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ロングインタビュー2016/01/22

【ダンサー・ロングインタビュー】 第6回-秋元康臣

取材/文:新藤弘子(舞踊評論家) ロシアのチェリャビンスク・バレエなどを経て、2015年8月に入団した秋元康臣。以来、恵まれたプロポーションと正確なテクニックが生み出すのびのびした表現で、踊るごとにバレエ・ファンの心をつかんでいる。12月に行われたシルヴィ・ギエム・ファイナル東京公演のリハーサル後、慌ただしいスケジュールを縫って話を聞くことができた。 *バレエとはいつ、どのようにして出会いましたか? 16-01.15_01.jpg 3歳になるちょっと前です。もともと神奈川のほうに住んでいて、鎌倉を散歩していたとき、たまたま母親がバレエ教室の看板を見つけたんです。母はバレエの経験はないのですが、舞台やオペラを鑑賞するのが好きで、それで習わせてみようと思ったらしいです。 *ご兄弟は?  3人きょうだいのいちばん上です。弟と妹も一時期バレエを習っていましたが、続かなかったですね(笑)。 *バレエを習うことに抵抗はありませんでしたか?  最初のうちは、行きたくないとだだをこねた時もあったかも。バレエ教室には他に男の子もいませんでしたし。でも行ってしまえば楽しかったし、自然と生活の一部になっていました。小学校では他のスポーツも楽しかったけど、だからといってバレエがいやになったことはないですね。 *その後、ロシア・バレエ・インスティテュートを経てボリショイ・バレエ学校へ留学なさいました。  薄井(憲二)先生と、ロシアからいらしていた先生の勧めで留学を決めました。12歳から卒業まで6年間学び、冬休みや春休みはありましたけど、基本的にはロシアで過ごしましたね。もちろんロシア語は話せなかったけど、留学する前に先生と1対1で辞書を引きながら教えていただき、正確な意味や発音はわからなくても片言程度に話せるように、とりあえずアルファベットというか文字を発音できるようにだけはしておいたんです。留学での経験が、いま役に立っていますね。 *NBAバレエ団、Kバレエカンパニー、チェリャビンスク・バレエなど、いろいろなバレエ団で活躍されました。思い切りよく決断するほうですか?  常に自分の中で悩んだり考えたりしていて、スパッと切り替わるというふうには思わないです。自分で一つのテーマを作って、そこまでいったら終わり、というふうにはしたくないんです。ボリショイ・バレエ学校に関していえば、毎日いい意味で何も考えずに、ひたすらバレエと向き合っていられる環境だったので、卒業するまでの6年間がすごく長くて濃厚で。とても充実していただけに、いざ卒業と言われた時、正直なにかこう、ひとつ終わってしまったような感覚になりました。 *憧れや目標になるようなダンサーはいますか?  なかなか1人には絞れません。もちろんいろんなダンサーを観て素晴らしいなと思いますし、それが正直な気持ちではありますが、例を挙げてしまうと、きりがなくなってしまうので。(笑) *色々な経験をされた秋元さんが、東京バレエ団を選ばれた理由は何だったのでしょうか。  やはりレパートリーですね。作品の種類や幅というか、古典に限らず、これだけ幅広いレパートリーを持つというのは、どの劇場(バレエ団)でもできるということじゃないですから。  入団した時の印象は、スタジオが大きい!(笑) 最初見たとき、とにかく広いなあと。床の環境もとても良くて、いい環境だなあと思いました。ロシアでの経験でよかったのは、舞台数をこなして構えずに舞台に立てるようになったこと。余裕が出てくると、演技の細かい部分なども次はこうしてみようとか、いろいろチャレンジすることができたと思います。東京バレエ団では公演の間隔がかなり違うので、身体の作り方などは変わってくるんだろうなと思います。 *2015年8月の入団後、印象的な作品や役にはもう出会いましたか? 16-01.15_03.jpg 『ドン・キホーテ』のエスパーダは、今後もずっと覚えていると思います。これまで主役のバジルは踊っていたけど、エスパーダは踊ったことがなかったんです。体力以前の問題で、バジルとはまったく性格が違う役なので、重々しさが出せるのかとか、不安もありました。(斎藤)友佳理さんにが本番前までずっと見てくださっていて、いただいた注意を全部こなせるだろうかという不安もありましたけど、直前になったら「あとはもう思い切ってやりなさい」と言ってくださって。ほんとうにもう、思い切ってできました。友佳理さんの指導は厳しくて、細かい!(笑) でもそれがあるからこそ、リハーサルで指導されたことが自然に身体の中に入っていって、本番で思い切りできるんです。もちろんまだまだですけれど。 *東京バレエ団のレパートリーで、これから踊ってみたいものは?  まずは2月の『白鳥の湖』のジークフリート王子。このブルメイステル版は、以前から「かっこいいなあ」と思って観ていたものなので、その主役を踊れるのはほんとうに楽しみです。あとは『ラ・バヤデール』のソロルも踊ってみたいです。 *ギエムの引退公演ではフォーサイス振付『イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド』も踊られていますね。  フォーサイス作品を踊るのは初めて。昨日の公演で3回目でしたが、舞台の数を追うごとに、だんだん身体の使い方、動き方、自分がどれだけ動けるか、難しさの中で少しずつ掴んできている感じでしょうか。まだまだやるべきこと、目指すところは限りなくあるんですけど...。 *ベジャール作品などは?  今までやったことのないものだし、もちろん興味はあります。 *将来こういうふうになりたい、という理想像のようなものはありますか?  正直、特に描いていません。その時を楽しもうと思うので、何年後にこうなりたい、それには今こうしなければ、というような計算はしてないです。こちらからやりたいと言うことはないけれど、来た役はしっかりやる。そのとき出会った作品や舞台をいかに楽しめるかを考えます。レパートリーの多い東京バレエ団は、そういう意味でも楽しみです。 *バレエ以外ではどんなものに興味がありますか?  本では伊坂幸太郎の独特な世界が好きですね。一つの物語を、いろいろな人の目線から描いている。映画もけっこうジャンル問わず見ています。いちばん最近は「007」。邦画だと「グラスホッパー」。これも伊坂さんの本で読んで、映画化されたら観に行こうと思っていたので。 *ミステリアスな雰囲気もお持ちです。バレエ以外の時は何をしていますか。  至って普通です(笑)。バラエティ番組もお笑いも観るし、その時したいことをしてる。ツイッターやFacebookはやっていません。それよりは踊りを観てほしい。 *ギエムさんとの共演で感じるものはありましたか?  感じるというか、いつもダメ出しをされていて。この前も終演後の移動中に、その日の本番の映像を見ながら注意してくれました。 *見どころがあるからこそ注意したくなるのでしょうね。ブルメイステル版『白鳥の湖』を観に来てくれるファンの方たちにメッセージをお願いします。  作品や物語の、全体の魅力をぜひ観てほしいです。特にぼくだけ観てくださいとは言いません(笑)。    華やかな舞台での姿に比べ、素顔は穏やかでクールに見える。けれども話を聞くほどに、バレエに対する迷いのなさや、芯のしっかりした性格が浮き彫りになってくる。優美さと力強さが同居する秋元の踊りの原点は、やはりロシアでの体験にありそうだ。ボリショイ・バレエ学校の恩師イーゴリ・ニコライヴィッチ・ウクススニコフについて、「どなられるし拳骨は飛ぶし、でもすごく男らしくて心の広い先生。踊る楽しさを教えてもらえた」と語る秋元。東京バレエ団という絶好の活躍の場を得た彼が、揺るぎないダンス・クラシックの基礎を活かしてどんな舞台を見せてくれるか。これからの活躍が楽しみだ。

