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HOPE JAPAN 20222022/07/14

〈HOPE JAPAN 2022〉全国ツアー ダンサーQ&Aブログリレー Vol.2~苫小牧公演~

〈HOPE JAPAN 2022〉全国ツアーの出演ダンサーたちがQ&A方式で質問に答えるブログリレー。第2回は北海道出身のセカンドソリスト、長谷川琴音(はせがわ ことね)。今回のツアーでは、「パキータ」、「ギリシャの踊り」に出演します。

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photo: Nobuhiko Hikiji

Q1. 出身地
北海道 札幌市

Q2. バレエを始めたきっかけ
幼稚園の友達に誘われて

Q3. 印象に残っている舞台
「ラ・シルフィード」の第2幕のコール・ド・バレエです (2020年3月東京文化会館にて上演) 。それまではとにかく必死で気持ちの余裕がまったくなかったのですが、初めてコール・ド・バレエで楽しいと思えた作品でした。

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2020年「ラ・シルフィード」の舞台より Photo: Kiyonori Hasegawa 

Q4. 北海道にまつわる思い出
たくさんありますが、小学生の頃に大通り公園で毎年開催される"よさこいソーラン祭り"に出たことが印象に残っています。冬は"雪まつり"が開催されていますし、大通り公園に来ると「帰ってきたなー」としみじみ思います。

Q5. 今回の北海道公演中にやりたいこと
新型コロナウイルス感染症が流行し始めてからはなかなか帰って来られなかったので、短い時間でも友達や家族に会いたいです。食べたいものもたくさんありますが、セイコーマートで作っているカツ丼が大好きだったので、マストで買いたいなと思っています(笑)。

Q6.〈HOPE JAPAN 2022〉で注目してほしいところ
私は札幌公演で「ギリシャの踊り」のパ・ド・セットと、「パキータ」の第2ヴァリエーションを踊ります。どちらも出番は一瞬ですが、その一瞬に全力を注げるよう頑張ります!

Q7. 北海道のお客さまへのメッセージ
入団して以来初めての地元での公演なので、今からとても楽しみです。日本では東京バレエ団しかできないベジャール作品をぜひ札幌の皆さんに楽しんでいただき、夏の素敵な思い出のひとつとして心に残る舞台になればと思います。

Q8. 次回のブログリレーに登場する瓜生遥花へのメッセージ
きっと私よりも上手に札幌の魅力を伝えてくれると思います......! よろしく!


長谷川琴音が出演する苫小牧公演は7/27(水)
苫小牧市民会館にてお待ちしています!










HOPE JAPAN 20222022/07/13

〈HOPE JAPAN 2022〉全国ツアー ダンサーQ&Aブログリレー Vol.1~高崎公演~

7/25(月)に幕を開ける東京バレエ団〈HOPE JAPAN 2022〉全国ツアーでは、8都市をめぐりベジャールの名作「ボレロ」を中心としたプログラムをお届けします。
本日より公演地ごとに出演ダンサーがQ&Aに答え、次のダンサーにバトンを渡す「ダンサーQ&Aブログリレー」を開始します!
トップバッターは群馬県出身のソリスト、金子仁美(かねこ ひとみ)。今回のツアーでは「ギリシャの踊り」、「パキータ」に出演します。

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Photo:Nobuhiko Hikiji


Q1.〈HOPE JAPAN 2021〉前橋公演の思い出
コロナ禍で色んな不安もある中、バレエ団の公演を地元でできることが本当に嬉しかったです。たくさんのお客様が劇場に足を運んでくださり感動を分かち合えたことが何よりも幸せで、忘れられない舞台となりました。

Q2. 今回の高崎公演中にやりたいこと
地元民なのに群馬名物に興奮するんですよね。去年は上毛かるた(群馬にしかないかるた)のガチャガチャを見つけて大興奮で回しました(笑)。(同じく群馬出身の生方)隆之介もちょっと興奮してましたよ! 特に"ぐんまちゃん"は大好きなキャラクターなので、今回も何かグッズをゲットしたいなと思います。

Q3. ツアーの過ごし方
特にルーティンはありません。普段と同じように過ごすことを心がけています。考え過ぎるとホテルのベッドで寝ることもストレスになってきてしまうので......
時間に余裕があれば美味しいご当地のグルメを頂いてパワーをつけます。

Q4. 〈HOPE JAPAN 2022〉で注目してほしいところ
私は今回高崎での舞台では、「ギリシャの踊り」で7人の女性と、「パキータ」で第1ヴァリエーションを踊る予定です。それぞれに難しさもありますが、音楽を聴くだけで勝手に体が動きますし、踊り終わった後に清々しい気持ちになる作品です。それからやはり「ボレロ」には注目していただきたいですね。女性ダンサーにとって「ボレロ」は憧れの作品。願いが叶うなら一度でも「ボレロ」に出たいです。赤い円卓の上で輝くメロディ、周りでそれを引き立てるリズム、ライブでしか味わえない感動をぜひ!

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 昨年の〈HOPE JAPAN 2021〉より Photo:Shoko Matsuhashi


Q5. 群馬県のお客さまへのメッセージ
今年も最高気温を真っ先に観測した暑すぎる群馬県ですが、東京バレエ団がさらに熱いパワーをお客様にお届けいたします。くれぐれも熱中症にお気をつけください!

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「くるみ割り人形」より Photo:Kiyonori Hesegawa


 Q6. 次回のブログリレーに登場する北海道出身の長谷川琴音へのメッセージ
琴音はいつも明るく元気で、飾らない天然なキャラが魅力です。彼女の長い手足としなる脚からは目が離せません!
こっちゃん、札幌の事いろいろ教えてください!


金子仁美が出演する高崎公演は7/25(月)
高崎芸術劇場でお待ちしております!

