〈HOPE JAPAN 2021〉全国ツアー、公演地にゆかりのあるダンサーでつないでいくインタビューのバトン。7番目は「ジゼル」ヒラリオン、「カルメン」ツニガなど、大役への抜擢が続く鳥海創(富山)です。
今回のツアーでは「ギリシャの踊り」で2人の若者を演じる鳥海のインタビュー、ぜひご一読ください!
富山県富山市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
5歳だったと思います。和田朝子舞踊研究所でバレエを習い始めました。先に姉が習っていたため、続いて僕も習うようになりました。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
東京バレエ団が富山で公演をすることが多く、その舞台を観ているうちに僕も「東京バレエ団に入りたい!」と思うようになっていました。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
「海賊」のビルバント
Q5 私が今思う、地元の良いところ
海、山どちらも綺麗な景色が見えるところ。そして海鮮がとても美味しいところ
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
ますの寿司、とやまん(富也萬)
(スタッフ注:「ますの寿司」は桜鱒(サクラマス)を発酵させず、お酢で味つけした押し寿司の一種。「とやまん」はさらし餡をパイ生地で包んだお饅頭の一種です)
Q7 お客様へのメッセージ
地元で踊れることがとても嬉しく誇りに思います。皆さんに楽しんでいただけるよう、僕自身も楽しんで踊ります。
2019年初演「海賊」終演後の舞台で。鳥海創(写真左・ビルバント役)、樋口祐輝(写真右・ランケデム役)
★次回予告★
次回は上田実歩(山口)が登場します。どうぞお楽しみに!
──〈HOPE JAPAN 2021〉の東京公演では、4つの作品で構成されるオール・ベジャール・プログラムとなりますが、どのような思いでこのような公演を企画されたか、お聞かせください。
斎藤友佳理 芸術監督に就任してもうすぐ6年になりますが、この間、たとえば、ジェローム・ロビンズ、ローラン・プティの作品、また、イリ・キリアンの『小さな死』など、これまで東京バレエ団のレパートリーになかった新しい作品に意識的に取り組んできました。同時に、東京バレエ団の既存の素晴らしいレパートリーを継続して上演していくことも重要な務めだと、強く感じていました。その一つが、東京バレエ団の宝ともいうべき、数々のベジャール作品です。そうした強い思いがあって、オリジナル作品の『サ・カブキ』、『M』、また『中国の不思議な役人』、『春の祭典』に取り組んできたのです。いずれ必ず、ベジャール作品を中心としたプログラムを組みたいと考えていたので、このタイミングで実現できて嬉しく思います。
──どのようにして作品を選ばれたのですか。
斎藤 いまの東京バレエ団のダンサーたちの美点、その持ち味をもっともよく出せるものは何か、ということをいつも重視しています。コロナ禍の中、全国の皆さんを励ましたいと、『ボレロ』を上演することにしていましたが、その他の作品で最初に思い浮かんだのは『ギリシャの踊り』です。ギリシャの青い海と空、白い砂浜のイメージが鮮烈な、美しさと清々しさにあふれた傑作です。海外公演でもよく取り上げていたのですが、しばらく上演の機会がなく、また数あるベジャール作品の中でもとりわけ明るくて朗らかなバレエですから、いまこの時期に上演するのにもっとも相応しい作品といえるのではないでしょうか。
──『舞楽』についてはいかがですか。
斎藤 私が最初にベジャールさんの作品を踊ったのは『ザ・カブキ』の顔世御前でしたが、この『舞楽』では、ベジャールさんから創作のゼロの段階から教えていただく機会を得ました。1988年に、モーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)との合同公演〈パリー東京〉での初演に向けて、私と高岸直樹さんがローザンヌに出向き、BBLのダンサーたちとリハーサルをしました。真ん中の男性(火の精)はセルジュ・コンパルドン、もう一組のカップルにカタリジナ・グタニエク、ルーベン・バック、そして私と高岸さんの5人による、十数分の短い作品です。ベジャールさんの振付の過程を実際に体験できたことは、私にとってとても大切な宝になりました。更衣室でBBLのダンサーたちから、「あなたはなんて幸せなの!」「私たち、どんなに羨ましいか」と声をかけられたことを覚えています。ローザンヌでも注目されていたんだなと感じたものです。
「舞楽」ー2007年の公演よりー
──近年、海外公演などでよく上演している『舞楽』は、〈パリー東京〉で上演された作品とはヴァージョンが異なるのですか?