レポート2016/01/20

「白鳥の湖」公開リハーサル&懇親会レポート

 ブルメイステル版『白鳥の湖』バレエ団初演を半月後に控えた1月15日、東京バレエ団は同作の公開リハーサルを実施、斎藤友佳理芸術監督の陣頭指揮で、第2幕、第3幕のリハーサルが披露されました。  第2幕、白鳥たちのコール・ド・バレエの中心にいたのは、2月6日に主役を踊る渡辺理恵、秋元康臣のペア。斎藤、バレエ・ミストレス佐野志織らの傍らには、新年から指導に参加している元ボリショイ・バレエ・プリンシパルのニコライ・フョードロフ氏の姿も。3日目に主役を踊る川島麻実子、岸本秀雄組も、彼のアドバイスにじっと耳を傾けます。  続く第3幕、各国の踊りのダンサーたちが次々と登場しますが、ブルメイステル版では、彼らはすべてロットバルトの手下という設定。皆、王子がオディールに愛を誓うよう猛烈なアピールを繰り広げます。身を乗り出して指示を出すのは、昨年8月に続いて再来日したキャラクターダンスの指導者、マルガリータ・ルアノ氏。場の熱気が徐々に高まると、初日に主役を務める上野水香・柄本弾によるグラン・パ・ド・ドゥが始まり、やがてコール・ド・バレエも一体となってクライマックスへ──。  リハーサル終了後の記者懇親会で斎藤は、バレエ団の原点ともいえる『白鳥の湖』を上演するにあたり、新たにブルメイステル版を選んだ理由として、ロシアで最初に観て心を動かされたことと、この第3幕のグラン・パ・ド・ドゥを挙げます。「コーダでは何十人ものコール・ド・バレエが必要。皆で力を合わせ、東京バレエ団のいちばんの強みが出せる作品なのです」。ブルメイステルの演出意図に沿うよう、同作品を初演したモスクワ音楽劇場の衣裳を借り、さらには東京バレエ団のスタッフで力を合わせ、新たに舞台装置を制作したことにも触れました。  第3幕について尋ねられたルアノ氏は、「ドラマティックな要素が非常に強い。各国の踊りのダンサーたちは皆、悪の力をもってジークフリート王子の意識を虜にするという目的のために登場します」。オデット/オディール役のダンサーたちも「ブルメイステル版はより大きな力でドラマを伝えることのできる作品」(上野)、「これまで疑問に思っていたことが、一つひとつ解けていくよう」(渡辺)、「お客さまにとってもわかりやすい作品と思います」(川島)と、その魅力を紹介しました。王子役の指導について尋ねられたフョードロフ氏は「3人には自分らしい王子を演じてほしい。私のコピーではなく、他の人の真似もしてほしくないのです」と彼らを激励しました。  本番までの残された時間、「何をすべきか明確に見えてきた」と話していた斎藤。スタッフ、ダンサーが一丸となって創り上げる舞台に、どうぞご期待ください。 写真④.jpg

