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レポート2016/10/11

イベントレポート~「ザ・カブキ」 泉岳寺 墓参

「ザ・カブキ」のリハーサルがつづく忙しい日々。そんななか、東京バレエ団一行が訪れたのは、高輪の泉岳寺です。浅野家とゆかりが深い泉岳寺は、討ち入りを果たした赤穂四十七義士の墓所として知られ、「ザ・カブキ」の物語のベースとなる歴史の舞台でもある場所です。 「ザ・カブキ」公演の前には、必ずこの場所を訪れ墓参りと公演成功祈願を行うのが、初演から30年間続く、東京バレエ団恒例の行事。 IMG_4409 小.jpg

柄本弾をはじめ、プリンシパルも東京バレエ学校の生徒たちも、赤穂義士の墓前で静かに手を合わせました。 IMG_4419 小.jpg

今回、初めて「ザ・カブキ」の由良之助を踊ることになった秋元康臣も、大石蔵之助の墓の前で静かに手を合わせます。 「実際にこの場に立ってみると、いろいろな思いが心にうかびました。いい時間でした。自分が踊る前日に今度は一人で来ようと思います」。 IMG_4420  小.jpg

16日の公演で顔世御前を踊る、奈良春夏。いつもは、力強く凛としたイメージの奈良も静かに墓前で手を合わせ「気持ちが静かになり、心も身体も引締まります」といいます。 IMG_4417  小.jpg 墓所のかたわらには、義士たちの氏名とそれぞれの墓の位置が刻まれた石版があり団員たちはひとり一人の名前を確認しながら、志を遂げた48名(1名は周囲の反対に遭い、討ち入り前に切腹した萱野三平)と主君・浅野内匠頭の生き方に思いをはせていました。 IMG_4428 小.jpg IMG_4411.JPG

墓参の後は、泉岳寺山門前で芸術監督・斎藤友佳理が挨拶。「ザ・カブキ」出演ダンサー一同で、公演の無事成功を誓いました。 IMG_4414.JPG

新着情報2016/10/06

新入団員、ブラウリオ・アルバレス インタビュー

バレエと日本文化をこよなく愛するメキシコ人、 ブラウリオ・アルバレスが入団しました!

東京バレエ団の新団員、ブラウリオ・アルバレスが10月13日からの「ザ・カブキ」で公演デビューします。8月に来日したブラウリオは、めぐろバレエ祭りの会場で、周囲に人だかりができるほど、バレエ通には名前も顔も知られた存在。

ハンブルク・バレエ団から、オーデションを受けて東京バレエ団に入団した異色の経歴をもつブラウリオに、日本で踊ることになったきっかけと、熱い思いを聞きました。ちなみにこのインタビューは「日本語」で行われました。 IMG_4022 ニュース.jpg ―― 日本の伝統文化もポップカルチャーも食べ物も、「ぜんぶ!」興味があるそうですが、日本との最初の出会いはいつのこと?  2007年、ハンブルク・バレエ団の一員として日本公演に来たとき。人生の中でまったく意味のないことってあるでしょう? 日本にいてレストランに入ったり街を歩いているときに、自分の家にいるような懐かしさを感じたんです。 日本語はまったくできなかったけど、ここではコミュニケーションができる! と感じて、それからインターネットを使って日本語の猛勉強をしました。 ―― バレエとの出会いはいつですか?  母はメキシコでバレエ教室の教師をしていました。覚えていないくらい小さいころから稽古場にいて、学校の宿題もレッスンも稽古場でしていたんです。その後、フェンシングやバイオリン、テコンドーなど習ってみたけど、最終的には「踊りたいんだ!」といって、自分でバレエを選びました。母から直接レッスンを受けることもあったけど、いろいろ難しいんです。「お母さん、ぼくを認めて!」っていう気持ちがあるので。(笑) 