斎藤 初演版のままでもとても完成度の高い作品だったのですが、ミックス・プログラムの一作品として成立させるためにはもう少し長さが必要とされ、翌年にベジャールさんが踊りを付け加えてくださいました。この時にアメフトの防具を付けた男性たちと巫女の姿の女性たちによる踊りが足され、振付も少し変えられた部分があります。この新しいヴァージョンの『舞楽』を携えて、1989年には海外ツアー、また1990年にはジョルジュ・ドンさんが主演する『ボレロ』を中心としたプログラムで全国ツアーを実施しています。私もその新しい『舞楽』を踊っていましたが、踊りながら、私は〈パリー東京〉で上演した、よりシンプルな、コアの部分のみの『舞楽』のほうが、ベジャールさんの振付の魅力、その本質がダイレクトに伝わるのではないかと感じてもいたのです。
──今回、その1988年の初演版が復活するというわけですね。
斎藤 難しいだろうなと思いつつ、ローザンヌのジル・ロマンさん(モーリス・ベジャール・バレエ団芸術監督、モーリス・ベジャール財団理事長)に初演版の復活上演を申し出たところ、ご快諾くださったのです! 「やるなら今!」という思いもありました。主役(火の精)の指導については、この役をずっと踊ってこられた(東京バレエ団団長)飯田宗孝先生にお願いし、また初演からずっとペアを組んでいた高岸さんにも協力してもらいました。短い作品ではありますが、初演当時の趣を、できるだけ保ったままお伝えできたらと思っています。
──『ロミオとジュリエット』については、どんな思いで上演を決められたのですか。
斎藤 もう一つ、何かそこにロマンティックなものが必要だと考えました。実は私、ロシアでカーチャ(エカテリーナ・マクシーモワ=故人。ボリショイ・バレエの大スターであり、ロシアでの斎藤の教師の一人)とワロージャ(同じくボリショイ・バレエの大スター。マクシーモアの夫で、東京バレエ団では『ドン・キホーテ』を振付けている)が、この『ロミオとジュリエット』を踊っているのを何度も観ているんです! その頃からずっとこの作品に惹かれていたので、この機会にぜひ挑戦したいと思いました。
ベジャール振付「ロミオとジュリエット」リハーサルより。足立真里亜と秋元康臣
──リハーサルを指導されているのは──。
斎藤 バレエ・ミストレスの佐野志織先生にお願いしていますが、1983年のバレエ団初演を踊った栗橋桂子さん、長瀬信夫さんにアドバイスをいただきながらリハーサルを進めています。戦争や分断といった難しい状況の中で愛し合う若いカップルのパ・ド・ドゥですから、これもいまこそ上演すべき作品の一つではないかと思います。
──東京以外の都市では、『ギリシャの踊り』『ボレロ』に『パキータ』を加えたトリプル・ビルを予定されています。
斎藤 2つのベジャール作品の間にクラシックの作品を入れることで、全国の皆さんに東京バレエ団ならではの持ち味を楽しんでいただけるのではないかと考えました。華やかかつ、親しみやすい古典の傑作ですので、ぜひ多くのお客さまに喜んでいただきたいと思い、稽古を重ねています。
不安の多いこの時期での全国ツアーとなりますが、さまざまな感染防止対策を講じての実施となります。劇場でのひと時を、存分にお楽しみいただけたら嬉しく思います。
取材・文:加藤智子(フリーライター)
〈HOPE JAPAN 2021〉全国ツアー、公演地にゆかりのあるダンサーでつないでいくインタビューのバトン。6番目はアーティストの安井悠馬(大阪)の登場です。
今回のツアーで、安井は「ギリシャの踊り」「ボレロ」に出演します。ぜひご一読ください!
Q1 出身地
大阪府
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
5歳。大阪の家の近所にあった小さなお教室。母親に連れられ体験クラスに行き、そこに居た女の子達に可愛がられて調子に乗って始めました。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
色々あるので書ききれなくてすみません!
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
......強いてあげるなら、自分の振付作品ですね。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
関西弁女子って素敵だと思います。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
関西圏でチェーン展開してる「錦わらい焼き」という店がお気に入りですかね。
Q7 お客様へのメッセージ
わらい焼きは本当に美味しいお店ですよ!観光名所の道頓堀や色んな所に店舗があるんで是非食べてみてください!