レポート2016/01/19

「白鳥の湖」振付指導者  アルカージー・ニコラエフ インタビュー

 東京バレエ団は2016年2月、ウラジーミル・ブルメイステル版『白鳥の湖』バレエ団初演にのぞむ。その準備が進むなか、10月中旬、モスクワから指導者のアルカージー・ニコラエフ氏を迎え、9日間にわたる濃密なリハーサルが展開された。モスクワ音楽劇場でソリストとして活躍、ブルメイステルのもとでこの作品を踊っていたというニコラエフ氏に、リハーサルの様子やこの版の魅力を聞いた。  まず、稽古場での東京バレエ団の印象を尋ねると、「技術面に長けたダンサーもいれば、表現力に優れたダンサーもいる。個性は皆それぞれですが、演技というものはとても難しいものですね」。きれいな日本語で、「難しいね」、と繰り返す。 ★IMG_7609.jpg 「ブルメイステルはパリ・オペラ座に初めて招聘されたロシアの振付家ですが、彼の『白鳥の湖』は本当に素晴らしい。何よりもまず、知識がある人もそうでない人も、前もってあらすじを読まずに舞台を観て、物語を理解できる。すべてが演技によって支えられている作品なのです」  最も特徴的なのは第3幕だという。 「スペイン、ハンガリーなどの各国の踊りは、単なるディヴェルティスマンではなく、すべて悪魔ロットバルトとその手下たちが創り出す世界。彼らはジークフリート王子がオデットを裏切るように導けと、ロットバルトに命令されているのです。どうもその企てがうまくいかないということになると、オディール自身も呼んできて、ジークフリートを惑わす。彼はもうわけがわからなくなり、大事に持っていたオデットの羽根をオディールに手渡す。その瞬間、オデットを裏切ってしまったことが明らかになるのです」  自身もジークフリート王子をはじめ、ロットバルト、パ・ド・カトルと様々な役柄を踊ってきた。 「でも、私にとって最も価値があるのは、1953年の初演の時に小姓役で出演したことなんですよ! 私は11歳でした。初めての舞台でしたから、すごく緊張していましたね(笑)。もう62年も経ちました」  ドラマティックな出来事を巧みに演出することに長けていたというブルメイステルから、多くを学んだとも。 「彼はこう言いました。『そんなにたくさん回るピルエットなんて見たくない! ジークフリートがオディールに対して踊っているヴァリエーションなのだから、回転数は二の次だ!』と。彼にとって最も重要なのは、その踊りは何について語っているのか、ということなのです」 ★IMG_7612.jpg  稽古場では、子どもの頃からこの作品に親しんできたという斎藤友佳理から、「昔のモスクワ音楽劇場は、こんなふうにやっていたのでは?」と意見を求められる場面も。 「舞台というものは時間とともに変化してしまうところがあります。ダンサーがそれぞれに即興でやったことが、そのまま定着してしまうことも。友佳理が私に望んでいるのは『最初はどのように演じられていたのか、見せてほしい』ということでした。時間は限られていますが、その中で、できるだけ多くのことを伝えたかったのです」  ニコラエフ氏からたくさんのものを受け取ったダンサーたち。2月の初演に向けて、ひたすらに稽古を積み重ねていく。 取材・文:加藤智子

新着情報2016/01/01

東京バレエ団ダンサーからの年賀状2016

明けましておめでとうございます。

2015年は、斎藤友佳理が東京バレエ団の芸術監督に就任し、新しいスタートを切った年になりました。
『眠れる森の美女』、『ジゼル』、『ラ・バヤデール』、世界バレエフェスティバル、めぐろバレエ祭り、第29次海外公演『第九交響曲』、横浜ベイサイドバレエ、『ドン・キホーテ』、シルヴィ・ギエム公演への出演と、これだけのステージを無事終えることが出来ましたのも、劇場へ足を運んでくださった全ての方々のお力添えのお陰と、感謝致しております。ダンサー、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。

ダンサーからの新年のご挨拶と致しまして、「クラブ・アッサンブレ」の会員様には、直筆サイン入りの年賀状をお送りしております。下記にて全ダンサーのサインを一挙公開いたしますので、どのダンサーからの年賀状か、ぜひ答え合わせをしてみてください。

2016年も、東京バレエ団はたくさんの作品をご用意して、皆様のご来場をお待ち致しております。まずは、2月に初演するブルメイステル版『白鳥の湖』でお会いしましょう!

本年も、東京バレエ団をどうぞ宜しくお願い申し上げます。



【プリンシパル】

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【ソリスト】

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【アーティスト】

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レポート2015/12/29

河谷まりあ、宮川新大 オーストラリア・コンセルバトワール「コッペリア」報告

12月18日に河谷まりあと宮川新大がメルボルンのオーストラリア・コンセルバトワールで「コッペリア」全幕に主演しました。 これは、元オーストラリア・バレエ団芸術監督のメイナ・ギールグッドさんが、自身の振付・演出作に2人が主演することを強く望み実現したもので、河谷と宮川は12月4日に日本を立ち、約2週間のリハーサルを重ねて本番に臨みました。 コッペリア1.jpg コッペリア2.jpg 「最初は海外でゲストとして主演することが不安でした。メイナさんから、"まりあにスワニルダをやって欲しい、まりあしかいない!"と言われ、その言葉を信じで頑張りました。  校長先生のクリスティーヌさん自らが衣裳を作ってくださったり、ご主人のリカルドさんもサポートを教えてくださったり。皆さんが温かく見守ってくださるからこそ、真ん中をやらせていただく意味、プロフェッショナルでならなければならないと強く感じて本番に臨みました。  オーストラリアのお客様は舞台の最中でも笑ったり、立ちあがったり、感情を素直に表現してくださいます。もっともっと舞台を楽しんでいただきたいと思う気持ちが湧きあがってきましたね。  リハーサルが2週間しかありませんでしたが、メイナさんは目線や指先にまで細かく指導してくださり、私のいろんな引き出しを開けていただいたように思います」(河谷まりあ) コッペリア6.jpgこの公演の成功には、校長先生のクリスティーヌさんやご主人のリカルドさんのサポートがあってこそだったと、河谷、宮川ともに口を揃えます。自宅に招いてくださったり、食事に連れ出してくれたりと、メイナさんともども、2人がリラックスして舞台に上がれるように、細やかな心くばりをしてくださったそうです。 コッペリア4.jpg「2週間連日8時間のリハーサルというハードな生活でしたが、みなさん良い方たちで温かく迎えてくださり、楽しくオーストラリアでの日々を過ごすことができました。  僕にとってこの「コッペリア」が人生初の全幕主演でした。集中力と体力のコントロール、そして「コッペリア」ならではのマイムなど、経験したことのないことへの挑戦でしたが、公演はとても盛り上がり、スタンディングオベーションしてくださった方もいらっしゃいました。今回、僕たちを主役に推薦してくださったメイナさんもボロボロ泣いて"よかった!"と言ってくださって。  4月の「ラ・シルフィード」前に、全幕主役の流れを勉強させていただき、それを4月にもつなげられればいいと思っています。とても良い経験をさせていただきました」(宮川新大) 2週間という短いリハーサル期間に加え、1日2回公演というハードな経験をした2人。一回り大きく成長した姿を、4月の「ラ・シルフィード」のジェイムズ(宮川:4/29)とエフィー(河谷:4/30)で見せてくれるに違いありません。どうぞ、ご期待ください。 コッペリア5.jpg