レポート2022/07/11

開幕直前! ――〈ベジャール・ガラ〉リハ―サル・レポート

〈ベジャール・ガラ〉公演開幕まであと10日余りとなりました。東京バレエ団のスタジオでは4作品のリハーサルが展開中。うだるような暑さの中で佳境を迎えた稽古の様子を、臨場感たっぷりの写真とともにお届けします。

元モーリス・ベジャール・バレエ団の小林十市氏を指導者として招き、9年ぶりの上演に取り組む『火の鳥』。パルチザンを率いるリーダー・火の鳥の闘争、その不屈の精神を力強く描くバレエですが、タイトルロールのソロのリハーサルは、まさに"熱血指導"の様相。この役に初挑戦する池本祥真、大塚卓は、次々と要求される高度な課題に取り組んでいます。

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小林十市氏の指導を受ける池本祥真(左)、大塚卓(右)


小林氏にとって『火の鳥』は、モーリス・ベジャール・バレエ団時代の代表的レパートリーの一つ。そんな彼も「すごく緊張した」という最初のソロは、激しい動きが隙間なく連なり、テクニック的にも体力的にもずば抜けてハードだそう。本公演の初日、2日目を踊る池本も、3日目を踊る大塚も、一度通すだけで立ち上がれなくなるほどに体力を消耗。その後、続きの踊りへと促す小林氏の合図に、池本が大きな息をついて気合いを入れる場面も! 

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池本祥真

しばしば立ち上がり、身体の使い方や呼吸の仕方について事細かに実演する小林氏。池本、大塚ならではの火の鳥を引き出すべく、熱いリハーサルが続きます。

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フェニックスを演じる柄本弾


いっぽう、インドの伝統音楽で踊られる『バクチ』は、ベジャールが1968年に創作した3つのパートからなる作品。そのうち、東京バレエ団が2000年にレパートリー化した『バクチIII』は、破壊と再生の神シヴァとその妻シャクティの踊りで、バレエ団初演時の主役ダンサーに、芸術監督の斎藤友佳理とバレエ・スタッフの木村和夫も名を連ねていました。今回の上演に向けてのリハーサルはこの二人が中心になって進められていますが、1968 年の初演を踊り、2000年には東京バレエ団のリハーサルを指導したメイナ・ギールグッド氏がオンラインで指導、さらに小林十市氏からも助言を受けるという万全の体制がとられています。

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斎藤友佳理から指導を受ける伝田陽美


東京バレエ団が『バクチIII』に取り組むのは、2015年のニューヨークでのユース・アメリカ・グランプリのガラ以来7年ぶりのこと。今回は上野水香と柄本弾、伝田陽美と宮川新大の2組が主役を踊りますが、ベジャール自身の指導を受けた経験を持つ上野以外は皆、今回が初役。クラシックの作品にはまず登場しない、インドの神々の像が現れたかのような独特のポーズが次々と繰り出されるだけに、リハーサルは試行錯誤の連続。とくに、お互いの手脚を複雑に絡み合わせてのリフトは未知の世界への挑戦! ベジャールによるインドの神々のイメージを追求する旅は、さらに続きます。

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宮川新大


『ロミオとジュリエット』のパ・ド・ドゥは、昨年、東京バレエ団での38年ぶりの復活上演が実現した作品。1966年に創られたベジャールの傑作からの抜粋で、ベルリオーズの音楽にのせて、敵対する二つの家の若者たちが愛のデュエットを展開します。数あるベジャール作品の中でも、クラシックにより近い美しい動きと、活き活きとした感情表現が大きな魅力に。初日と2日目を踊るのは、昨年に引き続いて配役された秋山瑛と大塚卓、3日目は、やはり昨年本作を経験している足立が、初挑戦の樋口と組んで登場します。

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足立真里亜、大塚卓


指導にあたるのはバレエ・ミストレスの佐野志織。このパ・ド・ドゥでは、憎み合い、戦う男たちがコール・ド・バレエとして登場しますが、佐野はその指導でも大活躍、彼らの登場により、ベジャールがこの作品にこめた平和への強い思いが浮き彫りになっていきます。

別のスタジオでは、昨年の全国ツアーでも上演した『ギリシャの踊り』のリハーサルも進行中。この作品は、昨年の〈HOPE JAPAN 2021〉に引き続き、小林十市氏が指導を担当。毎日、ダンサーたちの前に立ち、熱い指導を重ねています。

きょうもまた、東京バレエ団のスタジオはフル稼働。ダンサーたちは、それぞれの作品の世界をさらに深めるべく、稽古を重ねています。色とりどりのベジャールの傑作を集めた〈ベジャール・ガラ〉は、7月22日(金)開幕です。どうぞお楽しみに!

Photos Shoko Matsuhashi

東京バレエ団〈ベジャール・ガラ〉
7月22日(金)~24日(日)
会場:東京文化会館

■公演の詳細はこちら
■チケットのご予約はこちら

ロングインタビュー2022/06/07

「ドン・キホーテ」初役でのぞむキトリに向けて ――涌田美紀 ロングインタビュー

今回はまもなく開幕する「ドン・キホーテ」で、本公演が全幕のタイトルロールデビューとなることが決まった涌田美紀(東京バレエ団 ソリスト)が登場。初役に向けた思いやリハーサルの様子などを語りました。ぜひご一読ください!

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涌田美紀(東京バレエ団 ソリスト)


――キトリ役はこれまでにも経験されていますね。
涌田美紀 2020年の秋、子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』の学校公演で初めて踊りました。学校公演のヴァージョンは通常版の『ドン・キホーテの夢』よりさらに簡潔で、上演時間もより短めなのですが、期間中に何度も出番があるので、記録映像で自分の演技を確認しながら、日々工夫していくことができます。これはとても勉強になりました。自分の映像を観るのは本当は恥ずかしくていやなのですが(笑)。

【トリミング済・解像度そのまま】20201113_1130ma_Don_Quixoyesdream_1010_photo_Shoko Matsuhashi.jpgのサムネイル画像
「ドン・キホーテの夢」キトリ役
Photo:Shoko Matsuhashi


――新たな気付きはありましたか。
涌田 表現すること、物語を伝えることの難しさ、大切さがよくわかりました。動きが小さいと伝わりにくくなるのはもちろんですが、全部が大きすぎても伝わらない。メリハリをつけることが重要だということを実感しました。

――初めての全幕版キトリ。涌田さんにとっては初の全幕主演作品となります。
涌田 全幕の主役を踊ってみたいという気持ちはありましたが、まさか本当にこんなチャンスをもらえるなんて思ってもいませんでした。とても驚きましたし、嬉しくも思います。

――振付家のワシーリエフ氏が、涌田さんの舞台映像を見て「彼女に全幕を踊らせるべき」とおっしゃったそうですね。
涌田 光栄なことですが、同時に、「『5番が入っていない』『音の取り方が違う』と私が怒られたのよ」と友佳理さん(斎藤友佳理芸術監督)に言われてしまいまして......。もちろん、改善します!