15歳のときにからアメリカのヒューストン・バレエやボストン・バレエに行って、オファーを受けてハンブルク・バレエ団の学校に入ったのは17歳の時です。 ―― ハンブルク・バレエ団で学んだことは?  ジョン・ノイマイヤーからは多くを学びました。ぼくの日本語で説明するのはすごく難しいけど、イチバンたいせつなことは、自分のために踊るのではない、観ているお客さんの中で何か共感するものが生まれること、お客さんにそれを伝えること。たとえば、悲しみを表現するときに大げさな動きではなく、ミニマムな動きで表現しなければならない。演技ではなく「そのもの」にならなければならない。ジョンとはよく、そういう話をしました。  それからもちろん、すばらしいダンサーたちとの出会いがありました。 ――ハンブルク・バレエ団と違って東京バレエ団は多国籍ではなく、外国人ダンサーは初めてですが、入団してみて感じたことは?  踊ることは文化だし、同じ人間だから、ギャップを感じることはあまりないです。今、「ザ・カブキ」の討ち入りの練習をしていて、踊りながら感動して泣きそうになるんです。日本人は心の中を見せないけど、なかに燃えるモノを持っている!そう感じるから。そして自分も燃えながら踊っています。 ――「ザ・カブキ」で難しいと感じる部分は?

腰を落として走るシーン! 今までやったことがなかったので。花柳先生のレッスンでは少し苦労したけど、あの(花柳一門の)動きはすばらしかった。 ――これからやってみたいこと、役柄はありますか?  ぼくは人生のすべてをダンスに使いたい、と思っているので、どんな経験もするつもりだし、チャレンジもするつもりです。それからバレエのすばらしさをたくさんの国の、たくさんの人たちに伝えて教えたい。でも、今は「ザ・カブキ」の事だけを考えています。

レポート2016/10/03

イベントレポート~「ザ・カブキ」討ち入り体験会~

2016年10月2日(日)、東京バレエ団のスタジオで新たな伝説が生まれました。
今から30年前に初演され、世界各国で絶賛を浴びてきたモーリス・ベジャール振付の傑作「ザ・カブキ」。
なんと初演から30年目にして、初めて東京バレエ団のダンサー以外がこの「ザ・カブキ」に挑戦しました。

スタジオに集まったのは東京バレエ団友の会「クラブ・アッサンブレ」会員のみなさま。
名付けて<CAT四十七士>!
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今回は「ザ・カブキ」の名場面、
"討ち入り"の冒頭と"切腹"の2つの場面を体験していただきました。
会員のみなさまをご指導させていただいたのはこの五人。
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【写真左から 岡崎隼也、木村和夫、飯田宗孝、樋口祐輝、菊池彩美】


実際に東京バレエ団の団員を指導している飯田宗孝(東京バレエ団団長)、
木村和夫(東京バレエ団プリンシパル)の2名を中心にご指導させていただきました。
また、さすがに経験のない方のみで"討ち入る"のは難しいため、
岡﨑隼也、樋口祐輝の2名が先頭にたち、ともに討ち入らせていただきました。
また、入団1年目の菊池彩美は音楽係を担当し、陰からサポートさせていただきました。

まずはストレッチから体をほぐします。
飯田から直々に指導を受けられるとあって参加者のみなさまは緊張した面持ちでしたが、
数分後には笑顔もちらほらとこぼれるようになりました。
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続きまして、基本的な歩き方や走り方を全員で練習。
それから数名ずつの列に分かれ、
東京バレエ団のダンサーたちが「ピラミッド」と呼んでいる独特の三角のフォーメーションをつくることに挑戦します。
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とにかくこの「走る」ということに参加者のみなさまは大苦戦。
ただ走ればいいわけではなく、重心を落とし、上体をぐらつかせず、
なおかつ前の方、後ろの方と等間隔になるように走らなければなりません。
そのうえ、止まる場所を間違えると綺麗な三角にはならないのです。
それだけではありません。黛敏郎さんによる音楽、実は結構テンポが速いのです。
音楽にあわせて上記全ての条件をこなさなければなりません。
みなさまは飯田の指示のもと、岡崎、樋口に続いて何度も何度も走ります。