新着情報2015/12/19

東急ジルベスターコンサートで東京バレエ団が「ボレロ」ほか2作で出演! 大石裕香さん(振付家) インタビュー

ss_trim★IMG_8296.jpg シルヴィ・ギエムが「ボレロ」でファイナルステージを飾り、12月31日(木)にテレビ東京系で生中継される、〈東急ジルベスターコンサート2015-2016〉。このたび、東京バレエ団は「ボレロ」の他にも、第2部の「舞踏会の美女」、『くるみ割り人形』から「花のワルツ」で出演することが決定しました。

 振付を担当したのは、ハンブルク・バレエ団で活躍し、夏の〈第14回世界バレエフェスティバル〉で自身の振付『ウロボロス』を披露した大石裕香さん。現在は振付家として宝塚歌劇団公演の振付などにも関わっている彼女に、ジルベスターコンサートのための作品の見どころについてお話をうかがいました。


●今回のお話を聞いた時のお気持ちを教えてください。

大石:まずは、びっくりしました(笑)。そして、ハンブルク・バレエ団の『ロミオとジュリエット』でお世話になりとても親近感のある東京バレエ団の皆さんと、またご一緒できることがすごく嬉しかったです。

●振付作品についてのイメージを教えてください。まずはアンダーソン「舞踏会の美女」について。

 私は振付を考えるとき、まず曲を聞きながらドラマ性や感情の動きなどを考えてイメージを作っていきます。この曲を聴いたときは、まずレビューのイメージが浮かびました。そこで、女性は6人でイブニングドレス、男性は1人だけで、黒のタキシードにシルクハットのイメージにしようと。ちょっと疲れた現代の男性が、舞踏会の世界に誘われていくコンセプトにしました。

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●『くるみ割り人形』から「花のワルツ」については。

 「花のワルツ」といえば、とても有名な曲ですし、またバレエ団ごとのイメージがありますよね。でもどれもほんわかとした雰囲気の中で踊っている感じなのは同じだと思います。そこで今回、私が振付けするにあたって、そのほんわかした感じを崩してみたいと思いました。もっと華やかに、ワクワクさせるようなものができないかと。

 男女6組のダンサーが登場しますが、皆さんが思っている「花のワルツ」では考えられないくらい"踊ってる"と思います。どれくらい踊るのかといえば、踊り終わったダンサーの皆さんがゼイゼイ言うくらい、で分かりますか?(笑)。
見どころは、目まぐるしく変わるフォーメーション。「あそこにいた人が、いつの間にあんなところに!」と、同じところに一瞬としていないくらい、人が入れ替わり立ち替わり変わっていきます。面白いと思っていただけると思います。

●振付の楽しさとは。

 自分の頭の中だけの想像だったことが、白紙の状態から目に見える形となって現れる。自分の想像以上のものが現れたその瞬間、「あらすごい楽しい」って(笑)。そこに出来上がっているのは、私の頭の中だけのものではなく、ダンサーが加えた何かもあるし、衣裳、セット、そのほかのものも加わって。新しいミクスチャーというか、色んなものが合体したものだから自分の想像以上のものになるわけですよね。それがすごく楽しいんです。ですから今回も東京バレエ団の皆さんと楽しみながら作っています。

●公演を楽しみにしている方々へ向けて、メッセージをお願いします。

 新年への幕開けとして、皆さんを華やかな気分にするステージになったらいいなと思います。芸術や舞台を愛してくださる方々がいないと、私たちは活動できません。すごくスピーディーに動いている時代の中、こうした芸術をサポートしてくださる皆さんや、テレビ放映してくださるテレビ局のもと、このようなコンサートができることは素晴らしいことだと思っています。そこに振付として関わらせていただくことは、ほんとうに光栄に思っています。12月31日の舞台と放送をご期待ください!