――いまは斎藤芸術監督の特訓が続いています。
涌田 細かく丁寧、それでいてとても熱い特訓です。本当にありがたく思います。キトリとして、「客席の2,000人の視線を釘付けにして!」「あなたの中にある熱いものを全部出して!!」「もっと! もっと!!」と日々注意を受けていますが、まだまだ足りません。

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いままでの私の踊りは、その時はその時で必死に取り組んでいたのだけれど、どこか無難におさまってしまうところがあったと思います。テクニックに捉われすぎていたのかもしれません。でも主人公として一番大切なことは表現、物語を伝えること。テクニックのことを考えなくてもしっかりとした表現ができるようにすることが大切だと思うようになりました。


――ご自身で変化を感じていますか?
涌田 友佳理さんのアドバイス通りに踊ると、周りの皆に「踊りが大きくなったね」と言われます。友佳理さんの教えはとてもよくわかるし、すごくよく響きます。プリセツカヤやマクシーモワはこんなふうに踊っていたんだと実演してくれることも。昔の優れたダンサーたちの踊りはよく映像で見ますが、それはもはや振りとかテクニックとかではなく、ありのままの存在感の凄さ。簡単に真似できることではありませんが、とても勉強になります。

――プリンシパルの秋元康臣さんとパートナーを組むのも初めてですね。
涌田 のびのびと踊らせてくれて、私自身大きくなっているような感じさえします。彼のバジルは爽やかで伸びやかで、力みのない踊りが魅力。恋人のキトリ役としては、大人っぽく、そして気の強さを感じさせつつ、バジルが大好きであることを見せていきたいです。身長が低いので、小さくまとまってしまうことのないよう、いろいろと考えながら役作りをしています。

――全幕版で初めて挑戦する場面もたくさんありますね。
涌田 中でも第1幕の広場からジプシーの野営地への場面転換の際に幕の前でバジルと踊る"ロマンス"がとても素敵なんです。これはワシーリエフ版ならではの場面だそうですが、こうした踊りをしっとりと魅力的に見せることができたらと思っています。

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私は小さい頃から『ドン・キホーテ』の音楽が大好きで、ずっと繰り返しCDを聴いていました。「こんな音楽で踊れたら本当に楽しいだろうな」と思っていた曲がいくつもあります。いま、その時の気持ちが蘇ってきて、「夢が叶うんだ」とウルッとしてしまうことも(笑)。本番では、私らしい、私にしかできないキトリを演じることができたらと思っています。さらに、夏には子どものためのバレエ『ドン・キホーテの夢』全国ツアーでもキトリを演じますので、こちらもどうぞ楽しんでいただけたらと思っています。


取材・文:加藤智子(フリーライター)



★・・・涌田主演公演日

●東京バレエ団「ドン・キホーテ」
6月23日(木) 19:00 
6月24日(金) 19:00 ★
6月25日(土) 14:00
6月26日(日) 14:00
会場:東京文化会館(上野)


●東京バレエ団 子どものためのバレエ「ドン・キホーテの夢」
8月20日(土) 11:30
8月20日(土) 15:00 ★
8月21日(日) 11:30
8月21日(日) 15:00
会場:めぐろパーシモンホール(目黒)

レポート2022/06/01

東京バレエ団 団長 故飯田宗孝 お別れの会

季節外れの暑さに見舞われた5月29日(日)、東京バレエ団スタジオにて、今月7日に天国へと旅立った東京バレエ団団長、故飯田宗孝のお別れの会を執り行いました。会場となったAスタジオは、飯田が日々、レッスンやリハーサルで多くの時間を過ごした思い出の場所。舞台スタッフの協力により、中央にベジャール振付『くるみ割り人形』マジックキューピー役を演じた時の飯田の写真を据えた大きな祭壇を設え、バレエ界関係者、バレエ団OBOG、スタッフの皆さんをお迎えし、現役の団員たちを含むと200人以上が、生前の飯田を偲ぶ会となりました。

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参列者全員での黙祷ののち、お別れの会実行委員長を務める公益財団法人日本舞台芸術振興会専務理事の髙橋典夫が、「飯田は3月の末までずっとここでクラスを教えていました。ダンサーたちにとっても、飯田の死は大きなショックだったでしょう。スタジオでこうしてたくさんの方にお集まりいただいて、飯田は本当に喜んでいるのではないかと思います」と挨拶。

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公益財団法人日本舞台芸術振興会専務理事 髙橋典夫


その後、前方のスクリーンに写し出されたのは、飯田の舞台の映像やオフステージ、スタジオでの写真などをおさめた追悼映像。一昨年秋の東京バレエ団「M」に出演されたピアニスト、菊池洋子さんの生演奏が、皆を、それぞれの胸の中にある飯田の思い出にひたるひとときへといざないました。

上映された追悼映像

その後、お別れの言葉を述べたのは東京バレエ団芸術監督の斎藤友佳理。「人として一番大切な優しさ、愛情を学びました」と、芸術監督、団長として力を尽くした飯田にリスペクトを捧げました。

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東京バレエ団芸術監督 斎藤友佳理

OBOG代表として登場したのは、1983年から2004年まで芸術監督を務めた溝下司朗さん。「寂しがりやのキューピーに一言、言ってあげてください」と、彼の音頭で、全員で「キューピーさん!」と天国の飯田に呼びかける場面も。