練習の甲斐あって、なんとか三角ができるようになってきました。
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続いて刀の持ち方です。
「戦いに来ているわけだから、視線は刀の向きにあわせて動かして!」
「ちゃんと敵を見つけて切り込んで!」
と、みなさまがイメージしやすいような分かりやすい説明をしながら、
飯田は参加者全員の刀を持つ手を細かく直していきます。
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そして意外に難しいのが「男性らしく座る」ということ。
本番では3名の男性ダンサーによるヴァリエーションがありますが、
その間、四十七士は舞台上で座っていなければなりません。
"四十七士"は男性の役ですから、
女性の参加者の方には「男性として座る」のもなかなかハードルが高いようです。
が、だんだんと逞しくみえてきました。
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さて、最後の場面は「切腹」です。
ふたたび走って三角をつくります。みなさまだいぶ慣れてきたようです。
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ちなみに、今回はイベントならではの特別な出来事が!
なんと!本公演では由良之助を演じていない木村和夫が特別に由良之助としてCAT四十七士をひっぱっていきました!!

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そして切腹。
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飯田からは死んでいくときの顔の角度や表情についても細かく指示がとびます。

こうして目黒にて無事に本懐をとげたCAT四十七士のみなさま。
最後は全員晴れやかな笑顔で記念撮影です。
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※ホームページ掲載のためお顔をぼかしております。

今回"討ち入り"を体験したことで、ますます「ザ・カブキ」への作品愛が強まったようでした。

クラブ・アッサンブレでは今後もみなさまにご満足いただけるような企画をご用意してまいります。
次回のイベントは12月17日(土)、東京文化会館にて「くるみ割り人形」終演後にクリスマス会を開催いたします!

どうぞ楽しみにお待ちください!!