ロングインタビュー2015/10/23

【ダンサー・ロングインタビュー】 第5回-梅澤紘貴

取材/文:新藤弘子(舞踊評論家) *バレエを始めた頃のことを教えてください。  姉が地元の教室でバレエを習っていて、母親について行ったとき「ぼくもやりたい」と言ったみたいです。男の子は自分のほかに1人か2人。小学校に入っても、やめようと思ったことはなかったので、たぶん楽しかったんだと思います。小、中学校にかけて部活はバスケットボールをやっていて、一時期バレエとバスケットのどちらをとるか迷ったこともあります。体力があまりないので、両方はきつくて。そのとき、バレエを選びました。 *ご家族もバレエがお好きなんですか?  母はピアノを教えていて、バレエもとても好きだったようです。大きくなってからですが、バレエ公演にも何回か連れていってもらいました。ぼくはバンドネオンの小松亮太さんが大好きで、小松さんの演奏するタンゴとバレエがコラボする公演を観に行った記憶があるんです。タンゴとかジャズとか、音楽はジャンルを問わず好きですね。学校やバレエの友だちと、カラオケでそのとき流行ってる歌を歌ったりして。ヒップホップとか、そういうダンスも好きで、学校の廊下で友だちと練習したりしてました。当時はただ遊びでやってただけですけど。 15-10.23_01.jpg *東京バレエ学校に入ったのは?  高1からです。入学したら、男の子がたくさんいたのですごく刺激になりました。競い合ったり遊んだり、でもその時は、まだプロになろうとはっきりは決めていなくて。高3までの3年間いたんですが、同い年の友だちがバレエ団に入ろうと誘ってくれたんです。ちょうどその頃『ザ・カブキ』を観てすごく感動して、絶対にここに入ろうと決意しました。 *入団して、たいへんだったことは?  ぼくは18歳で入団しましたが、同期の年齢はいろいろで、いちばん上の方は30歳くらい。話題もあまり合わないし、やっていることも幅広すぎて、この中でやっていけるのかなと、ちょっと不安になったこともありました。バレエ団の中の決まり事も全く知らなかったので、先輩に怒られたり教えていただいたりしながら、少しずつなじんでいきました。 *悩んだりやめたくなったりしたことはありましたか?  それはしょっちゅうです。自分の動きや踊りに幻滅することもあるし、特に最初の頃はなかなか役につけなくて、アンダーばかりでしたし。他の人たちは個性があって、後輩でも早く役についたりすることがけっこうあるのに、ぼくは誰かがケガをした時のピンチヒッターみたいなことが多かった。自分は個性が「ない」ので、どうやったら役に入れるんだろうと悩んで、やめたくなったことはありました。 *踏みとどまった理由は?  やっぱりバレエが好きだったし、負けず嫌いだから、というのもありますね。そこでやめたくない、もうちょっと頑張ろうと思って。そうしたら少しずつ、最初からキャストに入れることが多くなりました。先輩が大勢退団された時期があって、その頃からどんどんソリストの役が回ってくるようになりました。そうなればなったで、ソリストの踊りは難しいですから、うまく踊れなくて自信をなくしたり。常に悩んではいます。 *印象に残っている役はありますか?  自分が変わった時だな、と思うのが『くるみ割り人形』の猫のフェリックスです。小林十市さんに憧れていたので、直接教えていただけることになったのが、すごく嬉しかった。中国やギリシャの踊りなどで、それまでも教えていただくことはあったけれど、一対一でというのは初めてだったんです。それから『春の祭典』の生贄で、ジル・ロマンさんに教えていただけたのも印象深いです。初めてのリハーサルのとき、怖くて震えていたんですけど、思い切りぶつかっていこうと全力でやったら、意外に優しくて。もちろん厳しい部分もあるけど、こんなに優しく教えてもらえるんだって、びっくりしました。自分には個性がないと思っていたんですけど、続けていくうちに、逆に何にでも染まれるんじゃないかって思い始めて。だからいまは、与えていただいた役は全部、チャンスだと思ってやっています。   *『ドン・キホーテ』のガマーシュも面白かったです。  そういう役なので(笑)。こういう"はっちゃけた"役は、『ペトルーシュカ』の「お祭り好きの商人」以来ですね。ぼくは踊ることも好きだけど、演技するのも好きなんです。踊りはまずテクニックを成功させなきゃならないけど、演技がメインの役は、その心配をしないで自分をその役に変えることに集中できる。だから、ガマーシュやヒラリオンはすごく楽しいし、やりがいがあるんですよ。 *ワシーリエフさんの指導はいかがでしたか。  演技指導もかなりしていただきました。具体的な振付なしで突然、「こんな感じの演技をこの音でやってみて」みたいにいわれて焦りましたけど、自分で考えてやってみることもできるんだと気がつきました。それからいろんなところで自分で芝居を考えるようになりました。友佳理さん(ワシーリエフとともにこの作品の指導を行った現芸術監督・斎藤友佳理)も、「ワシーリエフさんは信頼してくれているから、思い切りやって」と言ってくださって。 *バジル役についての思いを聞かせてください。 15-10.23_02.jpg まさかバジル役が来るとは思っていませんでした。踊ってみても最初のうちは「...やっぱ無理だわ」と(笑)。でも、踊っているうちにだんだん自分になじんできて、いまはけっこう楽しめるようになってきました。体力的にもきついけど、キトリのほうが出ているシーンが長いから大変だと思う。大きなリフトがたくさんあるのも難しいですね。片手を離したり、女性を投げてキャッチしたり、タイミングも合わなければいけないし。リフトで筋肉がついていくので特別なトレーニングはしていませんが、ぼく細いんで、いまさらですが、もう少し身体を鍛えなきゃと思ってます。 *パートナーの沖さんはどんな人?  何度も組んでいるだけあって、踊りやすいし、何でも言えるのがいいですね。ここはこうしたらいいんじゃないかとか、お互いに言い合って一緒に成長できるパートナーというか。練習中、ぼくは暗くなるタイプですが、彼女はとても明るくて、その明るさでひっぱっていってくれるので、組んでいると元気をもらえます。自分の中ではベストなパートナーだと思っています。 *ダンサーとしての将来については。  ぼくは条件もよくないし、基本もかなり欠けていると思うので、そういうところをどんどん改善して、できるだけきれいなラインを求めていければと思います。特にどの振付家の作品ということはなく、何でも来るものに挑戦していきたい。ただきれいに踊るような作品より、自分の感情で動ける作品が楽しいですね。ストーリーがあるのもいいし、振付の中に何か意味が込められているのもいい。自分に限界を感じることもありますけど、絶対にそれを越えられると信じてやっています。 *最後にプライベートなことを。気分転換は何を?  部屋で映画を観たり、本を読んだり。疲れるので、あまり外へは出かけません(笑)。いまはバレエでいっぱいいっぱいなので、他のことはあまり考えられないんですが、いろんなダンスをやってみたいですね。バレエだけじゃなくてヒップホップとか。踊りの幅が拡がるし。スポーツは観るよりやるほうが好き。バスケットはいつでもやりたいと思ってるんですが、時間がなくて。  スリムで上品なたたずまいが印象的な梅澤。2012年に踊ったベジャール振付『くるみ割り人形』の猫のフェリックスを皮切りに、注目の役を着実に自分のものにしてきた。特にこの2年間は、『ドン・キホーテ』のバジルとガマーシュ、『ロミオとジュリエット』のパリス、『ラ・バヤデール』のブロンズ像など、役柄の幅も一気に拡がった。神奈川県民ホールでのワシーリエフ版『ドン・キホーテ』主演は、首都圏のバレエ・ファンが心待ちにしていたといってもいいだろう。  インタビューの場では、物静かななかに、独特のユーモアや個性をのぞかせる。バスケットボールやヒップホップ・ダンス、ミステリーや映画が好き。自分を「人見知りで口べた」と評する梅澤だが、最近の舞台での豊かな表現や躍動感を見ると、そんなことは忘れてしまう。というより、このギャップの大きさこそが梅澤の個性なのだろう。2人のインタビューを通じて、沖との相性の良さも実感。まるで磁石の両極のような2人が巻き起こすセンセーションに期待したい。 photo:Kiyoniri Hasegawa

