東京バレエ団も加入している(一社)日本バレエ団連盟の事業として、バレエ教師として世界的に活躍しているローラン・フォーゲル氏の特別クラスが1週間行われました。この事業は、文化庁委託事業「2019年度次代の文化を創造する新進芸術育成事業」の一環として、プロのダンサーたちの更なるレベルアップをはかるため、毎年のように開催されています。
フォーゲル氏はジョン・クランコ・バレエスクールで学んだのちシュツットガルト・バレエ団に入団。プリンシパルとして数々の作品に主演し、カンパニーに貢献しました。現役引退後はモナコ王立プリンセス・グレース・バレエ・アカデミーの教師として後進の指導にあたっているほか、世界中のバレエ団でゲスト教師として活躍しています。ちなみに、同校は上野水香の卒業した学校でもあり、稽古場では上野とはフランス語で会話するフォーゲル氏の姿もありました。
今回、バレエ団連盟としては5度目の招聘となるフォーゲル氏は「ツマサキ」など時折日本語の単語も交えながら、ダンサーたちを丁寧に指導。クラスの前後にはヴァリエーションのアドバイスなどを受けに話しかけるダンサーの姿もあり、普段とは異なるクラスからダンサーたちもおおいに刺激を受けたようです。
最後はみんなで記念撮影。ローラン先生ありがとうございました!またお会いしましょう!
まもなく初日をむかえる東京バレエ団ブルメイステル版「白鳥の湖」。東京バレエ団の代名詞でもある一糸乱れぬ第2幕のコール・ド・バレエ(群舞)は大きな見せ場となっています。そこで、その秘密にせまるべく、コール・ドの指導にあたる佐野志織(東京バレエ団バレエミストレス)を加藤智子さん(フリーライター)に取材していただきました。指導者の目線から「白鳥の湖」がみえてくるとても興味深いインタビューです。ぜひご一読ください。
──指導者の立場から、美しいコール・ド・バレエの条件とは、どのようなものと捉えられていますか。
佐野志織 まず、基本的なフォーム、フォーメーションなどを皆で揃えるというのは当たり前ですが、それプラス、呼吸とか、一人ひとりのあり方のようなものが必要だと思っています。ただ形や角度が揃っていればいいというわけではなく、コール・ド・バレエの中の、ある一人にポンとスポットライトが当てられたとしても、バレリーナとして、白鳥として、主役のオデットと同じくらいの存在としていられるようにしてほしい──。いつも、そう皆に言っています。そうしてこそ主役も一層引き立ち、輝いて見えると思うのです。
──皆さん、それを実践していらっしゃるわけですね。
佐野 踊っているほうは必死だと思います(笑)。そこまで行き着いてはいないかもしれないけれど、「やろうとする」ということの積み重ねですね。初めてコール・ドに入るダンサーがいるいっぽうで、皆を引っ張っていく経験者もいますから、私が指導するだけでなく、ダンサーたち自身が話し合ったり、かなり細かいところを指摘し合いながら作り上げていっています。これはもう東京バレエ団の伝統です。東京バレエ団のコール・ドの美しさを崩してはならない、というプライドのようなものもありますから、指先の向き、角度、重心の置き方も、細かいところまで、一人ひとりの意識は高いですね。
──さらに、バレエ・ブラン(白いバレエ)ならではの美しさを追求しなければいけませんね。
佐野 まずはその物語のなかでどうあるべきか、です。白いバレエといっても、作品によって少しトーンが違ってくる──たとえば『ジゼル』は、冷たくて、透明な、氷の芯の青い感じ。『ラ・バヤデール』ならば、アヘンの夢の中で、ニキヤの影、幻想が見えるという状況ですから、冷たくもないし、温かすぎることもない。ジゼルもニキヤも死んだ存在という意味では同じだけれど、『ジゼル』のウィリの世界のあり方と『ラ・バヤデール』の影の王国では、同じ「白」でも違って見えてくるでしょう。
では『白鳥』はどうかというと、オデットという女性が白鳥の姿に変えられてしまったように、コール・ドの白鳥たちも一人ひとりが生きているはず。羽毛のような温かみのある世界ではないかと思うのです。
──第2幕と第4幕でも、また世界が違いますね。