★「ザ・カブキ」公演情報はコチラ>>>


★クラブ・アッサンブレへのご入会はコチラ>>>

新着情報2016/10/03

「ザ・カブキ」初演キャストの夏山周久さん、藤堂眞子さんインタビュー

 開幕間近となった『ザ・カブキ』の稽古場に、東京バレエ団特別団員の夏山周久さん、藤堂眞子さんが来訪、リハーサル見学の合間に、短時間ながら団員たちにアドバイスを伝える場面も実現した。初演のおかる役として、また初代由良之助ダンサーとして本作上演史に名を刻む二人に、モーリス・ベジャールの創作や当時の思い出を聞いた。 IMG_4239 HP.jpg ──お二人は『ザ・カブキ』以前からベジャール作品を踊られていましたね。 夏山 『ザ・カブキ』の3年前、〈ベジャールの夕〉という公演で僕は『さすらう若者の歌』を踊っているのですが、それが認められて、その後藤堂さんと二人でブリュッセルに呼んでいただき、『詩人の恋』という作品を踊っています。ベジャールさんの振りは難しいですし、短い作品でも、一挙手一投足にちゃんと、"ベジャール・イズム"のようなものがある。簡単にできるところもあるけれど、その簡単なところを簡単にやってしまってはいけないということを、教えてくださる方でした。 藤堂 今日のリハーサルでも、そう感じられるところがありましたね。実は一昨日に誕生日を迎えたのですが、30年経って、この新しい一年が『ザ・カブキ』からスタートすると思うと、感慨深いものがあります。リハーサルに触れて、一瞬ですが、またベジャールさんの創られた世界に入ってしまった感覚になりました。 私が踊ったおかるは、私のわがままなこの性格が合っている役なんだろうなと、勝手に思ったりしていました(笑)。 IMG_4198  HP.jpg 夏山 僕は初演の時にすでに30歳を超えていましたから、こうしてピークを過ぎていくんだなと思っていた時に、もう一度チャンスを与えてもらったという感覚がありました。当初は、日本人として由良之助を演じよう、演じようと、その男気を前面に出していたのですが、振付どおり、音楽どおり、形どおりできるようになるまでは、決して先走って出してはいけないと、きつく怒られました。当時は反発心もありましたが(笑)、今思うとありがたいお言葉でした。 ──一力茶屋の場面に登場するおかるの艶やかさが印象的ですが、どのように役作りをされたのでしょうか。 藤堂 あそこは苦労しました......。手ぬぐいを持って芝居をする場面があり、玉三郎さんが『娘道成寺』でやっていらっしゃるのですが、これが難しくてできなくて。結局、初演の前に何度か、花柳流の女性の先生のところに習いに行ったのです。 ところが、日舞を習われていないベジャールさんが、そのままやっただけでさまになるのです。日舞だけでなくインド舞踊も、ギリシャも、ベジャールさんのなかにジャンルの壁というものはないのですね。すごいことだなと思いました。 夏山 終盤の「涅槃交響曲」などは、同じようなメロディがずっと繋がっている曲なのに、ベジャールさんからは次々とパが出てくる。もちろん下準備はされているでしょうが、これには驚きました。もう次は困る頃だろうと思っても、またスッと出てくるのですから。 藤堂 心根といいますか、ベジャールさんご自身に、日本のものを海外にもっていく時に中途半端なものは創れない、日本の伝統を崩すようなことはしたくない、という思いがおありだったかと思いますよね。 ──夏山さんが初めて由良之助を踊った時の手応えはいかがでしたか。 夏山 あの時の、幕がおりた瞬間を思い出します。バレエをやっていて良かったと思ったものです。  日本の作品ですから、"『忠臣蔵』は僕たちで創る"という生意気な気持ちがありました。1日目の主演は(ゲストの)エリック・ヴ=アンさんだから良くて当たり前、2日は夏山だから悪くて当たり前、とは思われたくなかったのです。緊張して、最後まで踊りきれるだろうかと思っていたその日──、プロローグで黒子役から刀を渡してもらう場面がありますが、刀を摑もうとしたら、そこに「頑張って」と書いてあった......。バレエ団の皆が応援してくれていた。それが力になった。『ザ・カブキ』は、僕を強くしてくれた作品と言えます。 IMG_4203  HP.jpg 藤堂 今でも時々、夢の中に出てくるんですよ。メイクの白塗りがとても難しくて、なかなかできなくて間に合わないのに、もう幕は開いてしまう(笑)。 夏山 僕も時々見ますね。振りなんて忘れているのに、開幕直前に今から舞台で踊れと言われて冷や汗を流す(笑)。 藤堂 私はおかると人生をともにした、という思いがありますね。他の作品もいろいろ踊ってきましたが、あれほど、役柄の人生に巻き込まれたものは他にありません。そこまで、ベジャールさんの作品の世界に入り込んでしまった。今でもおかるは、分身のように懐かしいし、出会わせてくださったベジャールさん、佐々木(忠次)さんに感謝したいですね。  二人は『ザ・カブキ』公演初日の10月13に日に開催される〈メモリアル・ガラ〉トークショー「『ザ・カブキ』と佐々木忠次」に出演する予定となっている。

 ●取材・文 加藤智子

公演情報2016/09/26

今年の秋は「忠臣蔵」ざんまい!

