──前回同様、アリとランケデムの2役を演じます。
池本祥真 そうですね。性格の異なる2つの役をうまく演じ分けたいと考えて取り組んでいました。
アリは、どちらかというとストイックなイメージ。奴隷として主人に仕え、あまり感情を表に出さない、キリっと端正な。それに対して奴隷商人のランケデムは、がらりとイメージを変えて、より軽薄な感じに捉えていました。人によって演じ方は異なると思いますが、軽薄で、ちょっとだらしなくて、ちゃらんぽらんで、お金に対する執着が強くて──。演劇的ではあるけれど、特別に深みのある人物というわけではないけれど、そこに僕なりに深みを持たせられたらという気持ちがありました。主役のコンラッドに対するヒール役というのも楽しく演じることができました。
「海賊」2019年の舞台より。中央の赤いパンツが池本演じるランケデム
──アリ役は東京バレエ団入団以前にも経験しています。
池本 自分なりの表現を追求したいですね。アリといえば、第2幕のパ・ド・トロワが最大の、というか唯一の見せ場です。歴史を遡ると、このアリの踊りはチャブキアーニが男性ダンサーとしての見せ場を作るために加えた、と聞ききます。それだけに、演技というよりもとにかく踊りが大事。なので、これまでやってきた踊りの精度を上げていったり、できなかったことへのチャレンジを盛り込んでいったりしたいと思っています。その点では、前回とはまた違うアリをお見せできたら。
他の場面でのアリは決して出しゃばる存在ではないけれど、でも登場するたびに、コンラッドの奴隷としての存在、その関係性を明確に表すことができたらと思うんです。パ・ド・トロワのアダージオにも絡んでいきますが、そこでもコンラッドとの関係性がわかるように作っていけたらと思います。
2019年、初演時のリハーサルより。
──コンラッド役は前回同様、秋元康臣さんです。
池本 そうなんです、おみさん(秋元康臣)にはよく仕えています(笑)。実は、僕の東京バレエ団デビューは2018年4月の『真夏の夜の夢』のパックでしたが、この時のご主人=オベロンがおみさんでした。
──万全の主従関係が展開されますね(笑)。
池本 そうかと思えば、ランケデム役で出演する日は、メドーラが秋山瑛ちゃん、コンラッドが宮川新大くん、アリが生方隆之介くん、一緒にパ・ド・ドゥを踊るギュルナーラが中川美雪さんと、僕以外全員初役なんです。ビルバントの井福俊太郎くんは2回目ですが、再演ながらかなりフレッシュな組になります。各組とも、演技についてはかなり自由にやらせてもらっているので、それぞれ個性ある舞台になるはずです。もちろん、リハーサルの中で「そこは違う」と修正されるところもあるけれど、基本的には、音を聞いて、気持ちのいいところを出して、他の人と絡んで、というように組み立てています。
──そんな東京バレエ団の『海賊』の魅力は?