佐野 そうなんです。2幕の中だけでも、最初は楚楚とした佇まいのオデットですが、王子と出会って徐々に愛情が湧きあがってきて、白鳥たちもそれを見守って──、というように、少し変化があります。4幕では、打ちひしがれたオデットが帰ってきて、彼女を迎える白鳥たちにも悲しみが広がる。続いてオデットを守るためにロットバルトと戦う場面もあり、精神的な強さも必要になってくる。
白鳥のコール・ドには、そうした意思の力が働くと感じます。そこには、ウィリのような厳然たる拒絶とは違った、いろんな感情がある。一人ひとりが分析し、ああしようこうしようとは考えていないかもしれないけれど、音楽、振付が導いてくれているところもあるし、表現としてそうならざるを得ないものもあるわけです。
─― 一人ひとりがしっかりと踊れば、自ずとそうなり、皆が揃う、ということですね。
佐野 たとえば同じメソッドでしっかり育ってきた人たちが集まっているロシアのバレエ団のコール・ドなどは、この角度で頭の付け方はこうで、絶対にこうなる!というのがあって、それは本当にすごいなと思います。東京バレエ団のダンサーも選ばれて入ってきた人たちではあるけれど、一人ひとり千差万別なので、揃えるよう、いろいろと工夫が必要です。そのいっぽうで、一人ひとりの踊り手としてのあり方のようなものは、なくしちゃいけないなと。
皆には、その両方を追求してほしいのですが、まあでも、まずは揃えるところから、となると、「◯◯ちゃん! そこ違うーっ!!」となりがちで(笑)。
私自身もそうでしたが、コール・ドで踊っているときに、舞台上でふと、皆が一つになっていると感じる瞬間がよくあるもの。二十数人くらいで踊っていても、まるで一人で踊っているかのように感じることが。もちろん、技術的なことをそれまでに徹底してやってきているからこそ、ですが、それはとても心地のよいものでした。
──では、東京バレエ団の『白鳥の湖』、見どころを教えてください。
佐野 第2幕のコール・ドが、形だけでなく心も一つになって踊っている、その空気感と、白鳥の羽ばたきみたいなものを感じ取っていただけたら。第3幕の個性的なキャラクター・ダンスとの対比もすごく鮮やかに出てくるのではないかなと思います。一人ひとりが生き生きと踊っているコール・ドを、ぜひご覧になっていただきたいですね。
──世界に通用するバレエ団を作るためには、アンサンブルを強化すべし、と考えたのは創設者の佐々木忠次氏(故人)ですね。
佐野 こうしたら佐々木さんに叱られるかなとか、喜んでくれるかな、という思いは、自分の中に常にあります。舞台上の踊りだけでなく、楽屋や舞台袖での行動や日常生活まで、舞台人としてのあり方をとても厳しく教えられました。確かに、普段のそういうところは舞台のちょっとしたところで出てしまいますから、私も、日頃からしつこく言ってお説教しています(笑)。
取材・文:加藤智子(フリーライター)
東京バレエ団初演「海賊」の初日まであと1日となりました。会場の東京文化会館では、先ほどまで本番に向けた最終リハーサルが行われていました。
本作の初演にあたり、東京バレエ団では入念な準備を重ねてきました。まずは振付家であるアンナ=マリー・ホームズ氏本人を招き、5週間にもわたって密度の濃いリハーサルを続けてきました。そして、主役の4名(メドーラ、コンラッド、アリ、ギュルナーラ)以外のソリスト役は全て団内のオーディションで選抜。その結果、ベテランのソリストから入団1年目の研究生まで、これまでにない多彩な配役が実現。全5公演ですべてキャストの組み合わせが変わることなりました。
今回の上演では衣裳、舞台装置は芸術の殿堂、ミラノ・スカラ座のものを使用します。世界最高峰の職人たちの手による衣裳、装置は芸術品といえるほどの完成度を誇っています。衣裳は「すごく着心地が良いし動きやすい!!」(山田眞央)と、ダンサーたちもとても嬉しそうです。
また、初演のためにスカラ座から3名のスタッフが来日し、日本側とスタッフと力をあわせて舞台をつくっています。
衣裳部屋の取材の一コマ
仕込みの合間をぬってスカラ座から来日した舞台スタッフにインタビューしました
今回の公演は、リハーサルから本番までの過程をCSテレ朝チャンネル2、およびWOWOWの2つのテレビ番組で異なる角度から取材していただいています。舞台映像も一部番組で放送される予定ですのでどうぞお楽しみに!