ロングインタビュー2015/10/20

【ダンサー・ロングインタビュー】 第4回-沖香菜子

取材/文:新藤弘子(舞踊評論家) *バレエと出会った頃のことを教えてください。  母が若い頃バレエに興味を持っていて、女の子が生まれたら習わせようと思っていたみたいです。父は最初は全くバレエに興味がなかったけれど、発表会で踊る私を観てから応援してくれるようになりました。母はもともと身体が柔らかいほうですが、父と兄はすごく固くて! 母に似てよかったなと思います。  ボリショイ・バレエ学校には18歳で留学しました。通っていたのがロシア系統のバレエ教室だったので、先生方もロシアとの繋がりが深く、留学するならロシアに行きたいと思っていたんです。高校生の頃来日したマリインスキー・バレエ団のサラファーノフやロパートキナのリハーサルを間近に見せてもらう機会が有りました。ロパートキナはとっても素晴らしいバレリーナです。でも、バレエ学校に入る時から選び抜かれているロシアのダンサーの中では、決して身体条件はよくなかったそうです。それを欠点に見せない身体の使い方、脚の使い方。私とは次元が違いますけど、自分もそれを目指していけたらと思いました。 *留学してみてどうでしたか? 15-10.20oki_01.jpg それまで自分の中では精一杯脚が開くように努力していたけれども、それでも全く開いていないんだ、と思い知らされました。小さい頃からの積み重ねもあるでしょうが、身体の作りがここまで違うんだというのが衝撃でした。克服しようとしても、生まれ持ったものが違う! 鏡を見るのがいやだと思ったこともありますが、踊ることが好きだから、バレエ中心の毎日が楽しくて。留学した当初、ロシア語はほとんどしゃべれなかったけど、クラスメイトは私の拙いロシア語とボディランゲージを理解してくれたので、そんなに苦労した記憶はありません。泣き虫なんですけどポジティブシンキングで、すぐ立ち直るんです(笑)。 *留学期間中に東京バレエ団のオーディションを受けたのですね。  ロシアのバレエ団に入ることも頭にありましたが、やっぱり日本で踊りたい、それなら東京バレエ団だと思っていました。当時はオーディションの年令制限が20歳で、私は19歳。いま受けなければと思ってオーディションを受けたら、合格をいただけたので留学を切り上げて入団しました。その頃は団員の数も多くて、アンダーにもなかなか入れない。どんな役でも舞台に立ちたい一心で、毎日一生懸命レッスンしていました。初舞台はベジャールさんの『ダンス・イン・ザ・ミラー』で、団員みんなで演じるエキストラのような役。2年目の『ラ・バヤデール』で初めてクラシックのコール・ドに入れていただきました。東京バレエ団のコール・ドってすごく揃っていて、揃え方にもすごく細かい工夫があって、それを全て頭に入れるのが大変!!先輩方には迷惑をかけっぱなしでした。本番よりも毎回リハーサルのほうが緊張していましたね。 *入団して、印象的な出会いはありましたか?  バレエ団の先生方もですが、子供の頃にビデオでしか見たことのないような人たちが実際に教えてくださるのがすごいなと。ノイマイヤーさん、ワシーリエフさんのような、偉大な振付家の方にその作品を直接教えていただけるのは本当に光栄だと思うし、たくさんのことを学びたい。自分をスポンジのように柔らかくして吸収しなくちゃ、という思いです。   *特に好きな作品、難しかった作品などがあれば教えてください。  いちばん印象に残っているのは『ロミオとジュリエット』! 主役だけじゃなく全員が初めて踊る作品で、しかもリハーサル期間が1ヶ月しかなかったのですが、実はジュリエット役の練習中に肋骨を傷めてしまって。痛いなと思いながら何日か続けていたら、先生が「もしかして痛いの?」と。病院で骨折してるとわかり、先生にも無理をせず休みなさいと言われたのですが、休んでいたら間に合わないし、「絶対やりたい、やらせてください」とお願いしてケヴィン(・ヘイゲン)先生に許していただきました。病院の先生も「折れた場所は悪くないからいまの痛みに耐えられるんなら何してもいいよ」と言ってくださっていたので。初めての大役、とても素敵な作品で、ジュリエットにとっての4日間と同じように、あっという間に終わってしまう感じだったけど、すごく心に残っています。パートナーの柄本弾さんも上手にサポートしてくださって、本番では一度も痛いと思わなかった。不思議ですね。クラシックにはないリフトがたくさんあるし、感情の移り変わりがとても重要で、技術面でも表現面でも考えさせられる作品でした。 *ターニング・ポイントになりましたね。他にはどうでしょう。  子どものための『ねむれる森の美女』です。まだほとんど舞台に立ってもいない時期にオーロラ姫役をいただいて、ほんとうに私でいいんだろうか、何かの間違いじゃないだろうか、と思いましたが、やるからにはいい舞台にしようと思って。