 今年の秋から冬にかけて、バレエ、歌舞伎、文楽とさまざまな「忠臣蔵」をお楽しみいただけます。  モーリス・ベジャールが東京バレエ団のために振付けた「ザ・カブキ」は1986年の初演から30年。今年5月に亡くなった東京バレエ団創設者であり、ベジャールとの旧交も厚かった佐々木忠次の追悼公演として、10月13日~16日に新国立劇場で上演いたします。 「ザ・カブキ」が歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」をもとに創作されたことはよく知られていること。ベジャールは「仮名手本忠臣蔵」をつぶさに探求し、十一段におよぶ長大な物語を、約2時間のバレエにまとめたのです。現代の青年がひとふりの刀を手にした瞬間タイムスリップして由良之助となるという設定を新たに設け、歌舞伎でも描かれている"兜改め"、"山崎街道"や"一力茶屋"といった名場面を盛り込みつつ、ベジャールは作曲家の黛敏郎とともに、このバレエの傑作を創りあげました。なかでも、四十七士が討ち入りを果たすラストシーンは、迫力満点。バレエならではの名シーンです。  国立劇場では開場50周年を記念して、歌舞伎「仮名手本中心蔵」の3ヵ月連続完全通し上演が行われることになりました(10月~12月/国立劇場)。通常は取り上げられることの少ない場面も上演されるとのこと。華やかな顔ぶれで、3ヵ月間にわたり、「これぞ、忠臣蔵!」という舞台をご覧いただけるはずです。  そして、12月には歌舞伎のもととなった、文楽公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」も上演されます(12月/国立小劇場)。    ベジャール振付の「ザ・カブキ」だけでなく、そのもととなった歌舞伎や文楽の「仮名手本忠臣蔵」を併せてご覧いただき、「忠臣蔵」の世界を楽しまれてはいかがでしょうか。 ◎「ザ・カブキ」公演情報はこちら>>>

レポート2016/09/17

あいちトリエンナーレ2016プロデュースオペラ「魔笛」レポート

 東京バレエ団が出演する、あいちトリエンナーレ2016、ガエタノ・デスピノーサ指揮、勅使川原三郎演出、名古屋フィルハーモニー交響楽団の演奏によるプロデュースオペラ「魔笛」が愛知県芸術劇場 大ホールで開幕しました。
 
 黒いメッシュの衣裳をつけた16人の東京バレエ団の選抜メンバーたちは、KARASの佐藤利穂子氏とともに場面の空気や登場人物たちの深層心理を表現。4月からおこなれた勅使川原氏とのワークショップを通して身につけていった独特の身体表現を駆使して、生き生きと演じました。

s魔笛028_photo_Sakae Oguma.jpg魔笛361.jpg★魔笛1324.jpg舞台写真撮影:小熊栄


sIMG_9083.jpg(写真)初日の終演後、勅使川原三郎氏、KARASの佐東利穂子氏と。

公演は9月17日(土)、9月19日(月・祝)。愛知県芸術劇場 大ホール
公演の詳細>>
勅使川原三郎氏インタビュー>>



レポート2016/09/16

「ザ・カブキ」 二代目 花柳壽應さん インタビュー

 10月に東京バレエ団が上演するモーリス・ベジャールの『ザ・カブキ』は今年で初演30周年。東京バレエ団の佐々木忠次代表との縁でベジャールのアドバイザーとして創作に参加した花柳壽應(当時、花柳芳次郎)さんに、創作時の稽古やベジャールさんとの思い出をうかがいました。 花柳さん×ベジャール インタビュー用 small.jpg ──ベジャールさんとその作品については、当時どのような印象を持たれていたのですか。 「実は、ベジャールさんのバレエが大好きで、日本公演にはいつも行っていました。『春の祭典』や『ロミオとジュリエット』などを観て、これは今までのバレエとは全く違うものだと感じていたのです。そのベジャールさんの仕事を手伝うことができるなんて考えてもいなかったから、すぐにOKしましたよ。私もそんなに暇ではなかったけれど、何もかも振り捨てて(笑)」 ──ベジャールさんからは、具体的にどのような要望が? 「それが、その時点では佐々木さんも何もわからない、とにかく来てくれと(笑)。実際に稽古場に行くと、ベジャールさんは頭の中にやることができあがっているのだけれど、その時その時によっていろいろと思いつくわけなんです。たとえば、"ここは日本舞踊ではどう表現するんだ"、と。私がその場でそれをやって形にします。そうすると、ベジャールさんはそれをそのまま使うのではなく、 "ベジャール流"に翻案していくのです」 ──ベジャールさんは、歌舞伎、日本舞踊のこともよくご存知だったそうですね。 「たとえば『娘道成寺』という有名な古典の舞踊がありますが、"その中の、このパートの、ここのところを踊ってみてくれ"と、わりと具体的におっしゃる。それが、ご自分の頭の中に全部入っている。私が踊ってみせると、ベジャールさんはベジャール流になおして振付けるのです。  おかるの振りもそうでした。『娘道成寺』の中の踊りを、ベジャールさんは、おかるにやらせる。その発想が、面白いですね。 『娘道成寺』には毬唄の場面がありますが、それは『ザ・カブキ』の第五場の侍女たちの踊りに取り入れられてもいます」 取材・文 加藤智子(ライター) ※花柳壽應氏のインタビューは「ザ・カブキ」の公演プログラムに詳しい内容を掲載します。また、花柳氏は10月13日<メモリアル・ガラ>のトークショーにもご出演いただきます。