池本 東京バレエ団というよりも、キャストごとの個性が光る舞台になることかなって思います。しかもレベルの高いダンサーが揃っている! あ、自分は置いといてですけど(笑)。いま、すごくいいと思うんです。
あとはこのヴァージョンの面白さですね。皆、口を揃えて言っているのではないかと思いますが、小さい頃からABTの舞台映像を見て憧れてきた作品です。それを日本の僕らが上演できるというのは、バレエの歴史の中の一部になれているような気がしますよね。もちろん、オリジナルを踊ることも素晴らしいことだけれど、マラーホフさんが踊った役を僕もできるんだとか、世界中で上演されている名ヴァージョンをここで上演することができるんだと考えると、ダンサー冥利に尽きます。必ず、楽しい舞台になると思います。
2019年、初演時のリハーサルより
──ついにホームズ版『海賊』の再演です。初演の時の手応えはいかがでしたか。
柄本 弾 終始盛り上がる作品ですよね。派手なテクニックが注目されがちですが、他の作品でも常にパ・ド・ドゥを自分の見せ場にもっていくことが多い僕としては、第2幕の「寝室のパ・ド・ドゥ」が自身のいちばんの見せ場ではないかなと思っています。リフトの多い、しっとりとした場面です。
「海賊」第2幕、寝室のパ・ド・ドゥより。メドーラ役は上野水香
──前回は主役のコンラッド役、今回はそれに加えてランケデムも演じます。
柄本 ランケデムは、初演の時からぜひ挑戦したいと思っていた役柄。どの作品においてもより個性の強い役を演じたいという思いが強く、例えば、『くるみ割り人形』のドロッセルマイヤー、『白鳥の湖』のロットバルト、『ジゼル』のヒラリオンなどは、主役ではないけれど、本当に演じがいのある役だと思います。『海賊』の中では、僕はとくにランケデムに憧れていたので、今回はすごく楽しみですね。
──奴隷商人ランケデムはどんなキャラクターと捉えていますか。
柄本 わかりやすい悪者、です。コンラッドの手下として登場するビルバントのほうは、ストーリーが展開する中で「実は悪者だった!?」と判明するわけですが、ランケデムはもっとわかりやすく、最初からコンラッドの敵として登場します。でも、海賊たちが襲ってきたらすぐに負けちゃうという、どこか憎めない要素もある。第2幕以降はほとんど出番がないにもかかわらず、重要なポイントで出てくるキャラクターだけに、ストーリー性を深める重要な役割を担っています。やりがいがありますね。
僕の演技は基本的に「素」です。あまり作り込まず、その場の雰囲気で出していくほうだし、もともと僕は三枚目的なポジションなので、悪者だったり、おちゃらけに片足を突っ込んでいたりするほうが、より「素」で演じることができる。その点でも、ランケデムはナチュラルに入っていけそうです。
──ランケデムの一番の見せ場をあげるとすると?
柄本 奴隷商人として、オダリスクたち、ギュルナーラ、それからメドーラをパシャに売りつける場面です。ここでのランケデムのマイムは、いかにコンラッドをむかつかせるかがポイントになる(笑)。マイムなのでやることは決まっているけれど、より自然に、より説得力のある場面にすることで、全体のドラマがより生き生きとしてくるはずなんです。
「海賊」第1幕より。メドーラを初めてみたパシャはそのあまりの美しさに驚き、腰をぬかしてしまいます。写真はコンラッド(柄本弾)、アリ(宮川新大)、ランケデム(池本祥真)、メドーラ(上野水香)、そしてパシャ(木村和夫)
──コンラッド役では、東京バレエ団のリーダー的存在の柄本さんの姿が重なります。
柄本 海賊たちのリーダーですから、現実の僕のポジションと近いところはあるとは思うけれど、少し、違います。コンラッドは男気がありすぎて(笑)、皆にその背中を見せて突っ走っていくタイプ。僕がそれをやっても、皆との距離はどんどん離れてしまうだけですし、むしろ僕は一緒に進んだり、後ろから押したり、たまには一緒にくだらない話ができる関係でいたいと思っているんです。
──それでは、今回の『海賊』公演の見どころを教えてください。
柄本 僕が出演する2組の日程は、どちらも初演を経験したダンサーが中心ですが、秋山瑛と宮川新大の日だけは主要メンバーがすべて初役というフレッシュなキャストです。きっとフレッシュならではの舞台が期待できると思いますが、僕ら2度目のキャストの日も、前回の舞台で経験したことを活かした、充実の舞台をお届けできるはず。『海賊』はとくに、ダンサーたちが個性を爆発させる作品だと思うので、キャストごとに全く違った舞台が繰り広げられると思います。僕の個性もきっと爆発しますので(笑)、ぜひ、何度も足を運んでいただけたらと思っています。
──2回目のメドーラ役となりますね。
上野水香 実はとてもハードな役柄なんです。舞台に出ているか着替えているかのどちらかで、おまけにバレエダンサーにとって一番難しいテクニックが集結しているような役。いろんな意味できついのですが、なのにすごく楽しかったという記憶が強くあります。こうした作品はどうしても力が入ってしまいがち。ジャンプが多くて大変な踊りだから頑張ろう!と気合いばかりが先走ってしまうものなのですが、今回は、気合いは残しつつもナチュラルに、ちょっとどこか、いい意味で抜けた感じが加わると、もっと伝わりやすくなって、説得力も増すのではないかな、と思っています。
──メドーラという役柄についてはどのような印象を抱いていましたか。
上野 彼女の運命ってすごく厳しいものだけれど、奴隷として生きていく中でも輝いていられる、有り余るほどの魅力と強さがある。時には仲間を守ろうとする姉御肌の面がありますが、でも、それでいっぱいいっぱいになって自分勝手になって、恋人とその友人との関係にヒビを入れてしまっていることには気付いていない(笑)。そういう真っ直ぐなところに共鳴する部分はありますね。ABTの舞台映像に残されているジュリー・ケントさんの表現がとても素敵で、何があってもひたすら笑顔で乗り切る、芯の強い女性を表現したいですね。
──前回のアンナ=マリー・ホームズさんのリハーサルで印象に残ったことは?