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OB・OG代表 溝下司朗さん

また団員代表の柄本弾が声を震わせて語った飯田との思い出話も、多くの人の涙を誘いました。

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団員代表 柄本弾

国内外の関係者たちからも数多くのメッセージが寄せられ、東京バレエ団バレエ・スタッフの木村和夫が、その一部を紹介。シルヴィ・ギエムさん、ウラジーミル・マラーホフさん、シュツットガルト・バレエ団のタマシュ・デートリッヒ芸術監督、ミラノ・スカラ座バレエ団マニュエル・ルグリ芸術監督、指揮者のベンジャミン・ポープさんなどから届いたメッセージを読み上げました。

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バレエ・スタッフ 木村和夫

締めくくりにご挨拶されたのは、喪主を務められた兄の飯田晴久さん。子供の頃の話や、闘病中にダンサーたちに会いたがっていたことを明かし、感謝の言葉とともに「皆さんが活躍することが本人にとって嬉しいこと。皆さんで東京バレエ団を盛り上げていってもらいたい」と述べられました。

時折声を震わせながら司会進行役を務めた東京バレエ団ファーストアーティスト後藤健太朗をはじめ、多くの団員たちに見送られた飯田。閉式後は一般の方々のための献花の時間も設け、東京バレエ団ファンの皆さまにも、飯田の数々の功績を振り返り、偲ぶひとときを過ごしていただくことができました。


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飯田にゆかりのある舞台衣裳を展示
左からベジャールの「くるみ割り人形」マジック・キューピー、「ザ・カブキ」定九郎、「かぐや姫」翁


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在りし日の飯田の舞台人、指導者としての姿をパネルで紹介


Photos:Mizuho Hasegawa


レポート2022/05/18

【現地レポート】上野の森バレエホリデイ2022
4月29日から5月1日、〈上野の森バレエホリデイ〉が三年ぶりにリアルで開催されました。東京バレエ団のダンサーたちは、クランコ版「ロミオとジュリエット」バレエ団初演に取り組むとともにさまざまなイベントに参加、3日間の〈ホリデイ〉を大いに盛り上げました。

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Photo:Mizuho Hasegawa

コロナ禍の中で初めて迎えた行動制限のないゴールデンウィーク、その初日となった4月29日は、あいにくのお天気。寒空のもとでのスタートとなった〈ホリデイ〉でしたが、会場となった東京文化会館には、大ホールホワイエのバレエマルシェや小ホールホワイエの手作りワークショップなどに多くの人たちが集う、おなじみの風景が戻ってきました。

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Photo:Mizuho Hasegawa

多彩なトークやパフォーマンスのプログラムが組まれた小ホールのイベントは、恒例のはじめてのバレエ・レッスンからスタート。正午すぎからは8バレエ団ダンサーズトーク&取材映像上映会が開催されました。井上バレエ団、小林紀子バレエ・シアター、貞松・浜田バレエ団、スターダンサーズ・バレエ団、東京シティ・バレエ団、東京バレエ団、法村友井バレエ団、牧阿佐美バレヱ団のダンサーたち8名が登場し、各バレエ団のスタジオで事前取材された映像とともにトークを展開するというレアな企画です。東京バレエ団からはプリンシパルの上野水香が参加。斎藤友佳理芸術監督、プリンシパルをはじめとするダンサーたちが自分たちのバレエ団の特色についてコメントする取材映像とともにトークを展開、ベジャール作品をはじめとする多彩なレパートリー、国内外での公演回数の多さなど、東京バレエ団の魅力を紹介しました。終盤では、ダンサーからダンサーへの質問も飛び出し、カンパニーの枠を超えた楽しい交流の場に。

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写真左から荒井成也さん(井上バレエ団)、植田穂乃香さん(東京シティ・バレエ団)、塩谷綾菜さん(スターダンサーズ・バレエ団)、上野水香(東京バレエ団)、真野琴絵さん(小林紀子バレエ・シアター)、上山榛名さん(貞松・浜田バレエ団)、法村圭緒さん(法村友井バレエ団)、水井駿介さん(牧阿佐美バレヱ団)。
Photo:バレエチャンネル


屋外特設ステージでもさまざまな催しが登場。初日はOSK日本歌劇団の団員による「ラインダンス」体験レッスン、東京シティ・バレエ団のダンサーたちがモデルを務めるバレリーナを描こうが行われました。OSK団員の皆さんはその後小ホールに登場し華やかな歌と踊りを披露、客席はたくさんの明るい笑顔と手拍子に包まれました。

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バレリーナを描こう
Photo:Mizuho Hasegawa

大ホールで連日開催された東京バレエ団公演「ロミオとジュリエット」も、初日の沖香菜子、柄本弾を皮切りに、2日目の足立真里亜、秋元康臣、3日目の秋山 瑛、池本祥真の3組の主役カップルが、見事にクランコのドラマの世界を踊り切り、喝采を浴びていました。

お天気に恵まれて過ごしやすい日となった2日目。小ホールのイベントは、はじめてクラシック〜バレエ音楽の誘い〜で開始。木管五重奏によるバレエ音楽とダンサーの踊りで、小さな子供たちがバレエ音楽を体感しました。また大ホールでは東京バレエ団恒例の公開レッスンを実施。午後の「ロミオとジュリエット」公演にのぞむダンサーたちのレッスンを、多くのお客さまが客席から見学しました。

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公開レッスン
Photo:Mizuho Hasegawa

午後の小ホールは「ロミオとジュリエット」名版ダンサー・クロストークでスタート。マクミラン「ロミオとジュリエット」主演ダンサーである元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団プリンシパルの佐久間奈緒さん、厚地康雄さんが登場し、前日にクランコ版「ロミオとジュリエット」バレエ団初演でロミオ役を踊ったばかりの東京バレエ団プリンシパル、柄本弾とともに、「ロミジュリ」の各ヴァージョンの魅力や特色、感動する場面などを、舞台映像を交えながら語り合いました。イベント終了直後には多くの来場者が大ホールへと直行。3人のトークでより深く、より感動的な「ロミオとジュリエット」を体感されたのではないでしょうか。