レポート2016/09/08

オペラ『魔笛』演出家・勅使川原三郎氏インタビュー
 

  あいちトリエンナーレの2016プロデュースオペラとして上演される、勅使川原三郎演出によるオペラ『魔笛』に、東京バレエ団のダンサーたちが出演、4月から断続的にワークショップ、稽古が行われている。本番を約半月後に控えたバレエ団のスタジオで、リハーサル中の勅使川原氏に話を聞いた。 42_MG_2745photo A.Groeschel サイズ小.jpg  ダンサー、振付家、また演出家として様々な作品を手がけてきた勅使川原氏だが、オペラ演出については、「オペラを、"すでにあるもの"として考えず、いまなぜこのオペラを演出、再創作するのかということをきちっと捉えながらやろうと思っています」と話す。そこで重要な役割を果たすのが、東京バレエ団のダンサーたちだという。 「大事にしたいことは、これは"動くオペラ"であるということ。身体が動くのはもちろんですが、実はオブジェも、動きます。舞台には直径8メートルから80センチの大中小のメタリックなリング=円が配され、いろんな動きをする。その中で、ダンサーたちの動きが、とても重要なものとなるのです」 15_MG_0024photo A.Groeschel.JPG  自ら主宰するカンパニー、KARASをはじめ、世界各地のダンサーたちと創作を続けてきた勅使川原氏だが、東京バレエ団のメンバーとは、今回が初顔合わせだ。 「彼らには可能性を感じています。これから、潜んでいるものがもっと出てくるだろうとも感じました。大事なことは、この限られた稽古期間に何ができるかということ。最終的に舞台に出たときに、とても活き活きしたものが生まれる、そういう出会いであると思っています」 39_MG_2722photo A.Groeschel.JPG  稽古中は、「男性の周りを、沿うように歩いて」「ここから、溶ける」と、独特の指示がとぶ。演出助手でダンサーの佐東利穂子氏が、フォーメーションの調整のためにせわしく動きまわるなか、きっかけを見極めようと、音楽に集中するダンサーたち。カウントをとり、振りを確認したくなるような場面も、より正確な動きを引き出すべく、勅使川原氏は様々な要求を出し続ける。 「ダンス、身体というものは、もともとズレるもの。カウントを一番に信用しないで、身体の動きとして重心がどうであるべきか、身体の機能がどうであるか、ということを正確に知覚することのほうが、大事なのです」 装置にリング=円を多用するという舞台、いったいどのような世界が立ち現れるのだろう。 「円はある種、絶対的なものであり、宇宙的なもの、絶対を想定した造形といえるでしょう。『魔笛』というオペラは、絶対的な太陽神を信じる思想と、暗闇、人間の影の部分を強調するものたちの対立が示されます。しかし人間は、絶対を信じたとしても、絶対的なものにはなり得ない。ダンサーが僕にとって必要だと思った理由は、まさにそこです。音楽の中にも、動きの中にも収まりきらない何かがある。人間はどうしようもなく不完全なものである、ということが基にあるのです。この作品は、これから、より面白いものになっていくと思います」  勅使川原三郎演出による『魔笛』は、9月17日(土)、19日(月・祝)、愛知県芸術劇場大ホールにて上演される。 取材・文 加藤智子(ライター) photo:Arnold Groeschel