上野 この作品は隅から隅まで楽しさにあふれているので、皆が楽しんでくれたらそれが成功につながるんだと言ってくださったことですね。実際、あれだけきつい踊りでも演じていて本当に楽しかったし、だからこそお客さまが喜んでくださったのかなと思いました。テクニック的な点では、私の回転の弱点を指摘してくださって、改善することができた。その時のことは今も身体に残っているので、とてもいい経験になりました。
──ご自身の出番の中で一番の見どころは?
上野 そうですね......。そう、全部です(笑)。作品としての見せ場はやはり、あのパ・ド・トロワから寝室のパ・ド・ドゥへと続いていく第2幕だと思います。そこに山場をもっていくための第1幕、というのもしっかり演じたいし、個人的には第3幕の花園が大好き。女の子なら誰もが憧れる世界ですよね。こういった場面が似合うとよく言われるので、そこはとくに、皆さんに喜んでいただけたらと思っています。
「海賊」第3幕、"花園"の場面。中央は上野水香
──『カルメン』の再演で大きな手応えを感じられたり、〈HOPE JAPAN〉ツアーでは各地で『ボレロ』を踊ったりと、今年も様々な経験を重ねています。
上野 いろいろと経験を重ねたからこそ、いい意味で力が抜けて、無駄が削がれていくように思います。舞台の上で気張りすぎてしまったら、ご覧になっているお客さまも一緒に力が入ってしまったり緊張してしまったりで、心地よく観ることができませんよね。そうではなく、素直にその世界を楽しんでいただけるような舞台をお届けしたい。もちろん、テクニックもしっかり追求したうえで。それはクラシックの作品を踊っていくうえでの今後の課題と思いますし、そう感じることこそキャリアを重ねたということなのかなって思います。そういう意味では、きっと前回よりいい舞台になると思いますし、とにかく楽しくて素敵!という空気感が出すことができればいいですね。
東京バレエ団のダンサーは粒揃いですし、皆、舞台が大好きでバレエが大好きで、すごくひたむきに取り組んでいます。そのひたむきさが作品の魅力をより浮き立たせると思いますし、皆それぞれ技術的にも充実しているので、『海賊』という作品は今の東京バレエ団にぴったりだと思います。
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※9/26[日]の上野主演日には、長野由紀氏(舞踊評論家)によるプレトーク、さらに終演後には舞台監督の解説のもと、舞台の機構や装置のヒミツをご覧いただける特別企画も!詳しくは>>>
──初演に引き続きメドーラ役を踊られます。前回のアンナ=マリー・ホームズさんのリハーサルで印象的だったことは?