その頃小ホールで開催された【スペシャル・コラボイベント】TVアニメ「ダンス・ダンス・ダンスール」声優トーク×ダンス&クリエーション2022では、「ダンス・ダンス・ダンスール」村尾潤平役の山下大輝さん、同じく森流鶯役の内山昂輝さんが登場。オープニングのトークの後、ダンス&クリエーションへ突入、山下さん、内山さんとともにダンサーたちのオリジナル作品を鑑賞、その後のアフタートークでは、バレエの魅力について二人か感じたことを語り合っていました。さらに後半では村尾潤平のモーションアクターをつとめた井福俊太郎も登場、ダブル潤平でのトークが実現し、会場を湧かせました。

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写真左から村尾潤平役の山下大輝さん、井福俊太郎、森流鶯役の内山昂輝さん
Photo:Shoko Matsuhashi

再び雨が降り出した5月1日。〈上野の森バレエホリデイ 2022〉最終日も、多彩なイベントが目白押し。小ホールでは午前中からバレエウェア・コレクションで盛り上がりを見せました。大ホールでは2日目と同様東京バレエ団による公開レッスンを実施、「ロミオとジュリエット」3日目の公演への期待を胸に、多くのお客さまがダンサーたちのレッスンに見入っていました。
そして午後、さらに盛り上がりを見せたのが、小ホールでの【ダンスマガジンプレゼンツ】クロストーク 上野水香×町田樹。フィギュアスケート日本代表として活躍した町田さんと上野のトークは、2020年、2021年と二年続けてオンラインで実施されましたが、ここでついにリアルで実現! 客席は開演前からワクワク感と熱気に包まれていました。登場するやいなや、上野に大きな花束を差し出し、芸術選奨文部科学大臣賞受賞のお祝いの言葉を述べた町田さん。会場はパッと明るいムードに包まれ、その後も町田さんのリードで、表現のこと、伝えること、作品理解について、さらには未来のことについてなど、さまざまな話題が飛び出しました。自分の身体ではなく、他者に振付けて表現することに取り組んでいる町田さんですが、いまもバレエのレッスンに真剣に向き合っているという彼に、上野が「今度はバレエの舞台に挑戦を」とすすめて会場を湧かせる場面も!

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写真左から町田樹さん、上野水香
Photo:Mizuho Hasegawa

この日も多くのお客さまが東京バレエ団のクランコ版「ロミオとジュリエット」を楽しまれていましたが、バレエ公演終了後は、多くの方が舞台の感動の余韻そのままに、小ホールでのダンス&クリエーション2022に向かいました。
ダンサーたちが創作したオリジナル作品を上演するこの企画は、2017年の〈バレエホリデイ〉スタート時から実施されてきましたが、小ホールの舞台での単独公演は初めての試み。どんな作品との出会いがあるか、期待が高まる中での開演となりました。
トップバッターは、東京シティ・バレエ団 草間華奈さん振付の「蓮華─renge─」。ヨハン・セバスティアン・バッハの無伴奏チェロ組曲の調べとともに繰り広げられる、男女6人による、しっとりとした、音楽性あふれる作品でした。

続く2作品目からは、東京バレエ団のダンサーたちの作品が続きます。
ブラウリオ・アルバレスは、アグスティン・ララの曲で前川琴音と山仁尚に振付けた初々しいデュエット「Farolito」を披露。バレエ・スタッフの木村和夫は、2017年の〈バレエホリデイ〉で発表した「Humming Bird」を上演。当初から若いダンサーたちが踊り継いできたデュエットですが、今回も研究生の池内絢音と岸本花がみずみずしい踊りで魅せました。

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「Humming Bird」
Photo:Shoko Matsuhashi

金子仁美はモーツァルトのトルコ行進曲に振付けた、女性3人のコミカルで可愛らしい作品「Daydream」を上演。ショーウインドウから飛び出した美しいマネキンに扮する加藤くるみ、髙浦由美子、上田実歩の3人によるキャッチーな人形振りが魅力的。
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「Daydream」
Photo:Shoko Matsuhashi

岡崎隼也は3月の〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project〉で発表した、レディオヘッドの音楽による「somewhere but not here.」を、新たに映像付きで上演。舞台上で踊られるのは工桃子と富田翔子のデュエットですが、やがて映像の中の二人の男性ダンサーたちのダンスと交わり、えもいわれぬ独特の世界観を打ち出します。
ブラウリオ・アルバレスはもう1作、「風薫る」を上演。長谷川琴音、鈴木香厘、居川愛梨がヨハン・セバスティアン・バッハのフルートと通奏低音のためのソナタにのせて展開する小品は、ヒマワリ、ツバキ、ブーゲンビリアの花をイメージして振付けたというチャーミングな踊り。

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「風薫る」
Photo:Shoko Matsuhashi

最後の作品は、岡崎隼也の「Connect」。2017年の〈バレエホリデイ〉屋外特設ステージで上演された作品「Scramble」の続編として、振付を大幅に改訂して上演、自身の振付の強みをより明確に打ち出して、会場全体を楽しませました。

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「Scramble」
Photo:Shoko Matsuhashi


こうして〈上野の森バレエホリデイ 2022〉はフィナーレへ! 多くのお客さまが、東京バレエ団をはじめとするダンサーたち、他ジャンルのアーティストたちによる多彩なイベントを存分に楽しんだ3日間となりました!


取材・文:加藤智子(フリーライター)

レポート2022/04/05

〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project〉公演レポート

去る3月13日に東京文化会館で開催したTHE TOKYO BALLET Choreographic Project〉。このたび、本プロジェクトを初回から取材していただいている加藤智子さん(フリーライター)に本番の様子をレポートしていただきました。ぜひご一読ください!