自身で振り付けたソロ作品、「朱赫」~Shukaku~より
★次回予告★
次回は鳥海創(富山)が登場します。どうぞお楽しみに!
〈HOPE JAPAN 2021〉全国ツアー、公演地にゆかりのあるダンサーでつないでいくインタビューのバトン。5番めに登場するのはソリストの三雲友里加(福岡)です。
今回のツアーでは「ギリシャの踊り」「パキータ」に出演する三雲のインタビュー、ぜひご一読ください!
Q1 出身地
福岡県福津市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
7歳。加藤由紀子バレエ教室でレッスンをはじめました。
はじめたきっかけは姉が図書館で借りてきた本です。その本に載っていたバレリーナの写真に反応して「習いたい」と言い出したそうです。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
福岡で水香さん(上野)とマラーホフさん(ウラジーミル)が「白鳥の湖」を踊ったのを観て感動したのが入りたいと思ったきっかけです。もうひとつ大きな理由は豊富なレパートリーです。クラシックだけでなく、ベジャール、キリアン、ノイマイヤーなど、たくさんの振付家の作品を踊れる機会があることに惹かれました。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
ベジャール作品は全て大好きです!! 入団する前はベジャールさんや作品のこともよくわかっていなかったのですが、実際に踊ってみて色々な意味で衝撃をうけました。
あとは子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」のオーロラ姫。この役を踊り、演じることで自分自身が成長できたなと手応えを感じることがありました。
マッツ・エックの「カルメン」、キリアンの「小さな死」も印象深い作品です。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
豊かな自然があり、のどかなところです。空気もおいしくて、のびのびした気持ちで過ごせますし、心が洗われるような気がします。
個人的な思い出ですが、学校の帰り道が海の近くだったので、その景色や潮の香りが懐かしく思い出されます。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
好きな名産→「通りもん」です。バレエ団にもファンが多くて、帰省のたびに買って帰るのですが、皆ものすごく喜んでくれます。あとは明太子に海鮮...いっぱいありますね。
好きなスポット→宮地嶽神社(みやじたけじんじゃ)。嵐の皆さんが出演したCMで有名になったのですが、私は前から好きです(笑)
Q7 お客様へのメッセージ
バレエ団として、福岡で公演する機会はあまりないので、今回故郷で公演ができることを本当に嬉しく思っています。大変な状況が続いていますが、私たちの舞台を観てくださった方の心が晴れるような、そんな時間をお贈りしたいと心から願っています。
子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」より オーロラ姫
★次回予告★
次回は安井悠馬(大阪)が登場します。どうぞお楽しみに!
7/3(土)、7/4(日)の〈HOPE JAPAN 2021〉全国ツアー、東京公演のみで上演するベジャール振付「ロミオとジュリエット」(パ・ド・ドゥ)の上演に先駆け、初演キャストのインタビューを2回にわたって紹介しています。
本日は初演時のジュリエットの一人、栗橋桂子さんのインタビューです。ぜひご一読ください。
──今回、『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥのリハーサルのために久しぶりの来団を果たされたとのこと、稽古場は当時と場所も規模も異なりますが、いろいろと思い出されるのではないでしょうか。
栗橋桂子 懐かしいですね。『ロミオとジュリエット』の上演はもう38年も前のことなので、お声がけをいただいた時には「すっかり忘れていると思うから役には立てないわよ」と言ったくらいです(笑)。当時は『白鳥の湖』のオデットや、『眠れる森の美女』のオーロラ姫などをよく踊っていました。もっと古い時期では『くるみ割り人形』や『シンデレラ』なども思い出されます。
──『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥが上演された1983年の〈ベジャールの夕〉は、東京バレエ団がベジャール作品に本格的に取り組むきっかけとなった公演です。ベジャール率いる20世紀バレエ団はすでに何度か日本公演を行い、ちょうど映画「愛と哀しみのボレロ」でジョルジュ・ドンが注目された時期でもあります。
栗橋 佐々木さん(東京バレエ団創設者の佐々木忠次)はベジャールさんのバレエがとてもお好きで、スタジオで何かとベジャールさんのお話をされていましたね。当時はベジャール人気がどんどん高まっていました。私がまだ中学生の頃の話になりますが、先輩たちが20世紀バレエ団の公演に行くんだと言って盛り上がっていたのをよく覚えています。私は夜の公演には行けなかったので、羨ましく思っていました。