沖香菜子 ジャンプの時やアクセントが欲しい時のアメイ(ホームズ女史のニックネーム)先生の掛け声がとても強く印象に残っていて、今でも踊っている時に頭の中に声が聞こえてきます。
──初演の舞台はいかがでしたか。
沖 スカラ座の衣裳を着て踊りましたが、本当にきれいで華やかで、フィット感も素晴らしく、でも実は、いつもの東京バレエ団のチュチュより大振りで、自分がそこに埋もれてしまわないように動かなければと実感もしました。
メドーラは場面によっていろんな衣裳を着るので、印象がその都度変わります。
最初に登場する場面では奴隷として売られる立場ではありますが、どこか芯のある、強さを感じさせる女性です。パ・ド・トロワでも同じくチュチュを纏って登場。それが2幕後半のパ・ド・ドゥではジョーゼットに。夜のシーンで、瞬く星のような照明のもとで踊るのは、またちょっと違う雰囲気。ですが、海賊たちが登場すれば、恐怖を感じながらも強い女性の雰囲気に。さらに花園の場面では、メドーラはパシャの夢に登場する麗しい女性。各場面で彼女のいろんな面、性格をお見せできたらと思っています。
第2幕、パ・ド・トロワの場面より。コンラッド役は秋元康臣
同じ第2幕でも、コンラッドとのパ・ド・ドゥでは衣裳を着替えて踊る。華やかな衣裳の数々も本作の見どころの1つ
──メドーラはどちらかというと強い女性なんですね。
沖 すごく自分に自信があるんだと思います。たぶん最初に登場した瞬間から「私は高貴な女性」と思っている。コンラッドに出会って、彼に好意を寄せるけれど、彼も自分のことをよく思っているという自信がある。その自信を出すために、私自身もちゃんと自信を持たなければ(笑)。
──コンラッド役は前回と同様、秋元康臣さんです。
沖 そしてアリ役は池本祥真くんと、前回と同じ顔ぶれです。ダンサーとして尊敬し、信頼して任せられる二人ですから、チームワークは確実です。ランケデム役については前回は宮川新大くんでしたが、今回は柄本弾さん。直接からむところはあまりないけれど、「ランケデムはお金のないコンラッドには冷たく、興味もなく、メドーラのことは売り物としてみてるヤなやつ!」という印象ですよね。前回の新大くんのランケデムも、実に"嫌みな奴"でした(笑)。
──ほかに演じてみたい役柄はありますか。
沖 ビルバントの恋人のアメイを演じてみたいなと思っているんです。キャラクター・ダンスの場面があっていいですよね。『海賊』に出てくるキャラクター・ダンスはどれも印象的ですが、メドーラにはキャラクター・ダンスの要素がないので。ビルバントもやはり重要な役どころだし、その見せ方次第で全体の印象が変わってくるだろうなと感じます。
第3幕、女性ダンサーの群舞が美しい通称「花園」の場面より(中央は上野水香)
──ではあらためて、バレエ『海賊』の魅力を教えてください。
沖 前回、正面から舞台を観ることができたのですが、複雑に入り組んでいないシンプルなストーリーに、テクニック満載の踊りの多いバレエなので、皆のいいところがすごくよく見えてくるんです。もちろん、コール・ド・バレエの美しさが際立つ花園の場面もお楽しみいただけます。音楽も耳に心地よく、スケールの大きいエンターテインメントとして存分に楽しめる舞台ですから、ご覧になって、明るい気分になって劇場をあとにしていただけたらと思っています。
-「海賊』初演時はオダリスクを踊られましたが、今回は初めてメドーラ役に挑戦です
秋山: 初演時はオダリスク、海賊たち、花園のバラをやらせていただきました。
前回はアンナ先生が来団して指導してくださったのですが、今回はZoomのリハーサルで細かく指導していただいています。
メドーラは思っていた以上にハードな役でテクニック的にも難しいところがたくさんありますが、観ていると盛り上がってワクワクさせてくれる作品なので観に来てくださった方が興奮できるような舞台にできたらと思います。
-メドーラ役は、全幕作品の中でもとくに出番の多いヒロインかもしれません。
秋山: そうですね。全ての場面に出演していますし、着替えることもたくさんあります。踊って着替えて、踊って着替えて、という感じです(笑)5着ともすごく素敵な衣裳なので、着て踊れるのが楽しみです。
-前回参加して『海賊』の魅力はどんなところにあると実感しましたか
秋山: パワフルな踊りが多いところです。あとは男性ダンサーたちが活躍しますよね。
私たち女性陣も負けないように、彼らのエネルギーにかき消されないように頑張らないと!
-もし自分が男性だったらどの役を踊りたいですか?