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カーテンコールより


313日、東京文化会館にて〈THE TOKYO BALLET Choreographic Project〉公演が開催された。ダンサーたちが仲間とともに作品を創り、発表する機会を設けるべく、2017年にスタートした本プロジェクト。今年もそのハイライトともいえる作品上演の場で、6人の振付者が作品を発表した。

冒頭、ステージで挨拶した斎藤友佳理芸術監督は、本プロジェクトの趣旨についてあらためて説明、「常に受け身の存在であるダンサーたちが自ら作品を創ることによって、振付者、ダンサー双方の感性、想像力、表現力を刺激し合い、成長していってほしい」と思いを明かした。当初は東京バレエ団の稽古場で〈スタジオ・パフォーマンス〉として開催する計画だったが、今年に入って日時を変更、シュツットガルト・バレエ団日本公演(昨年末に中止が発表された)のために確保していた東京文化会館大ホールで、密を避けて開催することに。このステージでの上演については、「戸惑いもあったけれど、これはまたとないチャンス。いまダンサーたちは、この舞台で踊れることに胸を弾ませている」と斎藤。スタジオに観客を迎え入れての上演と、東京文化会館、それも大ホールでの上演では、スケール感も雰囲気も全く異なる。振付プランを変更した振付者もいた。それぞれに期待や不安を抱えながらのクリエーションとなっただろう。

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ゲネプロ中のブラウリオ・アルバレス photo JPD 

全7作品による本公演。その幕を切ったのは、プロジェクトのスタート時から多くのダンサーたちを巻き込み、数々の作品を発表してきた岡崎隼也の『somewhere but not here.』だ。レディオヘッドが2000年にリリースした楽曲、「キッドA」に想を得て振付けた2組の男女(工桃子、富田翔子、鳥海創、昂師吏功)のための小品は、当初、スタジオでの上演のためのパ・ド・ドゥとして構想を練っていた。終演後のトークで明かしたのは、「小さなスペースに集中してもらえるよう、テレビの中で起こっていることを観るような作品に」という見せ方のアイデア。舞台スタッフの力を借りながら、楽曲のメッセージに寄り添ったユニークな世界を打ち出した。

続く井福俊太郎の『After Show』は、舞台の本番を終えたダンサーの、日常の思い、葛藤を作品に。井福自身と玉川貴博、中沢恵理子のダンスに加え、蝶ネクタイ着用で登場の中嶋智哉が、ピアノの鍵盤を叩き、高笑い。不安や焦りの入り混じった、表現者の複雑な胸の内を形にしたような作品だが、井福は「ダンサーにとって、一つの舞台が終わり、次にまた始まるまでの時間というものが、とても貴重で大切だということを再認識しながら創りました」と創作時を振り返った。

バレエ・スタッフの木村和夫は、バレエ・リュスの名作をもとに創作した『バラの精』を上演。バラの香に導かれて夢に落ちる男性(池本祥真)が、女性たち(加藤くるみ、足立真里亜、平木菜子、中島映理子)に囲まれて楽しく過ごすひとときを描く。ステージで上演するのはこれが3作目という木村。アフタートークでは、「音楽と踊りで見せる純粋に楽しんでいただきたいという思いで創った。もう10歳若ければ僕自身が踊りたいくらい」と笑顔を見せた。

二度目の参加となる安井悠馬の作品は、15人の男性ダンサーによる独特の群舞が目を引く『嚇灼』。パワフルな男性の群舞の中で、妖精を思わせる丈の長いチュチュをまとった秋山瑛のいたいけな姿が際立つ。終演後、安井は「例年のこのプロジェクトでもあまり活躍の場がなかったコール・ド男子たちの魅力を引き出し、まとめ上げたいと思った。当初は"怒り"をテーマにしていたけれど、次第に

"怒り"の感情は消えて、男性ダンサーたちの迫力そのものを打ち出せた」と語った。

休憩を挟んでのプログラム後半のスタートは、岡崎隼也の2作目。どう読ませるのかと不思議に思われた『【   】』はつまり、「タイトル未定」という意味合いを含む。音楽はラヴェルの『ボレロ』に、新たに音を重ねてアレンジした独特のサウンド。吊り下げられた5つのランタンの灯りのもとで、柄本弾、伝田陽美、秋山瑛、池本祥真と岡崎の5人によるダンスが、ソロ、デュエットと形を変えながらクライマックスへと突き進む。「光のエネルギー、自分の身体の力を前面に出せる作品を創れたらと取り組んだ」という岡崎だが、これまで彼が創作を重ねて培ってきた多彩な動きが詰まった力作に。カーテンコールでは、岡崎がおどけた雰囲気で深く、深く頭を下げ、ダンサーたちに感謝の意を伝える様子が微笑ましかった。

続く金子仁美は一昨年に続いて2回目の参加、作曲家・清塚信也がTVドラマのために書いた楽曲に振付けた男女のパ・ド・ドゥ『The sun rises』を発表。産科医療の現場を描いたこのドラマ「コウノドリ」を、登場人物と同じ苦しみを持つ身内がいたことで見るようになったという金子だが、「この音楽を毎日、毎日、繰り返し聴いて、いつの日か頭の中に男女のパ・ド・ドゥができていった」という。音楽の美しさを素直に捉えた振付が爽やか。工桃子、樋口祐輝が踊った幸せそうな若い男女が、それぞれに不安、悩みを抱えながらも、進むべき道を見つけて寄り添っていくというストーリーを、温かみあるパ・ド・ドゥに仕立てた。

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ゲネプロ中の金子仁美

最後を飾ったのは、岡崎とともに初回から作品を発表し続け、本プロジェクトの中心人物の一人となっているブラウリオ・アルバレス。マーラーの交響曲第2番「復活」第4楽章と第5楽章の前半に振付けた「Urlicht(原光)」。前半は愛し合う男女のパ・ド・ドゥ(瓜生遥花、岡﨑司)、後半は女性の死から復活へ──。光に満ちた世界と、強烈なオーラを発する未知の存在(伝田陽美)を、ダイナミックな振付で描き出す。この音楽にすっかり魅了されたアルバレス。アフタートークで「今回は『復活』を完成させることができませんでしたが、いずれは全楽章を振付けたい」と意気込むと、会場から大きな拍手が沸き起こった。