踊り切った時は嬉しくて涙が出ました。この作品は地方ツアーや東京での再演も多く、場数を踏ませていただいています。毎回少しずつでも、よくなっていけたらと思っています。 *神奈川県民ホールでも踊られる『ドン・キホーテ』について聞かせてください。 15-10.20oki_02.jpg 子どもの頃からキトリのような「強い役」が回ってくることがなかったんです。技術面でも難しいし。だから最初にお話をいただいた時は「無理!」と思って。バジル役の梅澤さんも自分にバジルは合わないと言い張ってて(笑)、でも、やってみたらお互いのやりとりがすごく楽しかった。キトリはちょっと高飛車というか、気が強いキャラクターだと思っていたんですけど、踊る人によっていろんなキトリがいますよね。私のキトリは、ちょっと子供っぽいキトリだと思う。からかったりすねてみたり、無邪気さや天真爛漫な感じがあって、だからこそ街の人気者になっているんだと思うと、とても可愛らしいキャラクターだなと思えてきました。また梅澤さんのバジルが、すごく優しくて。街の女の子にちょっかいを出していても、心の中ではキトリのことを思ってくれているような優しいバジルなので、一緒に踊っていて楽しいですね。 *梅澤さんはどんなパートナーですか?  やりづらいことがあればすぐに練習してくれますし、何でも一緒に考えてくれます。ほわっとした感じで、そのテンションのままさらっと面白いことを言うんです(笑)。 *ダンサーとしての未来について聞かせてください。  脚の見せ方とか上半身の付け方とか、まだまだ直さなきゃいけないところがいっぱい。技術や基礎の細かい部分を向上させていくのはもちろん、その上で自分らしさが出せるといいなと思います。きれいに踊るのは生まれ持った条件で、どうにもならないこともあるけれど、個性をその上に乗せて、お客様に楽しんでいただけるようなダンサーになりたい。いまブルメイステル版『白鳥の湖』のキャラクター・ダンスを練習しているんですが、この版では踊り手はみんなロットバルトの手下という設定なので、強さや怖さなど、ダークな部分もうまく出せるようになりたい。私はそこがなかなか出せないので、今後の課題かなと最近は思っています。それから、ジュリエットをまた踊りたい。こういう表現を入れたいな、という思いもあるので、また機会があれば挑戦したいと思っています。 *最後にプライベートな趣味についてひとこと。  野球を観るのが大好き! ベイスターズのファンで、リハーサルが終わってから急いで着替えてスタジアムに応援に行くことも。今シーズンは7、8回行きました。父が野球好きで、中学生の頃から家族で観に行ってました。選手の顔や名前がわかってくると面白くてはまっちゃって。シーズン後半はあまり行けませんでしたが、よくその日の試合結果が父からメールで送られてきたんですよ(笑)。    『ねむれる森の美女』のオーロラ姫、『ラ・シルフィード』のタイトル・ロール、『ロミオとジュリエット』のジュリエットと、大役を次々に射止めてきた沖。『スプリング・アンド・フォール』では、音楽にふわりと寄り添うような柔らかい動きで魅了する。昨年主役デビューした『ドン・キホーテ』では、梅澤紘貴のバジルとともに、愛らしくはつらつとしたキトリを演じ、役柄の幅をまたひとつ拡げてみせた。間近で見る彼女はほっそりと華奢だが、大きな瞳を輝かせながらはきはきと思いを語る姿は、舞台での姿と同じようにひたむきで、眩しいほどだ。  「想像することがいちばん大切。頭の中で、こう踊りたいとか、こういうラインを見せたいとかいう思いがあるほうが、そこに近づいていけると思うから」という沖。神奈川県民ホールでの『ドン・キホーテ』はもちろん、ブルメイステル版『白鳥の湖』のキャラクター・ダンスでも、きっと新たな魅力を披露してくれることだろう。  

レポート2015/10/13

「白鳥の湖」キャラクターダンス振付指導者
 マルガリータ・ルアノ インタビュー

 2016年2月、東京バレエ団が新制作で上演する『白鳥の湖』が、動き始めている。8月上旬に行われたのは、第3幕のキャラクターダンスのリハーサル。モスクワから指導のために来日したマルガリータ・ルアノ氏に、話を聞いた。

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「東京バレエ団のダンサーたちは、この1週間で覚えるべきことをほぼすべて覚えてくれました。スペイン、ハンガリー、ナポリと、キャラクターダンスにはいろいろな踊りがあるけれど、もっとも重要な課題は、そのキャラクターの特徴的な踊り方、マナーを摑むこと。皆、いろいろと試み、努力しています」と語るルアノ氏。ソリストたちの稽古場を覗くと、肘の角度、重心の位置、踵の動きなど、キャラクターダンス独特のポジションが、ダンサーたちの大きな課題となっていた。