秋山: ビルバントをやりたいです!! キャラクター性が強くて、悪役のくくりになるのかもしれませんが、踊りもかっこよくて大好きです。
女性でキャラクターの強い役柄というと、たとえば「ジゼル」のミルタとか「ドン・キホーテ」のメルセデス、「白鳥の湖」のスペイン、「眠れる森の美女」のリラの精──。悪役に限らなくても、背の高いダンサーが演じることが多いので、憧れます。
-コンラッド役の宮川新大とのパートナーシップが注目されています。
秋山: お互いに初めての挑戦なので、たくさん話し合いながらリハーサルしています。
新大くんはパ・ド・ドゥも演技もどんなふうにしたら私がやりやすいか、といつもすごく気遣ってくれるんです。もし本番で何かあっても絶対になんとかしてくれると勝手に思っていて(笑)、安心感があります。
一方のアリ役は生方隆之介くん。入団以来様々な役で活躍していて、6月には子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」で一緒に踊りました。
洞窟のパ・ド・トロワは「海賊」の中でも大きな見せ場になる場面だと思うので、本番までに3人で作り上げていきたいです。
-どんなメドーラになるか楽しみですね。
秋山: 今はメドーラという役柄を自分なりに作り上げながらリハーサルしています。奴隷として取引されてはいますが、悲観的ではないし、明るくて強い女性ですよね。品もあるし、可愛らしいところもあるし、パシャをからかうようなおてんばな面もある。でもコンラッドを守ろうと剣を振り上げる強さもあります。すごく魅力的な女性だと思うので、シーンごとに違った表情をお見せできるようにリハーサルしていきたいです。
Q 今回アリ役に抜擢されましたが、これまでに「海賊」という作品に触れたことはありますか?
生方:東京バレエ学校に通っていたとき、スクールパフォーマンスでアリを踊りました。その時はニコライ・フョードロフ先生に指導していただいたんですけど、本番では練習どおりにできなかった悔しい思い出があります。
バレエを習ってる男の子にとって、「海賊」のアリは「ドン・キホーテ」のバジルや「パキータ」のプリンシパルと並んで踊りたい役のひとつだと思うんです。もちろん僕にとっても憧れはありましたけど、いざ配役されてみると緊張の方が大きいですね。
Q 東京公演よりも先に〈横浜ベイサイドバレエ〉でパ・ド・トロワだけ踊りましたね。手応えはありましたか?
生方:初めての野外舞台だったので、客席の空気感や本番前の緊張感がいつもと違いました。野外なので爽快感というか...踊っていてすごく気持ち良かったです。作品の世界観に近い場所で踊れた経験はきっと今後につながってくると思います。ただ、床のコンディションが厳しく、シューズがすぐにボロボロになってしまいました......
〈横浜ベイサイドバレエ〉カーテンコールより。この舞台では9月の公演とは違う組み合わせでパ・ド・トロワのみを披露。写真左より秋元康臣(コンラッド役)、沖香菜子(メドーラ役)、生方隆之介(アリ役)
Q リハーサルの感触はどうでしょうか? リハーサル中指導者に言われたことで、なにか印象に残っている言葉などあれば教えてください。
生方:僕個人の課題としては、動きと動き、踊りと演技の間のつなぎの部分をもっと磨いていかなければ! と思っています。今回は先輩の池本(祥真)さん、(宮川)新大さんと同じ役なので、色々と参考にさせていただいています。
アンナ先生(振付家のアンナ=マリー・ホームズ氏)にはZoomでリハーサルをみていただいているのですが、テンションをあげていくことを求められています。初めてのリハーサルの時に「Good! 回転がすごく良い!」と褒めてもらえたのは本当に嬉しかったですね。あと、友佳理さん(芸術監督 斎藤友佳理)からは「もっと頭をさげて、コンラッドに忠実な奴隷であってほしい」と注意されたので、そこはしっかり意識していきたいと思っています。
Q アリ役について思うことと、そしてこれからのリハーサルの課題についてはどのように考えていらっしゃいますか?