──ベジャールのリハーサルはどのような雰囲気でしたか。
栗橋 家に昔のノートが残っているのですが、同時進行で稽古していた『眠れる森の美女』のことばかり書いてあって、なぜかベジャールさんのリハーサルのことは書かれていないのです。(笑)! まずは『ドン・ジョヴァンニ』のリハーサルから入ったことは覚えています。ベジャールさんは、夜中のうちに次の日のリハーサルの振付の場面をすべて頭の中で完成させた状態でいらっしゃる。翌日にはそれがまた変わっていたり、ダンサーによって微妙に修正が入っていたり──。だから、こちらはすごく緊張するし、神経を使います。踊る人が変わるとニュアンスの違いが出るのだと思いますが、でもそこで「あなたは絶対にこうだ」とはならなかったのです。自由にやらせてくれる部分があったんですね。そんな中でいざ『ロミオとジュリエット』のパートナーが決まると──私は津村正作さんと組んでいたのですが──、まずは二人で基本の振付を練習してつくっていき、それをベジャールさんに見ていただく。常にそんなふうにしてリハーサルが進みました。
──ジュリエットという役柄については、何か指示を受けられましたか。
栗橋 当時はちょうど溝下司朗さんが芸術監督になられた頃だったかと思いますが、キャスティングに関してベジャールさんから、「ジュリエットは可憐さのある人を選びなさい」と言われていたそうです。溝下さんには「可憐さ......、大丈夫だよね!?」って言われましたが(笑)、ベジャールさんのリハーサルでその点が問題になったことはなかったし、そうでない人は選ばなかったはずなので、あえて作り込むことはせず、自然に演じることを心がけていました。
──ベジャールの振付に戸惑うようなことは──?
栗橋 『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥは、数あるベジャール作品の中でも、よりクラシックの要素が強い作品です。東京バレエ団はその後、『春の祭典』や『火の鳥』などにも取り組んでいますが、こうした独特の、強烈な個性を放つ作品と比べると、とくに違和感もなく取り組むことができたと思います。
──ベジャールの『ロミオとジュリエット』の魅力について教えてください。
栗橋 一般的な『ロミオとジュリエット』とは趣が違いますね。二つの対立する家の争いが背景にありますが、そこには、ベジャールさんがそれまでの人生で体験されたこと──戦争の体験が、反映されているのだと思うのです。ベジャールさんのバレエには、優れたダンサーの美しい部分を見せるようなバレエと違って、人生の表も裏も織り込まれている。そういった深い部分があるからこそ、素晴らしいのだと思います。
──久しぶりの復活上演についてはどう思われますか。
栗橋 それはもう嬉しいです! 作品というものは財産ですから、ぜひ繋げていってもらいたいと思います。ベジャールさんの作品は偉大で、苦難を乗り越えるエネルギーにあふれています。現代にも乗り越えなければならないいろいろな問題がありますが、そこに響く作品ではないかと思うのです。
ダンサーたちの活躍を、とても楽しみにしています。東京バレエ団が他と違うのは、その表現力だと思います。東京バレエ団でなら、表現力のパワーに満ちた、素晴らしい舞台を観ることができると言われるような、スペシャルなバレエ団でいてほしいと思っています。
取材協力:栗橋桂子(元東京バレエ団)
取材・文:加藤智子(フリーライター)
Q1 出身地
大阪府大阪市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
4歳の時、母に勧められたのがきっかけです。高田由紀子バレエ学園という地元のスタジオでレッスンをはじめました。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
友人に勧められたのがきっかけです(元東京バレエ団の松野乃知くん)
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
・子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」キトリ
・「ディアナとアクテオン」ディアナ
Q5 私が今思う、地元の良いところ
大阪に帰った時に聞く関西弁が「あー帰ってきたな」と思えて好きです。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
好きな名産→「くくる」のたこやきー!! そして とんちょう!
好きなスポット→あべのハルカス
(スタッフ注:とんちょうはいわゆる「おこわ」だそうです。たこやきは「―!」をつけたくなるくらい美味しい!とのこと)
Q7 お客様へのメッセージ
この大変な状況の中、劇場まで足を運んでくださった皆さま、そして東京バレエ団を応援してくださっている皆さま、本当にありがとうございます。
私たちダンサーも舞台に立てることが奇跡だと思っております。皆さまの前で踊れることが当たり前ではないということを再確認するとともに、1つ1つの舞台をこれまで以上に大切に踊っていきます。
これからも東京バレエ団をよろしくお願いします!