そして本日(3月14日)はゲネプロ(舞台総稽古)。オーケストラとマエストロ(ケン・シェ)とは特にテンポを入念に確認しました。幕間の休憩時間には斎藤友佳理(芸術監督)、佐野志織(バレエミストレス)がダンサーたちにかけより、修正箇所を細かく確認していきます。ホームズ氏はマエストロとオーケストラのそばに駆け寄り、「そこはもっと早く!」などと1小節も疎かにせず、細かく指示していきます。
2幕の海賊たちの洞窟の場面。写真は作業灯ですが、照明が当たると非常に美しくなります
3幕の仕込みの一コマ
ダンサーたちは初演のゲネプロでさぞ緊張しているかと思いきや・・・意外にもときおり笑いもこぼれるほどの和やかな雰囲気の舞台袖。「海賊」という作品を踊れることを、皆心から楽しんでいるようです。また、舞台で踊っているダンサーにあわせ、他の日に同じ役で舞台に立つダンサーが音に合わせて舞台袖で踊っているゲネプロならではの光景もみられました。
ただ、やはり楽しいだけではありません。「この作品では踊るか着替えるかしかしていなくて、休む間が全くない」(上野水香)と語る主役陣に加え、「過去最大人数の早替えで、舞台裏は戦場です(苦笑)」(上田実歩)と、1人で何役もこなす群舞のダンサーまで、それぞれの課題を抱えながらも一致団結して作品に取り組んでいます。
3幕の"花園"の場面。女性たちはこのあとの衣裳と頭飾りの着替えが物凄く大変です
そんな「海賊」も、いよいよ明日、3月15日にその全貌が明らかになります。東京バレエ団が総力をあげてお贈りする古典の名作をどうぞお見逃しなく!
東京バレエ団のスタジオでは、来月初演する『海賊』に向けて連日熱いリハーサルが行われています。今回の公演で初日のヒロイン、メドーラ役を演じるのは上野水香。これまでも東京バレエ団で数々の初演作品に主演してきた上野を加藤智子さん(フリーライター)に取材していただきました!
──アンナ=マリー・ホームズさんのリハーサルが進行中ですね。
上野水香 とても優しい方ですね。温かくて、でも言うべきことは言ってくださる。ロシアで学び、プリマとして活躍して、芸術監督、また振付をされたりと、長いキャリアをお持ちの方です。初めて東京バレエ団にいらして、私たちを新鮮な目で見て、これまでに受けたことのないようなアドバイスをくださるので、本当に驚きます。たとえば、ホームズさんの言われる通りにすると、今までできなかった回数を回れてしまう──! それを本番でやるかどうかは別としても、いま、この年齢になって新たにできるようになることがあるんだ!と嬉しくなりました。
──『海賊』の魅力はどんなところにあるのでしょうか?
上野 子どもの頃、初めて見た『海賊』がキーロフ・バレエの映像でした。メドーラのアルティナイ・アスィルムラートワがとても可愛らしくて、ファルフ・ルジマトフのアリが凄くて! これがあまりにも強く心に残っていたものだから、ABTが全幕をホームズ版で上演したというのをテレビで見た時は、ああ、楽しい作品なんだなと感じる程度でした。ところが、今回、ホームズ版に挑戦する前に、あらためてABTの映像を見直してみたら、宮川新大くんが「ハマった」と言う意味がよくわかったんです!(2月上旬に開催された記者懇親会で宮川は、シュツットガルトに留学していた頃、「ABTのビデオを見て夜な夜なマネをしていた」と告白!)これは確かにハマる要素がある、と思ったんです。そのうちの一つが、音楽性。この音でこの表情、この音でこの動き、というところが実に音楽的なんです。実は、英国ロイヤル・バレエ団のマカロワ版『ラ・バヤデール』もそこが素晴らしくて、すっかりハマっていました。私も今回、この点に注意して、常に音を絶対に外さないようにと意識して取り組んでいます。
──稽古場は、初演ならではの熱気ですね。
上野 皆で力を合わせている感じが、とっても楽しいんです。初めての演目なので、最初の頃は出番のタイミングが把握できていなくて、沖香菜子ちゃんに「いまです、ハイ!」と背中を押してもらったこともあるんです(笑)。この楽しさが、そのまま皆さんに伝わればいいなと思っています。
──メドーラはどんな役柄でしょうか?