レポート2016/08/25

初演30年記念 「ザ・カブキ」創作の舞台裏――世界初演に携った制作スタッフ座談会より③
「ザ・カブキ」の海外公演から、一流オペラハウスへの客演が始まった。 市川 これはもう、東京バレエ団最高の古典作品と言ってもいいんじゃないでしょうか。約30年間、全然古びることなく、「今出来上がったばかり」のような新鮮さで観ることができる。『忠臣蔵』という話に目をつけたベジャールさんは凄いですね。 立川 我々の中に『仮名手本忠臣蔵』の劇的な世界を、ごく普通に受け入れられるメンタリティが残っていたんだと思います。逆に、「お前たち、いまだにこうだろう?」と言われている気がしました。東京バレエ団にとっても、私個人にとっても大事な作品です。市川さんもですが、初演のときからずっと、1回も欠かさず現場に立ちあってきましたから。 東京バレエ団はそれまでにも海外公演をしていたけれど、大きなオペラハウスでやるのは、初めて『ザ・カブキ』をもっていった86年の海外ツアーが最初。当時はオペラハウスのどこをつつけばどう動くかというのを知らなくて、あれもダメ、これもダメ、そんな話は聞いていないということがたくさんあって、外国のオペラハウスで仕事をするということはこういうことなんだ、と思いましたね。 _MG_5587(photo_Sébastien Mathé ).jpg photo: Sébastien Mathé 10-07『ザ・カブキ』700回記念スカラ座.jpg photo: Brescia-Amisano/Teatro alla Scala 高沢 機材はどんどん新しくなってきている。照明については、これまでも少しずつ変えてきているけれど、今後新しくすべきところは新しくしていったほうがいいのではないかと思いますね。振りは変わらないけれど、ダンサーが変わっていく以上、作品は変化していくもの。 立川 こういった作品を再演する際には、ダンサーもスタッフも、つねに原典にあたることが大切ですね。歌舞伎で観る、浄瑠璃台本を読む──。ベジャールさんが読み解くように広く、深くというわけにはいきませんが、自分の中で、「ザ・カブキ」をしっかり位置づけ、納得してから現場にいく。そこがとても重要だと思います。 高沢 この仕事に入る前に、歌舞伎座で『仮名手本忠臣蔵』の通しを観に行ったね。昼と夜、通して観たな。 市川 ダンサーたちにも歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』は観てもらいたいですね。「ザ・カブキ」は、ベジャールさん、黛さんという、もう二度と現れないであろう天才たちが、物凄く一所懸命に工夫して結晶させた。これは東京バレエ団の大変な財産です。僕はこの作品で初めてバレエの仕事をして、本や振付を通じてベジャールさんからたくさんのことを教わりました。ベジャールさん、黛さんについては、まだまだ勉強していかなければと思います。 高沢立生:1970年に東京バレエ団の第2次海外公演に照明スタッフとして随行した後、NBSの招聘する外国のオペラ、バレエ公演のほとんどに携わっている。 市川文武:1986年「ザ・カブキ」以降、東京バレエ団等、舞台芸術の音響も担当し、現在に至る。 立川好治:1977年「エチュード」の初演から東京バレエ団のスタッフとして参加。現在まで東京バレエ団技術監督を務める。 2013年「ザ・カブキ」公演プログラム掲載記事抜粋再録 取材・文:加藤智子(フリーライター)