「ドン・キホーテの夢」より。生方隆之介と涌田美紀
★次回予告★
次回は三雲友里加(福岡)が登場します。どうぞお楽しみに!
来る7月3日に幕をあける、東京バレエ団HOPE JAPAN 2021全国ツアー。今回は全国11都市をめぐる大がかりな公演となりますが、7/3(土)、7/4(日)の東京公演のみで上演するベジャール振付「ロミオとジュリエット」(パ・ド・ドゥ)に注目されている方も多いのではないでしょうか?
現在東京バレエ団では佐野志織(東京バレエ団バレエミストレス)が本作の指導にあたっていますが、この度、初演キャストの一人である栗橋圭子さん、長瀬信夫さんにお越しいただき、作品について様々なアドバイスをいただきました。
本ブログではお二人のショートインタビューをご紹介。ベジャールから直々に本作を託された2人ならではの興味深いインタビューです。ぜひご一読ください。
まずは長瀬さんの登場です。
写真左より秋山瑛(ジュリエット)、大塚卓(ロミオ)。7/3(土)出演
Q 30数年ぶりに「ロミオとジュリエット」に接してみて、いかがでしたか?
―この作品を踊ったのは40年近く前のことですから、細かいところまで鮮明に覚えている、というわけにはいきません(笑)。ですが、今日リハーサルをみている中で「当時はこういうふうにバランスをとっていたなぁ」と感覚的に甦ってくるものがあり、とても懐かしい気持ちでした。
残念ながらどうして僕がロミオ役に選ばれたのかはわからないのですが、当時の僕は181cmあったので、日本で一番高身長なダンサーだったと思います(笑)
Q 今日のリハーサルではリフトやオフバランスのことを重点的に注意されていました
―この作品には大きなリフトがたくさん出てきます。技術的にも難しいですし、万が一女性を落としてしまったら大変なことになりますから、当時プレッシャーはかなりありましたね。
オフバランスというのは、何もベジャール作品に限った話ではないんですよ。例えばですが、男性が片手で女性を支えるとき、女性はバランスがない状態になります。二人で1つのポーズをつくるわけですから、2人の間が軸になるようなイメージです。
バランスがあるところでもつか、少しオフにしてもつか、微妙なさじ加減ですが、女性がバランスをとれるところで持ってしまうと、かえって動きを制限してしまうこともあるのです。
Q 初演時はその前後に違う作品にも出演していたようです。1つの公演の中で、複数の作品に出演する場合、どのように役の気持ちを切り替えていったのでしょうか?
―これはもう練習あるのみ、です(笑)できないなんて言っていられません。ただ、この「ロミオとジュリエット」に関してはとても自然に演じられる作品で、稽古のときから役にも入りやすく、舞台上でも稽古場でも、自然と役を生きることができました。
Q 他のベジャール作品と比べると、共通点やこの作品ならではの特徴はあるのでしょうか?
―振付そのものをみると、他の作品との共通点を要所に見つけることができるんですよ。リフトもそうですけど、手の動きなど「あ、これは『ボレロ』だ!」と思うところも。
ベジャール作品には物語がないものもありますが、この作品に関していえば非常にドラマティック。演じる側にとっても自然と役に入り込めますし、感情の起伏というのがしっかり描かれています。照明もとてもキレイですよ。
Q この作品をとおしてなにか得たことや気付きはありましたか?
―この作品で学んだ芝居としての「間」の使い方は、他の作品を演じる上でもとても役に立ちました。クラシックバレエはどうしても技術が優先されてしまうものですが、物語がある作品は技術だけでは成り立ちません。
Q お客様に「ここを観てほしい!」というところはありますか?