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 終演後のアフタートーク

その後のアフタートークでは、緊張気味の金子が司会を担当。その朗らかな声に促され、皆口々に作品に込めた思いや創作への情熱、今後の展望などを語り合った。今回は、創作の仕上げの時期と、金森穣氏による『かぐや姫』第2幕のクリエーションが重なり、金森氏から助言をもらったエピソードも飛び出した。「振付家の心得とか覚悟についてお話しいただいたが、僕にはそういうものが足りないようにも感じた。作品を上演できて嬉しいけれど、手放しには喜べない。もっと一本筋の通ったものを目指さなければ」と話したのは木村和夫。日本を代表する振付家の一人、金森氏からの激励はとても貴重、大きな刺激となったはず。彼らの次回作に、大いに期待したい。なお、観客の投票による「観客賞」に、岡崎隼也の『【   】』が選ばれた。

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観客賞に選ばれた岡崎隼也振付『【   】』

取材・文:加藤智子(フリーライター)


レポート2022/01/01

東京バレエ団ダンサーからの年賀状2022
新年あけましておめでとうございます。

昨年も東京バレエ団にとっては厳しい一年となりましたが、大勢のお客様に支えられ、2021年は65回もの公演を実施することができました。劇場にお越しくださり、熱い拍手を贈ってくださった全ての皆様、ご支援くださった皆様にダンサー、スタッフ一同、心より御礼申し上げます。

2022年の年明けに、ダンサーたちから新年のご挨拶を申し上げます。毎年「クラブ・アッサンブレ」の会員様には、ダンサーの直筆サイン入りの年賀状をお送りしております。下記にて今回のサインを一挙公開いたします。どのダンサーからの年賀状か、楽しみにご覧ください。

本年は4月にクランコ版「ロミオとジュリエット」、そして10月には新制作「眠れる森の美女」と、全幕
の新制作2本を含む挑戦的なラインナップを予定しております。歩みを止めず、進化を続ける東京バレエ団に引き続きあたたかいご声援賜りますよう、謹んでお願い申し上げます。

末筆ではございますが、皆様にとって2022年が良い年となりますよう、一同心よりお祈り申し上げます。

東京バレエ団一同

■団長、芸術監督、バレエミストレス、バレエスタッフ
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■プリンシパル
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■ファーストソリスト
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■ソリスト
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■セカンドソリスト
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ロングインタビュー2021/12/06

「くるみ割り人形」上演に寄せて(その2) ~ 加藤くるみ、故郷で「くるみ」 
本日のブログには幅広い役柄で活躍している加藤くるみ(東京バレエ団セカンドソリスト)が登場! 「縁がある」という作品への想い、そして今回の「くるみ割り人形」全国公演の劇場の中でも、特に思い入れが強いというよこすか芸術劇場について語りました。ぜひご一読ください!

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加藤くるみ(東京バレエ団セカンドソリスト)

──加藤さんは横須賀とご縁があると聞きました。

加藤くるみ 出身は横浜なんです。家の近くのスタジオでバレエを始めましたが、その後スタジオが横須賀に移転、私はその後もずっと横須賀まで通いました。当初の私は小学校低学年。夜遅いときは親に迎えに来てもらっていましたが、行きは家の近くから乗り換えずに行けるバスが出ていたので、それに乗って1時間半、姉と通っていました。1人の時はいつも運転手さんの後ろの高めの席に座りなさいと言われていて、その席で揺られているうちに寝ちゃうんです(笑)。降りる停留所に着くと運転手さんが起こしてくれて、「ハッ!」となって起きる。こんなふうにして、高校を卒業するまで10年間ほど、横須賀のスタジオに通っていました。


──よこすか芸術劇場にはどんな思い出がありますか。

加藤 たくさんあります。スタジオの先生の方針で、発表会では必ずあの大舞台で踊らせてもらっていたので。初舞台もよこすか芸術劇場。『夢見るお人形』という作品で、コッペリアに出てくる人形の一人でした。舞台に向かう時、母に手をひかれて階段を登っていったことをよく覚えています。プロになってから何度かこの劇場で踊ったことがありますが、緊張します。最寄りの汐入駅に着いた段階でもうお腹が痛くなる(笑)。たぶん、発表会での緊張が呼び覚まされるのだと思います。


──プロを目指そうと思うようになったきっかけが、よこすか芸術劇場での体験だったとか。

加藤 11歳の時だったと思いますが、『くるみ割り人形』でクララ(東京バレエ団の舞台ではマーシャ)を踊らせてもらいました。この時、当時東京バレエ団で活躍されていた小出領子さんと後藤晴雄さんが、金平糖の精と王子役で客演してくださいました。舞台での私はもう夢うつつの状態だったのですが、そこで主役二人のグラン・パ・ド・ドゥを見ている時に、「本当のお姫さまと王子さまだ......」と、すっかりクララの気持ちに。この舞台上で、「私、バレリーナになりたい」と思うようになったんです。実は、東京バレエ団に入団後、バレエスタジオの『くるみ割り人形』の公演にゲストとして呼んでもらって、金平糖の精を踊ったことも。よこすか芸術劇場のあの舞台に、憧れの金平糖の精で戻ってくることができて、とても嬉しかったですね。

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11歳のとき。クララを演じる加藤くるみ。王子役が後藤晴雄(元東京バレエ団プリンシパル)

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同じく「くるみ割り人形」の舞台より、後藤晴雄、加藤くるみ、小出領子(元東京バレエ団プリンシパル)


──今回のツアー、横須賀公演ではどんな役柄を演じる予定ですか。

加藤 第2幕のディヴェルティスマン──マーシャを歓迎する各国の踊りの中の、ロシアを踊ります。ロシア独特の大きな頭飾りにAラインの衣裳、男性二人を引き連れた勢いある踊りで、登場の場面からもう元気いっぱいです。2年前の、このヴァージョンが初演された時から踊っていますが、ジャンプの多い踊りやキャラクター的な役柄を得意とするダンサーだということを、お客さまに見ていただけた最初の役だと思います。初演の時には、友佳理さん(東京バレエ団芸術監督の斎藤友佳理)が振付をつくる現場にいることができたので、その分、思い入れは強くあります。第1幕の弟のフリッツを踊る日もあるのですが、この役は、姉のマーシャのダンサーの雰囲気に合わせて、可愛い弟を演じたり、もっとやんちゃに演じたりしています。ちなみに今回の公演では、マーシャ役の沖香菜子さんと「しっかり者の姉(沖)、こじらせた弟(加藤)」という姉弟設定で演技してみようと話しています(笑)。ダンサーの組み合わせによって演技が全然違うので、お客様にはその点も注目していただけたら。


──では、バレエ『くるみ割り人形』の魅力は?