レポート2016/08/25

初演30年記念 「ザ・カブキ」創作の舞台裏――世界初演に携った制作スタッフ座談会より②
振付の速さ、次々と出てくるアイディア、驚くべき仕事――。 高沢 ベジャールさんの振付はすごく速かったね。湯水のように出てくるし、変えるとなったらすぐ変えちゃう。衣裳もヌーノ・コルテ=レアルのデザイン画がありましたが、使ったり使わなかったりで、どんどん変えちゃう。 立川 稽古場で「こういうものが必要」と言われるのだけれど、それをどう使うのか、我々にはわからない(笑)。例えば、「ジャパニーズ・アルファベットを書いた幕が要る」、「振り被せて振り落とす薄い幕が要る。それには血を描け」という。が、それをどこでどんなふうにお使いになるのか、稽古場ではわからないんですよ。それでデザインを持っていくと、「こうではない」。いろはの幕の文字の書体、太さ、配置には凄く細かいダメ出しをされました。いろは四十七字は、普通七文字刻みにし、一番下を「とがなくてしす(咎なくて死す)」と読ませますが、ここでは6文字刻みに組んでいる。すると、最後に一文字分の空白ができる。ベジャールさんは、わざとこうしたんだと思うのです。最後に空白を作って、「お前たちはあそこに何を書くのか」と言いたいのではないかと。劇場に入って初めて出てきたアイディアもありました。最後の「涅槃」のところは、ダンサーたちが一旦引っ込んで着替えますが、ベジャールさんにはその間がどうしても我慢ならない。そこで、繋ぎとして塩冶の亡霊を出し、師直の首を持ってくることになった。やってみると実に音楽的にはまるし、意味的にもはまる。驚くべき仕事だったと思います。 0332.jpg photo: Kiyonori Hasegawa 高沢 そういったことがたくさんあったね。例えば幕開きの現代の場面。 立川 当初は普通の現代の若者ふうにジーパンをはいたり、バラバラの衣裳でした。 高沢 それが、舞台稽古の段階で白の衣裳に統一することに。あの場面は、舞台の"額縁"を「テレビで埋めてほしい」とも言われていました。それは実現せず、今の形になりましたけど、ベジャールさんには、秋葉原の、テレビがたくさん並んだ風景が現代の日本の粋のように感じられたのではないかな。照明は、「もっと白く、白く」と言われた。白は、ベジャールさんにはとても現代的に思える色なのかもしれない。プロローグは白、義太夫の部分は(影を作らずに全体をまんべんなく照らす)"歌舞伎明かり"、そこからどんどんドラマティックになると、あるいはバレエの明かりになり、というのが基本で、あとはほとんど任せてくださいました。ただ、「最後にソレイユを、太陽を出してくれ」とだけは言われていた。切腹の場面は太陽だと。日の丸にも見えますね。ベジャールさんは振付をものすごく大事にされるので、ちょっとでも暗いと、「もっと明るくしてくれ」。あの鋭い眼光で、すべてを見抜こうとするような目で稽古を見ていらしたのが印象的でした。 市川 本当は、「山科閑居」(歌舞伎では九段目)も入るはずだったんです。振付の途中でベジャールさんは、「やっぱりこうしたい」とやめてしまい、かわりに外伝の「南部坂雪の別れ」が入った。「山崎街道」も本当は義太夫とオーケストラでいく予定でしたが、「ここは下座音楽でいきたい」と。で、「山崎街道」のための音楽が余っちゃったから、急遽それを討ち入りの場面のヴァリエーションに使ったんです。でも、全然不自然ではないでしょう? 立川 衣裳も、装置も、音楽も、基本的にはすべてベジャールさんのアイディアと言えますね。 ※その③に続く。 高沢立生:1970年に東京バレエ団の第2次海外公演に照明スタッフとして随行した後、NBSの招聘する外国のオペラ、バレエ公演のほとんどに携わっている。 市川文武:1986年「ザ・カブキ」以降、東京バレエ団等、舞台芸術の音響も担当し、現在に至る。 立川好治:1977年「エチュード」の初演から東京バレエ団のスタッフとして参加。現在まで東京バレエ団技術監督を務める。 2013年「ザ・カブキ」公演プログラム掲載記事抜粋再録 取材・文:加藤智子(フリーライター)

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