―現代の作品は身体の表現や使い方、という観点ではもっと進んでいるというか、新しいことに挑戦しているバレエもあると思います。ですが、この作品ではロミオとジュリエット、2人の気持ち、感情の描かれ方に注目していただきたいですね。例えば2人が抱き合い、そして離れるという部分だけをみても、お互いの家の問題があり、2人の気持ちがあるわけです。2人が抱き合うまでの「間」。そして離れてからの気持ちなど、ただパをやるだけでは伝えることができない、2人の感情と葛藤の表現についてぜひ観ていただきたいと思います。
取材協力:長瀬信夫(元東京バレエ団)
>>>初演時のジュリエット、栗橋桂子さんのインタビューはコチラ
Q1 出身地
大阪府茨木市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
6歳の時、姉が先に習っていたので、同じスタジオではじめました(ユアサバレエスタジオ)。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
入団前に東京バレエ団の〈シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2007〉の舞台をフェスティバルホールで観て、強く印象に残ったのがきっかけです。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
どれも思い入れがある作品ばかりなのですが......挙げるとすればキリアン振付の「小さな死」です。どのパートも、曲も、踊っていても観ていても、ラストは何故か涙が出そうなくらい大好きな作品です。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
時間の流れがゆっくりしている。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
千鳥饅頭が大好きです。
スポットは万博公園です。子どもの頃、家族でよくピクニックに行った思い出があります。
Q7 お客様へのメッセージ
いつも東京バレエ団を応援し、観にきてくださりありがとうございます。色々な制限がある中でも劇場で踊る機会に恵まれていることにとても感謝しております。
皆様に現実を忘れて楽しんでいただけるよう、精一杯心をこめて踊ります。楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからも東京バレエ団をよろしくお願いいたします。
イリ・キリアン振付「小さな死」より 二瓶加奈子、樋口祐輝
★次回予告★
次回は同じく大阪出身、涌田美紀の登場です。どうぞお楽しみに!
Q1 出身地
香川県高松市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
4歳、母に連れられてはじめました。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
2004年に香川で友佳理さん(斎藤友佳理 / 現芸術監督)とマラーホフさん(ウラジーミル)の「ジゼル」を観て感激したことを今でも強く覚えています。他にも色々と理由はありますが、やはりバレエ団の公演に何度か触れる中で「ここに入りたい!」とより強く思うようになりました。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
たくさん、たくさんありますが......
強いてあげるならば、昨年のコロナ禍からの自粛明け初の全幕作品だった『ドン・キホーテ』です。メルセデス、ドリアードの女王、若いジプシーの女と、3つの大役を初役として任せていただきました。
2日で3公演というスケジュール、そして全て違う役で、ということも初めてだったので、とても印象に残る公演になりました。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
気候が良く、のんびり穏やかで暮らしやすい。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
昨年オープンした、四国水族館。
家族から聞いた新たなおすすめスポットです。イルカショーのロケーションが素晴らしいそうです。(夕方だと夕日がバックでショーが見られるそう!)
この時期、なかなか帰省できませんが、是非行ってみたいなと思っています!
Q7 お客様へのメッセージ
岡山、香川へ東京バレエ団が公演に行く機会が最近はなかなかないので、とても楽しみにしています。
岡山シンフォニーホールは、東京バレエ団のオーディションを受ける直前の1月に、香川からはるばる海を渡り(笑)東京バレエ団の公演を観に行った思い出の劇場です。それから10数年たち、ご縁あり今回舞台に立てることを幸せに思います。
このような時期ですが、皆様の心に残る公演をお届けできるよう精進してまいります。
「ドン・キホーテ」よりメルセデス
★次回予告★
次回は二瓶加奈子(大阪)が登場します。どうぞお楽しみに!
Q1 出身地
京都市
Q2 バレエをはじめた年齢、きっかけ
5歳。兄と姉が先にバレエを習っていました。両親からは僕が自分から「やりたい」と言い出したと聞いていますが、実際には兄・姉と同じことがやりたかったんだと思います。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
バレエ教室の大先輩である高岸直樹さんに憧れて
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
たくさんあってどれかひとつを選ぶことはできないのですが、あえてひとつ、というのであればベジャールさんの『ボレロ』。自分にとって得るものが多い作品であり舞台です。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
歴史と自然を感じられる素敵な街
Q6 私が好きな地元の名産やスポット
寺、神社。これも素敵なところがたくさんあるのでどれか一つに絞ることができません...
Q7 お客様へのメッセージ
コロナ禍で"我慢"をすることが多い時期ですが、〈HOPE JAPAN〉の舞台で皆様に元気や勇気、癒やしを与えられるようダンサー一同頑張っていますので、ぜひ劇場に足をお運びください。
★次回予告★
次回は政本絵美(香川・岡山)が登場します♪どうぞお楽しみに!
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