加藤 いい思い出があるからなのかもしれませんが、バレエの中で一番好きな作品なんです。音楽も素晴らしい。第1幕のマーシャと王子のパ・ド・ドゥの音楽がとくに好き。クリスマスの楽しい夢の雰囲気であふれています。これに続く雪の場面も、東京バレエ団の舞台は装置が本当に素敵で、映像を見てびっくりしたほど! 第2幕の花のワルツも夢の世界のようで好きです。
全幕を通して、夢の中に「おいでおいで」と誘われている感覚になるのが『くるみ割り人形』の魅力ではないかと思います。横須賀の皆さまにもぜひ楽しんでいただきたいですね。


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前回公演のカーテンコールより。加藤は左から2番目、花のワルツのソリストを演じた




ロングインタビュー2021/12/03

「くるみ割り人形」上演に寄せて(その1) ~ 政本絵美、故郷で踊る 
東京バレエ団では、本年(2021年)12月に「くるみ割り人形」を全国9都市で上演いたします。そのうちの1つ、東京バレエ団が香川県で全幕の公演をするのは実に17年ぶり! そこで、東京バレエ団でソリストとして活躍している政本絵美に故郷での公演にかける想いを聞きました。ぜひご一読ください。


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政本絵美(東京バレエ団ソリスト)

──昨年3月、東京バレエ団ソリストとしての活動が高く評価され、令和元年度香川県文化芸術新人賞を受賞されていますが、東京バレエ団の公演で地元高松で踊るのは今回が初めてだそうですね。

政本絵美 2009年に入団して以来、バレエ団の公演として香川で踊るのはこれが初めてです。とても嬉しく思っています。


──高松公演の会場はレクザムホールです。どんな思い出がありますか。

政本 通っていた教室では、2年に一度全幕バレエを上演していて、その会場がレクザムホールの大ホールでした。出演できるのは選ばれた人だけでしたから、この舞台が夢、でした。初出演は中学1年生の時で、演目は『ジゼル』でした。主演は東京からいらしたプロのダンサーで、ジゼル役は小学生の頃から特別講師としてたびたび指導してくださっていた方。アルブレヒト役の方も同じバレエ団で活躍されていたスターでしたが、リハーサルでマントをふわーっとさせた時、すごくいい香りがしたんです(笑)! 当時は男性のダンサーと接する機会はほとんどなかったうえに、本物の美しい王子さまが来た! プロってやっぱりすごい!と感動。この体験はとても大きなものでした。

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──プロになることを意識し始めたのはその頃でしたか。

政本 私はグラン・パ・ド・ドゥを踊らせてもらうようになったのが少し遅く、高校1年生の時に『白鳥の湖』の黒鳥のパ・ド・ドゥに取り組んだのが最初でした。この時、先にジゼルを踊ってくださった特別講師の先生に指導していただいたのですが、「私、初めてですよ?」と不安な私を、まさに手取り足取りで教えてくださって、結果、本番で先生ご自身に「ブラボー」と言ってもらうことができた! これは忘れられません。本当に大切な思い出です。この経験があって、プロになりたいなと思うようになりました。


──地元で見たバレエ公演で印象的だった舞台は?

政本 海外のバレエ団もたびたびツアーで来ていましたが、実は、東京バレエ団の『ジゼル』を観ているんです。主役は友佳理さん(現芸術監督の斎藤友佳理)でした。中学生の私にとって、あの狂乱のシーンは真に迫りすぎて観ていられなかったほど。コール・ド・バレエがすごかったということもはっきり覚えています。

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──『くるみ割り人形』の思い出は?

政本 高校2年生の時に参加した全幕の公演が『くるみ割り人形』でした。雪の女王という役と、花のワルツを踊っています。さらに、怪我をしてしまった人の代役で後半の各国の踊りの一つ、アラビアも練習をしていました。結局本番では実現しませんでしたが。


──今回の高松公演で演じるのは?

政本 第1幕ではマーシャの母を演じます。一瞬ですが夫婦で踊る場面があり、サラバンドというしっとりとした踊りのスタイルが特徴的です。ぜひ注目してみてください。
そして第2幕はなんと、高校生の時に実現できなかったアラビアです! パートナーはブラウリオ・アルバレスさんですが、彼はこの踊りの振付者で、単調になりがちなこの踊りを、コール・ド付きの変化に富んだ振付にしています。ソリストの二人がずっと組んで踊っているのも特徴的。アラビアのアラベスク模様のように、二人で1つになって美しい形をつくることをイメージしています。

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「くるみ割り人形」より、アラビアを踊る政本。相手役はブラウリオ・アルバレス

──東京バレエ団の舞台は、ロシアで制作した美しい装置も評判です。

政本 このヴァージョンでは、クリスマスツリーの中をマーシャと王子が旅をしていくという独創的なアイデアが活きていて、第2幕の各国の踊りの場面の装置もとてもきれいですよ。
今回のツアーはオーケストラも一緒に行きます。『くるみ割り人形』はチャイコフスキーの音楽が本当に素晴らしく、私も大好き。ぜひこの機会に生演奏での全幕の舞台を楽しんでいただきたいと思っています。せっかくの機会ですから、香川だけでなく、高知、愛媛、徳島の皆さまも、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。


──ところで、政本さんが地元の好きなところってどんなところですか?

政本 地元の方言が、ほんわかしていてすごく好きです。普段はあまり使っていませんが、どうしても地元の言葉でなければニュアンスが伝わらないなと思うことがあるんですよね。特に「むつごい」というのは「味が濃い」や「脂っこい」というニュアンス。他にも、「お茶をこぼした」というのを「お茶をまいた」と言ったり、何かが「転がった」というのを「まるぐ」って言ったり! 地元に帰ったらきっと方言がたくさん出てくると思います。



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