上野 このヴァージョンのメドーラはお姫さまとか舞姫とは違って、"普通の女性"。等身大の女性として、特別に作り込まず、ストーリーの中で自然に生きれることができれば、と思うんです。ABT の映像のジュリー(・ケント)を見て、そう感じました。あのメドーラは彼女そのものだ、と! 今回も、"上野水香のメドーラ"を見ていただけるのではないかと思います。
ただし、このバレエはとてもハード(笑)! とくに第1幕のヴァリエーションはすごく長くて! こんなに長いクラシックのヴァリエーションは初めてです。
──今回の見どころについてお話ください。
上野 バレエ団で『海賊』を初演する、そのこと自体が大きな見どころかと思います。古典でありながら、新しい。皆さんにとってお馴染みの東京バレエ団のダンサーたちが、これまで見せたことのない、新しい顔を見せるはず。クラシックだけど、新しい何か!なんです。今まで私のことを見てくださっていた方にとっても、見たことあるようで全く新しい上野水香を、また、全く新しい東京バレエ団を、見ていただけると思います! それに、初演には初演ならではの緊張感がありますよね。この先どうなるか、お客さまも舞台の上のダンサーたちにもわからない。そこにスポットライトが当てられる瞬間を、見逃さないでいただけたらと思うんです。
──なるほど、初演は1回きりですよね。
上野 たとえば、2009年のマカロワ版『ラ・バヤデール』のバレエ団初演の時は、自分の中でも奇跡のように集中できたことを覚えています。マカロワさんご自身がいらしていたことも、作品の力も影響していたかと思いますが、あのときは"特別"でした。再演以降には感じられなかったことです。もちろん再演には再演の、練られたものならではの良さがあるけれど、1回目だからこその独特の空気。それはぜひご覧になって、心に残していただけたら嬉しいです。どうぞ、見逃さないでくださいね!
取材・文:加藤智子(フリーライター)
昨日(2月7日)、来月に東京バレエ団初演となる「海賊」のマスコミ向け公開リハーサル&記者懇親会を行いました。大作の初演とあってか、スタジオには大勢の記者の方がつめかけ、ダンサーたちの熱演も相まって、時折歓声も起こるほどの盛り上がりをみせました。そんな熱気あふれる公開リハーサル&記者懇親会を高橋森彦氏(舞踊評論家)のレポートでご紹介します。ぜひご一読ください!