生方:例えば、「ドン・キホーテ」のバジルだと最初からずっと舞台に出ているので、客席の空間に徐々に慣れていくことができるんですけど、アリって実は踊る場面が少ないんです。特に2幕でいきなり大きな踊りがくるので、かなり緊張しますし、ちょっとコンクールを思い出します(笑)踊りも難しいですけど、それよりも演技の方が難しいなと感じています。ちなみにコンラッドはもっと大変だと思います。パ・ド・トロワの場面でも、メドーラと組む場面はありますが、テクニック的に難しいところはコンラッドなので......
それからアリを演じるうえでは特に"姿勢"が重要だと感じています。露出が多い衣裳なので身体のラインがモロに出てしまって隠しようがないんです。お客様にどうみえるか、いつも以上に意識して取り組んでいきたいですね。目標としてはもう少し男らしい力強さというか、そういう雰囲気を出していけたらと思っています。
バジルのような明るいキャラクターに比べると、アリは控えめな感じが自分にあっているかな?と思ってます。あと、僕は青が好きなので、今回の衣裳の色味が自分のイメージするカラーにあっているような気がして嬉しいです(笑)
Q 「かなり緊張するタイプ」だとお話されてましたが、緊張をほぐすためにやっていることはありますか?
生方:最近池本さんから聞いて、ガムを噛み始めました。緊張すると喉が乾くじゃないですか? 唾液がでなくなるからだと思うんですけど、ガムを噛むと強制的に唾液が出ますし、それで少しでも乾きがへって緊張しなくなったらいいなって。効果はこれから現れると期待してます(笑)
Q 「海賊」には色々なキャラクターが登場しますが、もし他の役を演じられるのならばどの役に挑戦してみたいですか?
生方:うーーーん......ランケデム! 悪役好きなので(笑)。先日「白鳥の湖」のスペインを踊ったばかりなんですけど、悪役は入り込みやすいのもあって好きです。ランケデムはアリと対になるような役だと思いますし、衣裳の感じも近いなと思います。
あ、でも「白鳥」のスペインは小道具があるので緊張します。小道具って扱いがすごく難しいんですよ。
Q 「海賊」、ご来場予定のお客様へ一言メッセージをお願いします。
生方:「白鳥の湖」のような典型的な古典作品とは違って、「海賊」には男性群舞など、男性ダンサーの見せ場がたくさんあるのが一番の特徴だと思います。迫力や力強さ、男性ならではの味をしっかりと出して舞台を盛り上げていけるように精一杯踊りますので、皆さまにもぜひ楽しんでいただけたらと思います。
京都府亀岡市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
5歳から「神谷道子バレエ研究所」ではじめました。母と妹が通っていたのがきっかけです。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
東京バレエ学校のSクラスに中学3年生の頃から通っていました。在学していた時からバレエ団の公演にエキストラとして参加させていただいたり、公演を観たりしているうちに「このバレエ団で踊りたい」と思うようになりました。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
劇場としては2年前(2019年)のヨーロッパツアーで踊ったミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場です。舞台(劇場)が美しく、夢をみているような空間でした。
そして東京文化会館の客席を舞台から見ると、いつも「また舞台に立てる」という充実感を感じ嬉しく思えてきます。
印象に残っている役は「くるみ割り人形」のフランスです。全幕公演で初のソリスト役でした。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
空が広く、田畑の広がる先には山々があり、とても自然が豊かなところです。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
好きな名産― 京野菜、馬路大納言(うまじだいなごん)
好きなスポット- 保津川下り、保津峡のトロッコ列車、そして出雲大神宮(霧が深いことで有名です)
(スタッフ注:馬路大納言はその起源を延暦十三年までさかのぼると言われているほどの歴史と伝統を誇る最高級の小豆だそうです)
Q7 お客様へのメッセージ
新型コロナウイルスの影響で厳しい状況が続いている中、今回のツアーで多くの舞台に立てることはとても有難く、また沢山のお客様にご覧いただけることを嬉しく思います。
なにかと不安な日々ではありますが、バレエを通して少しでも希望や前向きな気持ちをお届けできれば幸いです。芸術により、人が人らしく、心豊かに過ごせることを願っています。
皆さまのご来場、心よりお待ちしております!