「リハーサルの途中ですから、踊りきれなくて当然です。しかし、例えば『パキータ』にはポーランドやスペインの要素が入っていますし、女性ダンサーの独特のポーズが印象的な『ライモンダ』も。キャラクターダンスの経験は、クラシックを踊る時にも必ず役立つはずです」

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 モスクワ音楽劇場でダンサーとして活躍、キャラクターダンスを中心に踊り、なかでも『白鳥の湖』のスペインの踊りで高い評価を得てきたルアノ氏。同劇場の『白鳥の湖』はもちろん、1953年に初演されたブルメイステルの版だ。

「モスクワで、スペイン人の両親のもとに生まれ、10歳でモスクワ舞踊学校に入学、卒業後はモスクワ音楽劇場バレエで長く踊ってきました。私が入団した時、すでにブルメイステルは亡くなっていましたが、彼と一緒に仕事をしていた人たちから直接学ぶことができました。スペイン、ハンガリー、マズルカ、3羽の白鳥......と、22年にわたって『白鳥の湖』のあらゆる役柄を踊っています。オデットは踊っていないけれど(笑)。

 ブルメイステル版は、数あるバージョンのなかでもっとも優れているものの一つ。ドラマトゥルギーの点で、非常に面白い作品となっています。なかでも第3幕はとても重要で、キャラクターダンスをいかに踊ることができるかが、全体を左右します」

 ブルメイステル版の第3幕では、次々と登場する各国の踊り手たちすべてが悪魔ロットバルトの手下。彼らの踊りは、ジークフリート王子を陥れるために仕組まれたもの、という設定だ。稽古場ではしばしば「王子に向けて踊って」との指示がとぶ。「惑わされる王子も、踊り手のほうへと寄っていったり、"あ、違った!"と戻ってきたりと、戸惑いを見せるんですよ」

 この公演は、8月に東京バレエ団芸術監督に就任した斎藤友佳理にとって最初の大プロジェクトでもある。

「彼女は、大好きなこの作品がずっと上演され続けることを強く望んでいます。その夢を叶えるために『ぜひ助けてほしい』と指導を請われた時、私は喜んでお受けしました。

 私たちがこの作品を愛してきたように、皆さんにもこの作品を愛してもらいたいのです。その愛は、東京バレエ団の皆さんがこの舞台を創り上げたその瞬間に生まれるもので、その愛があってこそ、作品はより長く生き続けることができるのです」

 

取材・文:加藤智子

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 撮影:細野晋司

レポート2015/10/07

「ドリームタイム」振付指導者エルケ・シェパース インタビュー

 8月上旬、東京バレエ団のスタジオでは、12月のシルヴィ・ギエム〈ライフ・イン・プログレス〉及びシルヴィ・ギエム ファイナルで上演予定のイリ・キリアン振付「ドリームタイム」のリハーサルが行われた。9日間にわたってリハーサルを指導したエルケ・シェパース氏に、東京バレエ団での指導やキリアン作品の魅力について話を聞いた。


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 「とても若いな、と思いました」と東京バレエ団の第一印象を語るシェパース氏。「でも、しばらくして気づいたわ。現役のダンサーって、こんなふうに若いものだったと!  同時に、自分の果たすべき責任を強く感じるのですが、皆、やる気、向上心、新しいものに対する好奇心が強く、とてもやりやすい。素晴らしいカンパニーですね」

 東京バレエ団での「ドリームタイム」初演は、2000年の〈オール・キリアン・プロ〉で、以来15年振りの上演となる。リハーサルに参加した十数人の選抜メンバーの中には、キリアン作品初挑戦のダンサーも。皆、それぞれの課題を抱えながら、キリアンの振付に意欲的に取り組んでいた。


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 「どこのカンパニーに行っても、皆、キリアンの踊りが好きだから、ダンサーたちがやる気を見せてくれるかどうかなんて心配は不要。その点で、私はとてもラッキーです。でも、デュエットでは多くのダンサーが苦労するわ。クラシックとは全く違ったパートナーリングの技術が必要なので、ここは、多くの時間を費やさなければ。大切なのは、動きの調和。もちろん音楽を聴くことも大切ですが、ダンサーには、互いの存在をよく"聴く"ことが求められます」

キリアン作品における男女のデュエットの素晴らしさは格別なもの。「ドリームタイム」では男女が二人、三人となって絡み、空気の流れに沿うような流麗な動きで、圧倒的な美しさを放つ。まさに"ドリームタイム"、夢の時だ。

 「ええ、夢のような場面の連続です。途切れ目のない、継ぎ目のない絵を次々と見せられるよう。明確な筋書きはないけれど、たとえば、どうしてもつきまとってくる過去の経験や記憶──。そういったものが、随所に表現されていきます。『ドリームタイム』における"夢"とは、必ずしも眠っている間に見る夢ではなく、白昼夢、人生観に結びついたものなのです」

 創作は1983年。キリアンは心から敬愛する作曲家、武満徹に音楽を委嘱、二人はインスピレーションを得るため、オーストラリア北部海岸のグレート島に、先住民族アボリジニの祭典を取材した。


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 「音楽、踊りにアボリジニの要素が具体的に反映されているわけではないけれど、アボリジニの思想から、作品の根底にあるもっとも重要なコンセプトを得ています。当時の武満は、まさに、夢について興味を抱いていた時期だったそうで、『ドリームタイム』はそこにジャストミートして生まれた、特別な作品なのです。

 80年代前半の、キリアンの比較的若い時代の作品の特徴としていえるのは、とても叙情的であるということ。かつ、とても音楽的。武満の音楽は、決して派手ではないけれど、とても印象深く、強く訴えかけてくるものがあり、素晴らしいコラボレーションとなっています」

取材・文:加藤智子

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撮影:長谷川清徳

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