幕開きの場面より
バレエ「海賊」はオスマン帝国全盛期の地中海で海賊たちが繰り広げる壮麗な一大ロマンだ。東京バレエ団初演に際し選んだのはアンナ=マリー・ホームズ版。"古典バレエの父"マリウス・プティパによる改訂を踏まえたコンスタンチン・セルゲイエフ版に基づく振付で、スピーディーかつ物語性豊かに展開する。
今回はマリー・ホームズが計5週間程リハーサルに立ち会う力の入りようで、この日は全3幕(プロローグ付)から第1幕と第2幕の途中までを公開した。
第1幕では海賊の首領コンラッドが奴隷商人ランケデムに競売された少女メドーラに恋し、彼女を買い取ったパシャ(オスマンの高官)の下から救う。
柄本弾(コンラッド)、上野水香(メドーラ)
川島麻実子(ギュルナーラ)、池本祥真(ランケデム)
メドーラの上野水香はチャーミングかつ魅惑的な踊り。コンラッドの柄本弾は堂々たる首領ぶりだ。ランケデムの池本祥真は高々とした跳躍に加え吸い付くような着地も鮮やか。ランケデムと踊るメドーラの友人ギュルナーラの川島麻実子は優美な体使いが映える。
通常は第3幕で踊られる3人のオダリスクの踊りを第1幕に配したのがマリー・ホームズ版の特徴の一つで、涌田美紀、二瓶加奈子、吉江絵璃奈が活きのよい踊りをみせた。
(左から)涌田美紀、二瓶加奈子、吉江絵璃奈
第2幕はキャストを変えて披露。メドーラの沖香菜子とコンラッドの秋元康臣、コンラッドの従順な奴隷アリの池本祥真が踊るパ・ド・トロワは大きな見せ場だ。沖の柔らかくしなやかな踊り、秋元の端正で渋い身のこなし、第1幕のランケデムに続く登場となった池本の滞空時間の長い跳躍に魅せられた。
コンラッドの仲間ビルバントの金指承太郎はロシア仕込みの新戦力で、恋人役アメイ(マリー・ホームズが東京バレエ団版のために命名)の奈良春夏と息もぴったり。そしてパシャの木村和夫の芝居の一つひとつがコミカルで楽しい。パシャのユーモラスな性格造形もマリー・ホームズ版の特色である。
沖香菜子(メドーラ)、秋元康臣(コンラッド)、池本祥真(アリ)
[写真中央] 奈良春夏(アメイ)、金指承太郎(ビルバント)
記者懇親会にはマリー・ホームズ、芸術監督の斎藤友佳理、上野、川島、柄本、宮川新大が出席した。
マリー・ホームズはキーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)で初めて踊った北米出身者で、師事したセルゲイエフ夫人のナタリア・ドゥジンスカヤから「海賊」の権利を得て改訂し世界中で振付指導を行う。「ダンサーだった頃に楽しんで踊りましたがステージングも楽しい」とにこやかに語る。
斎藤は「海賊」を取り上げるのは「ダンサーの個性を活かせる全幕物」であること、プティパ生誕200年のシーズンを締めくくる意味合いがあることを説明し、マリー・ホームズ版を「シンプルで分かりやすく、ちょうどよい長さで、私にとって大切な「海賊」のキャラクターの踊りも残されている」と評する。
上野は「女性のいろいろな面を表現する余地があるので自分なりのメドーラ像を創りあげたい」と抱負を述べ、川島は「和気あいあいとしてリハーサルや本番に臨めるのは今の東京バレエ団ならでは」と団の充実を伝えた。柄本は「男性ダンサーにとって「海賊」は憧れ!」と意気込み、アリとランケデムを日替わりで踊る宮川はリハーサル中に「自分がアリなのかランケデムなのか分からなくなる」と笑いを誘う。
配役に際してはトライアウトを行いマリー・ホームズと協議を重ねて決めた。この日のリハーサルに接した限りでも適材適所だと納得させる。
[左より] 宮川新大(アリ、ランケデム)、上野水香(メドーラ)、アンナ=マリー・ホームズ(振付家)、斎藤友佳理(芸術監督)、川島麻実子(ギュルナーラ)、柄本弾(コンラッド)
「"プティパ・イヤー"の最後を飾る、愛と冒険のグランド・バレエ!」という惹句に偽りはあるまい。創立55周年を迎えた東京バレエ団の新たな船出を飾る華やかな公演になりそうだ。
取材・文:高橋森彦(舞踊評論家)
東京バレエ団には現在16人の研究生が在籍し、団員とともにレッスンを受けながら、プロとして活躍するための経験を積んでいます。すでに舞台で活躍する彼らの初々しい姿をご覧になられた方も多いことでしょう。
実は、2018年春にスタートしたこの体制のもと、これまで東京バレエ学校に設けられていた「海外研修制度」が、東京バレエ団研究生を対象として実施されることになり、2018年9月より、米澤一葉がロシア・サンクトペテルブルクのワガノワ・バレエ・アカデミーに約1年間留学しています。
ここでは、冬休みを利用して一時帰国していた彼女に、ワガノワでの留学生活について話してもらいました。
──今回の留学の前にワガノワ・バレエ・アカデミーへは短期留学をしたことがあるそうですね。
中学2年生の時でしたが、「またここでしっかり勉強したい」と思っていました。
──現地での授業の様子を教えてください。
高校1年生に相当する6年生のクラスに入りました。15人中2、3人を除いて全員ロシア人。皆きれいでスタイルも良いけれど、何よりも、しっかりと基礎ができていると感じます。
午前中は9時10分から11時頃までがレッスン。担任のカセンコーワ先生は、たまに「5番!」「頭!」と日本語で注意をくださる、優しい方です。
右手の建物がワガノワ・バレエ・アカデミー
──日本ではなかなか体験できないクラスも?