今回のツアーでは「ギリシャの踊り」、「パキータ」、「ボレロ」と、ほぼ全ての作品に出演する生方、ぜひご注目ください!
群馬県高崎市
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
4歳から。「アン・バレエスクール」と「室賀バレエスクール」で習いました(母がバレエを習っていました)。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
東京バレエ学校のSクラスに通っていたときから、バレエ団の公演やダンサーを拝見する事が多く、興味をもちました。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
「春の祭典」。入団後初舞台だったので印象に残っています(きつかった...)
「ドン・キホーテの夢」のバジル。練習時間がとても短かったことと、主役を踊るプレッシャー。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
東京に比べてのどかで、住みやすい所が好きです。自然も多く景色も綺麗です。
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
・フリアンパン洋菓子店のパン
・ガトーフェスタ ハラダのラスク
それからスパゲッティー専科 はらっぱのスパゲティーが好きでよく食べに行きます。
Q7 お客様へのメッセージ
いつもバレエ団へのご支援、応援、ありがとうございます。
コロナ禍で舞台に立てるということをとてもありがたく感じています。このような状況がいつまで続くのかわかりませんが、皆様により良い舞台をこれからもおみせできるよう、日々精進していきたいと思います。
子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」より。キトリ役の涌田美紀と
★次回予告★
次回はいよいよ最終回、京都出身、南江祐生が登場します。どうぞお楽しみに!
〈HOPE JAPAN 2021〉全国ツアー、公演地にゆかりのあるダンサーでつないでいくインタビューのバトン。9番目は近年主役への抜擢が続いているソリスト、金子仁美(群馬)の登場です。
今回のツアーでは「ギリシャの踊り」、「パキータ」に出演する金子のインタビュー、ぜひご一読ください!
群馬県邑楽郡
Q2 バレエをはじめた年齢、スタジオ、きっかけ
6歳、「小林はつみクラシックバレエアカデミー」でレッスンをはじめました。小林初美先生から「バレエやってみない?」とスカウトされたことがきっかけです。
Q3 東京バレエ団を選んだ理由
中学生の頃、東京バレエ団の公演を観てすごく感動し、憧れを持つようになりました。
高校1年生からは東京バレエ団附属の東京バレエ学校「Sクラス」に通うようになり、これまで以上にバレエ団のことを知り、公演を観る機会も増え、「ここに入りたい!!」とより強く思うようになりました。
Q4 東京バレエ団に入ってから特に強く印象に残っている舞台、役
全ての舞台が特別なので選ぶのが難しい!!......けれど、東京文化会館で初めて大きな役をやらせてもらったアシュトンの「真夏の夜の夢」はとても印象に残っています。あと2020年12月に初の全幕主演だった「くるみ割り人形」のマーシャは、リハーサルからすごく濃い時間を過ごしたので、忘れられない舞台になりました。
Q5 私が今思う、地元の良いところ
本当に、笑っちゃうくらい田舎でのどかな所なんです。町の人がみんな友だちって感じ!! でも、私はのどかで豊かな空気が大好きです!
Q6 私が好きな地元の名産、スポット
・焼きまんじゅう
・玉こんにゃく(大スキ♡)。シンプルですが、おでんみたいに串に3つくらい刺して、醤油ベースの味付けで煮るととっても美味しく食べられます。
・ネギ味噌。白米のおにぎりにネギ味噌をぬって食べるのはおススメです!
Q7 お客様へのメッセージ
私が東京バレエ団に入団した2011年は、東日本大震災により日本がとても大変な状況でした。あれから10年、今はコロナの影響で世界中が不安の渦の中にいます。私たちダンサーも苦しい日々を過ごしてきましたが、いつも応援してくださる皆様のおかげで前を向いて頑張ることができています。感謝の想いでいっぱいです。
このHOPE JAPANの舞台では、今かかえる不安もふきとぶようなエネルギーを皆様にお届けできるように踊ります。一緒に楽しんでください!
「くるみ割り人形」より。金子仁美(マーシャ役)、池本祥真(くるみ割り王子)
★次回予告★
次回は同じく群馬県出身、生方隆之介が登場します。どうぞお楽しみに!
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