない」という姿勢をとるのですが、そこでやっと生贄になるんです。私のなかではそれまでは生贄にはなりきっていなくて、周囲の女性たちと同じように男性に怯えています。始めから自分が生贄になることを自覚しているわけではないのだろうなと演じていて感じます。
「春の祭典」2014年6月ローマ・カラカラ野外劇場
*今年の7月末には、モーリス・ベジャール・バレエ団の芸術監督ジル・ロマンさんによるリハーサル指導がありましたね。
ジルさんのリハーサルは、凄まじい熱気と緊張感に包まれていました。男性のリハーサルは特に、見ているだけでもパワーが伝わってきます。もちろん技術面の指導もありましたが、印象に残っているのはリハーサルの持っていき方です。ダンサーの精神面をどうつくっていくのか、そういう点に重きを置いているように感じました。
例えば、それこそ本当に役のなかでの話ですが「あの相手に勝たなければ、自分が死ぬんだぞ」という緊迫した空気を本当につくりだしてしまう。だから、男性のあの力強いシーンから女性のシーンに変わったときの静けさが際立ち、それがまた女性らしさをつくりだす。そのおかげで私たち女性も入りやすいですし、後半のヴァリエーションになったとき、それまでに踊っていた男性のパワーをもらうことができる。やはりすべて繋がっているんですよね。ジルさんはそういう作品に流れる空気感を指導している印象でした。
*最後に公演を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします!
「彼は、彼女は、どうなっていくんだろう......」という緊迫した空気とともに、男性と女性がそれぞれ生贄になっていく様を、群舞との関係性も含めて感じてもらえたら嬉しいです!
ボリショイ劇場の前で。柄本弾、秋山瑛、宮川新大審査員を務め...
今週金曜日から後半の公演が始まる「ロミオとジュリエット」は、...
新緑がまぶしい連休明け、東京バレエ団では5月24日から開演す...
あと1週間ほどで、創立60周年記念シリーズの第二弾、新制作『...
2023年10月20日(金)〜22日(日)、ついに世界初演を...
全幕世界初演までいよいよ2週間を切った「かぐや姫」。10月...
バレエ好きにとっての夏の風物詩。今年も8月21日(月)〜27...
見どころが凝縮され、子どもたちが楽しめるバレエ作品として人気...
7月9日、ハンブルク・バレエ団による、第48回〈ニジンスキー...
7月22日最終公演のカーテンコール オ...