午後はフタローイ(第二の)クラスで、デュエット、キャラクター、アクチョール のクラスが組まれています。デュエットは、基礎中の基礎、バランスから始め、ピルエット、リフトなどもやっています。キャラクターは東京バレエ団の舞台でもきっと役に立つ、と積極的に取り組んでいます。アクチョールは、アクト、つまり、演技のクラス。全く初めての経験なので戸惑います。
留学生のクラスでは、学年末の公演を目指してヴァリエーションを学びはじめました。先生のご提案を受け、自分で考えた結果、『ショピニアーナ』のヴァリエーションを選びました。上体の使い方、足先など、課題がたくさんあります。
ワガノワ・バレエ・アカデミーの中庭にて。ここもいまはすっかり雪景色だそう
──バレエ団の海外研修制度を利用してよかったと思うことは。
体調不良の時や落ち込んだ時も、バレエ団のスタッフにメールなどでアドバイスをもらえてとても心強いです。
リハーサルの見学に行くべきか、コンクールに出たいと申し出るべきかと悩んでいたところ、東京バレエ学校でお世話になったコーリャ先生(アーティスティック・アドヴァイザーのニコライ・フョードロフ)から、「いまはやるべきことをしっかりやるべき」とアドバイスをいただき、迷いなく基礎固めに集中することができています。
皆さんにいろんなサポートをしていただき、本当に感謝しています。
──留学期間後半にむけての抱負を教えてください。
いつも、バレエ団に戻ってからのことを考えながら勉強しています。すっかり太って帰ってきたら台無し、いい状態で帰ってこなければ! 東京バレエ団の舞台で活かせるよう、ロシア・バレエのダイナミックな踊りをしっかり学んでいきたいと思います。
教室にて。自習の時間も大切にしている
サンクトペテルブルクの劇場は「どこも美しくて素敵」。ミハイロフスキー劇場にて
食堂での食事は、口に合わないものもあるけれど「ボルシチは美味しいです(笑)」
去る1月14日に行われた東京バレエ団〈スタジオ・パフォーマンス〉をフリーライターの加藤智子さんに取材していただきました。公演にお越しいただけなかった方、ぜひレポートからパフォーマンスの様子を感じていただければ幸いです。
東京バレエ団のThe Tokyo Ballet Choreographic Project(コレオグラフィック・プロジェクト)は4月の〈上野の森バレエホリデイ2019〉、第7回〈めぐろバレエ祭り〉へと続きます。進化を続ける東京バレエ団にどうぞご期待ください!
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団員が振付に挑戦、発表する場を──、と東京バレエ団が取り組んでいるプロジェクトが3年目を迎え、今年最初の公演が、1月14日、〈Choreographic Project 2019〉スタジオ・パフォーマンスとして行われた。これは、4月の〈上野の森バレエホリデイ〉、8月の〈めぐろバレエ祭り〉での上演に向けて、最初のステップともなる公演。日常のレッスン、リハーサルが行われているバレエ団のスタジオでの上演はこれが2回目となるが、今回は作品を発表する団員たちも会場の設営に携わるという、通常の公演ではなかなかできない体験も得られたという。
年末の公演数の多い時期と準備期間が重なり、斎藤友佳理芸術監督は「実現するのは難しいと思っていた」と慎重だったそうだが、木村和夫、岡崎隼也、杉山優一、ブラウリオ・アルバレスらが、空き時間を上手に使いながらリハーサルを重ね、作品を発表。観客の投票で選ばれる「観客賞」の対象となるこれらの作品のほか、後半には2つの特別上演作品が披露されるという充実の公演に。その上演作品は、ソロから10人規模の大作までとさまざまだ。
ブラウリオ・アルバレスの『Bird』は、金子仁美、オスカー・ラーニャ、南江祐生、後藤健太朗らがカワセミ、アホウドリ、シラサギ、フクロウとなって舞う、軽やかで朗らかな作品。2番目は岡崎隼也振付の『ひとり』。岡崎作品の常連ダンサー、沖香菜子、伝田陽美に秋山瑛が加わり、互いに響き合いながら、キレのある動きで内面にじわじわと迫る表現に。アルバレスのもう一つの出品作『夜叉』は、鬼婆伝説をもとに創作した作品。中川美雪、池本祥真を中心に、メキシコの音楽"ダンソン"と、和のテイストを見事に融合させ、ドラマをつくり上げる。バレエスタッフの木村和夫は女性ソロ作品『Salut d'Amour』での参加。「悩みや不安を抱きながら、それでも夢や希望に向かう若者」の姿を、秋山瑛が清々しい踊りで描き出した。前半最後に登場したのは杉山優一。自身がずっとバレエと向き合ってきたこのスタジオへの思いを、力強く、自作のソロ『Hommage』に込めて踊った。
特別上演作品として披露されたのは、まず、アルバレスの作品『MIZUKA』。上野水香のために振付けたソロで、彼女の可愛らしさ、個性が存分に活かされたチャーミングな作品に。最後は岡崎が昨年この場で発表した『理由』(出演は沖香菜子、伝田陽美、政本絵美、加藤くるみ)。シルヴィ・ギエムから高く評価され、彼女からアドバイスを受けて少し手直しをしたうえでのパフォーマンスだったが、上演を重ねてきたことでダンサーたちの演技も、より確固としたものになった印象に。
作品の誕生とともに作品が育っていく様子を見ることができるのは、こうしたプロジェクトの魅力の一つ。いつもとは全く違う横顔を見せるダンサーの姿に触れることができるのも独特で、次回はどうなるだろうかと期待が高まる。
終演後に団員と観客との歓談会が設けられたのも、新たな試み。振付者に感想を伝えたり、秘められた思いを探ってみたり、さらには次回作への期待を伝えたりと、創り手、受け手の双方にとって貴重な機会となったようだ。
取材・文:加藤智子[フリーライター]
写真:長谷川清徳
新年あけましておめでとうございます!
昨年は東京バレエ団にあたたかいご声援をいただき、誠にありがとうございました。劇場にお越しくださった全てのお客様にダンサー、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。
2019年の年明けに、ダンサーから新年のご挨拶を申し上げます。「クラブ・アッサンブレ」の会員様には、ダンサーの直筆サイン入りの年賀状をお送りしております。下記にて全ダンサーのサインを一挙公開いたしますので、どのダンサーからの年賀状か、楽しみにご覧ください。
2019年は〈スタジオ・パフォーマンス〉を皮切りに、3月に初演するグランド・バレエの大作「海賊」、〈上野の森バレエホリデイ2019〉「白鳥の湖」、第34次海外公演(ウィーン、ミラノ、ローマ、ポーランド)、第7回〈めぐろバレエ祭り〉、勅使川原三郎氏との創作(世界初演)、「くるみ割り人形」の新制作と、盛りだくさんのナインナップをお贈りいたします。
本年も東京バレエ団に変わらぬご声援を賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。
プリンシパル
ファーストソリスト
ソリスト
セカンドソリスト
2018年も東京バレエ団にあたたかいご声援をいただきありがとうございました。 お客様への感謝の気持ちをこめ、バレエ団を代表してプリンシパル6名と芸術監督の斎藤友佳理よりご挨拶申し上げます
2018年11月2日~12月7日の期間、全16回にわたり東京バレエ団公式ツイッターの連載企画として実施したモーリス・ベジャール振付「ザ・カブキ」キャラ紹介事典。
この企画では、歌舞伎の『仮名手本忠臣蔵』をわずか2時間半弱のバレエへと見事に昇華させた本作に登場する、魅力的な登場人物を写真と分かりやすい文章でご紹介しています。まとめてご覧いただけるよう、このたび公式ツイッターのモーメントにアップいたしました。
公演鑑賞前にご覧いただくと、より「ザ・カブキ」の世界観をお楽しみいただけます。ぜひご一読ください!
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